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『サガフロ リマスター』追加シナリオに携わったベニー松山氏は、ゲームノベライズの開拓者!―『ウィザードリィ』や『サガ』シリーズの新たな側面を文章で表現

『サガフロ リマスター』追加シナリオにも関わるベニー松山氏。その歩みや実績を、本作のリリースを記念してお届けします。

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『サガ』シリーズの7作目であり、プレイステーション向けとしては初のシリーズ作となった『サガ フロンティア』。複数の世界を内包するため多彩なシナリオが楽しめたほか、自由度の高さやキャラ育成の楽しさなど、いくつもの魅力でユーザーを虜としました。

この『サガ フロンティア』をベースに数多くの新要素を加えた『サガ フロンティア リマスター』が、4月15日にリリースされました。対応ハードは、ニンテンドースイッチ/PS4/Steam/iOS/Android。長年語られてきた名作が、遊びやすい環境で蘇ります。

『サガ フロンティア リマスター』は、高解像度のグラフィックや新機能、当時実装されなかった幻のイベントなどを盛り込んでいますが、最も見逃せない点のひとつと言えば、8人目の主人公「ヒューズ」の追加でしょう。ヒューズ編では、他の主人公7人分、つまり7つものルートを楽しむことができます。


ファンの注目が集まるヒューズ編のシナリオを手がけたのは、河津秋敏氏とベニー松山氏。河津氏は、『サガ』シリーズのほぼ全てに関わっており、生みの親としても知られています。シリーズにおける中心的な人物と称しても過言ではありません。

そしてベニー氏もまた、『サガ』シリーズと関わりの深い人物。しかも『サガ』関連のみならず、様々なゲームタイトルとの縁も持ちます。そのため、ベニー氏の活躍や歩みなどを知らない方も、少なからずいることでしょう。

そこで今回は、『サガ フロンティア リマスター』のリリースを記念し、様々な名作を生み出してきたベニー松山氏の著作や経歴などを紹介。『サガ フロンティア リマスター』でベニー松山氏の魅力に触れた方は、過去作などを手にとってみてはいかがでしょうか。

ゲームノベライズを切り開いた名作「隣り合わせの灰と青春」



ライターとして活動していたベニー氏の名が大きく広まったきっかけは、名作ダンジョンRPG『ウィザードリィ』を原作とした「小説ウィザードリィ 隣り合わせの灰と青春」でした。

この書籍が発売された1988年は、家庭用ゲーム機でいえばファミリーコンピュータ発売から5年が経ち、前年にはPCエンジン、そして同年にメガドライブが発売。まだ黎明期とも言える時期だったため、ゲーム業界にもまだ手探りな部分がいくつもありました。

その手探りのひとつが、ゲーム原作のノベライズです。今となってはジャンルとして確立されていますが、当時はまだコンピュータゲーム自体が多くの方にとって新鮮で、その魅力を文章で表現するノベライズという分野もまた、目新しいものでした。

当時はまだ馴染みのなかったゲームノベライズへと果敢に挑んだひとりが、このベニー氏です。題材となった『ウィザードリィ』は、3DダンジョンRPGの元祖的な存在で、国内外にも多数のファンがいる名作。ファンが多いほど、ノベライズが超えるべきハードルが自然と高くなるのは、いつの時代になっても変わりません。


しかも『ウィザードリィ』は、キャラメイクを経てダンジョンを攻略するタイプなので、ノベライズオリジナルのキャラクターを主人公に据えるほかありません。まだゲームノベライズが定着していない時代に、高い期待度に応え、オリジナルキャラで勝負する──この厳しい難問を、しかしベニー氏は見事な手腕で乗り越えました。

主人公・スカルダを筆頭にオリジナルキャラを魅力的に描いた点、ゲーム表現ではシンプルだった世界観を豊かな文章力で描写した筆致などが支持され、「隣り合わせの灰と青春」は高評価を博します。ですが、これらの魅力と同じくらい強調すべきなのが、ゲームノベライズとしての在り方です。


この「隣り合わせの灰と青春」は、『ウィザードリィ』の世界観だけでなくゲームシステムも積極的に取り入れました。物語は、寺院での蘇生失敗から始まり、施設や特別なアイテムを使っての転職、覚えるタイミングが前後する新呪文の取得、善・中立・悪を踏まえたキャラクター描写など、『ウィザードリィ』ファンお馴染みの要素がいくつも物語の中に落とし込まれています。

