
◆もうベホマはやめて!『ドラクエII』シドー
ファミコンソフト『ドラゴンクエストII』のラスボスであるシドーは、邪教の大神官ハーゴンが自らの命を捧げて召喚した破壊神です。その異形の姿も印象的ですが、やはり一番インパクトを与えてくるのは「HPを最大値まで回復するベホマを何度も使ってくる」ことでしょう。
ただでさえ強いのに「また回復された!」という気持ちまで味わわされるのは、かなりの絶望感です。しかし、その一方で「あれ?ベホマを使われた割にはサクッと勝てたぞ?」と感じた人もいるのではないでしょうか。
その理由は、ファミコン版『ドラクエII』のシドーはHPが250程度しかないからです。ラストダンジョンであるハーゴンの城に出現するザコ敵のアークデーモンでもHPは210程度ありますので、これはお世辞にも高い数値とはいえません。
高いどころか低いとすら言えるHP設定は、おそらくゲームの容量不足によるものでしょう。しかし「攻撃は苛烈だったけど5~6ターンで倒せてしまったなぁ」では印象に残りづらく、激闘を演出できません。
ハーゴンの城で戦うことになるボス敵はバズズ、ベリアル、ハーゴン、そしてシドーとベホマを習得しているモンスターが多く、これはスタッフによる苦肉の策のようなものだったのではないかと思われます。
時代は下り2020年11月。シリーズ10作目であるMMORPG『ドラゴンクエストX オンライン』にも最大8人のプレイヤーで挑める「パーティー同盟バトル」のボスとしてシドーが登場しました。そして、こちらのシドーはなんとHPが約50万もあります。

それを削りきるだけでも大変なのに、ご丁寧にベホマも使ってくるから手に負えません。一気に50万まで…とはいきませんが、一度唱えられるとHPが99,999回復してしまいます。
ベホマを使う条件はある程度決まっていたので、そのシチュエーションを極力回避すれば一度も回復させずに倒すことも可能でしたが、さすがに難しすぎたのかゲームのバージョンが進むのに合わせてベホマの使用率が下方修正されました。
まったく使われなくなるとそれはそれで寂しい気もしますので、よい落としどころなのではと思います。