4GamerとGame*Sparkは、ゲーム業界への新卒就職を目指している就活生を対象としたイベント「キャリアクエスト」の第3回を東京都立産業貿易センター 浜松町館で2025年8月21日に開催した。
このイベントは、ゲーム業界への高い熱意を持つ学生と、新卒採用に意欲を持つゲーム関連企業のマッチングを図るもの。その開催に合わせて、実際に現場で働いている若手社員に、ゲーム業界を目指す学生のためのインタビューを行った。
本稿では、セガの第4開発部でプランナーを務めているY.S.さんのインタビューをお届けしよう。
今回は「社会人編」として.セガ入社後からどのような業務に携わり現在に至るのかや、社内の雰囲気、今後調整してみたいことなどをY.Sさんに聞いている。
なお、本記事は4GamerとGame*Sparkで共同制作した連載記事となる。

入社当時から変わらずキャラクター班に所属
4Gamer:さっそくですが、自己紹介をお願いします。
Y.S.さん:2023年度入社で、3年次プランナーのY.S.と申します。現在は、バトルゲームのキャラクターを制作する班に所属していまして、その中で性能設計班のリーダーを務めています。
4Gamer:現在の業務内容を教えてください。
Y.S.さん:各キャラクターの制作における性能の設計や、モーションやサウンド周りの考案といった実業務に加え、リーダー業務でメンバー教育も担当しています。
4Gamer:配属部署は入社時から変わっていますか。
Y.S.さん:変わっていません。社内では珍しい例で、同期の中にはほかの班にローテーションしている人もいます。ただ、自分の場合はキャラクターの制作期間がとても長いなどの都合により、今のところ部署を異動することなくそのまま経験を積んでリーダーに上がっていく路線を採用しています。
4Gamer:配属にあたって、ご自身の意見や要望はどの程度反映されたのでしょうか。
Y.S.さん:セガのプランナー職の配属は、研修やOJTなどを通じて適性を判断して決定されるという流れになっています。私の場合は面談で希望を聞いてもらう機会もありました。
私自身は絶対これがやりたいというこだわりはなかったので、オタク気質もあり、どちらかと言えばキャラクターや世界設定の表現に関わる部署がいいとだけ伝えました。
キャラクター班は「このキャラクターだったらこんな動きをしたらカッコいいだろう」ということを考える部署なので、意見が通ってすごく相性が良いところに配属してもらえたと捉えています。

セガに向いている人材の条件は、変化に寛容で、好きなものを素直に好きと言えること
4Gamer:セガ社内の雰囲気はいかがですか。
Y.S.さん:穏やかな人が多いですね。また、自分の好きなものを好きなように楽しんでいる自由な人がすごく多い印象です。
事業部内のスタッフのデスクをたまに見に行くと、その人の好きなキャラクターのぬいぐるみやフィギュア、アクリルスタンドで溢れかえっているんですよね。私も同じですが(笑)。最近は『たまごっちのプチプチおみせっち おまちど~さま!』にハマって、先輩達と一緒にみみっちとめめっちに会いに行きました。
あとは昼休みや朝会などの時間を利用して、ボードゲームや好きなテレビゲームを持ち寄って遊ぶこともあります。「自分が楽しんでいないと、面白いものは作れない」という精神の人が多いのだと思います。良い意味で他人への干渉や強制力が強いという印象はありません。
4Gamer:セガにはどんな人材が向いていると感じますか。
Y.S.さん:面白いことが好きで、変化に寛容な人が向いていると感じます。社内のいろんなことが頻繁に変わるんですよ。「これ、面白いから採り入れよう」「あれもやろう」というケースが多いので。
4Gamer:どんな変化があるのか教えてもらっていいでしょうか。
Y.S.さん:たとえば、社内の組織改編が頻繁にあるんです。私の場合は入社して1か月後に、所属する部署名が変わりました。後輩の話を聞くと、新卒研修も私たちの世代とは違っているようでした。「これは良い」というものがすぐに採用されていくイメージですね。
あとは自分の好きなものに対して、素直に好きだと表現できる人もセガに向いていると思います。

