【※注意】本稿は配信の内容に触れる都合上、『ドキドキ文芸部プラス!』『メグとばけもの』『くまのレストラン』に関するネタバレが含まれています。ご注意ください。

配信者のゲーム実況を視聴したことで、好きだったゲームの新たな魅力に気付かされる。皆さんはそんな経験をしたことはありませんか?
ホロライブ所属の新人VTuber・水宮枢(みずみや すう)さんも、そんな感動を与えられる配信活動者のひとり。感情移入しやすい性格なのか、魂を揺さぶるようなゲームで物語に没頭しては、泣き、笑い、怒りをあらわにして物語が紡ぐ“運命”に正面から向き合います。
とくに印象的だったのは、『ドキドキ文芸部プラス!』『メグとばけもの』、そして『くまのレストラン』で見せた涙。そこには他の配信者では見られないようなリアクションだったり、純粋さゆえにぶつけられる激しい感情だったりと、時にいたたまれない気持ちになるさまざまな反応がありました。
本稿ではそんな水宮さんの純粋すぎるリアクションを紹介しつつ、彼女が感じただろう各作品の魅力を振り返りたいと思います。
※以降、『ドキドキ文芸部プラス!』『メグとばけもの』『くまのレストラン』に関するネタバレが含まれています。
◆「すうは悪いことをしたんだよ」罪悪感に打ちのめされた『ドキドキ文芸部プラス!』
ホロライブの新人VTuberグループ「FLOW GLOW」(フローグロー)に所属する水宮枢(みずみや すう)さんは、2024年11月9日にデビュー配信をしたばかりの音楽ユニットメンバー。メンバーはほかにも、響咲リオナ(いさき りおな)さん、虎金妃 笑虎(こがねい にこ)さん、輪堂千速(りんどう ちはや)さん、綺々羅々ヴィヴィ(ききらら ヴィヴィ)さんの4名が所属しており、水宮さんはその「FLOW GLOW」の宣伝担当です。
身長は自称2メートル。自称20歳ながら数々の“女児エピソード”があり、たとえば「女児と間違えられて補導されかけた」「高校生の頃、ダンスレッスン先の小学生に同年代だと思われた」「その子を驚かせないよう中学生だと嘘を言った手前、ダンスレッスンでは同年代の友人に敬語を使うはめになった」など強めのネタを数多く持っています。
それはホロライブ内でも現在進行形で増殖しており、「すうちゃんが着ると萌え袖になるトレーナーを、笑虎が着たら七分袖になった」(笑虎さん談)、「新年会で会った時、小さすぎて見えなかった(笑)」(夏色まつりさん談)と冗談が飛び交うほど愛されています。
いわゆる“クソガキ”なキャラクターで圧を強めにリスナーと戯れることが多い水宮さんですが、2025年3月28日と29日に実施した『ドキドキ文芸部プラス!』では、意外な反応を見せることに……。

『ドキドキ文芸部プラス!』といえば、高校の文芸部を舞台に、詩を通じて4人の美少女とドキドキな学校生活を楽しむアドベンチャーゲームです。ゲーム開始当初は「さっそくいっていい?」とウキウキで待ちきれないようすを見せていた水宮さん。配信タイトルにも「可愛い女の子ときゃっきゃうふふ」と記し、美少女に囲まれたパラダイスを思い描いてニヤニヤでした。
しかし『ドキドキ文芸部プラス!』といえばネタバレ厳禁の“クセつよ”なゲーム。最初の大きな展開を迎え、さまざまなギミックを経るうちに浮かれてばかりいられなくなります。
学校生活と言えばクラスメイトとケンカをすることもありますが、水宮さんのプレイでもちょうどそのような展開を迎えて雲行きが怪しくなっていたころ。とくに流れが変わったのは配信2日目の4時間30分を越えたあたりです。そこに至るまでに“ある大きな決断”をしていた水宮さんは、自分の決断が間違いだったことに気付かされてしまいました。
