
「カードゲーム作りたい!」――Crazy Raccoon(CR)代表おじじ氏の深夜の“鬼電”から始まった、新たなトレーディングカードゲーム『Xross Stars(クロススターズ)』プロジェクト。CR、ぶいすぽっ!、Neo-Porte、そして個人勢まで、インターネットシーンを彩る“スター”たちがカードとなって“クロス”する本作は、「名場面の追体験」を実現し、新たな“推し活”の形を提供する、カジュアルでありながら奥深いカードゲームです。
元『ポケモンカードゲーム』プロでもあり本作の開発プロデューサーを務めるGame & Co.の久保敦俊氏と、CRおじじこと高野大知氏に、『Xross Stars』誕生の経緯、ゲームシステム、そしてこのカードゲームに懸ける熱い想いを伺います。

■高野大知(おじじ)氏 写真右
プロゲーミングチーム「Crazy Raccoon」を運営する株式会社Samurai工房・代表取締役。俳優・焼肉店のオーナーなどを経て、2018年にプロゲーマーの友人たちとCrazy Raccoonを結成。自身も大のゲーマーで、人気インフルエンサーたちを集めたコミュニティ大会「CRカップ」の主宰も務める。■久保敦俊氏 写真左
開成高等学校を卒業後、慶應義塾大学総合政策学部に入学。在学中の2016年より株式会社CyberZにてデジタルカードゲーム関連の大会運営やプロリーグ設立に従事。2019年4月より日本初のポケモンカードプロプレイヤーとして株式会社RUSH/カードラッシュよりスポンサーを受け、活動開始。その後2022年2月より株式会社バーチャルエンターテイメントに入社、グループ内で株式会社Game & Co.を設立後、2023年取締役に就任と同時にプロ活動を引退。『Xross Stars』では開発プロデューサーを務める。
◆深夜の“鬼電”から始動! プロジェクト誕生秘話
――まずは、『Xross Stars』のプロジェクトはどのように生まれたのでしょうか?
おじじ:僕が最初に「カードゲーム作りたい!」と言い出したんです。はじめはCRだけで作ろうとしてたんですが、星さん(※)と一緒にやりたいなと思い、深夜に鬼電して誘いました(笑)そうしたら賛同してくれて、『ポケモンカードゲーム』プロ経験もある久保さんが加わり、本格的にスタートしました。
※星崇祥氏
「ぶいすぽっ!」を運営するバーチャルエンターテイメントの創業者であり代表取締役。Game & Co.の代表取締役も担う

――なぜ、ぶいすぽっ!とタッグを組もうと考えたんですか?
おじじ:CRとぶいすぽっ!のファン層は、棲み分けられていて完全には被っていないものの、お互いを認知している、という絶妙な関係にあるんです。だからCRだけでなくぶいすぽっ!まで巻き込んだら面白そうだな、と思って連絡しましたね。
久保:最初はカジュアルな初期の『遊戯王』みたいなアイデアでしたよね。
おじじ:グーチョキパーのじゃんけんカードゲームみたいなものでした(笑)。ちゃんとやりたいと思っていたら、今のしっかりしたカードゲームの形になりました。Game & Co.さんのおかげです。

――おじじ氏はなぜカードゲームを作りたかったんでしょうか。
おじじ:作りたいものは色々あって、ゲームも作りたかったんです。星さんに「恋愛シミュレーション作りましょうよ」と相談したら、ウン千万と長い年月かかると言われて諦めました(笑)。カードゲームは作りたいものの中のひとつでした。
カードゲームである理由は、シンプルに僕が好きだから、というのはもちろん、CRファンがスマホ裏に入れられるサイズのものを求めていたので、喜んでもらえると思ったからです。
――おじじ氏自身はどのようなカードゲームをプレイされてきたんですか?
おじじ:『遊戯王』から入って『マジック:ザ・ギャザリング』『デュエル・マスターズ』『ヴァイスシュヴァルツ』『ガンダムカードゲーム』『ポケモンカードゲーム』など、子どもの頃からたくさんやってますね。
――カードゲーム制作はどのようなスケジュール感だったのでしょう。
おじじ:僕が星さんに電話してたのは2023年とかかな。当時は半年くらいでできると思ってたんですが、ぜんぜんそんなことなかった。印刷とか流通とか含め、カードゲーム作るのって大変ですね。(笑)

久保:本格的なカードゲームにするため、新規事業担当でTCGの知見もある自分に白羽の矢が立ちました。まず仲間集めとして、TCG業界に精通している株式会社Sekappyの高桑さん、『マジック:ザ・ギャザリング』プロの八十岡翔太さんと、『シャドウバース』開発に関わった清水さんにお声がけしました。最初の3ヶ月で基本ルールを作ったら面白くて、「もっと練れば新奇性の高いカードゲームになるな」と本格的に調整していきました。
――『ポケモンカードゲーム』の人気爆発や『hololive OFFICIAL CARD GAME』などの波に乗ったというわけではないんですね。
おじじ:そうではないですね(笑)。作っているときに『hololive OFFICIAL CARD GAME』さんが発表されて「ナニィー」ってなりました(笑)
久保:当時は「ナニィー」って感じでしたが、今では逆に小売店さんや流通の方がストリーマーやVTuber業界の熱さを感じてくれて、話がスムーズにいくこともあります。思わぬ追い風でした。
――デジタル版が展開されることはあるのでしょうか?
久保:現状ではアナログカードゲームの体験を中心に考えています。ですが我々は既存のカードゲームに参加する形ではなく、1から作っているので、他のメーカーがやっていない奇想天外な展開も含めて検討していきたいですね。

