人生にゲームをプラスするメディア

【RETRO51】渋谷会館モナコ35年の歴史と共に振り返るSUDA51とゲームセンターの関わり

今回お届けする後編では、渋谷近辺のレトロな喫茶店に移動して、実際に遊んだゲームや同店の感想と共に、須田剛一氏のゲームセンターの思い出やレトロゲームに関する考えをたっぷり語ってもらいました。

その他 全般
【RETRO51】渋谷会館モナコ35年の歴史と共に振り返るSUDA51とゲームセンターの関わり
  • 【RETRO51】渋谷会館モナコ35年の歴史と共に振り返るSUDA51とゲームセンターの関わり
  • 【RETRO51】渋谷会館モナコ35年の歴史と共に振り返るSUDA51とゲームセンターの関わり
  • 【RETRO51】渋谷会館モナコ35年の歴史と共に振り返るSUDA51とゲームセンターの関わり
  • 【RETRO51】渋谷会館モナコ35年の歴史と共に振り返るSUDA51とゲームセンターの関わり
  • 【RETRO51】渋谷会館モナコ35年の歴史と共に振り返るSUDA51とゲームセンターの関わり
  • 【RETRO51】渋谷会館モナコ35年の歴史と共に振り返るSUDA51とゲームセンターの関わり
  • 【RETRO51】渋谷会館モナコ35年の歴史と共に振り返るSUDA51とゲームセンターの関わり
  • 【RETRO51】渋谷会館モナコ35年の歴史と共に振り返るSUDA51とゲームセンターの関わり
前回の記事では、須田剛一氏と共に8月18日に閉店した渋谷会館モナコに訪れました。

今回お届けする後編では、渋谷近辺のレトロな喫茶店に移動して、実際に遊んだゲームや同店の感想と共に、須田剛一氏のゲームセンターの思い出やレトロゲームに関する考えをたっぷり語ってもらいました。

■SUDA51のゲームセンターの思い出
――とりあえずお疲れ様でした。楽しかったですね。

須田:楽しかったです!

――実はもっと長い間遊びたかったですが、今回はRETRO51の最初の取材ということで、須田さんのゲームセンターの思い出などをお聞きしたいと思います。

須田:ゲームセンターはまさに僕にとってのゲーム体験のルーツですね。今日の渋谷会館モナコも35年前に始まったそうですが、その頃はちょうど小学生でした。いわゆる「ゲームセンター」が登場する以前、ボーリング場やコインランドリーにインベーダーやブロック崩しが置いてありました。近所にあったそういう場所が、僕にとっての最初のゲームセンター体験だったと思います。

――須田さんは長野県がご出身ですよね?

須田:長野県長野市ですね。小学生くらいからゲームセンターが市内に登場してきて、片っ端から行きましたよ。50円や20円のゲームセンターもあって、そういったところをはしごしていました。

当時はまだテーブル筐体ばかりで、窓にはスモークが貼られていて、不良しか来ないところでしたね。そこに小学生の頃、友達と一緒に行っていましたよ。不良のお兄ちゃんに囲まれて、大人の世界に入っていくような感覚がありました。当時はインベーダーゲームも大人の世界だったんですよ。

――インベーダーなどの初期のアーケードゲームのどこに魅力を感じていましたか?

須田:テレビの中のモノを動かすことができるというのが衝撃的でした。ブラウン管の中のモノは今までは見るだけだったんです。それを自分で動かすという体験。それだけで衝撃でしたよ。ファミコン以前にも、エポック社や任天堂がテレビで遊ぶゲーム機は作っていましたが、裕福な家庭の子供しか持っていなかった。

――では、1983年にファミコンが登場した時はどうでしたか?

