
日本ファルコムがおくる『英雄伝説』の『軌跡』シリーズは、1作目の『英雄伝説 空の軌跡FC(以下、空の軌跡FC)』から現時点の最新作『英雄伝説 界の軌跡 -Farewell, O Zemuria-』まで、20年を優に超える展開が続いています。
これだけ長い年月にわたって展開する『軌跡』シリーズは、歴史の長さに比例する壮大な物語を綴り、2010年代後半には作品数が2桁を超え、以降も定期的に新作が登場しています。
同一世界の物語をこれほど長く描き続けてきたJRPGは他に類を見ないほどで、ファン以外でもその名を目にする機会が多い作品です。そんな『軌跡』シリーズから、未経験のユーザーの入門用にも相応しい新たな作品が飛び出そうとしています。
◆『軌跡』シリーズを“今から遊ぶ”には、『空の軌跡 the 1st』が断然おすすめ!

ゼムリア大陸を舞台とする『軌跡』シリーズは、『空の軌跡FC』『空の軌跡SC』で描かれる「リベール王国」での動乱が始まりです。
続く『零の軌跡』『碧の軌跡』では「クロスベル自治州」の独立を巡る争いが描かれ、『閃の軌跡』4部作では帝国内の対立が浮き彫りになります。こうした大陸の歴史に残る戦いを、時に劇的に、時に穏やかに描いてきました。
壮大な物語でファンを魅了する一方、『軌跡』シリーズに興味を抱いても、長い歴史を持つシリーズゆえに触れる機会を掴めなかった人も少なくないはず。地続きで繋がりのある壮大な物語なので、なかなかシリーズを始めるハードルが高く感じてしまうかもしれません。

そうした未経験者にとって絶好の入り口となるのが、2025年9月19日にリリースされる『空の軌跡 the 1st(以下、空の軌跡 1st)』)です。
『軌跡』シリーズにとって『空の軌跡FC』は、原点ともいうべき存在。後の作品に繋がる物語は、全てここから始まるため、この作品をベースにフルリメイクした『空の軌跡 1st』は、シリーズへの入門作としてこれ以上ないほど適しています。

また、グラフィックはもちろん、UIやゲームシステムもブラッシュアップ。名作RPGの魅力を受け継ぎながら、新たなるプレイ体験を提供する新要素も『空の軌跡 1st』に搭載されています。
後のシリーズ作を遊ぶ入口としても最適であり、現代のプレイ感で楽しめるシリーズ最新作の『空の軌跡 1st』は、具体的にどのような進化を遂げたのか、本稿でお届けしていきます。
『空の軌跡 the 1st』公式サイトはコチラ!◆3Dで広がった描写が、キャラクターの魅力がさらに向上させる
2004年に発売された『空の軌跡FC』は、ドットで表現されたキャラクターに立体的なフィールドを組み合わせて表現しています。“空間”を感じさせる世界で、様々な冒険を描くことに成功しました。
非対応の場所もありますが、フィールド上ではカメラの視点を360度にわたって動かし、好きな角度からキャラクターや世界を見渡すことが可能です。
また、コマンド入力型の戦闘も、リソースの使い分けを意識する戦略性やエフェクトによる様々な演出が、戦いの手応えと楽しさを盛り上げてくれます。
演出面から手触りまで、当時の一般的なRPG作品の平均を大きく上回っていた『空の軌跡FC』。そんな作品のリメイク版『空の軌跡 1st』の進化も、また驚くべきものでした。

まず、立ち絵や会話ウィンドウ、カットシーン以外はデフォルメだったキャラクターは、等身の高い3Dモデルに全て置き換わりました。戦闘中はもちろん、会話やムービーでも一貫したビジュアルで表現されています。
オリジナル版のドット絵では細かい仕草までは描けず、大ぶりなアクションが主体でした。例えば、「エステル」と「ヨシュア」が初めて出会った場面では、怒ったエステルがヨシュアに“飛び乗る”ような形で感情を露わにしています。
『空の軌跡 1st』では3Dモデルになったためか、飛び乗るような無茶はせず、木製のお盆でヨシュアをこづく程度に抑えられています。その動きも当然滑らかで、等身が上がったことで表現の広がりを実感させます。

しかしその直後、ヨシュアを諫めるためにエステルが繰り出したのは、なんとドロップキック。
さらに、不満を述べかけたヨシュアの顔を両手で掴み、「な・ん・か・言・っ・た?」と畳みかけ、可愛らしい顔とボイスで反論を封じます。表現が広がったことで、エステルの“エステルらしさ”も存分にパワーアップした模様です。

