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「桃鉄」を、この先50年作るために…『桃鉄2』開発者が語る「変えてはいけないもの」【TGS2025】

『桃鉄2』が東日本編と西日本編の2本立てになった理由、そして今後50年「桃鉄」を作るための取り組みについてうかがいました。

ゲーム Nintendo Switch 2
「桃鉄」を、この先50年作るために…『桃鉄2』開発者が語る「変えてはいけないもの」【TGS2025】
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2025年11月13日(木)にニンテンドースイッチ2/ニンテンドースイッチ向けにリリースされるシリーズ最新作『桃太郎電鉄2 ~あなたの町も きっとある~』。収録される物件駅の数が膨大になったことから、「東日本編」(559駅)と「西日本編」(431駅)の2本をまとめてリリースされる本作が、2025年9月25日(木)から9月28日(日)まで開催された「東京ゲームショウ2025」に出展。27日(土)には人気芸人をゲストに招いたスペシャルステージを実施しました。

そこで本稿では、ステージに登壇した『桃太郎電鉄2』副監督の桝田省治氏、同じく『桃太郎電鉄2』プロデューサーの岡村憲明氏(コナミデジタルエンタテインメント)に加え、ステージ後に合流した『桃太郎電鉄2』アシスタントディレクターの斉藤有希氏 (コナミデジタルエンタテインメント)にインタビューを実施。東日本編と西日本編の2本でリリースすることになった経緯、そして「桃鉄」を今後50年作り続ける環境づくりについてうかがいました。

【インタビュー出席者】

『桃太郎電鉄2 ~あなたの町も きっとある~』副監督 桝田省治

『桃太郎電鉄2 ~あなたの町も きっとある~』プロデューサー 岡村憲明(コナミデジタルエンタテインメント)

『桃太郎電鉄2 ~あなたの町も きっとある~』アシスタントディレクター 斉藤有希 (コナミデジタルエンタテインメント)

◆今作は“ぶらり各駅停車の旅”

写真左より、プロデューサーの岡村憲明氏、副監督の桝田省治氏、アシスタントディレクターの斉藤有希氏。

――今作は「東日本編」と「西日本編」で2本のゲームに分けるという、コンシューマーでは新しい試みがされました。なぜこのような仕様になったのですか?

桝田省治(以下、桝田):一番大きな理由は、「自分の町も入れてほしい」というユーザーの皆さん要望です。それと同時に、さくまさん(さくまあきら氏)がユーザーの皆さんに紹介したい場所や名物が山のようにあり、「それを寝かせたまま引退はできないぞ(笑)」と。「これも食べてみて、あれも食べてみて!」と盛り込んだ結果、物件駅数が東日本編は559駅、西日本編は431駅というボリュームになりました。

――2020年にリリースした、全国版での前作にあたる『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』では339駅なので、どちらも前作越えですよね。むしろ全国版レベルで考えたら約3倍です。

桝田:日本列島をただバッサリ切ったのではなく、それぞれ異なるマップやゲームバランスを、東日本編は東日本編で、西日本編は西日本編でしっかりと調整していますから、まさに2本分のゲームを作っているんです。しかも当初は開発スタッフからも「このマップじゃ広すぎて100年プレイでも全部の物件を制覇できませんよ」と指摘があり、ヘリポートの位置などもより慎重に調整しました。

――確かにその部分は気になっていました。編集部にも100年プレイですべての物件を制覇するというチャレンジをしている人間がいて、「今回は物件駅数が多過ぎて、はたしてコンプリートできるのか?」と冷や汗をかいていました。

桝田:できます。カードの効力やサイコロの数を調整してバランスを取りました。早ければ60年か70年くらいで達成できると思います。

斉藤有希(以下、斉藤):本当に駅の数が多く、どちらもやり応えはかなりあると思います。やはり自分の町があると盛り上がるんですよね。地域のイベントも、しっかりさくまさんが作っています。「東日本編」と「西日本編」のうち片方しか持っていなくても、たとえばお友達がもう片方を持っていれば一緒にプレイできるように作りました。

岡村憲明(以下、岡村):『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』のような、いわゆる「全国版」が新幹線や急行で旅するものだとしたら、今回は各駅停車の旅ですね。「ここに行ったね」「こうだったよね」と思い出を語れるのが『桃鉄』の楽しみのひとつですが、今回は駅が増えた分、その楽しさがより増していると思います。