しかも、時にはゲームシステムを逆手に取ることもあり、キャラが職業を偽るといった場面も。ネタバレになるので詳細は避けますが、『ウィザードリィ』に詳しい人ほど、あのトリックには引っかかりやすいことでしょう。筆者も、この下りを読んだ時に「そうきたか!」と驚かされました。

まだゲームノベライズが一般的でなかった時代に、原作のゲームへ敬意を払い、愛情豊かに魅力とゲームシステムを文章に込めた「隣り合わせの灰と青春」。個人的にはこの小説の成功が、ゲームノベライズが持つ可能性を広げてくれたと考えています。少なくとも筆者は、この「隣り合わせの灰と青春」をきっかけに、後に様々なゲームノベルに手を出すようになりました。

ちなみに、高い評価を得た「隣り合わせの灰と青春」の人気は供給を上回り、後に発売された文庫版も含め、未だに市場ではプレミア価格で取り引きされています。ですが紙媒体にこだわらなければ、今は電子書籍版(Kindle)があり、600円でこの物語を堪能することも可能です。


なお、ベニー氏による『ウィザードリィ』ノベライズは、第2弾「風よ。龍に届いているか」や、「ウィザードリィ小説アンソロジー」に収録された「不死王」もありますが、この2作も電子書籍化済みなので、今なら手軽に読むことができます。『サガフロ リマスター』でベニー氏に興味を持った方は、この3作にも手を付けてみてはいかがでしょうか。

『サガ』シリーズの小説を、意外な形で複数発表


ゲームノベライズの確立に貢献したベニー氏は、以後も様々なゲームと関わり、各作品の魅力を文章で表現し続けてきました。その中でも『サガ』シリーズとの関係は特に長く、直近で言えば『サガフロ リマスター』のヒューズ編に加え、『インペリアル サガ』や『インペリアル サガ エクリプス』のシナリオにも携わっています。そのため、こうした動きは近年の『サガ』ファンにも知られていることと思います。

スタジオベントスタッフ公式サイトより

そしてベニー氏と『サガ』シリーズの関わりを遡ってみると、1997年に『サガ フロンティア』のシナリオ補完小説「ヒューズのクレイジー捜査日誌」を発表。なんと、20年を超える付き合いの深さが浮き彫りとなります

しかも、「ヒューズのクレイジー捜査日誌」のリリース形態は少し変わっており、攻略資料や設定イラスト、楽譜などをまとめた「サガ フロンティア 裏解体真書」内に収録されました。そのスタイルから、「短編小説なのかな?」という印象を受ける方もいると思いますが、原稿用紙換算だと驚きの300枚超え。攻略・設定集に収録される小説として考えると、破格のボリュームです。

さらに内容は、IRPO捜査官のヒューズが、『サガ フロンティア』で描かれた7つシナリオの全てに関わったと仮定し、ストーリーの統合を狙うというもの。ベニー氏自身が「まさにクレイジーきわまりない試みだった」と語るほど、チャレンジ精神に溢れる取り組みに挑みました。

その切り口から、『サガフロ リマスター』で追加されたヒューズ編との関連性が気になる方も多いと思いますが、「サガ フロンティア 裏解体真書」をお持ちの方は、実際にゲームを遊んで比較してみるのも一興でしょう。ただ、「サガ フロンティア 裏解体真書」も現在はプレミア価格なので、今から改めて入手するのは少々難しめ。新たな電子書籍化などに期待したいところです。

スタジオベントスタッフ公式サイトより

攻略本に小説を掲載する形での発表は、「サガ フロンティア 裏解体真書」だけでなく、以後も様々な『サガ』作品にて行われました。「サガ フロンティア2 アルティマニア」では、オリジナルキャラクター「ベエンダー」による狂言回しで、100年にわたる壮大な物語を紡ぎます。

その後も、「アンリミテッド:サガ 解体真書」や「ロマンシング サガ -ミンストレルソング- アルティマニア」など、スタジオベントスタッフ制作による『サガ』関連攻略本のほとんどに、ベニー氏は熱量の高い小説を書き下ろしました。

また、『サガ』シリーズではありませんが、『ファイナルファンタジー』シリーズのアルティマニア(攻略・設定集)にも、ベニー氏の小説が掲載されています。いずれも小説単体の書籍ではないため、一部のファン以外には知られにくい存在。ですが、見過ごしてしまうには惜しい作品ばかりなので、機会があればぜひ手に取ってみてください。

「BASTARD!!」の世界も文章で綴る! ただし、口惜しい点も……


ゲームノベライズの先駆けとなった『ウィザードリィ』関連や、『サガ』シリーズにおけるベニー氏の小説家としての活躍などを紹介してきましたが、この他にも様々なゲーム作品との繋がりがあります。