須田:当時は高校2年生でしたが、同級生の誰かがファミコン本体を買うと言い出しまして、なら「俺がソフトを買う」みたいな感じで分担しました。たぶん、僕が最初に買ったのは『スパルタンX』かな。それで新作が発売されると、仲間の内の誰かが買って遊ぶんですよ。その遊び場が高校の途中から僕の家になって。

だから今、思い出してみると実は自分はファミコン買ってないですね(笑)。誰かのファミコンが実家に置かれていたんですよ。ちょうど家が街の中心にあったので、友達の溜まり場になった。麻雀をやったり、その待ち時間にファミコンをやったり。

――ありますね(笑)。その感じはサークルの部室っぽいですね。

須田:まさにそうですね。部活が早く終わったときはみんなで集まって。当時は楽をしようと思ってバトミントン部に入ったんですが、実際にはかなりハードでしたね。野球部サッカー部より練習キツいくらいでしたが、部活が終わった後にみんなと遊んでいました。

――ファミコンが登場した後もゲームセンターに通いましたか?

須田:やはりあまり行かなくなりましたね。田舎だと高校になるとみんなパチンコを始めるんですよ。僕はギャンブルにはあんまり興味がなかったので、友達がパチンコ行くとき、付き合いで隣にあるゲームセンターで遊ぶ程度でした。当時は『ハイパーオリンピック』、『ジッピーレース』、『忍者じゃじゃ丸くん』とかがありましたね。

なぜか『ハイパーオリンピック』の記憶がとても濃いんだよな。部活の帰りにコンビニに寄って、パンとコーラを買ってゲームセンターに溜まるんです。連打派の奴とモノサシを使っている奴がいたな。仲間内で誰が一番ハイスコア出すか勝負していましたね。

――今日、渋谷会館で見たゲームには、須田さんが知らない最近のものも多かったですよね。須田さんがゲームセンターにあまり足を運ばなくなったのはいつ頃ですか?

須田:仕事が忙しくなった90年代後半くらいからですね。ただ高校を出て、東京の専門学校に入った頃、ゲームセンターでバイトもしていました。学校は水道橋だったのですが、駅前にテクモの直営のゲームセンターがあったのです。テクモの社員の方が新しい基盤を持ってきて、ロケテストなんかもやっていましたね。

――ゲームセンターのアルバイト経験は、ゲーム業界に入るきっかけになりました?

須田:当時はまだゲーム業界のことがよく分からなかったので、自分なんかには入れないと思っていました。ビデオゲームは博士みたいな人が白衣を着て作っているっていうイメージでしたから(笑)。冗談抜きでそう思っていましたよ。

だから当時は、とにかく早く仕事が終わらないかとばかり考えていました。閉店後、終電まで1時間ほど自由にゲームで遊べたので、それが楽しみで楽しみで。当時はナムコの『源平討魔伝』にハマっていましたね。

――ベルトスクロールの傑作ですね!

須田:『源平討魔伝』は本当に格好良かったですね。キャラクターはとても大きくて、当時は光り輝いて見えました。お店で初めて稼働した時も人だかりができましたね。お客さんも「なんだこれは!」と驚きつつも、誰も触らないんですよ(笑)。それで誰かがお金を入れると、ギャラリーがブワッと集まってきて。でもすぐ死ぬんですよ。「次、誰が行くんだ」みたいな感じです(笑)。

――ゲーム業界に入った後もゲームセンターに通い続けましたか?

須田:25歳でヒューマン株式会社に入った後は、仕事も忙しくて通う暇はなかったですね。当時は稼ぎが少ないので、一日のお小遣いが500円でお金もあまりなかった。200円はCDを買うために貯めて、残りはお昼ごはんで食えば終わり。でもヒューマンでは、コンシューマゲームはすべてタダで遊びまくりましたよ。当時は格闘ゲームブームで、若いスタッフの中にはゲームセンター通っていた人もいましたが、僕は「バーチャファイター」や「鉄拳」をコンシューマ版で極めたクチです。