ドロップキックという変化は生まれつつも、ヨシュアとエステルのやりとり自体は『空の軌跡FC』と同じ展開です。だからこそ、リメイクでどれだけ表現が多彩になったのかが、手に取るように分かります。
細やかな演出といえば、作中で初めて「シェラザード」が登場する場面も好例と言えます。
『空の軌跡 1st』ではシェラザードがタロットを実際にめくっていたり、「シェラ姉がいぢめるよ~!」と嘆くエステルの目が「(><)」に変わったりと、表現の幅広さを随所に感じることができました。
◆フィールドの臨場感もぐっと増した『空の軌跡 the 1st』

グラフィックの進化は、キャラクターのみならずフィールドも大きな影響を受けています。『空の軌跡FC』の時点でフィールドは3Dで表現されていましたが、動かせるカメラは水平方向に回転する360度のみ。地形の把握はしやすいものの、見上げるような視点はできません。

しかし『空の軌跡 1st』ではカメラ視点が大きく下がり、また上下方向の視野も広がりました。このおかげで建物の高さを実感しやすくなったり、空を仰ぎ見たりと、より深く『空の軌跡』の世界に没入できます。
作中で初めて訪れる街「ロレント」には、シンボルとも言える時計台や、飛行船の発着場などの施設があります。『空の軌跡FC』では、そうした街中を駆け抜けるエステルたちを俯瞰視点で見守るという形です。
周囲の地形は把握しやすいものの、エステルたちはデフォルメされているのでサイズ的に小さく、やや遠くに感じる印象を受けていました。彼女たちを中心に回転するカメラ視点はスケール的にダイナミズムがありつつも、視点の角度は変わらないため、ジオラマを眺めているような気分にもなります。
その点『空の軌跡 1st』のカメラは俯瞰から三人称視点になり、キャラクターとの距離が近づきました。
エステルたちに近い視点の高さで街中をかけ抜けると、木々を通して降り注ぐ木漏れ日や壁面のレンガなど、注視する必要もなく目の中に自然と入ってきます。キャラクターとの距離感が近づいたことで、臨場感も一段と増しました。
名所のひとつである発着場を駆け上がり、視線を少し上げると、そこには一面の青空が。清々しい空気すら、画面から伝わってきそうなほどです。余談ですが、エステルには青空が良く似合います。
発着場から戻り、店の軒先にあるテーブルを横目に見ながら道を折れると、フィールドに続く街の出口に到着。
『空の軌跡FC』では視点の関係で町の外は見えませんが、三人称視点の『空の軌跡 1st』なら街にいながらフィールドの景色を眺められ、見るだけで「あの先に冒険が待っている」とプレイ意欲がかき立てられます。

『空の軌跡FC』も世界を3Dで描写していましたが、『空の軌跡 1st』ではより身近に感じられることでしょう。
◆バトルの進化が止まらない!演出の強化から大胆な新システムまで

ビジュアルが進化した恩恵は、もちろんバトルにも及んでいます。『空の軌跡FC』では、パーティメンバーや立ちはだかる敵の繰り出す攻撃を、ここも俯瞰による視点で眺めるというものでした。
オリジナル版のバトルは移動や攻撃対象の選択時に画面がもっとも遠ざかり、行動中は各対象に画面が寄る形です。寄り気味になった場合も、キャラの表示は基本的に小さめで、クラフトの発動時には派手なエフェクトが彩りますが、視点などの変化はありません。

例えばヨシュアのクラフト「双連撃」の場合、重めの打撃音と共に、時間差の2連撃を発動します。ドット絵ながら左右で攻撃を繰り出す様子もしっかり描写されていますが、演出としては比較的大人しめです。

エステルの「旋風輪」は、周囲を一掃する攻撃を繰り出すクラフトなので、エフェクトもかなり派手め。
まるで炎をまとったかのような斬撃が円状に広がり、攻撃の苛烈さを表しています……が、カメラとの距離は変わらずなので、こじんまりとした印象は拭えないかもしれません。


そんな2つのクラフトを『空の軌跡 1st』で確認すると、「双連撃」はヨシュアのアップから一旦カメラが引き気味になり、突進に合わせて繰り出す連撃を肉薄して描写していました。カメラワークのメリハリが、「双連撃」の鋭い一撃に重みを加えてくれます。


