バンダイナムコエンターテインメントより2025年8月28日に発売される『スーパーロボット大戦Y(以下、『スパロボY』)』ですが、編集部ではメディア向けに開催された先行体験会と開発者インタビューに参加しました。
インタビューでは『スパロボY』プロデューサーの戸澗宏太氏に、タイトルの意味やゲームエンジン刷新の意図、そして本作の注目ポイントについて語っていただきました。そこで本稿では、そのインタビューの模様をお届けします。
“Y”は分岐路であり三叉路。宿命に立ち向かう鋼の守護者たち

――まず、本作のタイトル『スーパーロボット大戦Y』に込められた意味や思いについてお聞かせください。
戸澗宏太氏(以下、戸澗):前作が30周年記念作品の『スーパーロボット大戦30(サーティ)』で、『V』『X』『T』から続く変則的なタイトルでしたが、今回は改めてアルファベット1文字の『Y』としました。前作から約4年ぶりの家庭用完全新作ということで、ファンの皆様に「最新作が出ますよ、安心して遊んでください」というメッセージをストレートに伝えるためです。
アルファベット1文字にすることは初期段階で決まっており、様々なアイデアを検討しました。その中で、本作のストーリーや世界観を踏まえると『Y』が非常にしっくりきました。「Y」という文字そのものに意味があるというよりは、その「形」に着目しています。「Y」は分岐路や三叉路に見え、これが今作の世界観に近いと感じました。
本作のキャッチコピーは「右は災厄、左は破滅。宿命を超えろ、鋼の守護者(ガーディアン)」ですが、これは「Y」の分かれた先(未来)が、右に進んでも災厄、左に進んでも破滅という状況を示しています。
そして「Y」の下から中央に繋がる部分は過去からの道のりを表しており、過去からの因習や、どうしても避けることができない未来の宿命に、各作品から集った最強のロボットたちが立ち向かっていく、というのが本作のコンセプトになっています。
――ゲームエンジンを刷新した意図と、今後の展望について教えてください。
戸澗:ゲームエンジンを刷新した最大の意図は、「スーパーロボット大戦」シリーズを今後も継続的に生み出したいと考えているためです。一方で、『スパロボ』のコアとなるゲーム性については普遍的に面白いものだと考えているため、そこを大きく変えることはしないという判断をしました。
長期的な展望、特に「継続性」という点について補足しますと、『スーパーロボット大戦30』まで使用していた独自のエンジンは、実は『スーパーロボット大戦α』シリーズの時代から約20年間、積み重ねてきたものでした。その独自性がゆえに、開発の負担が一部のエンジニアに偏ってしまうという課題がありました。
もちろん、『Y』の企画当初は独自エンジンを使い続ける選択肢もありました。しかし、それでは将来的にシステムの改修が不可能になったり、予期せぬ不具合が修正できなくなったりする未来が予見されました。そこで、今後も『スパロボ』を作り続けていくという思いのもと、汎用エンジンであるUnityへの移行を決断しました。
開発サイクルについては、かつてのように「1年に1本新作を出す」というのは、現在のゲーム業界を取り巻く環境の変化もあり、新しいエンジンに移行したからといって簡単ではありません。しかし、ファンの皆様をお待たせしていることは重々承知しておりますので、開発一同、少しでも早くお届けできるよう努力していきたいと考えています。
今回のエンジン刷新で、シリーズを継続できる開発体制は構築できたと思いますので、今後もお客様のご意見を伺いながら、このUnityエンジンをどう発展させていくか考えていきたいです。

――本作の最もアピールしたいポイントはどこでしょうか。
戸澗:久しぶりの家庭用新作ですので、まずは「いつものスパロボだ」と安心して楽しんでいただけるものを作った、という点が挙げられます。その上で、キャラクターゲームとしての魅力をより引き出す新要素「アシストリンク」を追加しました。
シミュレーションゲームとしての遊びをさらに進化させるため、UIの改善やオートバトルの改修も行っています。また、周回プレイをより楽しんでいただくための工夫として「STGメモリー開放」といったカスタマイズ要素も導入しました。
UIの改善はエンジン改修と並行して進めており、『スパロボ』初心者の方でも直感的に遊べるような工夫を凝らしています。もちろん、これまでのシリーズユーザーの方々にも、『スーパーロボット大戦30』を踏まえた様々な改良を加えていますので、全てのファンの皆様に楽しんでいただける、安心の『スパロボ』になっていると自負しています。
――新システム「アシストイベント」は、具体的にどのようなものでしょうか。過去作にあった「エーストーク」のようなイメージでしょうか。
戸澗:まさしく「エーストーク」の「アシストクルー版」とご理解いただくのが一番分かりやすいかと思います。基本的にはオリジナルキャラクターの「エチカ・Y・フランバーネット」との会話が中心になりますが、キャラクターごとに内容は少しずつ異なります。

