ゲームのジャンルやモチーフには、当然流行り廃りがあります。また、時代によって表現に影響が出る場合もあり、様々な要因でジャンル自体の興廃が移り変わっていきます。
25年以上にわたりゲームをリリースし続けてきたディースリー・パブリッシャーも、その長い歩みの中で数多くの代表作を生み出しました。『地球防衛軍』シリーズは特に愛され続けていますし、乙女ゲーの分野でも確固たる地位を築いています。
そして一部ユーザーからは、美少女たちが彩る“大人の紳士向け”のゲームを手がける会社として、大きな信頼を集めている向きもあります。『お姉チャンバラ』をはじめ、『オメガラビリンス』に『バレットガールズ』、『ドリームクラブ』と、華々しい作品の数々を忘れられない人も多いはず。

しかし近年の同社は、2022年12月に発売した『SAMURAI MAIDEN -サムライメイデン-』以降、美少女を主軸に据えるようなゲームの展開は控えめとなり、大人の紳士が喜ぶようなタイトルとは縁遠い状況が続きました。ですが、美少女が銃撃にアクションにと大活躍する『ゼンシンマシンガール』が、満を持して2025年10月23日に登場します。
『SAMURAI MAIDEN -サムライメイデン-』から数えて約3年ぶりの美少女3Dアクションは、大人の紳士のお眼鏡に叶うのでしょうか? 発売前に挑んだ先行体験をもとに、本作のプレイレポートをお届けします。
なお、今回プレイしたのはPS5版です。また、序盤(30階クリア)までのプレイに基づくものとなります。
■気遣い無用の設定も嬉しい『ゼンシンマシンガール』

『ゼンシンマシンガール』は、挑むたびに構造が変化する高層ビルに侵入し、悪徳企業「メターナルジョブズ」の社員たちと戦いながら最上階である100階を目指す3Dアクションゲームです。
主人公はタイトルの通り、全身がマシンに改造されてしまった少女たち。天真爛漫なギャル系JK「荒吐リョウコ」と黒髪のクール系JK「南麻布アケミ」が、マシン化された身体能力を活かし、大振りな武器で社員を蹴散らします。

社員といっても、彼らは普通の人間ではありません。死んだ人間を無理やり働かせる社員再生テクノロジー、通称「社Tech」によって労働を強いられている「ワーキングデッド」です。
本作では少女と社員の壮絶な戦いが描かれますが、お互い機械化されているため、視覚的なグロさは皆無。攻撃を食らわせると四散するものの、機械的なパーツが飛び散る形なので、生々しさはありません。グラフィックデザインの方向性も相まって、アニメに近いテイストです。
ゾンビさながらの敵は機械化されているため、精神的にも視覚的にも負担が少なくて気持ちよく戦えます。また、機械化されているのは主人公たちも同様で、ゲームを進めるごとに強化が進み、段階的にパワーアップ。設定面、ビジュアル、そしてゲーム性のいずれもが、爽快アクションがより楽しくなるように作られている──実際のプレイを通して、そんな印象を覚えました。

■どちらも心地よい「近接」と「銃撃」、使い分けのバランスも絶妙

アクションを気持ちよく楽しませてくれる配慮を全般的に感じますが、やはり肝心なのはアクションそのものです。本作の核とも言える部分なので、ここの作りが甘ければ話になりません。
先に結論を述べると、『ゼンシンマシンガール』は小気味よく、設定やビジュアルを支えるに値する手触りを感じました。本作は『デジボク地球防衛軍』シリーズなどを手がけているユークスが開発していることもあり、操作性やレスポンスにも不満はなく、キャラを動かしているだけでも楽しさがあります。

もちろん、本作におけるアクションの中心はやはりバトル。リョウコとアケミは、軽快な近接攻撃と手応え抜群の銃撃で、雑魚からボスまで戦い抜きます。ワーキングデッドの種類にもよりますが、雑魚は近接の1、2撃で倒れてくれますし、銃撃でも派手に砕け散ってくれるので、どちらも爽快感は十分。
銃撃は距離を開けられるので比較的安全ですが、戦いの舞台は総じて室内なので、銃だけに頼るのはあまりお勧めできません。また、弾丸そのものは無限ですが、装弾数は決まっており、リロードの間はもちろん銃では攻撃不可です。

また、瞬間的に与えるダメージは近接攻撃の方が大きいため、リロードの隙間を埋めるだけでなく、むしろ積極的に使った方が、戦術的にも有利に働く場面がほとんど。特に雑魚戦は、「やられる前にやる」の精神で挑んでも問題ありません。
しかし、近接攻撃だけで乗り切ろうとするのも危険です。近接攻撃は、繰り出すたびにエネルギーを消費します。エネルギーは時間で回復しますが、使い過ぎると回復までに間が空きますし、ダッジにもエネルギーを使うため回避手段も一時的に封じられてしまいます。