また『空の軌跡 1st』の「旋風輪」は、構えに入るエステルにカメラが寄った後、広範囲に広がる棒術の攻撃をやや俯瞰の位置で捉え、攻撃がヒットする瞬間に合わせて接近。流れるようなエステルの動きを、ダイナミックな構図で力強く捉えていました。
クラフトの進化ぶりも目を見張りますが、「Sクラフト」の演出はさらに磨きがかかっています。ヨシュアの「断骨剣」は残像を残すような動きで3方向からの攻撃を加え、『空の軌跡FC』の演出も凝ったものでした。
そしてリメイクされた『空の軌跡 1st』では、攻撃に合わせてカメラがそれぞれ移動し、ひとつひとつの斬撃を鋭くシャープに魅せています。追従するカメラの動きだけでも、攻撃の変幻自在さが伝わるほどです。
エステルの「烈波無双撃」は、棒術の射程まで間合いを詰め、そこから無数の突きを一気に叩き込む豪快なSクラフトです。連撃中の視点はサイドビューで、フィニッシュの重さを動きと効果音で倍増させています。
『空の軌跡 1st』における「烈波無双撃」は、構図自体は近しいものの、連撃中の視点がエステルのやや斜め後ろになり、攻撃が一層パワフルに感じられるものに。
しかもこの連撃で敵が軽く吹き飛び、その隙を見逃さないエステルはジャンプで間合いを詰めつつ、左から右に払う攻撃を一閃。『空の軌跡FC』ではその場で回転しつつのフィニッシュでしたが、とどめの一撃もより力強さを増しました。

3Dモデルの導入で激しいアクションが表現しやすくなったのも、今回の進化を支える大きな要因でしょう。見た目の変化に伴い、バトル時の演出や表現も刺激的な仕上がりになっています。
そしてバトル面の進化は、見た目や演出に留まらず、なんとゲームシステムにも影響を与えました。『空の軌跡FC』のバトルは行動順のコマンド入力型で、『空の軌跡 1st』もそのシステムを受け継いでいます。
しかし『空の軌跡 1st』には、過去作にはなかった「クイックバトル」という新たなバトルシステムが導入されました。端的に説明すると、通常攻撃や回避、クラフトなどをリアルタイムに行うアクションバトルが、新たに追加されたのです。

「クイックバトル」を始めるのに特別な操作は必要なく、フィールド上にいる敵に攻撃を叩き込むだけというシンプルなもの。一般的なアクションRPGと変わらぬ操作感で、エステルたちを直接操作して戦うことができるのです。
実際に「クイックバトル」で戦闘に挑んでみたところ、アクションのテンポはかなり早めでスピーディ。今時のアクションに慣れたユーザーでも、満足できるプレイ感だと感じます。

また、攻撃の醍醐味もアクションバトルの大事な要素です。『イース』シリーズを始めアクションRPGも長く手がけてきた日本ファルコムだけあって、素早さの中に手応えのある非常に心地よい仕上がりになっていました。
しかも、戦闘中にクイックバトルからコマンドバトルへの切り替えも可能なので、ある程度ダメージを与えてから、コマンド入力で的確に敵を殲滅する……といった遊び方もできそうです。

コマンドバトルはアクションを好むゲーマーにとっては慣れないシステムでもあるため、『軌跡』シリーズに興味があってもバトルを理由にこれまで遊んでいなかったというユーザーもいるでしょう。しかし、バトルをアクションで楽しめるとなれば、きっと本作を遊んでみたくなるはず。
戦略で強敵を打倒するコマンドバトル。リアルタイムな状況判断とテクニックで立ち向かうクイックバトル。どちらも存分に楽しめる『空の軌跡 1st』は、“JRPGのいいとこ取り”と表現しても過言ではありません。

キャラクターを含めたビジュアル、演出、カメラワーク、そしてバトルと、余すところなく進化を遂げた『空の軌跡 the 1st』は、2025年9月19日に発売されます。プラットフォームは、ニンテンドースイッチ/PS5/Steamです。
パッケージ版は、通常版(8,800円 税込)のほか、サウンドトラックや書籍、準遊撃士のバッジをモチーフとしたピンズなど、様々なアイテムが同梱される限定版「ブレイサーBOX」(15,400円 税込)もあります。
「ブレイサーBOX」に付いてくる書籍は、「空の軌跡」シリーズの舞台となったリベール王国について、400ページもの膨大な資料で綴った1冊です。また、幼い頃のエステルやヨシュアの成長を収めたブロマイドをフォトアルバムにまとめたフォトアルバムもあり、ファン必携です。
いずれも「ブレイサーBOX」でしか手に入らないアイテムばかりなので、欲しい方は早めの予約がおすすめ。詳細については、公式サイトの商品情報も併せてご覧ください。予約は、ファルコムショップにて受付中です。このほかにダウンロード版もあり、パッケージの通常版と同額の8,800円(税込)で配信されます。
名作RPGが装いも新たに生まれ変わる『空の軌跡 1st』は、『軌跡』シリーズが迎える“もうひとつの始まり”に他なりません。あなたの前に開かれる扉を、どうぞお見逃しなく。
『空の軌跡 the 1st』公式サイトはコチラ!