キャラクターのひとりに「ありがとう」と言われ、突然「ねえちょっと待って」と声を詰まらせてしまいます。決断をしたせいで“とあるキャラクター”を不幸にしてしまったこともあり、その行為を別のキャラクターに褒められてもまったく嬉しくない、そんな様子です。それどころか責められているような気分になったのか、「ありがとう」の部分の読み上げで一瞬のためらいを見せました。
「すうは悪いことをしたんだよ、違うんだよ……」。お礼を言うキャラクターに対し、「そのお礼は不幸にしてしまったキャラクターに言ってほしい」と涙声で反論する水宮さん。物語はそこからさらに動いて一気にエンディングへと向かったのですが、終始、不幸にしてしまった(と感じた)キャラクターに対し涙を浮かべながら「ごめんね」を繰り返していました。
プレイ終了後に「一度やってしまったものは戻らない、そういう部分で考えさせられた」と語っていた水宮さんですが、ここまで感情をあらわにした『ドキドキ文芸部プラス!』実況は筆者も初めてです。これまで実況してきたどの配信者たちも、驚くことはあっても涙する展開なんてありませんでした。
プレイ後の満足度が高く評価も高い『ドキドキ文芸部プラス!』。水宮さんの実況は「プレイヤーの罪悪感」という珍しい視点が際立っておりとても新鮮でした。
◆「絶対許してやんない!」怒りと涙でボロボロになった『メグとばけもの』

『メグとばけもの』はOdencatが開発したドット絵のアドベンチャーRPG。「少女が泣くと世界が終わる」をキャッチコピーに、魔界に迷いこんだ少女「メグ」と魔物の「ロイ」が織りなす感動の物語です。
開発者も「ギャップのあるキャラクターの関係性というのは、それだけで見ていて面白かったりしますが、強力な魔物のロイと、か弱い人間の子どものメグ --『メグとばけもの』は、この組み合わせから企画を広げていきました。ストーリーもゲームシステムも音楽も、全てこの上に成り立っています。是非楽しみにしていただけたらと思います」と公式サイトにコメントを掲載するほど力の入った作品です。
リスナーからオススメされて本作の実況を決めたという水宮さんは、2025年1月3日と4日の2日に分けて配信を実施。1日目の終盤で最初のラストバトルを迎えた際には、とんでもなく外道な展開に感情をあらわにしていました。
それまでメグとロイの交流を温かく見守っていた水宮さんは、ロイの友人という魔物「ゴラン」もお気に入りのようす。物語の積み重ねもあり、そうとう感情移入していました。しかしそんな“お気に入り”が配信終盤でとんでもない事態に……。黒幕の外道なおこないに、「ねえもうやめてよ、なんでそんなことができるの!?」と感情を爆発させます。
しかし黒幕の“外道”は、プレイヤーである水宮さんを嘲笑うかのようにさらに何重にもかさねてきます。その成り行きを見守るしかできない水宮さんは「ほんとやめて、マジでやめて」と怒り心頭。「なんでそんなことできるの!? バカじゃないの!? ねえほんとに最低!」と決戦前から泣き崩れて、黒幕のセリフをまともに読めない状況まで心理的に追い詰められてしまいます。
それもこれも、ここまでの物語で大好きになったメグ、ロイ、ゴランの幸せを願えばこそ。その幸せを土足で踏みつけ、踏みにじり、そして唾を吐きかけて嘲笑する黒幕に「やめて、やめて、やめて!!」「ねえどうにかなんない!?」と懇願し、非難することしかできません。画面外で思わず台パンしてしまったのも、純粋な憤りから来る無意識的な行為だったことでしょう。
それからしばらく号泣しながら最終決戦に挑み、望まぬ“結末”に打ちのめされた水宮さんですが、大好きなキャラクターたちをハッピーエンドに導くため、今度は気合を入れて“本当の結末”を迎えることに。2日目の配信でもさまざまな表情をみせ、その純粋な性格でリスナーの共感を呼んでいました。
大好きな人たちを大切に想うからこそ、本気で泣き、本気で怒ることができる水宮さん。『メグとばけもの』は感動のストーリーで人気ですが、彼女の配信では、まるでメグが本当にその場にいて生の感情をぶつけているような感覚にさせてもらいました。
