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アニポケ「ロケット団」はなぜ“悪役”を名乗るのか? 正義だけがいつも誰かを救うとは限らない

敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」。第2弾は、『ポケットモンスター』よりロケット団のムサシ・コジロウ・ニャース3人組の魅力に迫ります。

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(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku (C)Pokémon
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  • 悪の組織・ロケット団(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku(C)Pokemon (C)2017 ピカチュウプロジェクト
  • 「PUTITTOロケット団」カプセル版300円(税込)、BOX版300円(税別)(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku (C)Pokemon
  • タイムボカン(c)タツノコプロ
    アニメやマンガ作品において、キャラクター人気や話題は、主人公サイドやヒーローに偏りがち。でも、「光」が明るく輝いて見えるのは「影」の存在があってこそ。
    敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第2弾は、『ポケットモンスター』よりロケット団のムサシ・コジロウ・ニャース3人組の魅力に迫ります。


アニメ『ポケットモンスター』に登場する悪役と言えば、ロケット団だ。

ロケット団はとても珍しい悪役だ。なにしろ自分たちが悪役であると自覚しているのだから。
悪を自覚しているキャラクターは珍しくないが、悪「役」だと自覚しているキャラクターはそうそういないのではないか。

それは、彼らが登場時に必ず披露する前口上にはっきりと表れている。
「世界の破壊を防ぐため、世界の平和を守るため、愛と真実の悪を貫く、ラブリーチャーミーな敵(カタキ)役」

悪の組織・ロケット団(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku(C)Pokemon (C)2017 ピカチュウプロジェクト『ポケットモンスター』(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku(C)Pokemon (C)2017 ピカチュウプロジェクト
どうして彼らは悪役を自ら名乗るだろうか。物語を見ているとそこには彼らなりの美学が見えてくる。彼は、悪役にしかできないことがあると知っているのだ。

悪役とは、基本的に物語の中で主人公たちに倒されるために存在する。
その自覚通りに彼らはいつも最後には「やな感じ~」と言いながら吹き飛ばれるのが、ポケモンシリーズに欠かせない「お約束」となっている。『タイムボカン』シリーズに代表される、ドジな3人編成の悪役「3悪」の流れに属するタイプの悪役だ。

タイムボカン『タイムボカン』(C)タツノコプロ
ロケット団は悪役ではあっても悪とは言い切れない。ポケモンアニメシリーズは、毎回ロケット団メインのエピソードがあり、仲間との深い絆が描かれたり、ポケモンへの強い愛情を持っていることが描かれる。

例えば、『ポケットモンスター アドバンスジェネレーション』第6話「ロケット団!みだれひっかきでサヨウナラ!!」では、ロケット団が長年ともに戦ってきた相棒ポケモン、アーボックとマタドガスとの絆が描かれる。
密猟者が捕えていたアーボとドガース(アーボックとマタドガスはアーボとドガースの進化系である)を救い出すため、「ここは俺たちが引き受ける」と言い密猟者たちに素手で挑んで足止めするのだ。それどころか、自分たちのポケモンであるアーボックとマタドガスに仲間たちの面倒を見ろと言い残し別れを告げる。

ポケモンを失ったらサトシたちとも戦えない。そもそも彼らの役目は組織のためにポケモンを集めることである。
自分たちの損得を顧みずポケモンのために身体を張れる彼らは、主人公たちに負けないくらいポケモンを愛している。

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku (C)Pokemon『ポケットモンスター』(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku (C)Pokemon
そんな彼らは、なぜ悪役であることを辞めないのか。それはきっと、悪役だからこそ助けられるものがいると知っているからだ。そんな悪役としての美学が端的に描かれているのが、『ポケットモンスター 金銀編』の13話「ハピナスのハッピーナース!」だ。

かつてムサシは看護師を目指していた。貧しい家庭出身の彼女は看護師ポケモンのラッキーの学校に通い、とあるラッキーと友情を築く。
そして、ロケット団として再開した時にはハピナスに進化していたラッキーは、学校時代に借りた恩を返すためにムサシに食料を分け与えるが、センターの備蓄を勝手に持ち出してしまったハピナスは責任を問われることになってしまう。
ロケット団はそこで自分たちが食料を寄越すように脅迫したとでっち上げ、ハピナスの窮地を救うのだ。

「奪ったならいいけど、もらったってバレたら悪役の名がすたるニャ」とニャースはさわやかに言う。

この時彼らが悪役として汚名をかぶらなければ、ハピナスはポケモンセンターから追い出されていた。正義だけがいつも誰かを救うとは限らない、悪に徹することで救えるものもあると彼らは知っている。

まさに「世界の破壊を防ぐため、世界の平和を守るため、愛と真実の悪を貫く」の言葉どおりである。

そんな複雑で損な役回りを引き受けられるのも、彼らが酸いも甘いも噛み分けた大人だからだ。子どものサトシにはまだできないやり方でポケモンたちを守る彼らの姿は、ドジなくせにかっこよくて、こんなに大人になれたらいいなと子ども心に思わせてくれるのだ。
《杉本穂高》
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