◆スイッチ2を持っていなくても、安心してスイッチ版を楽しんで

――価格設定が独特ですが、これはどのような意図で?(※本作は「東日本編」「西日本編」がそれぞれ6,430円、「東日本編+西日本編」がニンテンドースイッチ2版で8,980円、ニンテンドースイッチ版で7,980円。いずれも税込)

岡村:企画からしてそもそも特殊なんですよ。僕も最初は単にマップを分割するくらいで考えていたのですが、気づいたらゲームを2本分作っていました(笑)。「東日本編」と「西日本編」でそれぞれ別々に最適化されていますから、比喩ではなく本当に2本分です。

さくまさんの調整も各1年以上費やされていましたし、マップの配置に合わせてゲームバランスも調整されていましたから、プレイ感覚も東日本編と西日本編で異なります。やり比べてみると「なるほど」と思ってもらえると思います。ですから価格も、前作と同じくらいにさせていただきました。

こちらとしてはまず、「東日本編」と「西日本編」を2本のゲームと考えているので、その基準でまずは「前作からは少し安くしたい」と思い各6,430円(税込)にしました。どちらかを持っていれば、友だち同士で会った時に両方できる……そういう遊び方を想定していたわけです。

※『桃鉄 令和定番』『桃鉄ワールド』はいずれも6,930円(税込)

しかしユーザーさんの中には、やはりどちらも遊びたいという人もいます。そこで加えたのがセット販売(7,980円(税込))でした。ですが本来は、別々のゲームを持っている人同士が集まってワイワイやる想定だったんですよ。

――さらにスイッチ2版では「ひろびろマップ」や「カメラプレイ」など固有の機能もあります。

岡村:固有の機能はありますけど、プレイ感覚としてはスイッチ版もスイッチ2版も横並びで設計しました。実は本作は、もともとスイッチ2を想定して作っていたんです。

スイッチ2向けなので開発スタート時は「スイッチより向上したグラフィックで作ろう」と、マップなどをリッチにしました。ところが「負荷がかかるからスイッチでは難しいだろうな」という仕様を、スタッフががんばってくれたおかげでスイッチでも丸々遊べるようになってしまったんです(笑)。

その後、スイッチ2の仕様が分かってきたところでスイッチ2ならではの要素を入れることになり、画面を拡大する「ひろびろマップ」や「カメラプレイ」を実装しました。ただそれは演出面でのグレードアップという形なので、ゲームプレイ自体はスイッチもスイッチ2もまったく同じです。今はスイッチ2を持っていないという人でも、いつでも1,000円(税込)でアップグレードできるので安心してスイッチ版をご購入いただければと思います。

――ちなみに「東日本編」と「西日本編」は、技術的にはひとつのマップでやれたのですか?

桝田:やろうと思えばできますね。ただ今回は町が多く、「どれだけやってもゴールに辿り着かない!」ということになりかねません。やはり1年に2回くらいは目的地に着かないとおもしろくないじゃないですか。

――『桃鉄』開発チームならできそうかなと(笑)。

◆『桃鉄』は、さくまあきらの「私的旅日記」

――ちなみに実際、さくまさんの「あそこもここも紹介したい!」という想いはどこまで達成されたと思いますか?

桝田:それは本人しか分かりませんね(笑)。なにしろ作業部屋にはいくつもテレビがあり、おもしろそうだと思ったものはすぐメモしますから。そのリストは日々、更新されていると思いますよ。

話は脱線しますけど、今回は2本分のゲームをほぼ同時進行で制作しているので、さすがのさくまさんも横から見ていて大変そうでした。ですからこのボリュームは2度とやらないと思います(笑)。今回、ようやく自分の町が登場したというユーザーさんは、絶対に買わないと“次”の保証はないかもしれませんね。

――そういえばインサイドでは、2023年の東京ゲームショウでも桝田さんと岡村さんに取材をさせていただきました。その際、「今後の桃鉄をどうするか」というお話をうかがったのですが、あれからどうなりましたか?