ただ今日、久しぶりに渋谷会館に行って感じたことですが、ゲームセンターは結構パーソナルな場所じゃないかなと思うんです。一人でふらっと来て、一人で遊んでいる人が多かったじゃないですか。なんというか、一人でも入れる居場所のようなところなんですよね。東京や地方に限らず、自分が自分であるための固有の空間。それがゲームセンターの面白いところなんじゃないかな。

――今でもアーケードに通う人たちは、自分が通っているゲームセンターのことを「ホーム」と表現しますからね。他のゲームセンターに行くときは、「アウェイに行く」と言いますね。

須田:分かります。僕は一時期、駒沢大学の近くに住んでいましたが、その近所のゲームセンターに毎日、通っていましたよ。そこは確かに「ホーム」でしたね。そういった個人的な思い出が残る場所としてゲームセンターは今でも興味深いですね。

■SUDA51が考えるレトロゲームとは何か?
――ところで今日はいろんなゲームをプレイしましたが、どこまでが「レトロゲーム」と言って良いのでしょうかしょうか?プレイしたゲームで、80年代のゲームは『VSスーパーマリオブラザーズ』くらいで、残りは大体90年代のゲームですよね。

須田:僕が思うに「レトロ」の概念はどんどん広がっているのだと思います。昔はファミコンくらいまでがレトロゲームだったかもしれないけど、今はもう2000年代以前がレトロでいいんじゃないかな。

――現在の人の感覚だと、多分、ファミコンやスーパーファミコン、そしてPCエンジンくらいまではレトロだと思うんですよ。意見が別れるのは、初代PlayStationあたりくらいですかね?

須田:グラフィックスに関して言えば、ポリゴンが使用されるかどうかが境目かな。でも最近、感じたんですがNINTENDO64のポリゴンは非常に味があっていいんですよね。ああいった味のあるローポリのグラフィックスもそろそろレトロと言いたくなりますね。

――確かに最近では、初代PlayStationくらいまでのローポリゴンが懐かしく見えますよね。

須田:そうなんですよ!あのカクカクした感じがかっこ良く見えるんです。初代の『バーチャファイター』なんかは、今見ると美しい。ああいったローポリのゲームをレトロとすると、やっぱり境目はPlayStation2が発売された2000年前後になりますね。

――最近のインディーゲームでは、敢えて古いグラフィックス技術をアートスタイルとして取り入れることがあります。その中でドット絵やボクセルといった表現は、既に確立されたスタイルになっていますけど、実はそろそろローポリのグラフィックスが流行るのではないかと予想しています。

須田:きっと流行は来ますよ!僕なんかも筋金入りのワイヤーフレーム好きなのですが、そういった観点でローポリの再評価があればうれしいですね。

■渋谷会館モナコでの新たな発見
――今日、プレイした中で印象に残っているゲームはありますか?

須田:『タンクフォース』がルールを含めて、非常に面白かったですね。91年のナムコのゲームですが、ルールを含めて斬新でした。現在のコンシューマゲームでは、ルールや遊び方が既に明文化されていますよね。でも90年代前半くらいまでのゲームは、新しいルールや遊び方のイノベーションが必要だったのだと思います。パッと見た感じだと、『パックマン』みたいな見下ろし型のアクションゲームなんですが、一発自陣を攻撃されるとゲームオーバーになる。

コンシューマゲームでは、新しいルールを作るとユーザーに理解してもらえないと不安に思うのですが、その辺、斬新な発想を平気で取り入れていますよね。でもそれが面白かったです。目からウロコですよね。シンプルでいながらも、戦略性もあります。こういった素晴らしいゲームを今後も発掘していきたいですよね。

――初めてプレイした格闘ゲームの『北斗の拳』はどうでした?

