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挑戦する雑誌「月刊ヒーローズ」 新しい才能と新しい仕組みとは

2011年11月、ヒーローをコンセプトに掲げる新雑誌「月刊ヒーローズ」が誕生した。「月刊ヒーローズ」は、長年のヒーロー・ウルトラマンを新たなかたちで物語にした『ULTRAMAN』の連載、200円という価格設定、AKB48とコラボレーションなどと話題の多い雑誌だ。

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「月刊ヒーローズ」の持つもうひとつの大きな特徴は、新しいビジネスの仕組みだ。新しい仕組みは、目的がなく生まれるものではない。「ヒーローズ」が目指すのは、当初より二次展開を視野に入れたマンガ制作体制である。

現在、マンガは、ドラマ、映画、アニメ、ゲーム、音楽、CDドラマといった様々な分野に広がっていく。逆に言えば、日本の強みとされるエンタテインメントコンテンツのメディアミックスは、その中核にマンガが据えられているケースが多い。少し大げさに言えば、エンタテインメントの王様はマンガだと。そうであるならば、マンガ連載をスタートする際から作品を様々な分野に広げる視野を持つことは、作品の力を最大限に活かした効率的な展開を考えるという点で合理的だ。

「ヒーローズ」を出版する会社について考えてみたい。出版社の名前は、株式会社ヒーローズである。つまり、出版社と雑誌がダイレクトに結びついている。株式会社ヒーローズはプロジェクトありきの出版社で、本誌とマンガ作品を第一に考える体制が組まれている。

プロジェクトという点では、「ヒーローズ」本誌の連載の作品もひとつひとつがさらに個別のプロジェクトと言えるかもしれない。同誌の特徴のひとつは、原作や脚本と作画を別々に担当する「スタジオ方式」を積極的に採用していることだ。さらに原案や構成、監修などが立てられているケースもある。異なる才能を組み合わせることで、これまでにない作品を生み出す方向性が示されている。

これについて尋ねると「昔に比べてマンガは相当な取材を要求されるし、背景描写も密になっている。他にも漫画家一人の手に余る部分が増えているのは事実。ストーリーを別の作家に任せ、絵に集中することでよりよい作品を生み出せる作家もいる。」と説明する。「ヒーローズに限らず、こうした傾向は今後も広がるだろう。」と予測する。

つまり、原作、作画などを分担することで、より優れた作品を生み出す可能性があるわけだ。作画でより傑出したクリエイター、物語を生み出すことに大きな力を持つ作家、「ヒーローズ」やその編集者は、才能と才能をうまく結びつけることで、これまでであれば世の中に出なかった作品を送り出すことを可能にする。
新しいビジネスの仕組みでは、メディアでも話題を呼んだ雑誌の流通・販売も触れたほうが良いだろう。雑誌「月刊ヒーローズ」の流通は、現在、全国約1万3700店舗を持つ国内最大手のコンビニエンスストアチェーン セブン-イレブンを中心に行われている。

この流通について田中聡編集長は、その店舗数の大きな効果を認める。しかし、一方で意外な理由も明かす。それは200円という価格にある。田中編集長によれば、200円という価格は、書店が大きな棚をとって並べるにはやや申し訳ないものなのでないかという。一方で、コンビニエンスストアであれば、他の買い物のついでに「ヒーローズ」を手に取る、「ヒーローズ」を買うついでに他の商品も手に取る循環が期待できるというわけだ。相互で支えあうかたちが成り立つ。

今後刊行を予定する単行本では、一般の書店の協力も得たいとする。単行本発売の際には、作品はより広い場所で手に入れることが可能になるだろう。

■ヒーローズ漫画大賞 何かが光っている才能が求められている。
《数土直志@アニメアニメ》
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