任天堂がおくる「ニンテンドースイッチ(以下、スイッチ)」は、2017年3月に発売されて以来絶大な支持を集め、8年を超えた今も最前線で活躍を続けています。
その人気ぶりは疑うまでもありません。しかし“任天堂の最新機種”としての立ち位置は、2025年6月5日に発売される「ニンテンドースイッチ2(以下、スイッチ2)」に譲る形となります。
8年以上にわたって任天堂のゲーム市場を支え続けたスイッチは、これまでどんな功績を残し、いかなる課題があったのか。現世代を支えた名機の歩みを、この“最後の1ヶ月”を機に振り返ってみましょう。
■発表当時は賛否両論だったスイッチ

ゲーム史上でも指折りのヒットを記録したスイッチですが、その幕開けは決して順風満帆ではなく、いくつもの懸念や不安が漂っていました。
まずは、前世代機である「Wii U」の不調という問題が立ちはだかります。任天堂の転換期となったヒット機「Wii」の後釜として登場したWii Uは、その勢いを受け継ぐゲーム機として期待されていましたが、累計販売台数は1,356万台と低迷。人気の出たソフトはあったものの、Wii U自体は盛り上がりを欠く結果になりました。
この不調を覆す期待と重圧がスイッチにかかっていたものの、販売開始前に詳細が発表された際、ユーザーの反応は大きく分かれる形となります。特に意見が分かれた点は、据置機ながら携帯モードを併せ持ち、場所を選ばずに遊べるという機能についてでした。
当時、携帯してゲームを遊ぶ環境はスマートフォンが全盛で、「ニンテンドー3DS」や「PlayStation PS Vita」はその勢いに押され、直系の後継機がないまま終焉を迎えています。
そのため「携帯で遊ぶゲーム専用機の需要はもうない」「携帯ゲームはスマホで十分」といった意見が多く、携帯性に力を割いたスイッチを疑問視する声が後を絶たなかったのです。
■独占タイトルの強みで確かな支持を獲得
こうした様子見の声もある中、2017年3月3日に発売されたニンテンドースイッチは、ローンチタイトルのひとつ『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の人気が爆発し、まずは順調なスタートダッシュを切りました。
さらに、『マリオカート8 デラックス』が4月28日に、『スプラトゥーン2』も7月21日に発売されるなど、任天堂の主力タイトルが相次いで登場。いずれの作品もロングランヒットとなり、いずれも累計で1,000万本を優に超えるヒット作となり、スイッチを大いに盛り上げます。
特に『マリオカート8 デラックス』は、Wii U版のパワーアップバージョンという立ち位置だったものの、Wii Uではプレイしなかった潜在的なユーザーを大量に取り込み、現時点で6,820万本という驚異的な販売実績を積み上げています
その後も、『あつまれ どうぶつの森』、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』、『スーパー マリオパーティ』など、数千万本クラスのヒット作が相次ぎ、スイッチの人気を不動のものとしました。
■携帯性が潜在的なユーザー層を掘り起こす

発売前から懸念されていた携帯性も、実際には有用な機能として好評を博しました。一般的なスマホは多機能ゆえにゲーム性能は特化しておらず、カジュアルなゲームは十分楽しめるものの、ハイスペックなゲームとなると役者不足の面が否めません。
また、スマホによるゲームプレイはタッチ操作が主体となるため、操作感はどうしても乏しくなり、プレイの一体感が得にくかったり、繊細な操作がやりにくい場面もありました。スマホ向けのコントローラーもありますが、一緒に持ち歩く場合、スマホの利点である携帯性が低下するデメリットが発生します。
その点スイッチは、本体自体のサイズはスマホより大きいものの、Jpy-Con部分まで含めてデザインされており、大きめのバッグなら厚くなくとも問題なく収まります。加えて、サイズのおかげで画面が広く、スマホよりも迫力を感じやすいのも利点のひとつでした。
「携帯してゲームを遊びたい」という欲求がスマホで満たされていたのも事実ですが、「スマホ以上のゲーム体験を気軽に味わいたい」という、当時は表面化されていなかった要望があり、スイッチの存在はそれに応える答える形となりました。その先見性の高さは、見事というほかありません。