◆CRカップやV最を“追体験”できるカードゲーム
――『Xross Stars(クロススターズ)』という名前にはどんな意味が込められているのでしょうか。
久保:CRやぶいすぽっ!といったIP名を入れず、一つのIPとして確立させる狙いがあります。さまざまな人を巻き込み、第一弾からは想像もつかない広がりをみせるという意味で、“スターがクロスする”『Xross Stars』です。
――早速ですが、ズバリ誰がカードになるんですか?
久保:第一弾は「ぶいすぽっ!」「Crazy Raccoon」、「Neo-Porte」や個人の方、合計24名が登場します。描き下ろしイラストは150枚を超えます。

――ちなみに、第一弾のテーマなどはあるのでしょうか?
久保:FPSがひとつのテーマです。メモリアカードやアタックカード(後述)ではFPSのシーンが中心で、最近のFPSっぽい雰囲気を感じてもらえると思います。
――ストリーマーやVTuber、eスポーツプレイヤーがカードになるんですね。
おじじ:どちらかといえば、「インターネットで活動している人」ですね。ゆくゆくはどのジャンルの方にも参加してほしいです。
久保:インターネットで活動している人であれば芸能人もアイドルもTikTokerも、というスタンスです。ただ既に参画しているタレントの方とストーリー(を持っていること)が必要です。
――というと?
久保:『Xross Stars』は4人のリーダーカードを選んでデッキを組みます。「あの時の4人」といった象徴的な組み合わせや「こんな4人いたら面白いかも」みたいな組み合わせを体験してほしいですし、紐付くカードも“過去あったシーン”をモチーフにして、「こういう文脈でこのメンバーが収録されているんだな」と理解いただけるようなものを目指しています。
CRカップであった胡桃のあちゃんのクラッチや、過去のおじじ賞のシーンなど、印象深いシーンをモチーフにしたものもあったり、なかったり…。

――カードに登場するタレントさんはどれほど関わっているんでしょうか。
久保:シーン選定とイラスト監修を本人に確認し、「このシーンがいい!」などの意見も伺っています。
――ワクワクしますね!おじじさん的に「いつかこのシーンカードにしたいな」みたいなものありますか?
おじじ:なんだろう、ありすぎて(笑)ありすぎるからこそカードゲームには適切かもしれませんね。強いて挙げるなら「第5回CRカップ『Apex Legends』(2021年5月)」で大妖怪がヴァルキリーのUltで優勝したところとか…今回あるかわかりませんが(笑)。
久保:大会の勝利シーンは積極的に盛り込みたいですね。過去の大会で生まれたシナジーや努力、優勝の瞬間をファンの方に形として残していければ嬉しいです。インターネットの文化は形に残りにくいものが多いので、事務所の垣根を越えたものを形に残すことにチャレンジしたいです。
――今後どのようなカードが登場するんでしょうか?
久保:カッコいいカードはもちろん、ネタっぽいカードや「わかる人が見たらわかる」カードも用意しています。カードを見る度に思い出してほしいですし、物語があってそれが形になっているのが『Xross Stars』が持つ唯一無二の魅力です。ユーザーの皆さんにも「これってこのシーンじゃない?」とか、どんなタレントに参加してほしいかなど考えて期待していただきたいです。
◆“カジュアルであり、奥深い”ゲームシステム
――『Xross Stars』はどのようなゲームシステムを目指したんでしょうか。
久保:最初は1ターンで終わるラウンドを繰り返す「Bo9」や「Bo11」も検討しました。「数分の体験を重ねる」か「1試合30分程度のガッツリしたもの」の2軸でルール制作をすすめ、前者の肌感が良かったのでそちらを軸にしました。最終的にはゲーマーにとっては馴染み深い「Bo3」に落ち着きましたが、それだけでもカードゲームとしては新奇性のあるチャレンジングなものだと思います。
Bo3といいつつ同じ条件で3ラウンド戦うのではなく、ラウンドごとにタクティクスカード(必殺技的なカード)が増えたり、使えるプレイポイント(いわゆるマナのようなもの)が増えたりして、体験が変わっていく、どんどんハチャメチャバトルになっていくという、少しゲームらしいものになっています。
――ラウンドを重ねるに連れて選択肢が広がっていくんですね。
おじじ:僕も細かい部分で議論を交わすなどしていましたが、カードゲーム好きな人たちが作ってくれたので信頼していましたし、良いところに落ち着いたと思います。