――『Y』の参戦作品を発表した際、特にユーザーからの反響が大きかった、あるいは印象に残った作品はありますか。
戸澗:印象に残った反応という点でお答えすると、新規参戦の「SSSS.DYNAZENON」「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」「機動戦士ガンダム 水星の魔女」Season1や、家庭用初参戦となる「劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ」、そして「ゲッターロボ アーク」といった作品群は、大きな反響をいただきました。
また、久しぶりに登場する作品に対して「久しぶりだね」といった温かい反応が多かったのも嬉しかったです。ただ、最も印象的だったのは、特定の作品がというよりも「どの作品を発表しても、それぞれのファンがSNSなどで一斉に喜んでくださった」光景そのものです。各作品が歴史と多くのファンを持つ素晴らしいアニメであり、そのファンの方々が歓喜の声を上げてくださるのを見て、『スパロボ』を作っていて良かった、と心から思いました。

――システム面での注目ポイント、特に既存の『スパロボ』ファンに伝えたい改善点はありますか。
戸澗:やはり新要素の「アシストリンク」が一番の注目ポイントです。それに加えて、既存ファンの方に向けてあえて挙げるならば、『スーパーロボット大戦30』で導入した「タクティカル・エリア・セレクト」の改善点にぜひ注目していただきたいです。
「タクティカル・エリア・セレクト」の「好きな作品から優先的にプレイできる自由度」は維持しつつも、自由度が高すぎるがゆえに「シナリオの繋がりが薄くなる」「クロスオーバーが少なくなる」「今何のために戦っているのか分からなくなる」といった課題がありました。
そこで今作では、序盤は自由度を高く保ちつつ、物語の核心に近づくにつれて徐々にシナリオへ集中しやすくしています。これにより、「いつものスパロボ」が持つシナリオの楽しさと、プレイヤーがルートを選べる自由度を両立させました。ある種、「タクティカル・エリア・セレクト」のシナリオ面での進化、最適化と言える部分ですので、ぜひアピールしたいポイントです。
――試遊版ではゲッターロボが変形できませんでしたが、製品版ではどうなりますか。
戸澗:ご安心ください、あれは試遊版の仕様で、製品版ではいつも通り変形します。補足しますと、今作では「Zガンダム」や「ビルバイン」のような変形可能な機体に「変形移動」というシステムを導入しました。これは、移動時のみ変形形態になるというものです。アニメでの変形機体の利便性をゲーム内で表現しつつ、MS形態の戦闘での強さも損なわないようにするための改善です。
ただ、この仕様をそのままゲッターロボに適用すると魅力が表現しきれないため、「ゲッターアーク」については従来通り3形態への任意変形が可能です。さらに今作では、移動後にも変形ができるようになっています。
例えば「ゲッターアーク」で敵に接近した後に、状況に応じて別の形態に変形して反撃するといった戦術的な使い方が可能になりました。この情報は既に公開済みですので、ぜひ楽しみにしていてください。

――新システム「STGメモリー開放」について詳しく教えてください。これはプレイヤーが未来を選択しているような感覚を味わってもらうためのものでしょうか。
戸澗:「STGメモリー開放」は、まず純粋にゲームの遊びの幅を広げるためのカスタマイズ要素として設計しています。1周のプレイで全てのメモリーを解放することはできないので、周回プレイをしながら「今回は防御型の編成にしてみよう」「アシストリンクを使いやすい構成にしよう」といったように、自分なりの最強部隊を組み上げていく遊びを深めるためのものです。
シナリオとの関連で言えば、「STGメモリー」は、オリジナル戦艦「エーアデント」が持つテクノロジーに関連する設定があります。そのあたりの背景は、ぜひゲーム本編のシナリオで楽しんでいただければと思います。

