
国産のRPGシリーズとして、コンピューターゲームの黎明期から令和の今に至るまで、ゲーム市場の最前線を走り続けてきた「ドラゴンクエスト」シリーズ。その最初期を支えた3作品、「ロト三部作」とも言われる『ドラゴンクエスト』、『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が、HD-2Dに彩られて再誕します。
HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』は一足早く2024年11月14日に発売され、シリーズの1作目、2作目がセットになったHD-2D版『ドラゴンクエスト I&II』が、満を持して2025年10月30日に発売されます。(※Steam版のみ10月31日)

その発売に先駆け、HD-2D版『ドラゴンクエスト I&II』に触れられる第2回メディア向け試遊会が先日行われました。このプレイ体験を元に、本記事ではHD-2D版『ドラゴンクエストII』の魅力や特徴に迫ります。
なお、今回プレイしたのはPS5版です。また、ゲームバランスなどは試遊プレイ時の内容となり、製品版とは異なる可能性があります。
■HD-2D版『DQII』は「サマルトリアの王女」を加えた4人編成に

原作となるファミリーコンピュータ版『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』は、シリーズ初のパーティ編成を取り入れ、役割分担や仲間同士で力を合わせる戦略性の面白さを広く知らしめました。勇者ロトの血を引く王子ふたりと王女の3人旅は、厳しいからこそ支え合う仲間たちに頼もしさを覚えたものです。
この3人編成のパーティは、後に移植やリメイクされた際も変更することはなく、ローレシアの王子、サマルトリアの王子、ムーンブルクの王女による冒険は、シリーズファンにとって揺るぎないパーティとして記憶されています。
原点とも言うべきFC版『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』が1987年1月26日に発売されて以来、決して変わらなかった3人編成のパーティは、2025年に大きな転機を迎えました。

HD-2D版『ドラゴンクエストII』では、従来の3人に加え、新たに「サマルトリアの王女」がパーティメンバーとして登場。今回の試遊プレイでも、4人編成による冒険を楽しむことができました。
用意されたデータでは、ローレシアの王子は「ロラン」、サマルトリアの王子は「クッキー」、ムーンブルクの王女は「プリン」、そして新メンバーとして加わったサマルトリアの王女は「マカロン」という名前に。いずれもデフォルトネームなので、製品版プレイ時にはプレイヤーが任意で名前を入力できます。
■ムーンブルクの王女はやっぱり“犬系”!「とくぎ」の導入で広がる戦略性

今回のプレイでは「大灯台」が舞台となり、ダンジョン内におけるバトル体験を主に味わいました。過去の『DQII』は全て3人編成だったため、4人編成の『DQII』はあらゆるプレイヤーにとって初の体験となります。
あくまで体感によるものですが、登場する敵の数や種類が多い印象を受けました。パーティの構成が変わり、これまで1ターンで3人行動だったところ、1.3倍の4人行動に増えているため、敵の登場数などでバランスを取っている影響かもしれません。

また、過去の『DQII』にはなかった要素のひとつとして、「とくぎ」の導入があります。「とくぎ」はHD-2D版『DQI』にも取り入れられており、戦力の増強と戦略の広がりに期待が持てます。
特にローレシアの王子は、本作でも「じゅもん」が一切使えないため、「とくぎ」による恩恵をより強く感じます。誰よりも素早く攻撃できる「しっぷう突き」をはじめ、「けもの突き」「とびひざげり」「石つぶて」「かぶと割り」「必中拳」「もろば斬り」「ドラゴン斬り」「まじん斬り」「ちからため」と、試遊の範囲だけでも攻撃に関する「とくぎ」が数多く揃っています。
サマルトリアの王子の「とくぎ」は、敵モンスターを呼び寄せる「くちぶえ」や、攻撃系の「かえん斬り」「まわしげり」「いなずま斬り」、防御系の「うけながし」「みかわしきゃく」と方向性が豊か。攻撃しながら自分のHPを回復する「ミラクルソード」を覚えているのも、サマルトリアの王子らしさを感じます。

「じゅもん」のエキスパートであるムーンブルクの王女は、攻撃系の「とくぎ」こそ少なめですが、敵1体をたまに行動不能にする「投げキッス」など、自身の魅力を活かしたものもありました。
また、道具やゴールドを見つける「あなほり」、周囲に残っている宝箱の数がわかる「いぬのはな」や、攻撃系の「とおぼえ」といった「とくぎ」を覚えているのも、ムーンブルクの王女ならではでしょう。その理由はネタバレになりかねないので今回は伏せておきますが、理由がピンと来ない人は製品版をプレイしてお確かめください。
■敵の強さは手ごわく、「マカロン」のとくぎがパーティの助けに

新メンバーの「マカロン」ことサマルトリアの王女は、「ねむりアタック」「まわしげり」に「しびれアタック」といった攻撃系に加え、仲間ひとりのマヒ・眠り・混乱を解除する「ツッコミ」、回避の「みかわしきゃく」、敵1体を行動不能にする「くすぐりの刑」などの「とくぎ」を覚えており、攻撃に状態異常の回復、行動制限とバラエティ豊かです。
そして、今回プレイした範囲で特に頼もしかった「とくぎ」は、彼女が戦闘中に使える「まりょくの風」でした。この「とくぎ」には、仲間全体のMPを少しずつ回復する効果があります。1度に回復する量は少な目ですが、消費MPも3と低いので、ターン数がかさみそうな戦闘では意識的に使っておきたい「とくぎ」と言えます。

短い距離の移動中や強敵でも、連戦でなければMPの消費もあまり気になりませんが、「大灯台」の攻略といった長期的な攻略中はMPの残量がそのまま継戦能力に繋がります。
先ほど述べた通り、登場する敵の種類や数が多めなので、範囲攻撃が可能な「とくぎ」や「じゅもん」の出番は多く、必然的にMPは削られがち。ゲームモードの設定次第ではレベルアップ時にHP・MPが最大値まで回復するものの、常に頼れる手段ではありません。

また、MPは回復に回して通常攻撃主体で戦ってみたところ、敵も「とくぎ」や「じゅもん」を使うため、雑魚相手でも長期戦だとジリ貧になることも。むしろ攻撃系の「じゅもん」などを惜しみなく使った方が回復に割かれるMPを抑えられ、消費が少なく済んだことも多々ありました。
ひとつひとつの戦いは十分勝てるものの、油断するとこちらの被害が大きくなり、適切な判断による「じゅもん」や「とくぎ」の投入も重要なHD-2D版『DQII』のバトル。プレイヤーの発想や戦略が、攻略により大きく影響するような印象を受けました。

そんな戦いの中、マカロンの「まりょくの風」がなんと心強かったことか。一見すると効果は地味めですが愛用するほど影響は大きくなり、「じゅもん」や「とくぎ」の使用回数を目に見えて増やしてくれます。
この「まりょくの風」が使えるマカロンは、サポートだけでなく攻撃から回復まで役立つオールラウンダー的なポジションで、非常に頼もしい存在でした。しかし、実は要注意なポイントも……。そんな、頼もしいけどユニークな「サマルトリアの王女」の魅力を、最後にお伝えします。