■「貴方は自分の甘さに気づき……」─立場の差が、埋まらぬ感情の軋轢を生む

再びミルウーダと対峙したラムザたち。その言い分を知ってしまった今、彼女たちのことを単なる敵とは考えられなくなりました。ディリータは「妹を返してくれ」と切に訴えます。

しかし、ティータがただの平民の娘と知った今も、ミルウーダの怒りは収まりません。「貴方たちは返してくれるの?」「最初に奪ったのは貴方たち。私たちは、それを返してくれと願っているにすぎない」と問い詰め、奪い続ける貴族に抗い、足掻き続けるしかないと突っぱねます。


ラムザもまた「ボクたちがきみたちを苦しめているのだとしたら、どうすればいい?」と対話を望みますが、「貴方個人が悪いわけじゃない」とその姿勢に一定の理解を示しつつも「でも、現状が変わらない限り、私は貴方を憎む!」と宣言。両者を、深い深い谷間が隔てています。


それでもラムザは対話をやめず、「ラーグ公に掛け合おう!」とまで言いますが、ミルウーダの反論と観察眼は容赦ありません。「貴方は自分の甘さに気づき、辟易し、そんな自分を許して欲しいと訴えているだけ!」と、心境も察した上で斬り捨てます。


必至に対話を望むラムザの気持ちは、決して嘘ではないのでしょう。ミルウーダが耳を傾ければ、可能性はごくわずかでも、何かが変わったかもしれません。しかし、対話の機会を先に奪ったのは、ほかならぬ貴族たちです。ラムザの必至の投げかけも、ミルウーダにとっては時すでに遅し。もはや、苦い結末しか残されていなかったのです。
■「面倒はすべて……」─対話は前進か、甘えと許しか

重大なネタバレがあるため、前提となる流れは伏せますが、チャプター1の終盤で、アルガスはラムザたちと敵対する立場になります。


未だに貴族と平民の格差を受け入れないラムザに向かって、アルガスは「いい加減に気づいたらどうだ。“違う”ってことにな!」「奴と奴の妹はここにいてはいけなかった! 大人しく豆のスープでも食ってりゃよかったんだよ!」と、早々から理不尽極まるアルガス節を炸裂させます。
ただし、アルガスのこの発言を最大限好意的に受け止めるなら、“貴族と関わったりせず、平民同士のコミュニティの中で質素に暮らしていれば、今回のような不幸なに目には遭わなかったんだ”と解釈することもできます。
もちろん、これはこれで身分差を押し付ける不当な発言ですが、人には住み分けが必要で、それぞれの立場で果たさなければならない義務と責任がある、という意味も込められているのかもしれません。


そんなアルガスの視点から見れば、ラムザの主張はただの甘えにしか見えないのでしょう。「兄貴たちの命令に背き、家名を汚す。いいご身分だよな、好き勝手やりたい放題だ!」「面倒はすべて兄貴たちに押し付け、自由満喫かよ!」と、立場に甘んじた(もしくは、その甘えすら自覚していない)ラムザに、アルガスは怒りを隠しません。
アルガスの発言そのものは、肯定も許容もしにくく、チャプター1の敵役としての役目を的確に果たしています。しかし、そんな彼の主張も、身分の格差に苦しめられた末の結論なのかと思うと、やりきれない想いに駆られてしまいます。

このチャプター1終盤の展開によって、ラムザとディリータの道は大きく違えていきます。家畜に神はいないのか。恨むべきは、自分か神なのか。ラムザは、ただ許されたいだけなのか。
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