近年、とくに映画業界において「事故物件 恐い間取り」、「変な家」など、いわゆる“事故物件”を題材にしたホラーコンテンツが人気です。他にも、日本全国の事故物件を詳細に網羅した「大島てる」といったWebサイトがあります。
事故物件とは、殺人、自殺、火災などによる死亡事故が発生した物件のことを指します。今回ご紹介するのは、そんな曰く付きの「実在する事故物件」を監視するホラーゲーム『日本事故物件監視協会』です。宣伝手法を含めた徹底した世界観の作り込み、シンプルで快適なゲームプレイ、そして何より凄まじい「リアル感」をビンビンと感じる、背筋がゾクゾクするような本当に怖いゲーム体験でした。
なお、本記事の制作にあたって、Steamキーの提供を受けています。またゲーム内容に触れているので、閲覧にはご注意ください。
『日本事故物件監視協会』とは

本作は、監視カメラ風の視点で進めていくホラーシミュレーションゲームです。プレイヤーは、「日本事故物件監視協会(JSP)」という架空の団体に所属する監視員となり、深夜0時~5時までの間、設置された複数のカメラを切り替えつつ、何らかの「異常」がないかどうか見張ることが業務内容です。

最大の特徴は、先述した通り「本物」の事故物件を使用していることです。加えて、霊障や事象も実際の報告を基に制作されているとのことで恐ろしい限り。もちろん、本作はあくまでゲームであり、団体名などは架空のものですが、登場する物件のリアルすぎる「現実感」が凄まじく、終始トリハダ立ちっぱなしでした。個人的に、フェイクドキュメンタリーの枠を超えたホラーゲームの新しい境地を感じさせてくれます。


それを強く感じたのは、ゲーム冒頭の警告文や公式サイトなどにおける手の込んだ仕掛けです。とくに公式サイトは、本作に登場する「一般社団法人 日本事故物件監視協会」という架空の団体を紹介するページになっており、業務内容や調査実績などを細かに掲載。さらに代表理事の田中正明なる人物の挨拶も語られている徹底ぶりです。

求人情報も掲載されており、現地調査員は月給444,000~円、プレイヤーの雇用形態である「夜間監視員」は時給2,970円になる模様。そして、応募受付フォームをクリックするとSteamストアなどが開くという仕組みです。このように、本作は宣伝も含めた世界観の構築が非常に上手く、その自己プロデュース力の強さも魅力的だと思います。
また、事故物件を買い取ってそこに宿泊してもらう、というリアルイベントを開催する団体「暗夜-ANNYA-」とのコラボレーションの一環として、同団体が買い取った物件が隠しステージとして登場するようです。Xでの告知ポストのいいね数はなんと2万件で、130万ビューを超えており注目度の高さが伺えます。
操作・言語・オプション

本作は日本語に対応しています。当然ですが、ゲームの設定や世界観に沿った表現など日本語はバッチリです。また、キーボード&マウスおよびコントローラーの使用が可能です。筆者はXboxコントローラーでプレイしましたが、すべての操作が対応しており快適に遊べました。
その他の設定は、グラフィック、サウンドに関するものです。解像度や画面の明るさを調整できるだけのシンプルな項目でした。
事故物件を監視して「異常」があるか調査せよ



ということで本編開始。始まるとすぐに、「従業員の皆様へ」と題したムービーが流れます。まず、「今月の報告実績順位」の一覧が表示されるので、よーし筆者もお仕事頑張るぞい!なんて意気込んでいると、次に「今月の殉職者」なる一覧が……。氏名の横には死亡原因も併記されており、「事故」「自殺」「行方不明」など、不穏なワードのオンパレード。
早くもヤバい空気が漂いますが、続けて不気味な人型のマークが現れたのち、最後に従業員へ向けて「業務を開始してください」とのメッセージが。いやいや、怖くて開始できねーよ!……本作はこんな具合にプレイヤーを巻き込んだ雰囲気づくりが抜群に上手いのです。

さて、それを見終わるとメニュー画面になり、ここからがゲーム本番。事故物件は、未開放も含めて全4箇所です。
1つ目は秋田県にある築年数不明の古民家「A邸」、2つ目は奈良県の山間部にある古い「T神社」、3つ目は岐阜県の昭和開業の老舗温泉旅館「N旅館」のどれかを選択して監視業務に当たります。
また、「通常」と「特別手当」というゲーム難易度も選択可能。通常がNORMAL、特別手当がHARDに相当します。

開始前に、従業員(プレイヤー)に向けて「業務報告方法」というマニュアル説明を確認できます。業務内容をザックリとまとめると、
監視カメラのモニターを見て、「異常」がないか確認
異常を確認した場合、速やかに対象箇所をクリックして「報告」すること
午前0時~5時まで監視し続けること
この3点が業務上とくに重要のようです。
また、
異常が「4つ」発生しているのに見逃している
異常のない箇所を5回連続で誤って報告する(「特別手当」の場合、更に少なく3回)
この条件を満たしてしまうと「業務失敗(ゲームオーバー)」となってしまうので、慎重な業務遂行が必要となります。

