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今どきゲーム事情■杉山淳一:『A列車で行こう8』デフォルメと現実の間〜京浜急行電鉄の品川駅−羽田空港駅、こだわりの再現に挑戦!

 『A列車で行こう』シリーズと言えば、都市づくりゲーム、鉄道経営シミュレーションの代表的なタイトルです。第1作が誕生してから23年目にあたる今年、PC版としてはシリーズ8作目の『A列車で行こう8』が誕生しました。ゲームシステムは前作『A列車で行こう7』を踏襲しつつ、フル3D描画へと大進化。収録車両数も大幅に増やしています。列車を走らせると町が発展する。町が発展すると利益が上がり、さらに鉄道に投資できる。この面白さは永久不変です。鉄道ファンも箱庭ゲームファンも買って間違いなしです。

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 1985年に発売された第1作の『A列車で行こう』と、1988年発売の『A列車で行こうII』は、パズルゲームでした。グラフィックも簡素で、列車も客車も貨車も記号で示されており、線路は1本の白い線でした。線路を敷設する列車の名前が「A列車」でした。A列車を操作して、他の列車にぶつかったり、脱線しないように線路を敷き、資材を運んで路線を延ばします。終着駅まで線路をつなぎ、大統領専用車を到達させればミッションクリアとなりました。駅を置き、旅客列車を走らせれば駅の周りに建物が増える。そのコンセプトは第1作から最新作までを貫く基本的な要素です。つまり『A列車で行こう』を名乗るゲームは、「列車の運行と都市の発展」が結び付いていなくてはいけません。

 1990年に登場した『A列車で行こうIII』が、現在のA列車で行こうシリーズの原型です。ゲームシステムはパズルから経営シミュレーションへと生まれ変わりました。線路を敷き、列車を走らせて町を発展させるという要素はそのままですが、“大統領専用車の運行”というゴールはなくなりました。その代わりに、貸しビルや住宅、デパートなどの子会社を建設できるようになりました。パズルから街づくりゲームへの転換です。グラフィックは2Dながら風景を俯瞰するようなクォータービューになりました。このシステムは街づくりゲームの本家「シムシティ」にも影響を与えました。『A列車で行こうIII』の海外版『A-Train』は、『シムシティ』の販売元でもあるマクシス社から発売され、世界中のゲームファンから絶賛されました。国内外で数々の賞を授かっています。

 1993年の『A列車で行こうIV』は、「III」を大幅にグレードアップしたものとなりました。グラフィックは2Dのクォータービューを踏襲したため、外観上の差異はほとんどありません。しかし、“勾配レール”と“高架レール”が登場し、線路の立体交差が可能になりました。鉄道の他に道路も建設できるようになり、バスやモノレールも登場しました。鉄道の通らない地域をバスで補完するという、実際の交通体系に即したシステムが人気でした。「III」ではダイヤ設定が粗く、列車運行ファンの不満が上がっていましたが、「IV」では発車時刻を1時間単位で細かく設定できるようになりました。

 1996年の『A列車で行こう5』で、A列車シリーズはついにフル3Dへとモデルチェンジ。輸送機関にヘリコプターや貨物線、トラックが登場し、もはや鉄道のみのシミュレーターではなくなりました。なんといっても、自分が作った街を、列車やヘリコプターなどの視点で眺められる“乗車モード”が絶賛されました。マルチウィンドウを採用し、建設は真上からの2Dビュー、景観を楽しむには3Dビューを使用します。まるでCADソフトのような仕様でもあったため、初心者には敷居の高い印象を与えました。3Dグラフィックには、高性能なPCとPOWER-VRというグラフィックカードが必要となり、町が発展すると動作が重くなりました。建物の配置は隙間だらけ、複線の線路の間隔も開いており、リアリティにはやや欠ける光景になります。それでも当時の3Dゲームでは賞賛に値しました。万人向けではなくなったものの、根強いファン層にいまもなお支持されているゲームです。

 2000年に発表された『A列車で行こう6』は、プレイステーション2専用となりました。ビジュアル機能が自慢のプレイステーション2のおかげで、グラフィックが向上し、車両のサイズ、デザインがリアルに反映されました。直接建設できる子会社はなくなり、駅周辺の土地を区画ごとに誘致するというスタイルになりました。バスもトラックもヘリもなくなり、鉄道会社の経営に専念するゲームとなりました。そのマイナーバージョンアップ版が2001年の『A列車で行こう2001』でした。『A列車で行こう2001』をWindows版に移植したタイトルが『A列車で行こう The 21st Century』です。PC版としては『A列車で行こう The 21st Century』が事実上の『A列車で行こう6』にあたる作品です。鉄道車両がリアルに描かれているため、鉄道ファンには本作を至上とする人も多いようです。

 2005年に、PC版の新作『A列車で行こう7』がリリースされました。画面はクォータービューに戻り、列車のみが3Dで建物は2D表示になりました。売り出しも「IVの正当な後継作」でした。たしかにIVの画面を精細にしたような作品でしたが、IVで採用されていたバスの要素がなくなり、別売の「マップコンストラクション」がなければ、道路すら自由に作れないため、実質的には「III」の後継作といえます。子会社の種類もIVより増えていますが、全体的に建物種類が少なく、誰がプレイしても似たような景色になってしまいます。車両の種類を増やしたい人のために「トレインコンストラクション」が、列車の運行をリアルに再現したい人のために「ダイヤコンストラクション」が発売されました。

 2006年には、『A列車で行こう7』がXbox360に移植されて『A列車で行こうHX』として発売されました。グラフィックはフル3Dになり、列車の視点で街を眺めるモードも復活しました。しかし『A列車で行こう The 21st Century』と異なり、車両は前後を圧縮するかのようにデフォルメされていました。「7」でもかなり縮んだ車体でしたが、「HX」はさらに縮んでマッチ箱のようでした。はじめから使える車両は10種類のみ。実在の車両モデルはダウンロード販売を利用して入手する必要があります。建物も7を3D版にしたものですが、「ランドマーク」には世界の著名な建築が追加されています。一方、ダイヤ設定やコンストラクションは「7」よりも簡略化されています。

 そして!2008年に『A列車で行こう8』が登場しました。内容は『A列車で行こうHX』の移植版です。つまり、ゲームシステムは「7」と同じで、3D仕様になったというわけです。「HX」では車両が別売ですが、「8」では別売だった全列車が収録されています。敷設できる線路の種類も同じ。マップ外に出て行った列車が8時間後に戻ってくるところも同じ、資材が駅から25マスまで届くところも同じです。「7」の発売時はバグが多くて何回もパッチが出ましたが、「8」では無事に動きます。「7」を出さずにはじめから「8」を「7」として出していればよかったのに…という思いもあります。

■最新作『A列車で行こう8』。鉄道ファンだからこそ、「リアルな路線」を再現できないのがもどかしい

《杉山淳一》
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