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密着・安田文彦―『仁王2』完成までの軌跡と『Bloodborne』山際眞晃対談

クリエイターの悩み、それぞれが持つ仕事の関係性、『Bloodborne』山際氏との対談──。等身大の姿を映し出そうとするインタビュー現場の様子を、ライターの視点でお届けします。

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「緊張感」「爽快感」「没入感」を柱に



2020年2月4日……コーエーテクモゲームス本社で吉松の個別インタビューを行うべく、日吉へと向かった。「飲み屋」でのやりとりから年を越えて、取材チームとしても久々の顔合わせとなる。

インタビュー撮影のため、本社内の音響ルームへと通される。過去にいくつもの作品が、この部屋で収録した音を使って作り上げられたに違いない。カットシーンの一瞬の音だけを取って見ても、何重にも細かいデータが組み合わさって作られていることを確認できた。

吉松「コーエーテクモとなる前から、『戦国無双』というコーエー側のタイトルを担当していました。『仁王』が始まった頃は『戦国無双』が一息ついたタイミングで、当時の上司から何か他のタイトルはやりたいかと声を掛けられて、Team NINJAがやるのは面白そうだと思って手を挙げたのがきっかけです」

吉松の質問に答える姿を一言にするなら「論理的」である。内容をしっかりとまとめてから言葉にしている印象が強く、話し方に淀みがないのだ。考え込むような瞬間も目立たず、淡々と、そして理路整然と回答が出されていく。


吉松「『仁王2』については、まず新しい要素についてサウンドから出来ることは何なのかを考えました。"常闇"や"主人公の妖怪化"といったものがそれにあたります。例えば"常闇"に関連する環境音演出では、前作はダークな世界観を際立たせるため、自然界に存在する鳥などの生物の音は敢えて表現していませんでした。

それに対し、今作では動植物のサウンドもたくさん入れているのですが、"常闇"の中ではそのような音を排除し、"この世とあの世"が入れ替わるような演出を狙うなど、そういった点が違いとして挙げられると思います。生きた世界から”常闇”に近づくことで、段々と自分の足音だけが聞こえていくといったような、ホラー作品などを参考にした部分もあります」


吉松「はじめの頃に方針を決めました。今作では”緊張感・爽快感・没入感”の三つのキーワードを柱に、これらをサウンドで表現していこうとしました。気を付けていたこととしては、”ゲームとしての音の記号化”です。ただリアルなだけの音ではなく、この音が聞こえたからこう立ち回らなければ、と状況をよりプレイヤーが掴みやすくなるような音作りは前作よりも意識していました」

飲みの席で語られていた”最後の砦”としての取り組みは具体的にどのようなものなのか。質問者は実際の作業について切り込んでいく。

吉松「アクションゲームであれば、まずキャラクターデザインが決まり、作られたアクションに対してどのようなエフェクトが付くのかが検討されます。そうしたビジュアルが揃ってようやく音を乗せられる……といった流れですね。このエフェクトがこのタイミングで現れるから、こんな音が付けられるね、といった形です。

ただ、プロジェクト全体で見た時、最後に参加するだけでは何もデザインする余地がありませんので、『仁王2』についてはタイトルが走り出した頃から様々な情報を共有してもらって、ならばこんな音作りができそうだね、といったことをやってきました」


吉松「『仁王2』で大変だったことですか? これは苦労話になってしまうかもしれませんが……。今回はプレイヤーが主人公を作成できるので、ボイスタイプも複数選べるようになりました。主人公は色々なセリフを話す訳ではないのですが、ちょっとした掛け声や息遣いを収録する時、全てのボイスタイプで同じような演技を声優さんにお願いしたんです。

声優さん達はお願いした通り、しっかりと同じ演技をして下さったんですが、ゲームに落とし込む上では録音して終わりではありません。収録した音声を、全てのボイスタイプで同じ様に発声させる為にひとつひとつ切り出して実装していくという作業が特に大変でしたね。

竹中直人さん(藤吉郎役)などテレビや舞台をメインに活躍する役者の方々については、当初はいわゆる”声優的”なアドバイスが必要だと考えていたのですが、終わってみれば杞憂でした。アクションゲームですので、息遣いといった特徴的な演技が多く必要になりますが、それらをひとつひとつ素材として切り出したような収録をしなければなりません。決まった長さ、決まった強さ、といったものがシビアになっています。しかし役者の方々はそれらを何事もなかったかのようにクリアされていき、私の方が気にする部分はなかったなと感じています」


《Trasque》
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