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【SIGGRAPH ASIA 2009】ゲーム開発の現場で今何が起きているのか―大手メーカーの技術担当者が議論

横浜パシフィコで開催されたシーグラフアジア2009で17日、社団法人コンピュータエンタ-テインメント協会(CESA)はスペシャルセッション「日本のビデオゲーム開発の現場で今何が起きているか?」を実施しました。

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パシフィコ横浜で開催されたシーグラフアジア2009で17日、社団法人コンピュータエンタ-テインメント協会(CESA)はスペシャルセッション「日本のビデオゲーム開発の現場で今何が起きているか?」を実施しました。ステージではCESA副会長で技術委員長の松原健二氏(コーエーテクモホールディングス社長)ら、CEDECのアドバイザリーメンバーが登壇し、日本のゲーム産業におけるビジュアルアーツの最新動向を紹介。主な聴衆であるCG研究者に産学連携を呼びかけていました。

登壇したCEDECアドバイザリーボードのメンバー(左から吉岡直人氏、松原健二氏、植原一充氏、斉藤直宏氏、今給黎隆氏、松山洋氏)


シーグラフアジアの本家である米シーグラフは「CGとインタラクティブ技術の祭典」とも呼ばれており、特に近年では後者の比重が高まっています。中でも日本はゲーム大国ということもあり、「シーグラフアジア2009」でもゲーム関連のセッションが目立ちました。ただし、欧米のゲームシーンのように産業とアカデミズムの風通しが、必ずしも良くないのも事実です。今回のセッションはそうした状況を払拭するかのように、まずはゲーム業界側から学術関係者に向けたプレゼンテーションとも言うべき内容でした。

トップバッターとなったのは、CESA副会長でCEDECの旗振り役でもある松原健二氏。松原氏は最新の市場データを示しつつ、PS3とXbox360をあわせた販売台数では、日本と欧米の差が9倍に開いている現状を紹介。ハイエンドゲーム機向けの市場では、完全に欧米中心であることを示しました。また日本と欧米の違いとして、欧米では技術性の高いゲームが好まれることと、リアル性の高いグラフィックや人間らしく振る舞う敵キャラクターなどが好まれるとことを解説しました。そして業界全体での技術レベル向上の向上として、CEDECについて紹介しました。

CESA技術委員長の松原健二氏欧米市場の伸びは一目瞭然ハイエンド機は欧米中心だ


続いて登壇したのはバンダイナムコゲームスの斉藤直宏氏です。斉藤氏は国産ゲームのビジュアル表現の流れについて、歴史と背景、技術潮流、現在のトレンドについて語りました。

歴史的に見ると日本の3Dゲームは、まず業務用が牽引し、次いで家庭用に受け継がれていった経緯を持ちます。旧セガの「バーチャファイター」と旧ナムコの「リッジレーサー」シリーズなどは、その好例です。その後PSが登場し、RPGなど家庭用ならではのゲームジャンルでも3Dゲームが主流となり、「FF VII」に見られるようなレンダリングマップ上で歩き回る3Dキャラクターなどの表現が流行しました。

バンダイナムコゲームス斉藤直宏氏世界で主流のフォトリアリスティック表現日本ならではのアーティスティック表現


技術潮流として説明されたのが「ビジュアルアーツのテクニック」「データ圧縮」「事前計算」です。ビジュアルアーツで重要なのは、あくまで「格好いい絵を作ること」で、しかも少ないデータでそれ以上の表現をすることが必要です。またゲーム機という限られたメモリ上では、データの最適化と圧縮が必須となります。またリアルタイムにすべて表現するわけにもいかず、モーションデータやビジュアルエフェクトなど、事前計算されたデータを逐次読み出して使う、という処理も必要になります。

その上で現在のトレンドは「フォトリアリステック」「アーティスティック」「他メディアで価値の確定された表現」だとしました。「フォトリアリスティック」は欧米のゲームシーンで主流で、国産では「メタルギアソリッド4」などが上げられます。「アーティスティック」の例は「ICO」「大神」などで、ゲーム機の性能向上と共に可能になり、日本ならではの表現として、クリエイターから高い注目を集めています。最後の「他メディアで価値の確定された表現」は、アニメ原作などの例があげられます。

