本企画「RETRO51」もそのような「振り返り」の一部ではありますが、ゲームデザイナーの須田剛一氏とレトロゲームを探訪することにより、ただのゲーム業界の趨勢を懐かしむだけではなく、「カルチャーとしてのビデオゲーム」について考える機会になればと思っております。
既に30年以上あるゲームの歴史について、過去を見つめることでこれからの展望を探る。発売当時は見向きもされなかったが、歴史的な眼差しにたってみると重要であったタイトルの数々。単なるビジネスや売上といった業界的な話題にとどまらず、須田剛一が生きた「カルチャーとしてのビデオゲーム」を振り返ることが本企画の隠れた狙いです。
さて第一回目の取材先は渋谷会館モナコ。センター街の入り口にお店を構える当店は、渋谷に足を運んだ方ならば、看板くらいは見たことがあるでしょう。30年以上続くゲームセンターとしてその歴史はかなり古いものですが、残念なことに今年の8月18日の閉店となってしまいます。
ならば閉店前に須田氏と共に訪問しようと、地下1階から5階までに至る全フロアに足を踏み入れてきました。今回はそんな長い歴史を持つ渋谷会館モナコの最後の姿を映したフォトレポートをお届けします。
蒸し暑い夏の天候の中で訪れた渋谷会館は、センター街のビルの中でも最古のものと思しき貫禄のある姿で迎えてくれました。まずは一同で最上階の5階に上り、上から順にフロアの様子を楽しんできました。
5階と4階は基本的には対戦格闘ゲームが数多く設置されています。最新の『鉄拳タッグトーナメント2』や『ブレイブルー クロノファンタズマ』といったタイトルはもちろん、『ストリートファイターIII 3rd Strike』や歴代のザ・キング・オブ・ファイターズのシリーズが稼働しており、今でも格闘ゲームプレイヤーには人気です。
格闘ゲームはあまりプレイしないという須田氏ですが、ここは敢えて『北斗の拳』をオススメして対戦を行いました。ちなみに筆者は嫌がらせのようにトキを使用、北斗有情破顔拳をぶっ放すも外してしまうという恥ずかしいプレイを見せてしまいました。
3階にはネットワーク型の大型筐体のゲームが稼働しています。どれも2000年代に登場した新しいアーケードゲームであるため、今回の趣旨とは外れますが、須田氏は一時期、ネットワーク対戦型の麻雀ゲームにはハマっていたそうです。麻雀ゲームの筐体の上に置かれた灰皿はまさに子供の立ち入りははばかられる大人の世界。ちょっと息苦しいですが、これまたゲームセンターの雰囲気の一つでしょう。
2階は音ゲーコーナーでした。朝早くにも関わらず、女性の常連客が訪れており、そのストイックなゲームへの姿勢に須田氏は感銘を受けていました。スマートフォンなどでのカジュアルなゲームが世間的にはもてはやされる昨今ですが、今でもアーケードゲームを愛する人々はいるところにいるものです。
また窓際に置かれていたパンチングマシーン『ハードパンチャー はじめの一歩』は、歴戦の強者たちによる鉄拳で側面がはげ落ち、かなりのビンテージ感を感じさせるものです。「ストレートパンチ以外厳禁!」という張り紙も、ゲームセンターにたむろした人間には非常に懐かしく、様々な記憶が蘇ってきます。
最後に今回のメインディッシュとなる地下一階のレトロゲームコーナー。渋谷会館オーナーの方は、今でも一番お客さんが多いのはこのレトロゲームコーナーだとおっしゃっていました。その発言の通り、まだ午前中にも関わらず、かなりの数のお客さんで賑わっていました。
数あるレトロゲームから須田氏が選んだタイトルは、まず『VSスーパーマリオブラザーズ』。ご存知の方も多いかもしれませんが、『スーパーマリオブラザーズ』のアーケードバージョンです。基本的にはオリジナルバージョンと変わりませんが、敵の量が増えていたり、キノコの数が少なかったり、アーケード仕様のハードバージョンです。
次は初代『ファイナルファイト』。ベルトスクロールの傑作としても有名な本作は今でもアーケードで人気です。須田氏は自身と年齢が一緒なコーディを使用。筆者はハガーを使用して助太刀しましたが、かなり厳しいゲームバランスであり、2面ボスまで到達するのもやっとでした。
様々なゲームをプレイする中で須田氏が気に入った作品は『タンクフォース』。1991年にナムコからリリースされた作品。一見、パックマンのようなドットイート系のシンプルなアクションゲームに思わせながらも、自陣を防衛するという戦略性の高いシステムは「これは今でも面白いね!」と須田氏を唸らせていました。
以上、渋谷会館モナコの全フロアを回りましたが、まだまだ遊び足りないように思えました。狭いスペースにも関わらず、本当に多種多様なタイトルが稼働しており、これらが遊べなくなると考えるとやはり寂しい気持ちが残ります。筆者も渋谷会館の地下一階ではシューティングゲームをプレイした思い出が数多くあるため、閉店前にもう一度は足を運ぼうと思います。
さて、後編では近場の喫茶店に移動して、須田剛一氏の幼少時代まで遡るゲームセンターの思い出から、レトロゲームとは何か、についてまで深く語ったインタビューをお送りしたいと思います。
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