須田:熱かったですね!コマンドなどは分からなかったですが、アニメのキャラクターがまんま動いている感じが素晴らしかった。

――やっぱり格闘ゲームはモーションが面白いですよね。

須田:そうですね。あと『北斗の拳』はリミテッドアニメ特有のカクカクしたモーションが独特ですよね。

――開発はGUILTY GEARシリーズのアークシステムワークスなんですが、『北斗の拳』は極端なコンボ系ゲームです。そのため、戻りモーションのほとんどがキャンセルされ、技と技のつなぎが一瞬でつながって見えるんですよね。稼働当初はピーキーすぎて、対戦格闘ゲームとしては遊びづらい内容でしたが、プレイヤーの研究の結果、現在でもプレイされています。

須田:そういったプレイヤーによって新しい面白さが発見されるのもアーケードゲームらしくて面白いですよね。格闘ゲームも昔は必殺技を覚えたり、コンボを覚えたりするには、直接、ゲームセンターに足を運ぶ必要がありました。

――そういった点では、アーケードはストリートカルチャーらしくてかっこ良いですよね。有名プレイヤーには、使用キャラと共に二つ名が付いたりして。

須田:バーチャファイターが大流行したときは、あの文化は東京ドームみたいな大きなところまで広がっていくように感じましたよ。実際に大きな大会も開かれました。現在でも、eスポーツみたいな形に変化して残っていると思います。

――今後のRETRO51では、アーケードゲームでは90年代の格闘ゲームブーム辺りまでは追っていく感じになりますかね?

須田:そうですね。RETRO51では、ただレトロゲームを遊ぶだけではなく、ゲームセンターという場所は何かということも考えていきたいと思います。ゲームだけではなく、場所やお店にも焦点を当てたい。今回の渋谷会館は残念ながら8月で閉店になりますが、皆さんには今のうち急いで遊びに行って欲しいですね。

――今日の渋谷会館は本当に味がありましたね。稼働数も半端なかったですね。

須田:稼働数が190台と書いてありました。あの狭い入り口からは想像できない数のゲームがありました。本当にワンダーランドでした。一日中、遊んでいたいですよね。


第一回目となる渋谷会館モナコでの取材は以上です。RETRO51では、今後も多種多様なレトロゲームを発掘すべく、実際に様々なスポットに足を運び、SUDA51が語るレトロゲームへの熱い思いから、30年以上の歴史がある文化としてのビデオゲームについて迫っていこうと思います。
《shinimai》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

その他 アクセスランキング

  1. 「ザク」だけでもバリエーション多数!「ガンダム ジークアクス」第1話で活躍したメカ・キャラたちを一挙紹介

    「ザク」だけでもバリエーション多数!「ガンダム ジークアクス」第1話で活躍したメカ・キャラたちを一挙紹介

  2. 「ジークアクス」主人公が“ガンダム”に乗った理由に視聴者騒然!TV版1話から早くも“狂犬”となる

    「ジークアクス」主人公が“ガンダム”に乗った理由に視聴者騒然!TV版1話から早くも“狂犬”となる

  3. 「ガンダム」大阪・関西万博の新機体「ジオング タイプMA」がお披露目!重厚感アップ、背後には4本の腕を背負う

    「ガンダム」大阪・関西万博の新機体「ジオング タイプMA」がお披露目!重厚感アップ、背後には4本の腕を背負う

  4. 溶けちゃったハチワレが可愛い!「ちいかわ」のLINEスタンプ無料配布は4月9日まで

  5. “おれのズボンがアイス食っちまった”―「ワンピース」名場面に新展開!? スモーカーにぶつかった少女の夢が、令和になってついに叶う

  6. ジムやドムらしき機体も!いよいよ放送開始の「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)」TVシリーズ、これまでのPVを改めてチェック

  7. ガンダム新作キャラデザは『ポケモン』『FGO』も担当した竹さん!「機動戦士 Gundam GQuuuuuuX」マチュの告知イラストもお披露目

  8. 伝説の“ドヤ顔ダブルソード”が令和に蘇る!? 岸田メル先生のイラストに、どこか見覚えのある剣が描かれる

  9. 懐かしい…アニメ「ウマ娘 シンデレラグレイ」が“ビデオテープ”になる―VHSケースまで本気の再現度【エイプリルフール】

アクセスランキングをもっと見る