はじめに紹介されたのは、イベント機能です。従来、サウンド制御はプログラマが担当するもので、イベントに合わせてサウンドの再生や停止をプログラマが直接制御していました。これがCRI ADX2のイベント機能を用いることによって、サウンドの再生や停止を指示するのではなく、イベントを指示する形に変わります。
例えばミサイル発射時のサウンドだと、従来の方法では発射イベントに合わせてミサイルの発射音の再生と、続くミサイルの飛行音の再生指示とが必要でした。これがイベント機能を使うと、発射イベントに対応した「発射キュー」をCRI ADX2に行うだけで、まとめて同様の処理を行えるようになります。
イベントに対する指示は「キュー」と呼ばれ、プログラマはこの「キュー」に対して音量やピッチといった部分を決めることが可能です。また、「キュー」はシーケンサーが起動する仕組みになっており、再生停止やパラメータの変更といったアクションを配置できるようになっています。先のミサイル発射時のサウンドを例にすると、ミサイル着弾キューに「飛行音を停止するアクショントラック」を配置することで、着弾に合わせてちゃんと飛行音が停止するようになります。
また、セレクタ機能を使えば、キャラクターがいる場所に応じて土の上の足音と草の上の足音を切り替えたり、鳥のさえずりと川のせせらぎによる昼の再生音とふくろうの鳴き声と虫の鳴き声による夜の再生音とを切り替えたりもできます。
次に紹介されたのは各種ゲームエンジンへの対応についてです。押見氏によるとやはりゲームエンジンの対応に関する問い合わせは多いとのことで、CRI ADX2ではCOCOS2D、CryEngine3、Marmalade、OROCHI3、Unity、UnrealEngine4などに対応しているそうです。Unreal Engineについては、ADX2 for Unreal Engine 4というプラグインが用意されており、ゲーム実行中にCRI ADX2のオーサリングツールでパラメータ調整を行えたり、Unreal Editorとの連携、BlueprintによるAtomライブラリの制御もできるようになっています。
チーム製作環境をサポートするために、プロジェクトをワークユニット単位で分割することも可能になっています。複数のサウンドデザイナーごとにワークユニットを準備して開発を進め、それぞれのファイルをプロジェクト管理下にあるフォルダにコピーするだけで
、簡単に各人の作業を取り込むことができるのだそうです。
CRI・ミドルウェアにはADX、HCA、HCA-MXといったオリジナルの音声コーデックがあります。HCA-MXは、HCAと同程度の圧縮率と高音質の音声コーデックなのですが、複数再生時の負荷がとても低いというのが特徴です。ゲームでは同時にたくさんのサウンドが再生されることが多く、仮に最適化して1音あたりのCPU負荷を1%に下げたとしても、16音を再生するとその負荷が16%になってしまいます。そこでもっともCPU負荷の高いMDCT処理を1回だけにするというアルゴリズムを構築し、16音再生時でも数%の低CPU負荷を実現したのだそうです。このため、HCA-MXは、特にスマートフォンや携帯ゲーム機に最適な音声コーデックになっています。
講演の最後には、本年よりCRI・ミドルウェアに勤務している増野宏之氏が登場しました。増野氏は「次世代機くらいのCPUだと、曲を読み込んだだけでビートを簡単に得られるレベルまで高速化されています」と語りました。さらに2013年の秋にビート検出をCRI ADX2に実装したいと思っていると続け、ピッチ検出と合わせて今後のサウンドインプットへの対応について強調する形で講演を締めくくりました。
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