サイバーコネクトツー松山洋氏アニメ原作で世界で大ヒット文化庁メディア芸術祭も受賞


この「アニメ原作」の例を実験的なゲーム映像と共に紹介したのが、「ドットハック」「NARUTO-ナルト-」シリーズなどを手がける、サイバーコネクトツーの松山洋社長です。松山氏はPS3版「ナルティメットストーム」を開発するにあたり、社内で実験用に開発したゲーム映像「NARUTO-ナルト-CINEMA 4D」のデモを披露しながら、インタラクティブならではのゲームメディアの特徴を解説しました。

松山氏が紹介したのは、「ナルティメットストーム」の守鶴戦を題材にしたインタラクティブムービーです。リアルタイム3Dでバトルアニメーションを再生しつつ、ボタン操作でカメラアングルを切り替えたり、ザッピング演出などで立体的な映像体験が楽しめます。また2Dアニメの誇張した演出を、3Dでどのように表現しているかが一目でわかる「種明かしカメラ」が搭載されているのもポイントです。

続いて登壇したのはKONAMIの植原一充氏で、日本のゲーム開発シーンとシーグラフとの関係について紹介しました。

最初に植原氏は、日本のゲーム業界の技術開発がアーケードとコンソール中心で進み、PCベースでの技術開発が傍流となっていた経緯について紹介しました。そのため1900年代初等までは、2Dのスプライト表現が主流だったこともあり、ほとんどのゲーム開発者にとってシーグラフは無縁の存在でした。

これが1990年代後半になると、まずプリレンダームービーの品質向上のために、シーグラフへの参加が目立つようになりました。続いて2000年代中期になると、積極的にシーグラフの論文をゲーム内表現に取り入れる例が増えていきます。そしてPS3・Xbox360においてはシェーダの活用が前提となり、シーグラフの論文などを読みこなさなければ、競争力のある画像表現が不可能な時代となりました。

KONAMI植原一充氏バンダイナムコゲームス今給黎隆氏最新タイトルは論文を積極的に活用


この具体例について解説したのが、バンダイナムコゲームスの今給黎隆氏です。例として上げられたのは「リッジレーサー6」「塊魂」「のびのびBOY」「ワンダと巨像」「ソニック ワールドアドベンチャー」「メタルギアソリッド4」「PixelJunk Shooter」です。例として「リッジレーサー6」では双方向反射率分布関数(BRDF)やダイナミック環境マッピングといった、シーグラフで発表された論文を元にした技術が、ゲームに適した形に応用して実装されています。他のタイトルについても同様です。

最後に登壇したスクウェア・エニックスの吉岡直人氏は、「会社の戦略とは関係ないが」と前置きした上で、10年~20年先の未来という視点で、ゲームのビジュアル表現と最先端研究の関係についてビジョンを提示しました。吉岡氏自身もSERC(SquareEnixResearchCenter)のチーフテクノロジストとして、次々世代の技術リサーチを担当しています。

スク・エニの吉岡直人氏ゲーム機構造の複雑化の歴史近未来に求められるゲーム技術


吉岡氏はまず、ゲーム機のハードウェアから歴史をひもとき、ゲーム機を構成するアーキテクチャがどんどん複雑になっている様子を示しました。そして玩具から生まれたゲーム機が、今やコンピュータサイエンスの実装が求められるようになっている現状を示し、今後もこの流れは加速していくと指摘しました。

続いて吉岡氏は近未来のゲームテクノロジーをグラフィックス、アニメーション、パイプライン、パフォーマンス、マンマシンインターフェイス、オーディオの6カテゴリに分類しました。その上でゲームは大衆娯楽で、限られたリソースの中でキチンと動作することが求められるため「cutting-edge(最先端)」ではなく「state-of-the-art(最新式)」のジャンルだと指摘。Believability(もっともらしさ、説得力)、Productivity(生産性)、Scalability(柔軟性、拡張性)の3点がポイントだとしました。

なお、セッションの最後にCEDEC2010の発表もありました。場所は昨年そしてシーグラフアジアと同じ横浜パシフィコで、日程は8月31日から9月2日まで。また講師の公募期間は来年3月31日までとのことです。。
《小野憲史》
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