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いじめられっ子は「変身」します!『あつまれ どうぶつの森』で釣れる「ヤマメ」の秘密とは【平坂寛の『あつ森』博物誌】

『あつまれ どうぶつの森』に登場する生き物を、生物ライターが解説!第55回は「ヤマメ」です。

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いじめられっ子は「変身」します!『あつまれ どうぶつの森』で釣れる「ヤマメ」の秘密とは【平坂寛の『あつ森』博物誌】
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※リアルの生物の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください!
『あつまれ どうぶつの森(以下、あつ森)』では、水辺で「つりざお」系のアイテムを使用することで、さまざまな魚類を釣り上げることができます。
なお一口に水辺といっても当然、海と川、池とで釣れる魚が大きく違います。さらに海なら岩場、桟橋、川なら河口や崖の上という具合に、地形によっても出現する魚種が細かく変わってくるのです。
これは、それぞれの魚の現実世界における生態を反映して割り振られているようで、プレイしていると「なるほどこの魚はここにいたのか!」と納得することが多々あります。

冷たく綺麗な水を好むヤマメ


たとえば、今回紹介する「ヤマメ」は平地の川や池にはいっさい出現せず、崖の上の水辺でのみ釣り上げることができます。


ヤマメは大きなもので体長30センチほどのサケ科の魚で、水の冷たい清流を好みます。ゆえに、日本本土では基本的に山間の渓流でしか見ることができません(北海道などの寒冷地では、平地を流れる川で見られることもあります)。

『あつ森』で崖の上=標高の高い場所でしか見られないのはこの辺りの生態をうまく落とし込んだ設定といえるでしょう。


ちなみに同じようなポイントにしか出現しない魚にイトウが挙げられますが、彼らもヤマメと同じく冷水を好むサケ科の魚類です。
漢字では「山女」と書き、川魚の中でもとびきり繊細かつきらびやかな美しさを誇ります。

▲リアルの「ヤマメ」。したたる水玉のような模様が実に美しい魚です。

ヤマメは肉食性で、昆虫などの小動物を食べます。ただし、彼らの暮らす涼しい土地の川は水が綺麗なかわりにエサとなる生き物が少ないため、一本の川における生息数はかなり限られます。

海へ降りると「サクラマス」にクラスチェンジ!


また、ヤマメはテリトリー意識の強い魚としても知られています。幼魚の頃は群れることもありますが、ある程度大きく育つと、餌が多く流れてくる場所を選んで1匹ずつのなわばりを作るようになります。より良い場所にはより強い個体から陣取り、他の個体が侵入してくると凄まじい勢いで追い払うのです。

細い渓流にあっては、エサ自体もそれが流れてくる空間も非常に限られます。特に弱い個体にとってはなわばりを持つことすら満足にできないわけですから、死活問題です。
しかし、追い詰められた「弱いヤマメ」は驚くべき行動に出ます。

なんと、川を降って大海原へと飛び出すのです。
海に出たヤマメは海の幸を食べながら一年かけてとても大きく育ちます。その姿たるや大きなもので70センチ、体重は4キロほどにも達し、もはやヤマメと同じ魚とは思えないほど。
実際、一般的にはこうした海へ降った個体をヤマメと区別して「サクラマス」と呼びます。姿も呼び名もまったく違うのに同じ魚……というのはちょっと不思議な感じがしますね。

▲サクラマス。ヤマメと同じ魚とはとても思えない変貌ぶり。

サクラマスたちは産卵期になると故郷の河川へ戻り、自分を追いやった「地元残留組」のヤマメたちとともに卵を産みます。
ヤマメとの体格差は歴然かつ、産める卵の数も圧倒的にサクラマスの方が多いわけですから、一見すると「海へ追いやられた方が結果的にお得!」という風に見えてしまいますが、実際はそうとも言い切れません。

渓流にはエサが少ない代わりにヤマメを捕食するような大型魚もいません。居場所さえあれば、貧しいながらも安全な暮らしが確保されるわけです。


しかし、広い海にはエサこそ多いでしょうが、同時にすさまじい数の大型肉食魚や海鳥たちがサクラマス予備軍たちを狙って目を光らせているのです。そんな苛烈な環境を生き延びる「元ヤマメ」たちはごく一部。
生き残れば超勝ち組!とはいえ、これは一世一代の賭けといえるでしょう。

しかし、なんとなく「いじめられっ子のサクセスストーリー」を想起して、ついサクラマスたちに憧れと応援の気持ちを抱いてしまうしまうのは、人の情というやつなのでしょうかね。

『あつ森』博物誌バックナンバー


■著者紹介:平坂寛

Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。


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《平坂寛》
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