桝田:さくまさんがいつか引退する日が来てしまったら『桃鉄』をどうするか、僕も考えますよ。さくまさんの“メソッド”を体系化してシステム化するのか、それともさくまさんが担当していた調整部分をなんとか数値化してシリーズを継続させるのか……。

――寂しい話なので、あまり考えたくはない部分ではあります。

桝田:そんな時に思うんですよ。『桃鉄』ってなんだろうって。

たとえば年末に親戚の集まりがあるじゃないですか。そこでみんな「桃鉄ならできるよ」と言うんです。しかしそれは、人によって20年前の桃鉄だったり10年前の桃鉄だったりして、実は思い浮かべる『桃鉄』はそれぞれ別々のタイトルなんです。つまりタイトルは変わっても「誰もが思い浮かべる桃鉄」という共通認識があり、その部分は絶対に守らないといけない要素なんです。

――なるほど。

桝田:その部分は、いわば『桃鉄』の最大の財産です。その考え方を踏まえ、「この要素は変えても大丈夫」「これは変えちゃダメ」と分類しながら過去の『桃鉄』を紐解いているところです。そこはずっと、さくまさんの才能に頼りきってしまっていた部分でした。

――さくまさんの頭の中を洞窟探検しているみたいですね。

桝田:ほかのゲームではありえないことですよね。シリーズの最新作って、どうしても新しい要素を入れたくなりますから。それに、別の人間が後付けで入れたようなセリフがあって、さくまさんっぽい言い回しなんだけど、どうもさくまさんのテキストではない……みたいな。そういった部分を明確にしつつ分類しているんです。

――もはや学問の領域ですね。

桝田:難しいのは、すべて解明し、その通りに作ったとしても、おそらくおもしろいゲームにはならないだろうということです。

岡村:秘伝のタレですよね。1作目が30年前なのでソースコードもなかなかです。言語もCからC++になるとか、歴史を辿るような作業ですよ。ただそのあたりをしっかり整理して、この先50年作れるものにしたいと思っています。

――秘伝のタレを継承する試みは、比較的ここ数年で始まったことかと思います。その紐解く作業の中で見えてきたもの、見え方が変わったものはありましたか?

斉藤:さくまさんがおっしゃったことで凄く印象に残っていることはあります。ダビング駅などの便利なマスのマップ配置について、「気付いた人だけが有利になっちゃいませんか?」と、議題にあがったことがあったんです。ところがさくまさんは「それでいいんだ」と。「たくさん桃鉄を遊んだ人が有利になるからいいんだ」と。

その時にさくまさんの知見や経験の“壁の高さ”を実感しました。今の「桃鉄」の体験はまさに「秘伝のタレ」なので、そう簡単に変えて良いバランスではないんだなと。きっと変えてしまっていたら、ユーザーに「俺も桃鉄ならできる」とは言ってもらえなかったと思います。

岡村:『桃鉄 教育版』を作った時に「教材としては、公平性が大事なんじゃないか」という話が出たことがあったんです。でもゲームとしての『桃鉄』って言わば、さくまさんの「私的旅日記」なんですよ。さくまさんが訪れた場所、紹介したい場所を追体験しましょう、という考え方で我々は作っているので、公平性よりも作り手の「こうしたい」「この時の旅はこうだったよね」みたいなもののウェイトの方が大きいんですよ。

桝田:今の町を再現するんじゃなくて、さくまさんが降り立ったとき見えた景色なんですよね。「あの時は蕎麦屋しかなかったな」みたいな。

――その中で新しい要素も入れないといけないので難しいですよね。それでは最後に読者へメッセージをお願いします。

斉藤:今作は本当に凄いことになっています。凄くやりがいのあるボリュームで、何度遊んでも未だに「これは初めて出た!」というイベントがあります。やりこんでいただいたプレイヤーの皆さまの感想を楽しみにしています。発売までお楽しみに!

岡村:自信をもってお届けできる、さくまさんの純度100%のゲームです。みなさん安心して遊んでください(笑)。

桝田:ここまで手間暇がかかった『桃鉄』は初めてですし、大変すぎてもう2度とやらないと思います(笑)。さくまさんもそうとう疲れていました(笑)。ですから今回初めて自分の町が登場するユーザーさんは、後悔しないよう、この機会を逃さないでください。

《気賀沢昌志》
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