なお『メグとばけもの』は2025年4月24日にNintendo Switchのパッケージ版をリリースしたばかりです。未プレイの方は、並走または先にプレイして、気になったシーンの水宮さんの反応を確認してはいかがでしょうか。
◆「すうちゃん、そんなきれいな人間じゃないから……」本音で挑んだ『くまのレストラン』

水宮さんの配信でもっとも印象的だったのは、こちらもやはりOdencatが開発したドット絵のアドベンチャーゲーム『くまのレストラン』です。このゲームで感動したからこそ、同じ開発元である『メグとばけもの』を実況することにしました。
『くまのレストラン』は、天国と地獄の狭間にあるレストランを舞台にした物語。くまのシェフが死者に最後の晩餐をふるまうという内容で、ゲーム紹介テキストに「本ゲームは『死』をテーマにしております。そのため、交通事故、自殺、殺人などの描写が含まれます。グロテスクなシーンはありませんが、どうぞご留意ください」と注意書きがされるほどハードな内容となっています。
そのせいか、配信スタート直後は楽しそうに物語を読み進めていた水宮さんですが、レストランのお客さんの背景が語られる30分ころから「きっついね、これ……」と弱音を口にしはじめます。さらにさまざまな背景を目の当たりにすると、打ちのめされたようすで「けっこうずっとキツい」と早くもメンタルが削られてしまいます。
ただ「辛い背景を知った」というだけでなく、残された人たちのことを考え、やむにやまれない状況に寄り添いつつも選んだ行動を否定するなど、思いにならない想いに言葉を詰まらせます。そして一瞬、無言でコメント欄を見つめ、キャラクターそれぞれの事情を正面から受け止めていました。
しかし水宮さんが号泣したのは、そうした“不幸な人々”の背景だけではありません。物語が終盤に差しかかったタイミングでのこと。キャラクターのひとりに、とある質問をぶつけられたのがきっかけでした。
「たとえばさ。友達がおぼれていて、たすけようとしたら自分もおぼれちゃうかも。そんなとき、たすける?」
なんと残酷な質問でしょうか。この問いに水宮さんは、迷いに迷った結果「助けたいけど、でも勇気も出ないと思う……」と回答。「だって、すうちゃんそんな綺麗な人間じゃないから」「……勇気も出ないと思う。怖くなっちゃうと思う」と、声を詰まらせながら本音を吐露します。
それまでの展開の中でキャラクターたちに寄り添い、どうにか幸せになって欲しいと願い続けた水宮さん。そんな中で発した、ごまかしのない素直な気持ち。それは本人の言葉とは反対の、彼女の優しさと純粋さが透けて見える発言でもありました。
すでに女児キャラが定着している水宮さんですが、それはただのおもしろエピソードではなく、ある意味の純粋さが覗くエピソードだからこそリスナーは聞きたがるはず。とくにダンスレッスン先の小学生に同年代だと思われたというネタは、相手を驚かせたくないから中学生だと答えたことがきっかけでした。
『くまのレストラン』のみならず、『メグとばけもの』も『ドキドキ文芸部プラス!』も、そういった側面がうかがえた実況配信でした。涙ながらにプレイする姿は時にいたたまれない気持ちになりますが、すべて晴れやかにエンディングを迎えられ、楽しそうに作品の感想を語っている姿を見ると、本当にいい時間をすごさせてもらったと感じます。
もちろんゲームそのものに魅力がなければここまで感情移入することはありません。配信者の視点で新たな魅力に気付かされ、さらにその作品を好きになる。水宮さんの今後の配信も、各メーカーの次回作も楽しみですね。
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