『Night Game』はアーティスティックな見た目を持つWiiウェア。
ボールを転がしてゴールへ導くというシンプルなルールで、中国の影絵から着想を得たというビジュアルが特徴的です。
『Squibs Arcade』はLSIゲームがテーマとなったWiiウェア。
懐かしのLSIゲームの実機を思わせるビジュアルが用意されており、最新ゲームをパロディとした中身と併せてユニークなものとなっています。
『Equilibrio』はWiiリモコンで地形を傾け、ボールをゴールへと転がすWiiウェア。紙や鉄、石といった様々なボールの特性が攻略に重要で、バランスWiiボードにも対応しています。
『BIT.TRIP BEAT』はブロック崩しをフィーチャーしたWiiウェア。80年代というビデオゲームの黎明期を最新機種の上で再現した野心的なビジュアルと音楽が強い印象を与えます。
ダウンロード配信のWiiウェアは、流通コストを省けるなどの理由から、フルプライスのパッケージソフトよりも参入が容易。少人数のプロジェクトに適しており、今回紹介したような実験的な作品も多く生まれています。
特に興味深いのは、『Equilibrio』を開発したDK GamesのChristophe Kohler氏の発言でしょう。Kohler氏はインタビューに対し「2年の間、DSやWii用のゲームコンセプトをパブリッシャーに売り込んだが、誰も応えてはくれなかった。今はWiiウェアを通じて自分で自分に投資して発売することができる。人生が非常に楽になった」と発言しています。
「パブリッシャー」とは、かなりかいつまんで言えば、ゲームに投資し販売を行う会社のこと。対して「デベロッパー」とはゲームを開発する会社のことです。
これまで多くのデベロッパーはパブリッシャーに企画を通すことが必要とされてきましたが、世界的な不況から出資者としてのパブリッシャーの財布の紐は堅くなっているのが現状。つまり、前例のない企画や野心的な企画は通りにくくなっているのです。
しかし、パッケージソフトよりも参入が容易なWiiウェアなどのダウンロードソフトであれば、Kohler氏の『Equilibrio』のように、デベロッパー自身のセンスでゲームを出せる可能性が高いというわけです(なによりKohler氏の発言は現場からの証言という意味で貴重です)。
これがどういった効果を持つかは、既に読者諸兄がごらんの通り。これらのWiiウェアの画面写真を見ているだけでも楽しくなってくるのではないでしょうか。とはいえ、フルプライスのパッケージソフトよりも小規模なものにならざるを得ないのも事実で、そこではアイデアが重要になってきます。解像度に頼らない印象的なビジュアルや、すぐに理解できるルールやプレイ感といったものが求められるのです。
こうしたゲーム作りを得意としているのが日本ゲーム界です。ファミコンやスーパーファミコンといった制限の多い環境で、様々な名作を生み出してきたという歴史があります。8ビット〜16ビット時代の名作ゲームは国境と言語の壁を越えてリスペクトされ続けています。様々な海外ゲームサイトが企画する名作ゲームの中に、多くの日本ゲームがラインナップされていることからも、日本名作ゲームの力が伺えます。
「SDカードからWiiウェアを起動可能とする」というアップデートにより、Wiiウェアの売上が2倍以上に伸びたという例からも分かるように、ダウンロードゲームには追い風が吹いています。『洞窟物語』が海外でWiiウェア化され、フリーゲーム『Knytt Stories』で知られるNicklas Nygren氏が『Night Game』を手がけるように、フリーゲームの才能が開花するチャンスも広がっています。
「大は小を兼ねる」という言葉がありますが、今後焦点となるのはダウンロードゲームからフルプライスへの移植の成否でしょう。ダウンロードゲームからフルプライスへという道が拓けるのであれば、パブリッシャーにとっても充分有望な市場となるのではないでしょうか。ダウンロードゲームはゲーム界を活性化するものとなるのか。それとも市場はフルプライスを選び続けるのか。ユニークな作品群のこれからに要注目です。
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