4Gamer:先ほども、デスクが推しグッズで溢れかえっている人ばかりだという話が出ましたね。
Y.S.さん:事業部長のエピソードで、戦国時代が好きだと言い続けていたら、いざ戦国ものプロジェクトが立ち上がったときに一番に入れてもらえたということがあります。
そんな感じで「好きなものがあるなら、アピールしておいたほうがいい」と入社以来ずっと言われていますね。
4Gamer:雑談ベースでもいいので、何が好きか、何に詳しいかを周囲に知られていることが大切だということですね。
Y.S.さん:私自身も入社時から「個人で音楽活動を続けているので、サウンドに興味がある」という話をし続けてきたところ、キャラクター班に配属されたときに最初はサウンド系を任せてもらえたりしました。
4Gamer:それでは、ゲーム業界で働いていると実感した出来事やエピソードを教えてもらえますか。
Y.S.さん:私はゲーム実況がすごく好きなのですけれども、自分の作ったキャラクターを使って盛り上がっている実況動画を見たときにすごく不思議な気持ちになりました。
それまで一方的に観賞していたものに、自分の作ったものが出てきて実況されているという事実はすごく不思議な体験だったので、昔の自分に伝えたらビックリするでしょうね。
4Gamer:ご自身で作っているゲームは遊んでいますか。
Y.S.さん:もちろんです。今、どんなキャラクターが使われているのか把握しなければならないので、キャラクター班は皆しっかり遊んでいます。
4Gamer:業務の一環という意味合いが強いわけですか。
Y.S.さん:最初は仕事としてプレイしていましたが、最近は普通に「自分の作ったキャラクターが面白い」と思ってやっています。
また、遊んでくださる皆さんの反応を見る時間が増えましたね。感想や実況・解説動画から、「新しいキャラクターを出すとこういう評価になる」ということを普通に楽しんでいます。
入社当時に戻れるなら、世の中で流行しているものの理由を分析し、知見を広げたい
4Gamer:作り手の視点が加わったことにより、ほかのゲームを遊んでいてチェックするポイントが変わることはありましたか。
Y.S.さん:完全に切り替わったわけではありませんが、多少は変わりました。普通に遊んでいる中で、「この仕様、面白いな」とか。たとえば最近話題の『ドンキーコング バナンザ』だったら、以前なら「壁が壊せるって面白い」という感想で終わっていたんですが、今だったら「マップの概念を破壊して進む楽しさを思いつくなんて天才だな」といった作り手に対する尊敬が入ります。そういった視野が増えるような変化も、私自身は楽しんでいます。
4Gamer:ベテランのゲーム開発者だと、設計思想や仕様などが気になって純粋にゲームを楽しめなくなったという話を聞くこともあるのですが。
Y.S.さん:私はゲームそのものも、私自身の変化も楽しめていますね。遊び心は以前から変わっていないと思います。
4Gamer:就活していた当時と比較して、タスクの進め方などに変化はありますか。
Y.S.さん:入社当時は、個人活動との規模感の違いに驚きました。自分のところで止まっているタスクのせいで何十人ものスタッフに迷惑がかかるんだなと。
それまで自分だけで管理できていたけれど、今はいろんな人と一緒に作っているんだと感じましたね。とにかくメールは速やかに返信すると決めました(笑)。

