『ゴッド・オブ・ウォー』のゲームデザイナーであるDavid Jaffe氏は、オーストラリアのレーティング機関に対し「政府機関が“暴力的に過ぎる”といったら論争すら許されない。ゲーム内容をカットしたくないというならば、あなたは政府を相手取ることになる」と批判します。
一方でオーストラリアのMichael Atkinson検事総長は、18歳以上向けのレーティングを求めるゲーマーたちの活動が「自分の意志を社会に押しつけようとする少数のゲーマーたちの問題」であり、レーティング自体に問題がないとする見解を明らかにしています。Atkinson検事総長は「98~99%のゲーマーはファンタジーと現実の違いを分かっている」としながらも、残る1~2%はゲームに影響されて暴力行為を行うとしています。
暴力的な内容を含むゲームがプレイヤーに影響を与えるか否かは非常にデリケートな問題。特に「影響を与えない」ことに関しては「悪魔の証明」となるため極めて立証が難しくなります。
オーストラリアのゲームは「18歳以上向け」という区分が存在しません。
この状況を打破するためにゲーマーたちは集会を行ったりしているのですが、「自分の意志を社会に押しつけようとする少数派のもの」と断じられたのでは立つ瀬がありません。民主的な努力がこう受け取られるのであれば、ゲーマーたちの努力が別のベクトルへと向かう可能性があります。規制がかかっていない国からゲームを個人輸入したりすれば、苦労して集会を催したにも関わらず「意見を押しつけようとしている」などといわれずに済むというわけです。
では、高レーティングのゲームを求める動きが表沙汰にならなくなれば問題は解決するのでしょうか。答えは否です。Atkinson検事総長は、1~2%のゲーマーがゲームに影響されて暴力行為を行うことを問題視していますが、個人輸入などで規制がかかっていないゲームを手に入れられる以上はこうした問題はなくならないでしょう。ならば個人輸入の道を絶つ……というのも現実的ではありません。個人輸入が禁止されればそれを仲介するアンダーグラウンドなビジネスが出てくるかも知れませんし、インターネットを使えば規制無しのバージョンを海外から不法ダウンロードすることが可能です。どんどん地下へ、ディープな方向へと潜っていくばかりです。Atkinson検事総長が「1~2%」の母数を少なくすべく努力しているのは分かるのですが、それでも対話の拒否は良い方法とは思えません。
日本では『グランド・セフト・オートIV』が規制無しで発売されるなど状況は好転の兆しを見せていますが、オーストラリアの状況は完全に対岸の火事というわけではありません。こうした問題に関して特効薬はなく、小売店とレーティング機関とゲームメーカーがそれぞれの役割を誠実に果たしていくしかありません。日本で同様の状況になった時に民主的な努力が無碍にされないことを願うと同時に、オーストラリアのゲーマー諸氏が冷静に対応することを祈るばかりです。
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