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どんなルックスかはプレイヤー次第!『弟切草』奈美は想像力をくすぐるヒロイン

さまざまなゲームに登場するヒロインたちの魅力をあらためて掘り下げていく連載企画「僕たちのゲームヒロイン録」。第9回は、1992年にスーパーファミコンで発売された『弟切草』の奈美を紹介します。

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Wii Uダウンロードソフト『弟切草』紹介ページより
さまざまなゲームに登場するヒロインたちの魅力をあらためて掘り下げていく連載企画「僕たちのゲームヒロイン録」。第9回は、1992年にスーパーファミコンで発売された『弟切草』の奈美を紹介します。

チュンソフトが打ち立てたジャンル・サウンドノベルの第1作である『弟切草』に登場する奈美は、主人公である「ぼく」の恋人です。「ぼく」は名前が設定されておらず、プレイヤーがゲームスタート時に入力します。(初代PlayStationへの移植版となる『弟切草 蘇生篇』以降は、公平という初期設定名が追加されました)

ある夏の日の夕暮れ、山道を車で走っていた主人公と奈美は不幸なトラブルから事故を起こしてしまいます。さらに2人は激しい雷雨にさらされてしまい、咲き誇る一面の弟切草に誘導されるかのように古びた洋館へと駆け込む……というところから始まる、ホラー色の強いストーリーが展開します。

奈美の魅力のひとつは、ゲームスタート時に主人公の呼び方がランダムで決定されることです。敬称なしや「くん」付けならオーソドックスな同年代の恋人という印象ですが、「さん」付けだと、おとなしそうなイメージが強くなります。

~センパイ」なら年下、それも高校や大学などでの後輩となりますし、中には「~先生」などという呼び方も。「出会いのきっかけは、家庭教師とその教え子だったりしたのかな?」などと妄想が膨らみます。

Wii Uダウンロードソフト『弟切草』紹介ページより

もうひとつの魅力は、奈美や主人公に関するビジュアルが一切設定・描写されなかったことです。前述した主人公への呼び方と併せて、今回の奈美はロングヘア―なのか、ショートカットなのか、それともポニーテールだったりするのか…と想像を膨らませる楽しみ方は、サウンドノベルというジャンルの通り「(登場人物に関する)挿し絵が一切ない小説」を読む楽しさに近しいものがありました。

そんな奈美と主人公を洋館で待ち受けるのが、本作を遊んだ人なら忘れられないミイラとの遭遇です。2人は暗く静まり返る洋館で家人の姿を求め、ある部屋で小さなテーブルに置かれた日記のようなものを見つけます。しかしよく見るとそれはテーブルではなく、車イスに座ったミイラの膝だった……という衝撃のシーンは、主人公たちだけなくプレイヤーも恐怖のどん底に叩き落としました。

物語を進めていくと、そのミイラや洋館が奈美の過去と密接に関わっていることが分かり、多くのルートにおいてその事実が彼女の心を苛んでいきます。そういう意味では、本作の物語そのものが「奈美という恋人を、いかにテキストだけで深堀りするか」に集約されているともいえそうです。

恐怖や哀しみで彩られた本筋を楽しむのはもちろん、奈美をどれだけ好きになれるか、もしくは、どのように想像で補って好きになるか……そんなところも、本作の魅力にズブズブとハマってしまうポイントのひとつなのかもしれません。

さまざまな結末を見て「ピンクのしおり(データロード時のしおりがピンク色になること)」になると、お色気要素の強い選択肢や展開、本来であれば主人公たちに恐怖を振りまくはずのミイラや怪魚に奈美が軽快なツッコミを入れるNG集のような展開などが追加され、さまざまな一面を新たに見せてくれる奈美のことがますます好きになれました。


「小説を読むように楽しむゲーム」という試み・コンセプトは本作が初というわけではなく、例えばシステムサコムが1988年にPC-8801で発売したアドベンチャーゲーム『DOME』は「パソコンで読む小説」をコンセプトにノベルウェアというジャンルでリリースされましたし、PCにはそれ以外にも選択肢で分岐するテキスト主体のゲームが見られました。

しかし、高価だったPCとは縁がなかった小学生や中学生にも強く支持されていたスーパーファミコンというプラットフォームでサウンドノベルというジャンルを打ち立てた『弟切草』の功績はとても大きく、ノベルゲームはこの後、大きく隆盛していくことになります。

本作と1994年の『かまいたちの夜』の発売を機に他社からも多くのサウンドノベルがリリースされましたが、初期のフォロワーの多くはホラーやサスペンステイストのものが多かったことからも、その影響力の大きさがうかがえます。


《蚩尤》

汎用性あるザク系ライター(が目標) 蚩尤

1979年生まれのファミコン直撃世代。スマホゲームもインディーズも大型タイトルも遊びますが、自分と組ませてしまって申し訳ないという気持ちやエイミングのドヘタさなどからチーム制のPvPやFPS、バトロワが不得手です。寄る年波…! ゲームの紹介記事に企画記事・ビジネス寄りの記事のほか、アニメなど他業種の記事もやれそうだと判断した案件はなんでも請けています。任天堂『ガールズモード』シリーズの新作待機勢。

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