――戦闘アニメーションのこだわりや進化したポイントを教えてください。
戸澗:戦闘アニメーションは、前作から引き続き熟練のスタッフたちが担当しており、「スパロボらしさ」と各作品の魅力を引き出したアニメーションを制作しています。今作で特に進化した点として、戦闘アニメをより効果的かつ楽しく見せるため、攻守の切り替わりをスムーズにする工夫を凝らしました。
前作までは攻守交代の際に一度暗転が入っていましたが、今作ではそれをなくし、攻撃を受けた敵がそのままスムーズに反撃するような表現を可能にしています(一部の援護周りの演出は除く)。また、UIの変更によってアニメーションの表示領域を広げており、熟練スタッフが作るアニメをよりダイナミックに見ていただけるようになっています。
――『30』と比べて、周回プレイがしやすくなるようなシステムはありますか。
戸澗:例えば、アドベンチャーパートのスキップなどがボタン一つでできるようになるなど、いわゆるショートカット機能をより使いやすく改善しています。
また、本作ではガイド機能を強化しており、「ここを長押しすればスキップできる」といった操作が初めてプレイする方にも分かりやすくなるよう、様々な工夫を凝らしています。
――戸澗プロデューサーご自身の経歴と、本作にどのような思いで携わっているのかお聞かせください。
戸澗:もともとはカードの『スーパーロボット大戦Vクルセイド』や『OGクルセイド』の商品担当をしていました。その後、プラモデルなどを扱うホビー事業を経験して、スパロボを作りたいという強い思いから現在のゲーム事業の部署へ移り、『スーパーロボット大戦Y』のプロデューサーとして携わっています。
『スパロボ』という作品は、ファンの方々が自分の好きなロボットアニメをより好きになったり、このゲームをきっかけに新しいロボットアニメに出会ったりと、ロボットアニメ文化の一助となる非常に素晴らしいコンテンツだと思っています。その偉大な歴史を未来に繋いでいきたい、その力添えをしたいという強い思いで、本作の開発に携わってきました。
――プロデューサーとしてのプレッシャーはありましたか。
戸澗:ものすごくありました。34年続くタイトルの重責を背負っているわけで、強いプレッシャーの中で日々戦ってきました。
しかし、情報を公開した際に、4年ぶりの新作ということで「待っていたよ」「続いてくれてありがとう」といった温かい声をたくさんいただき、本当に救われました。今までやってきて良かったと心から感じています。
――難易度「ハード」以上ではルールが変わるとのことですが、これは『30』の「スーパーエキスパート+」モードに近いものでしょうか。また、難易度はそれと比較していかがでしょうか。
戸澗:まさにおっしゃる通りです。「スーパーエキスパート+」で導入した、ゲームの基礎ルールを変更する試みがユーザーの皆様から「歯ごたえがある」というお声を多数頂き、本作では最初から導入することにしました。
例えば、ハード以上では「敵を撃墜した際に、味方全体の気力が上昇する」という仕様に制限がかかります。そうなると気力が上がりにくくなるので、「どのパイロットで敵を倒すか」「気力を上げるスキルを持つアシストクルーを使うか」「強化パーツやSTGメモリーで補うか」といった新たな戦略、リソース管理の駆け引きが生まれます。こうした遊びの広がりを意図して導入しました。
『30』の「スーパーエキスパート+」と純粋に難易度を比較するのは、システムが異なる点もあり難しいです。ただ、しっかりと歯ごたえを感じて頂ける内容になっていると思いますので、ぜひ挑戦してみてください。

――アシストクルーは、インターミッションで自由に編成できるのでしょうか。
戸澗:編成枠は物語の進行度(序盤・中盤・終盤)に応じて、最初は3人から最大9人まで増えていきます。インターミッションで、出撃するロボットとの縛りなどは一切なく、好きなキャラクターを枠の数だけアシストクルーとして設定できます。クロスオーバー的な楽しみ方をしていただいても、好きな作品のキャラクターで固めていただいても構いません。
ちなみに、同作品のキャラクター同士でアシストを行うと、少し特別なセリフが表示されるといった要素も入っています。
――「アシストリンク」や「STGメモリー開放」といった新システムにより、開発時のバランス調整で苦労された点はありましたか。
戸澗:バランス調整の苦労はいつものことではありますが、今作で特に難しかったのは、「タクティカル・エリア・セレクト」との両立です。
プレイヤーによって攻略するステージ数が変動するため、メインミッションだけを最短で進むプレイヤーから、全てのミッションをプレイするプレイヤーまで、様々なプレイスタイルを想定して調整を行う必要がありました。もちろん、その上で「アシストリンク」や「STGメモリー開放」の使い方も考慮しながら調整を進めています。
――今回、残念ながら参戦できなかった作品も多くあるかと思いますが、候補にはどのくらいの数の作品が挙がっていたのでしょうか。
戸澗:検討に検討を重ねましたので、正直に申し上げて「数えきれないほど」というのが答えになります。具体的な数はお答えできませんが、本当にたくさんの作品を候補として検討しました。

