※本稿にはTVアニメ「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」第4話の内容が含まれます。ネタバレが気になる方は、閲覧をお控えください。

ガンダムシリーズ最新作「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)」が最終回を終えて早1か月。全12話を通して様々なキャラクターやモビルスーツが登場し、目まぐるしいストーリーが展開されました。その中でも筆者が一番印象に残っているのは、第4話で登場した「シイコ・スガイ」です。
視聴後はついついシイコの名前を検索しては、インターネットやSNSの反応を眺める日々。黒い三連星が登場したり、サイコ・ガンダムが暴れたりと話が進んでも、なかなかシイコが頭から離れません。
なぜシイコはここまで私の印象に色濃く残ったのか。本稿では3つの観点からその理由、もとい彼女の魅力を深掘りしてみようと思います。
◆一児の母で愛くるしい人柄と、執着心に取りつかれた元エースパイロットというギャップ
シイコを印象付けるきっかけとなったのは、可愛げな容姿とそこからは想像もできないバックボーンによるギャップです。第一印象はお淑やかな女性でした。ジャンク屋のポメラニアンに吠えられてオロオロする初登場シーンをはじめ、雰囲気や性格も穏やか。こけしに似た童顔なところも愛くるしさを覚えました。

しかし、明かされた経歴はあまりにも予想外。元地球連邦軍の兵士で、一年戦争中に100機以上の敵モビルスーツを撃墜し「魔女」と恐れられたエースパイロットだったのです。第4話時点では軍を退役し、結婚して子供もいる普通の生活を送っていたものの、ある目的からマチュたちに立ちはだかります。
この目的というのが「赤いガンダム」を倒すこと。戦争中に赤いガンダムによって自身のマヴを失っており、一度は撃墜されたと聞いて吹っ切れていたものの、クランバトルに出場しているのを知って執着心が再熱。自らの手でケリを付けるべく行動に移ったというわけ。
シイコの素性が明かされてからは、「戦争に負けても、私は負けてない」や「赤いガンダムは私が倒すのよ」など、表情は笑顔ですがどこか危うさを感じる様子が見られます。

モビルスーツ戦が始まるとそれは顕著になり、撃墜王らしく言動もより攻撃的に。執着心からマヴの声を聞かず自分勝手な戦い方をしたり、「私のために死んで!ニュータイプ!」と叫んだりする姿は、序盤の穏やかだった様子とは似ても似つきません。
母となって家庭を築き人並みの日常を送っていても、その心中では戦争時代の執着心が渦巻く、ある意味で戦争に取りつかれてしまった人物という点が筆者の興味を引きつけたのです。
◆「ジークアクス」でも人は死ぬ…衝撃的な最期
シイコが印象に残った最大の理由は、やはり本作で最初の死者(※一年戦争パート除く)になったことだと思います。
クランバトルは相手モビルスーツの頭部を破壊すれば勝利なのですが、執着心に捕らわれたシイコはルールを無視して暴走。赤いガンダムをパイロットごと撃墜しようとするものの、最後は裏をかかれ、コックピットをビームサーベルで貫かれ敗北しました。

それまで筆者には、「あくまでクランバトルは競技だから、人が死ぬことはないだろう」という思い込みがありました。これまでの試合でも、マチュたちが頭部を破壊して勝利するシーンがハッキリ描写されており、あえて「非殺傷な戦い」というイメージを植え付けられていたように思えます。
しかし、ここにきてその前提が覆ることに。それも元エースパイロットでキャラも立っていたシイコがまさかの一話退場。衝撃的だったのは言うまでもありません。
また、死に際にシイコが思い浮かべたのは、自身に歩み寄ってくる「ぼうや(息子)」の姿。明るい家庭を築く彼女の最期にマチュは「あの人には……待ってる家族もいたのに……」と愕然。もちろん筆者も同じ気持ちを覚えましたし、この話で改めて「ジークアクスもしっかりガンダム作品なんだ」と再認識させられました。
◆放送終了後、スタッフ陣によるファンアートの追撃
シイコの死をより印象強くしたのが制作スタッフ陣によるファンアートです。第4話の放送終了後、担当アニメーターのゆーすめると氏、荒木哲郎氏がSNSでファンアートを公開。そこには息子を抱いて微笑んだり、箸を使って食事する息子を「きゃー ぼうや じょうずー!」とスマホで撮影したりと、家族との日常を過ごすシイコが描かれていました。
シイコの壮絶な最期にいっぱいいっぱいの中、こんな幸せそうな姿を見せられては心にくるというもの。劇中でぼうやとのシーンはほとんど描かれなかったものの、このイラストから子煩悩な母親だったことが伝わってきます。
また、亡くなったことでこうした日々が二度と訪れないことも悲しさを引き立てます。父親に「ママはいつ帰ってくるの?」と尋ねるぼうやを想像しては、また悲しい気持ちにさせられました。結局のところ「悲しい出来事」というのは脳裏に残りやすいものなのです。
筆者にとどまらず、このファンアートにはSNS上でも「ありがとうございます……でも、辛い!!」「人の心!」「いくらなんでもあの後にコレはきついっすよ」「す、素敵なイラストだぁ……(心が痛い)」と阿鼻叫喚な反応が上がっており、多くの人にシイコをより印象付けるきっかけになったと思います。
ちなみに「ジークアクス」ではすぐに退場してしまったシイコですが、今ではアプリ『SDガンダム ジージェネレーション エターナル』に参戦し、ユニコーンガンダムなど様々な機体に乗ってニュータイプたちをデストロイしています。


今後もガンダム系ゲームが広がる中で、シイコが参戦してアニメ以上の活動を見せてくれることに期待したいところです。