シリコンスタジオは「エージェント」「ソルーション」「コンテンツ」「ミドルウェア」の4つの事業を柱に、ゲーム・映像業界向けの、さまざまなサービスを展開している企業です。
このうちミドルウェアスタジオでは、「YEBIS」「DAIKOKU」「BISHAMON」などの描画関連ミドルウェアを中心に、ネットワークやアニメーション、動画関連、CG制作プラグインなど、さまざまなミドルウェアを開発。多くのタイトルで採用されています。
スピーカーで、『OROCHI』の開発を主導した新井タヒル氏は、海外のゲームエンジンが続々と日本に上陸する中、はじめての「日の丸」ゲームエンジンであることをアピールしました。
「OROCHI」には同社の「YEBIS」「BISHAMON」をはじめ、12個のライブラリと40以上のツールが実装されています。Windows/Xbox360/PS3の同時開発に対応し、今後はVitaにも対応予定。マルチスレッドをはじめ、各プラットフォームへの最適化機能もサポートします。ドキュメントをはじめ、日本語でのサポート体制も整備される予定です。
ゲームエンジンは、レンダリングやメモリ管理、マルチスレッドシステムなどを提供し、「OROCHI」の中核となる「Core」を中核に、グラフィックス、アニメーション、サウンド、ムービー、AI、ネットワークなどから形成されています。
フィルター機能では「YEBIS」、エフェクト機能では「BISHAMON」と、同社で実績のあるミドルウェアを搭載。物理ライブラリではnVidiaの「PhysX」と、フリーの「bullet」を搭載しています。ゲーム開発に便利な追加機能を提供する「ユーティリティ」ライブラリでは、簡易マップエディタでレベルデザインをざっと行い、ゲーム内容を検証できる機能なども盛り込みました。
UIは他のゲームエンジンと同様に、ゲームエディタ上で直感的に進めていくスタイル。特筆すべきは、これらがすべて「日本語」UIで操作できる点です。エディタ上でゲームを実行しながら、右クリックでキャラクターのプロパティ画面などを開き、パラメータを調整して、即在に反映させる、なども簡単にできます。
ドキュメント類はオンライン上にWiki形式で提供され、各ツールから直接アクセスできる仕組み。ライブラリのアップデートに応じて更新されるため、常に最新の情報が入手できるとしています。同社のミドルウェアと同水準でサポートが受けられることは、間違いないでしょう。
講演ではあわせて「YEBIS」「BISHAMON」の最新機能についても紹介が行われました。「BISHAMON」ではGPUパーティクルが実装されたほか、パラメータをリアルタイムに制御することも可能になったとのこと。このほかエフェクトデータを外部参照機能や、連番静止画像の出力機能も近日リリース予定とのことです。
講演後、展示ブースで新井氏に追加取材を行ったところ、「OROCHI」の開発思想について、さらに詳しい話が伺えました。
「Unreal」や「Crysis」エンジンなど、海外では著名なゲームエンジンがいくつか存在しますが、その多くはアプリケーションに紐づいています。それぞれ元となるFPSがあり、そこで練られたエンジンが外販されたという形です。そのため時として、日本の多用なゲームデザインに対応しづらい傾向もみられました。
「OROCHI」は逆の発想で、これまで様々なミドルウェアを開発してきた同社が、過去のノウハウや資産を結集して作り上げた、ボトムアップ型のゲームエンジンとなっています。開発においても、国内ゲームスタジオのヒアリングをベースに仕様が策定されており、より現場のニーズに応えたものになっているとのことです。
その一例として上げられたのが、主要プログラム言語です。海外の大手スタジオでは、プログラマーがゲームエンジンやスクリプトエンジンを作成し、その上でゲームデザイナーやレベルデザイナーがスクリプトを記述して、レベルデザインやイベント作成などを実装する形式が広まっています。この背景にはFPSを筆頭に、ゲームのフォーマットが固まりつつある点があります。
しかし、日本のゲーム開発現場ではゲームデザイナーが策定した仕様を元に、プログラマーが実装するスタイルが中心です。そのため「OROCHI」でもスクリプトではなく、プログラマーがC++などの言語でプログラムを記述するスタイルがとられています。これもゲームデザイン重視の日本の開発スタイルにあわせたため。ゲームデザイナーには企画やアイディアといった、本来の作業に注力して欲しいというわけです。
逆に同社としても、ミドルウェアの販売からゲームエンジンの提供という、新たな挑戦に足を踏み入れたことになります。これもスタジオの統廃合など、ゲーム業界の再編が進む中で、新規スタジオに早く技術面でのキャッチアップを果たして、ハイエンドな開発を行って欲しいという思いから。こうした業界的なニーズの高まりを受けて、開発がスタートしたとのことです。
同社ではトライアル版の提供も行っているとのこと。関心があればぜひ問い合わせて欲しいと話していました。
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