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岩の上にいるのはカルシウム補給のため?『あつまれ どうぶつの森』に登場する「カタツムリ」について【平坂寛の『あつ森』博物誌】

『あつまれ どうぶつの森』に登場する生き物を、生物ライターが解説!第45回は「カタツムリ」です。

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岩の上にいるのはカルシウム補給のため?『あつまれ どうぶつの森』に登場する「カタツムリ」について【平坂寛の『あつ森』博物誌】
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※リアルの生物の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください!
春ですねー。ぼちぼち春ですよー。
日中は暖かい日も多く、散歩が楽しくなる季節です。

『あつまれ どうぶつの森(※以下、あつ森)』では一年中見られたあのかわいらしい生き物が、いよいよ現実の日本でも活動再開する頃合いです。


そう!カタツムリです。

『あつ森』では北半球南半球にかかわらず、雨さえ降っていれば年間を通じて、昼夜を問わずに見つけることができるカタツムリ。
しかし実際には多くの種が真冬の間は土中や落ち葉の下などに潜って休眠するものです。
沖縄など温暖な地域では一年中で会うことができますが。

「カタツムリ」というのは俗称!



ところで、実のところ「カタツムリ」という名の生物は図鑑に載っていません。
「でんでんむし」などと同じく、陸生の巻貝を指す総称でしか無いのです。

なお、こうした巻貝を専門用語で「陸貝」と呼びますが、この陸貝の世界は実に奥深く、1ミリほどしかない微小な種からアボカドサイズの大型種までさまざま。形もバリエーション豊富で、それらのうちどのようなものを「カタツムリ」と呼ぶかは解釈が分かれるところです。

▲いかにもカタツムリらしい貝殻をもつヤマタカマイマイの一種

▲細長~い貝殻をもつキセルガイの仲間。

▲手のひら大にもなるアフリカマイマイという巨大な種もいます。

一般的には肉眼ではっきり姿が確認できるサイズで、コロンと丸みを帯びた貝殻をもつ陸貝、特にマイマイ類をカタツムリと呼ぶことが多そうです。

▲枝豆サイズの小さな緑色の体とかわいらしい顔が特徴のアオミオカタニシ。名前のとおり、上記のマイマイやキセルガイに比べるとタニシに近縁。この手の陸貝もカタツムリと呼ぶかは意見の分かれどころ。



ナメクジとカタツムリの関係


また、『あつ森』内でフータさんも語ってくれていましたが「貝殻を脱いだカタツムリがナメクジ」というのは俗説であり、ある程度は近縁ながらも、基本的に両者は異なる存在です。



ただし、ナメクジの仲間にもたくさんの種類が存在します。
彼らも決して一枚岩ではなくその進化の過程は種によってさまざま。
カタツムリのような陸貝が貝殻を退化させたものもいれば、ウミウシのようなもともと貝殻を持たない水棲貝類から直接進化してきた種もいます。

陸貝の中にはカタツムリ的な存在からナメクジ的な存在への進化の過程を思わせる、痕跡的な貝殻を備えたものも見られます。

▲ヒラコウラベッコウガイ。一見するとまごうことなきナメクジですが…。

▲背中にはなかば埋もれるように小さな貝殻が残っています。まるでカタツムリからナメクジへの進化の過渡期のようにも見えますね。

▲温暖な地域に見られるアシヒダナメクジ。これはもともと貝殻をもたない水棲貝類から進化した種だと考えられており、細部の形態や質感がふつうのナメクジと異なります。

岩の上にいるのはミネラル補給のため!


そういえば、『あつ森』のカタツムリは雨天時に決まって岩の上にだけ出現します。
カタツムリといえば草食性=葉っぱの上にいる、というイメージがありますから、この点に疑問を感じたプレイヤーも少なくないのではないでしょうか。


しかし、この演出はなかなか的を射ているものだと思います。自然界において岩は貝殻の成長に大きく影響するものなのです。


カタツムリの貝殻は外敵や乾燥から身体を保護するもの(ナメクジはその役割を多量の粘液で補っています)であり、体の成長にあわせて大きくしていかなければなりません。

となると、そのためには素材としてカルシウムを摂取する必要があります。
そこでカタツムリたちは自然下で石灰岩などを舐めてミネラル補給を行っているのです。

また、都市部ではコンクリートブロックや建物の外壁にカタツムリがへばりついているのを見かけることがあります。あれは決して道に迷ってしまったのではなく、生きていくために必要な栄養を摂取するための合理的な行動なのです。

▲雨のあと、コンクリート壁を這うウスカワマイマイ。実は壁を舐めてます。

というわけで、おそらく『あつ森』のカタツムリたちも貝殻を維持するために必死に岩の表面を舐めていたものと考えられます。
そう考えると、あのノロノロしたカタツムリも急に生き生きとして映りませんか?
『あつ森』開発者による生態描写へのこだわり(たぶん)に敬礼したくなりますね。

『あつ森』博物誌バックナンバー


■著者紹介:平坂寛

Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。


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