近接と銃撃はどちらも頼もしい一方、片方だけに頼ると危険に陥りやすく、双方を適時使い分けるのが賢い戦い方です。エネルギー制と装弾数(一部の銃はオーバーヒート制)の兼ね合いで、自然とバランスよく使うように上手く誘導しており、本作におけるシステムの妙を感じさせます。
■多彩な武器との一期一会が、“変化する繰り返し”の楽しさに
武器を用いる面白さは、近接と銃撃の使い分けだけではありません。近接攻撃だけでも、安定してダメージを与えられるチェーンソー、振りが速いブレード、一撃のダメージが大きいがモーションも大きいアックスなど、それぞれ特徴が分かれています。
しかも武器種の違いだけでなく、コンボの後に光の波を発射するブレードや、HPを吸収する効果を持ったチェーンソーなど、特別な効果が付与された武器と出会うことも。また銃器でも、ガトリングにライフル、ショットガンとこちらも複数種類があり、チャージできるライフルや撃ち続けると威力が上がるガトリングなど、特殊な効果もさまざまです。

さらに各武器には、エネルギーの上限をアップしたり、ダメージを上昇させたりなど、副次的な効果も付与されており、自分の立ち回りにあった武器を見つける楽しさもあります。レア度で効果の幅も変わるので、武器との出会いもプレイのモチベーションを高めてくれる要素のひとつです。
ただし、持ち歩ける武器は、近接と銃でひとつずつだけ。予備の武器は持てないので、武器との出会いは常に別れを意味します。出会ったばかりの武器を見送るか、ここまで使い続けた武器を手放すのか、常に選択の連続です。

また、武器は各フロアの部屋ごとに見つかりますが、その大半は敵が待ち構えています。出来るだけ多くの武器や、強化プログラム(MOD)などと出会いたいなら、積極的に寄り道をすべきです。しかし、敵と戦う回数が増えればダメージも負いやすくなります。
ビルへ挑むたびに変化するのは、マップの構造だけではありません。出会う武器によって戦い方も自ずと変化しますし、近接と銃の組み合わせ次第でも変わることでしょう。寄り道を増やすか、被弾を避けて体力を温存するか。
プレイするたびに状況は入れ替わり、まったく同じ展開はまず訪れないでしょう。そのつど臨機応変に対応し、ピンチを戦略と判断力で切り抜け、少しでも高い階層を目指す。この“変化する繰り返し”にこそ、『ゼンシンマシンガール』の真髄があるように思います。

ちなみに、攻略中に入手したアイテムは、残念ながら持ち帰れません。途中で力尽きるなり、節目ごとに強制的に戻るなりした場合、獲得した武器などは全てなくなります。
ただし、プレイ中に得たお金(配信による投げ銭)や素材はなくならず、これを元手にした恒常的な身体強化が可能です。武器などは失っても、得た素材とお金で彼女たちを強化改造できるため、挑むたびに強くなって再挑戦できるので、“変化する繰り返し”はより楽しくなっていきます。
■まさしく紳士向け! でもセクシー要素は控えめな『ゼンシンマシンガール』
待ち構える敵やフロアのギミックは、階層を上がるごとに厳しくなっていくので、ボタン連打で勝てるようなヌルさはありません。しかし、少なくとも30階まで登った範囲では、理不尽な手ごわさや厄介過ぎる仕掛けとは出会わず、適度な手応えと攻撃の気持ちよさがプレイ時間の大半を占めていました。
あくまで個人的な意見ではありますが、適度な緊張感のある戦いを繰り広げる時間は、成長要素も含めて“楽しさ”を実感する時間が長く、これぞ美少女アクション! といった満足度を与えてくれた作品です。

とはいえ、なんの隙もない完璧なゲームではなく、気になる点がいくつかあるのも事実です。例えば、敵の種類はさほど多くなく、戦いのパターンが決まりがちな面は否めません。
また、「ビル構造のダンジョンにアクションで立ち向かう」のがゲーム性の大半を占めており、ゲームのスタイルとしては“狭く深く”になります。そのため、繰り返しのプレイが苦手な人には向かないと思われます。
こうした事情から、遊ぶ人との相性次第で本作の評価は大きく変わることでしょう。ただし、美少女アクションという時点で、必然的に選別が行われています。こうした点は問題というよりも、向き不向きに近い話かもしれません。

あえて問題点を挙げるならば、美少女が活躍するゲームですが、直接的なセクシー描写はさほどありません。『ゼンシンマシンガール』の問題というよりは、時代的な表現の問題と言えますが、過度なセクシー描写を期待する人にも向いていません。
しかし、リョウコとアケミの3Dモデルは、アクションゲームとして見ても十分な完成度です。操作して小気味よく、敵を撃破する度に心地よさを覚えます。繰り返しのプレイで強くなっていくので、遊ぶほどにJKの操作も楽しみが増していくことでしょう。

美少女キャラのアクションにとことん特化した『ゼンシンマシンガール』。完成度の高さは今回のプレイだけでも感じられたので、あとはこのジャンルやシステムを好むかどうか、それが分水嶺と言えるでしょう。つまり、惹かれたら買って良し! ご自身の直感に従って、令和7年の美少女アクションを体感してください。
『ゼンシンマシンガール』は、スイッチ2/PS5/PC(Steam/Epic)向けに2025年10月23日発売。価格は通常版が6,980円(税込)、デラックスエディション(スイッチ2/PS5のみ)が9,460円(税込)です。