初業務に選んだのは、奈良県の「T神社」です。操作方法はXboxコントローラーの場合、左スティックで「各カメラモニターの切り替え」、右スティックで「矢印の移動」、RTボタン長押しで「異常の報告」ができます。また、左スティックを上方向に入力すると「暗視モード」になり、通常のカメラと切り替えることが可能です。



監視カメラはCAM1~7まであり、それぞれを切り替えて見張っていきます。「広間」「廊下」「外観」など物件全体の様子が分かるようになっています。
それにしても、ご覧の通り実写を取り込んだリアルな映像が本当に怖い。これをずっと見続けないといけないなんて…背筋がゾクゾクしてきます。しかも、ゲーム的なBGMはいっさいなく、現場の環境音のみ。もちろん周りには誰一人おらず静寂としており、心細さや孤独感はMAXです。


そして、恐る恐るながらカメラを切り替えていると、CAM3の廊下にさっきまで無かった「白いオーブ」が無数に浮いています。なるほど、これが「異常現象」なのか…!「間違い探し」のような感じですね。
さっそくモニター中央付近を長押しすると、画面に“異常検出 お待ち下さい”とメッセージが出て無事「報告」が成功します。はじめての業務は順調のようです。


しかし、その後が失敗の連続。誤報告に加えて、どのカメラを切り替えても異常を見つけることができず、「直ちに特定してください」と催促される始末。そして最終的には、業務が強制的に中断されゲームオーバーに。
「業務中断通知書」なるリザルト画面になり、異常報告数や見逃した異常について確認することができます。あれ?よく見るとお給料がゼロ円になっているじゃないか!まあ業務失敗したので仕方ないんですが……。


気を取り直して業務再開。今度は秋田県「A邸」の監視を行います。お爺ちゃんやお婆ちゃん家のような古い日本家屋がすでに不気味でいや~な雰囲気を放っています。


前回カメラの「暗視モード」をあまり使わなかった反省点を踏まえて、積極的に業務に取り入れたところ、「異常」をかなり発見できるように。壁から垂れた謎の血のりや、なぜか黒塗りされている仏間の遺影写真など、奇妙な現象が多発します。



何度も挑戦するうちに物件の風景も見慣れてくるため、異常を発見しやすくなります。コツとしては、視覚情報も大切ですが「音」も異常を知らせる重要なサイン。時折、何かのうめき声や壁を叩く音、廊下を歩く足音などが聞こえてくるので、素早くカメラを切り替えながら怪異を探していきます。
ちなみに、異常現象はランダムで発生し、その種類もさまざまです。たとえば、開いていた扉が閉まっていたり、家具が増えたり減ったりする「オブジェクト系」の異常や、オーブや人影、霊体といった「心霊系」に分類されます。また、それを超える「何か」が映し出されることも。
数ある怪異現象の中で、筆者が最も恐怖を感じたのは……

コチラ
いやもう、カメラ切り替えた瞬間こんなのが出てきたからガチで声が出ましたよ。「顔にゅ~」系の異常は本当に心臓が止まりそうになるからキツかったです。


本作は作品の性質上、どうしてもジャンプスケアが山盛りに挿入されています。しかし、それを「監視業務」として報告するというシステムにしているため、通常の場合はうざったく感じてしまうジャンプスケアも、しっかりと“恐怖”を感じるホラー要素に変換されており、そこが非常に画期的でした。

さて、コツを掴んだおかげでなんとか終了時間まで遂行し、監視業務を成功させる事ができました。本日の給与明細を受け取り、待望のお給料もゲット!初勤務の実績は15個の異常を発見し、総額は14,850円なり。けれども、あれだけくまなく探してたと思っていたのに、2個の見逃しがあった模様。まだまだマスターへの道のりは遠そうです…。
類似作品として『Spectator』や『I'm on Observation Duty』といった監視カメラ系ホラーゲームが存在しますが、本作が一線を画しているのは、実在する事故物件を扱っていること、3Dではなく実写を使用していることなど、圧倒的な「リアル」に裏打ちされた没入感のある恐怖が非常に秀逸です。作り込まれた世界観と雰囲気も大いに魅力的。
ただし、異変の箇所が分かりにくすぎて対処出来ないことや、なかなか異変が出現しない時もあり、そもそもシンプルすぎて途中で飽きてしまうなど、ゲームプレイにおける疑問点もいくつかありました。
とはいえ、お値段以上の恐怖体験ができるのは間違いないので、ぜひとも肝試しのつもりで挑戦してみてはいかがでしょうか。



タイトル:『日本事故物件監視協会』
対応機種:Windows PC(Steam)/iOS
記事におけるプレイ機種:WIndows PC(Steam)
発売日:2025年8月15日
著者プレイ時間:6時間
価格:760円
実在する事故物件の「リアル感」が凄まじい…!監視カメラを見張る作業は終始トリハダだったスパ