エクスペリエンツ公式通販サイトより

『ウィザードリィ外伝II 古代皇帝の呪い』(ゲームボーイ・1992年)のゲーム制作(シナリオ含む)に携わり、『新釈・剣の街の異邦人 ~黒の宮殿~』(PS Vita・2016年)の限定版にベニー氏執筆の小説「墜ちて修羅、鋼刃舞うは極夜の空」が同梱されるなど、広い年代にわたってゲーム作品との縁が続きます。

余談ですが、「墜ちて修羅、鋼刃舞うは極夜の空」は後に、新規エピソードを加えて単独で書籍化。エクスペリエンツの公式通販サイトで購入可能なので、興味がある方はそちらもチェックしてください。

プレイステーション公式サイトより

こうした活躍の中でも特に印象深いのが、漫画「BASTARD!! -暗黒の破壊神-」から派生したマルチメディア展開との関連です。ファンタジー世界を舞台とする「BASTARD!!」ですが、人気や知名度の高さに反比例し、ゲーム化された作品はかなり少なめ。その貴重なゲーム作品のひとつが、『BASTARD!! -虚ろなる神々の器-』(プレイステーション・1996年)です。

そして当時、『BASTARD!! -虚ろなる神々の器-』のシナリオを担当していたベニー氏の元に、ノベライズの話も舞い込みます。しかも「BASTARD!!」作者の萩原一至氏から届いたシノプシスは、漫画版の本編から数えて100年前の時代を生きる若かりしダーク・シュナイダーの物語を綴っており、当時のベニー氏曰く「面白いものになりそうだ」と直感したほど。


本編にも劣らぬ暴虐をもって征服の限りを尽くすダーク・シュナイダーは、油断のならない旧四天王に囲まれるも、それを歯牙にもかけずに新大陸を飲み込む覇道に挑みます。強大な魔力を存分に振るう一方で、まだ愛を理解できない幼い精神性も合わせ持つダーク・シュナイダーが、魔法の失われた新大陸で窮地に追い込まれる中、後の人格形成に影響を与える少女と出会う──届いたシノプシスを元に、ベニー氏が魅力的な“過去”を存分に創造したものが、小説「BASTARD!! 黒い虹」シリーズとなります。

味方でありながら、限りなく敵にも近い四天王を率いるダーク・シュナイダーの物語は、漫画本編とはまた異なる緊張感を覚えます。また、最強の大魔導士が魔法という支えを極限まで奪われた世界で、どのように戦うのか。「原作があるからこそ、比較する楽しさがある」というノベライズが持つ魅力のひとつを、この「黒い虹」シリーズで改めて思い知らされました。

後に四天王となる「アーシェス・ネイ」や「カル=ス」も登場し、その過去が描かれるのもファンとしては嬉しいところ。もちろん、「黒い虹」オリジナルキャラクターも魅力的に描かれて、特に敵として立ちはだかる「バッハ4世」の不気味さは、ダーク・シュナイダーに負けない存在感を放っています。


このように、多彩な魅力に満ちた「BASTARD!!」ノベライズの「黒い虹」は、しかし残念な点がひとつあります。それは、まだ完結していないこと。「黒い虹」は現在、2巻まで刊行されていますが、物語としてはまだ始まったばかり。少女と出会ったダーク・シュナイダーがその関係性を築き始め、バッハ4世の野望が更なる展開を迎え、四天王による暗躍も幕を開け……というところで、第2巻が終了。そして、第3巻以降の目途はまだ立っていません。

単体の小説としても、また原作のあるノベライズという点でも、十二分の魅力に満ちた作品ですが、途中で止まっているというのが現状です。「黒い虹」は電子書籍化もまだなので、改めて電子版で再開するといった新展開を、密かに期待するばかりです。



ベニー氏はこの他にも、コミック「ウィザードリィ外伝II 黄泉の覇王」の原作を手がけるなど、多彩な活躍と実績を積み重ねています。

今回は、その名を知らしめた最初の一歩であり、ゲームノベライズを切り開いた名作「隣り合わせの灰と青春」や、『サガ』シリーズとの深い関わり。そして、印象的ながら未完という口惜しさもある「BASTARD!! 黒い虹」を中心に取り上げてみました。


『サガ』シリーズとの関連を含め、今後ベニー氏がどのような作品を生み出してくれるのか。更なる活躍が聞こえてくることを待ちつつ、今は『サガフロ リマスター』をじっくりとお楽しみください。
《臥待 弦》
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