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「他人が好きなものをディスらない」でオタク文化はより豊かに。宇垣美里×荻上チキ【インタビュー】

アニメ好きが高じてTV番組でコスプレを披露し話題を集めたアナウンサーの宇垣美里さん、アメコミをはじめとするオタク文化に詳しい荻上チキさんにインタビュー。サブカルチャーに対する理解と今後の展望について語っていただきました。

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■大人になってから出会えた「解釈する楽しみ」や「理解できる喜び」


――「その発想はなかった」という気付きは、人としての成熟度にも絡んできそうですが、子どもの頃と比べて、コンテンツの見方に変化はありますか?

宇垣:幼少期は、セーラームーンが敵を倒すのをただ「カッコいい!」と思っていました。けれど今は、考察をするのがすごく楽しくて。一元的だった感想が、描写の意図や監督の思想を考えることで立体的になるのは大人な楽しみ方です。

そこから「だからこんなにうさぎちゃんが好きなんだな」と改めて気付くことがあるし、自分自身の考え方、生き方にフィードバックされる部分もあります。


荻上:何よりクリエイターたちが世界のとらえ方をどんどん変えていきますから、見る側も一緒に変わり続ける必要は出てきます。

近年のディズニーの実写化作品を見ると、原作のアニメ映画からアレンジが加えられていますよね。

実写版の『美女と野獣』では、ベルは野獣の姿のまま王子とキスをしました。ルッキズムではない「この人が好き」が強調されることで、より現代的な価値観に変更されているわけです。

僕はディズニープリンセスやMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)が好きですけど、作品に登場するキャラクターたちは、僕たちが日々なんとなく社会で感じ取っている悪しき慣習と戦ってくれている気がするんです。
それを解釈する楽しみ、理解できる喜びは、大人になって身に付いた機能だと感じます。

荻上さんのアメコミコレクション

宇垣:ディズニープリンセスは私も大好きです。実写映画の『アラジン』のジャスミンも素晴らしかったですね。

荻上:そうですね。ただ、原作のある作品にしばしば起こるのが、原作のファンであるがゆえに表現に違和感を抱いてしまう現象です。
シビアな原作至上主義ではなくても、この感覚におぼえがある方は多いでしょう。

その時代の解釈に向き合うことは、その時代の論争的なテーマに踏み込んでいくことに通じます。その解釈の変化そのものが、常にコンフリクト(衝突)を生む。
もちろん僕はそれらを踏まえた上で、解釈の変化に寛容になってほしいと僕は思います。

■批判するのではなく、楽しみをどう共有するか


――最後に、今おふたりが趣味のなかで最も楽しみにしていることを教えてください。そして、それをどのように楽しんでいこうと思っていますか?

宇垣:これからも様々な作品のおかげで私の世界が広がっていくんだろうな、と思うと楽しみで仕方ないです。
日本最大級のアメコミの祭典である「東京コミコン2019」の広報部長を務めさせていくことになったのですが、そこでも今まで触れてこなかった作品を見る良い機会を得られました。新しい扉を開けるのは私にとって福音ですし、お気に入りのキャラクターが増えていくのは喜びです。

そうやって好きな作品やキャラが増えていくことで、「この作品見てるよ」とコミュニケーションツールにもなる。そうやっていろんな人と「好き」を共有していきたいですね。


荻上:僕が大好きなMCUについて、何が公開されるとか誰が演じるとか、グループLINEでよくメッセージが飛び交うんです。
単純に作品を視聴するだけではなく、作品を通じてのコミュニケーションがすごく楽しい。

ただ、そこで気をつけなければならないのが「人を呪わば穴二つ」ということ。
友だちが好きなものをディスったり、「あれ好きだという人はぬるいよね」と厳しい評価をしてしまうと、回り回って自分に帰ってくる。自身に生きづらい評価軸を与えてしまうんですね。
とくに今はSNSなどのパブリックな場所が増えているのでなおさらです。

作品やファンを批判・揶揄することは不毛なので、そうではなくその楽しみをどう共有していくかに思考をめぐらしていく。そうすることで、オタク文化がより豊かなものになっていくんじゃないかと思います。


◆宇垣美里さんプロフィール◆
2014年4月にTBSテレビに入社。
2014年9月29日から、『BLITZ POWER PUSH』(TBSラジオ)の担当を皮切りに、テレビ・ラジオの各番組への出演を始める。
「週刊プレイボーイ」でのコラム「人生はロックだ!!」の連載の縁から同誌のグラビアモデルも数回務め、「週刊ヤングジャンプ」2018年31号では表紙および巻頭グラビアを担当。話題をさらった。2018年より出演していたTBS「サンデージャポン」では“闇キャラ”や“コスプレ”が話題となり、同年に女性アナウンサー人気ランキングでは9位に入る。2019年4月16日、自身の誕生日に「週刊プレイボーイ」のコラムをまとめ、撮り下ろしの写真を満載した1stフォトエッセイ「風をたべる」を発売した。2019年4月よりフリーとなり、オスカープロモーション所属となる。

◆荻上チキさんプロフィール◆
1981年、兵庫県生まれ。評論家。ニュースサイト「シノドス」元編集長。著書に『セックスメディア30年史』『ウェブ炎上』『彼女たちの売春(ワリキリ)』『未来をつくる権利』『災害支援手帖』『いじめを生む教室』『日本の大問題』、共著に『社会運動の戸惑い』『夜の経済学』『新・犯罪論』『ブラック校則』『みらいめがね それでは息がつまるので』など多数。ラジオ番組「荻上チキ・Session-22」(TBSラジオ)パーソナリティ。
《奥村ひとみ》
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