――カジュアルにも遊べるとのことですが、どんなデザインになっているのでしょうか。
久保:Bo1で遊べるモードもあります。カジュアルに遊べるようにはしつつ、Bo3やタクティクスカードで戦略性も持たせ、競技的にも遊べる良い塩梅になったと思います。
カジュアルにプレイしてほしいので、わかりにくいものや無駄なところは排除しました。ルールの最初の思想に「サーチをしない、シャッフルしない、コインやサイコロを投げない」というのも決めていました。そもそもお互いターンに使う時間を短くしたいというのと、カードゲーム初心者の方はシャッフルが苦手な方もいるでしょうし、Discord対戦がしやすいようにサーチやシャッフルをなくしました。わかりにくい略称なども極力ないようにわかりやすく表記するなど、UI/UXも工夫を凝らしました。
――カードについて、バランス調整を実施しているのでしょうか?
久保:かなり念入りに実施しています。おじじさんから最初に「タレント同士に優劣をあまりつけたくない」とオーダーをいただきました。カードゲームとしては難しい調整なのですが、『Xross Stars』ではタレントに紐付いたリーダー、アタック、メモリアカードの3種のカードの組み合わせでバランスを取っています。
また、デッキにはタレントに紐付かない「エース」や「ニュートラル」カードもあり、これらでバランスを調整しているんです。リーダーカードの基本バランスは弾を重ねても崩さないようにし、「エース」や「ニュートラル」、必殺技のような「タクティクス」カードなどでアップデートや環境、アーキタイプを作っていく設計です。

◆目指すはファンの日常にある存在に―コミュニティ戦略と成功の形
――『Xross Stars』がどのように成功してほしいと考えていますか?
おじじ:めっちゃ流行ったら成功ですよね。個人的には「『Xross Stars』きっかけでだるまや一ノ瀬うるはちゃんのこと知った!」くらいのユーザーさんが出てくれたら、大成功じゃないかな。
久保:新しいファンの方がこのカードをきっかけに過去の名場面を知ってくれたら嬉しいですね。街中でスマホに『Xross Stars』を入れてくれている方がいたら嬉しいです。当たり前にみなさんの日常にある、プレイしていなくても持っている、みたいな。
後はファンの方が“好き”を表現する方法として『Xross Stars』を通じて「こういうデッキ作ったよ!」「このデッキで大会優勝しました!」といった具合で、新たに“好き”を表現する方法になってくれると嬉しいです。
――「推しのデッキで勝つ」って素敵ですね!ところで、カードゲームはオフラインの小さなコミュニティも目立ちますが、どのようにアプローチしていきたいと考えていますか?
久保:VTuberのイベントはどうしても一部の都市に集中してしまうことが課題でした。今回カードゲームとして展開するのであれば、地方の小さな店舗まで流通させたいと思っています。流通大手さんの協力の元、全国各地のカードショップ、家電量販店に『Xross Stars』がある状態を作ります。初心者向けのルール教室みたいなものも展開する予定です。
――少し気が早いかもしれませんが、大会なども開催されるのでしょうか?
おじじ:CRが関わるからには、競技シーンは大切にしたいです。競技的にプレイする方も大切にしたいですね。
久保: 私自身カードゲームのプロとして光をあててもらったので、本気で取り組んだ先にある世界は作っていきたいですね。
おじじ:『Xross Stars』の 入り口は簡単なんですけど、めっちゃ深いんですよ。しっかり実力が出る面白い試合になると思います。

――『Xross Stars』が持つ、他のカードゲームにない魅力とはなんでしょうか。
久保:たくさんありますが強いて挙げるなら、様々なタレントの方が気軽に入りやすいことですね。リーダー、アタック、メモリアの3枚があれば参入できるので、いろんな人が参入できる新たなプラットフォームにしたいです。将来的には対戦中に「この人も『Xross Stars』に入ってたんだ!」と驚いたり、そこからタレントさんを知ったりできると理想的です。
――では最後に、発売を楽しみに待つユーザーへメッセージをお願いします。
おじじ:「楽しんでください」に尽きます(笑)。僕自身も楽しいと思えて、みんなにも楽しんでもらうために作ったので、コレクタブルや競技、カジュアルに、いろんな形でとにかく楽しんでほしいです。
久保:『Xross Stars』だからこそできることがたくさんあります。このカードゲームがどうなっていくんだろう、どこまでいけるんだろうとワクワクして楽しんでほしいです。これからどんどん情報公開していきますので、楽しみにお待ちください!
――ありがとうございました!
インタビューを通して見えてきたのは、おじじ氏、久保氏をはじめとする開発陣の、カードゲームへの深い愛と情熱でした。『Xross Stars』は、CRカップやV最協といった熱狂の記憶を手に取れる形で保存し、ファンが「好き」を表現する新たな手段を提供します。
「インターネットの文化を形に残したい」という久保氏の言葉通り、本作がシーンの歴史を刻むプラットフォームとして、今後どのような広がりを見せていくのか、期待が高まります。『Xross Stars』第一弾は8月発売予定です。
<製品情報>
Xross Stars公式X:https://x.com/Xross_Stars
Xross Stars公式サイト:https://xross-stars.com/
『Xross Stars』ブースターパック第一弾「Luminous Daybreak」
1パック(8枚入り)440円(税込)、1ボックス(12パック入り)5,280円(税込)

