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【GDC2011】ゲームの完成前に予約で資金集め、前代未聞の取り組みで制作『ナチュラルセレクション2』

GDCのビジネス・マネジメントトラックで2日、Unknown Worlds Entertainmentの創立者、チャーリー・クリーブランド氏は講演「1 Hour Video Game MBA」で、自らの軌跡を振り返りました。

ゲームビジネス 開発
【GDC2011】ゲームの完成前に予約で資金集め、前代未聞の取り組みで制作『ナチュラルセレクション2』
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GDCのビジネス・マネジメントトラックで2日、Unknown Worlds Entertainmentの創立者、チャーリー・クリーブランド氏は講演「1 Hour Video Game MBA」で、自らの軌跡を振り返りました。

かつてないビジネスモデルで挑戦を続けるチャーリー・クリーブランド氏


日本では馴染みの薄い同社ですが、FPSとRTSをマッシュアップさせた新機軸『ナチュラルセレクション2』(NS2)の開発で、正式サービス前から大きな旋風を巻き起こしています。オンラインゲームにもかかわらず、一本いくらのパッケージゲームのビジネスモデルを採用し、開発段階から有償による先行予約を開始したのです。

資金をパブリッシャーに頼らず、投資家とユーザーからの直接支援でまかなうという大胆なスキームに業界は唖然となりましたが、開発は粛々と進行。昨年7月27日にα版がリリースされ、39.95ドルを払ってスペシャルエディションを購入したユーザーによって、日夜テストプレイが行われています。有償予約はデジタル販売のSteam経由で行われ、α版の公開と共に停止。現在はβ版の開発が進められています。

ゲーム自体もユニークで、プレイヤーはエイリアンと海兵隊のチームに分かれて激突するのですが、単なるFPSではなく、両軍に指揮官プレイヤーが存在するのが特徴です。指揮官プレイヤーは戦場をトップビュー画面で把握でき、RTSのように自軍を指揮して戦えます。プレイ人数は16対16の最大32人でマルチプレイ専用。スクリプト言語のLuaで開発されており、シナリオのカスタマイズにも対応しています。

FPSとRTSのマッシュアップ「ナチュラルセレクション2」有償先行予約という販売方法に業界は騒然となった


このように革新的な挑戦を進めている同社ですが、クリーブランド氏は「今年は失業して十周年だ」と冗談まじりに切り出しました。同氏は十年前まで某企業でプログラマーとして働いていましたが、業績悪化に伴いリストラの憂き目に。失業中、自分が本当にやりたいことは何なのか、改めて考え直したそうです。

同氏が出した答えは『Half-Life』のMODとして『ナチュラルセレクション』を開発すること。現在までに200万回以上のダウンロードと、20億分にも及ぶプレイ時間を記録する大ヒットを記録しました。この実績を元に投資家から資金調達を行い、起業。続編『2』の開発に乗り出したというわけです。講演内容もタイトルにあるとおり、本来ならMBAで学ぶような内容を1時間に凝縮したような、濃密な内容となりました。

講演は方針・始動・成長・意味という四部構成で行われました。第一章「方針」では、レッドオーシャンではなくブルーオーシャン戦略の重要性について指摘。まるっとまとめると、企業は競合他社のひしめく既存市場に参入するのではなく、新しい市場を作り出し、自社で独占すべきで、その好例がWiiというわけです。

Wiiの成功はブルーオーシャン戦略の代表例だビジネスプランは書くだけ無駄。さっさと燃やそう企業は「小さく肥えて幸せに」が理想


第二章「始動」は起業時の心構えについてで、「最悪のケースと最高のケースを常に念頭に置く」「ディスカッションが気軽にできるパートナーを見つける」「未来は予測不可能、ビジネスプランは書くな」とコメント。『NS2』はまさに、その見本だったと続けました。

実際、α版のリリース時には多くの問題が発生したとのことですが、早期に販売を開始したことで、さまざまなユーザーからのフィードバックが寄せられました。収益が上がったのもさることながら、それを元に開発を進められるようになったことが、何よりの成果だということです。

第三章「成長」では、スクリーン上に日本語で「七転八起」と表示され、企業の成長には根気が必要であることが強調されました。企業は成長過程に応じて固有の問題が発生します。経営者はこれらに一生向き合う必要があり、それだけの根気が必要だというわけです。その根気がなければ、同じ問題にばかりつまづくことになり、成長はおぼつかないと続けられました。

企業は成長過程で、それぞれ異なる問題が発生する怪我をする前に絆創膏を貼る人はおらず、雇用も同様だ自分の内に秘めた情熱を信じよう


また企業は「Small, fat and happy (小さく肥えて幸せに)」であるべきだといいます。自社製品が何であれ、それに対応する市場は存在する。もし品質が保障されているなら、企業規模の調整で利益は出ると語ります。また「企業は収入があるという理由で社員を増やしてはならない。火傷をした時に増やすべきだ」と、会社を最低限の規模に抑えることが重要だと指摘しました。
 
最終章「意味」とは、その名の通り「働く意味」についてです。起業したからには、自社の開発した製品を販売する必要があり、そのためには自社製品に情熱を注ぐことが大切です。クリーブランド氏もまた、会社に毎日通勤する理由とは、自らやりたいこと、やらなければならないことがあるからだと語りました。「あたなはどのようなゲームを作りたいですか?」この言葉とともに講演は終了。それは聴衆に対して、自らの原点を見つめ直す必要性を語っているように思われました。
《ひきちこうき》
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