――独自エンジンからUnityへ移行する際に、特に苦労された点はどのような部分でしょうか。
戸澗:『スーパーロボット大戦α』シリーズの時代から約20年間、独自エンジンを扱ってきた経緯があるため、まずはUnityという新しいエンジンを習熟する点に苦労しました。
また、新エンジンへ移行するにあたり、これまでの『スパロボ』の仕様を改めて整理する必要もありました。そのあたりをひとつひとつ明らかにしていくプロセスが大変でしたね。
――敵キャラクターと思われるオリジナルキャラクターの「レー・セイヴァース」と、その搭乗機「ヴァイ・ルーミナ」について、本作のシナリオやテーマにどのように関わってくるのか、差し支えない範囲で教えていただけますか。
戸澗:その点について詳しくお話しすると、重大なネタバレになってしまいます。現時点で公開している情報として、主人公「月ノ輪クロス」「月ノ輪フォルテ」のライバル的なキャラクターとして登場しますので、彼らがどのように活躍するのかは、ぜひゲーム本編のシナリオで確かめていただければと思います。
――今回、主人公側のモチーフとして「忍者」を選ばれた理由をお聞かせください。海外での人気なども意識されたのでしょうか。
戸澗:主人公のコンセプトがエチカを陰から守る存在だったため、そこから「忍者」というモチーフを選びました。この設定を決めたことで、主人公の立ち位置だけでなく、搭乗するロボットのデザインやキャラクターの性格なども非常にイメージしやすくなりました。戦闘アニメーションにおいても、忍者のイメージを大切にしつつ様々なアイデアが広がり、結果的に多彩なモーションを作ることができたと感じています。
最初から海外での人気を意識したわけではありません。後からグローバルな視点でも良いかもしれないとは思いましたが、基本的には日本国内の『スパロボ』として、今回の物語に最も適したモチーフは何か、という観点から選んだのが一番の理由です。
――今回、「ゴジラ」や「ダイナゼノン」といった、いわゆる巨大ロボットとは少し異なる怪獣やヒーローといった文脈の作品が参戦していますが、今後のシリーズ展開として、こういった方向への広がりは意識されているのでしょうか。
戸澗:現時点で今後の明確な構想があるわけではありませんが、様々なアニメーション作品がクロスオーバーすることが『スパロボ』の面白さだと思っています。ですので、固定概念に縛られず、少しずつでも幅を広げ、色々な作品に挑戦していきたいという思いはあります。ファンの皆様に喜んでいただけるのは何か、という視点で常に考え続けていきたいです。

――『スパロボ』シリーズはアジア圏でも人気のIPだと思いますが、本作に関して海外からの反響などはいかがでしたか。
戸澗:『スーパーロボット大戦Ⅴ』あたりからグローバル展開を始めていますが、本作の発表時には海外の方からの反響も非常に大きかったです。海外でもトレイラーを公開しているのですが、「この作品知ってる」といった反応もあり、海外でも『スパロボ』シリーズのファンが増えてきているのではないかと体感しています。
――長年シリーズに搭載されていた「エクストラアクション」が廃止され、その一部の機能が「アシストリンク」に統合された形になりましたが、このようなシステム整理を行った意図や狙いを教えてください。
戸澗:『V』『X』『T』『30』とシリーズを重ねる中で、システムが積み重なり、複雑化している部分があると感じていました。そこで、本作を初めて遊んでいただくユーザーにも分かりやすいシステムは何か、という観点から改めて見直し、整理統合を行いました。
その上で、新システム「アシストリンク」を導入したのは、これまでのシステムの長所を引き継ぎつつ、本作が重視する「キャラクターの魅力」をより楽しんでいただくためです。キャラクターという要素をさらに前面に押し出す形で、システム全体の洗練と整理を行いました。
――最後に、発売まで約1ヶ月となった現在の心境を改めてお聞かせください。
戸澗:まずは、発売まであと1ヶ月というところまでたどり着けたことに、『スパロボ』を支えてくださったファンの皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。
先ほどもお話しした通り、34年続いたタイトルのプロデューサーという重責を感じながら悩み進めてきましたが、情報を公開してからの皆様の温かい声に支えられ、「これまでやってきて良かった」と感じています。まずは発売までの残り1ヶ月、全力で走り切りたいと思います。まだまだ公開できていない情報もありますので、それらをしっかりお届けしつつ、8月28日の発売日をファンの皆様と一緒にお祭りのように盛り上げていければと考えています。
――ありがとうございました。
『スーパーロボット大戦Y』は、ニンテンドースイッチ/PS5/PC(Steam)向けに8月28日発売予定です。
なお、『スーパーロボット大戦Y』の最新情報を届ける配信番組「スパロボシリーズ情報局」の配信が2025年8月7日20時よりYouTube LIVEにて決定。第3弾PVやキャンペーン情報のほか、月ノ輪クロス役の深川和征さん、月ノ輪フォルテ役の山根綺さんを迎えたキャラクター深掘りコーナーなどが予定されています。詳細は公式サイトをチェック!
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