4Gamer:入社当時に戻れるとしたら、どんなことを心がけたいと思いますか。
Y.S.さん:時間があるうちに、もっと幅広くいろんな分野について学んだり、人との交流を広げたりして引き出しを増やしておくべきだったと、最近痛感しています。
新しいものを生み出すときに、引き出しが足りなくて苦しむことが多いんですよ。良くも悪くも自分の興味があることしかやって来なかったので、最近は流行しているものを一旦全部チェックしようという主義に変えています。ただ、もっと早くから始めておくべきだったと感じます。
流行しているということは、自分が興味を持てなくても、多くの人にとって面白いものなんだという知見は、もっと広げておきたいですね。
4Gamer:流行しているものには、何かしらの理由がありますからね、その理由を理解するだけでも価値があると。
Y.S.さん:そうですね。誰かに響くものを生み出すきっかけになります。たとえば「鬼滅の刃」は大ヒットしていますが、私はグロテスクな表現が苦手で最初は避けていたんです。でも、いざアニメ版を観てみたら、ストーリーが面白い。1つのコンテンツに対して、どの部分を評価するかは人によって違うんです。
自分はここを面白いと思ったが、Aさんは別の部分を評価している、Bさんはまた別の部分を評価している。それら評価されている部分を自分の仕事に持ち帰ることで、自分と趣味の近い人に響くキャラクターだけでなく、Aさんのような人に響くキャラクターやBさんのような人に響くキャラクターを作れるようになる。結果、バリエーションが豊かになると考えています。その視点を入社時に持てていれば、良かったかなと。
4Gamer:それではゲーム業界のここが面白い、逆にここが大変というところを教えてください。
Y.S.さん:概念的に感じる「面白い」「楽しい」「好き」を考え始めるとすごく難しいので、良い意味でも悪い意味でも面白くて大変な仕事だと実感しています。大変なのは、「面白いな」という雑多な感想を何から構成されているのか分析し始めると、自分の感想すら信じられなくなることもあるので、そうやって迷走し続けたり、自分の引き出しのなさに直面したりすることですね。すごく苦しい反面、面白くてアドレナリンが出てくるのを感じます。
またプランナーに限らないのですが、もともと存在しているゲームに新しい面白さを追加することは、実はゼロイチより難しいということも感じています。原作があるタイトルであれば、原作を知っていないといけないし、原作を好きな人が原作の何を好きなのかを知らないといけません。これはエンタメ全般に言えることかもしれませんが、すごく大変だと思います。
4Gamer:そうした大変なことを実感した、具体的なエピソードはありますか。
Y.S.さん:現在担当しているタイトルには、たくさんのキャラクターが実装されています。そうした中、「このキャラクターに、こんな技を使わせたら面白い」と提案しても、「もう、ほかのキャラクターでやっているから」となるケースが多々あるんですよね。
そのため、最初に全部のキャラクターでそれぞれ何をやっているのかをザックリ知っておく必要があります。同じような技でもこのキャラクターだったら別の見せ方ができるのではないか、あるいは特定の機能を使いすぎていないかなどもチェックしなければなりません。
また私自身、対戦ゲームはまったく通過していなくて、「皆は何が楽しいと感じているのか」というところから始めなければならなかったので、すでに存在しているジャンルの知見を広げて、そこに新しい要素を足していくことにすごく苦労しました。

プランナーはゲームを愛している人にピッタリの職種
4Gamer:Y.Sさんは好きなことを仕事にすることについて、どう感じていますか。
Y.S.さん:まず言えるのは、とても楽しくて幸せであり、恵まれていると感じます。先ほど話が出ましたけれど、それまで一方的に享受していたものについて、与える側としての視点で見る機会がすごく増えるので、それを視野が広がったと楽しめるのか、逆につまらなくなったとマイナスに捉えるか、そこは人によって違うかなとは思います。
個人的には、プランナーはゲームという存在そのものを愛してる人にとってピッタリの職種なのではないかと。「これ、あったら面白いだろうな」と提案したら、「作っていいよ」って言われる。それはすごく幸せなことです。
4Gamer:周囲の人達が好きなことを仕事にしていると感じることはありますか。
Y.S.さん:例えば、とあるチームのディレクターを担当している上司は、担当しているタイトルの原作が好きすぎて自宅に帰ってからも仕事の話ばかりしていると聞きました。社内でも「このキャラクターを出したい」「あのキャラクターでこの技が使えたら、絶対ほしくなる」と話しているときが本当に楽しそうなんです。

4Gamer:逆に、好きなことを仕事にしてつまらなくなったという人は実際にいましたか。
Y.S.さん:少なくとも私の周囲では思い浮かばないですね。好きなものを仕事にまでしようという熱量を持っている人は、基本的に楽しむことが好きなのだと捉えています。とくにセガには、「あれも楽しそう」「これも楽しそう」「それ、いいね」という人が多いという印象があります。
その意味では、学生のうちに何かを作って世間に提供し、反応を確認する経験をしておいたほうがいいと思います。与える側に回ってどう感じるか、せっかく就職したあとに強いギャップを覚えてしまって辞めることになったら、もったいないですから。
4Gamer:最後にゲーム業界での仕事を通してチャレンジしてみたいことを教えてください。
Y.S.さん:今まではプロジェクトの中で良いものを作ってきましたが、徐々に自分らしさを出せるようにしていきたいですね。
それこそサウンドを生かした、斬新なゲームを企画してみたり。せっかく音を専門に個人で活動しているので、会社を巻き込んで何かやってみたいという野望を抱き始めたところです。
4Gamer:ありがとうございました。
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