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ケータイMMO『ネバーワールドオンライン』、その開発の舞台裏とは

携帯電話向けにMMORPGを展開しているアンビション。現在でこそオンラインゲームを携帯電話で動かすと言っても驚かなくなりましたが、サービスが開始された2004年当時はまだまだ珍しい存在でした。

モバイル・スマートフォン 全般
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携帯電話向けにMMORPGを展開しているアンビション。現在でこそオンラインゲームを携帯電話で動かすと言っても驚かなくなりましたが、サービスが開始された2004年当時はまだまだ珍しい存在でした。

そこで、開発のきっかけや舞台裏について、アンビションの代表取締役社長である福島公則氏にお話しを聞きました。



−−−まず最初に、アンビションが携帯電話でMMORPG『ネバーワールドオンライン』をサービスしようと思われたきっかけをお聞かせください。

福島:最初はゲームじゃなかったんです。アンビションという会社ができる前からネバーワールドはあった。前の会社のプロジェクトをスピンアウトさせたものなんですが、最初はボリュームのあるメディアを作ろうとしていました。

−−−メディア、というのは?

福島:いろいろな機能を持ったコミュニティサービスですね。当時「メディア」と呼んでいたんです。でも、ちょうどPCでもコンシューマ機でもオンラインゲームが流行っていたので、これを携帯でオンラインでやりたいと思ったんです。私はエンジニアだったので、これをケータイで作りたいという思いがあった。

でも、ゲームって当たり外れがどうしてもあって、やってみないとわからないバクチみたいなところがあるじゃないですか。だからリスクの低い、コストの低いところからはじめたかった。モバイルは市場も広いですよね。端末は9000万台普及していて、ユーザー層も10代後半から30代をカバーするほど広い。

それにコンシューマーはライバルが大きいですが、モバイルならまだ勝負ができた。

それに時代もちょうど合ってて、定額制が始まった年だったんです。「パケットを90万円分使った、定額制に入っててよかったです」っていう人もいましたよ。

モバイルは、「勝負ができる」「リスクが少ない」というのはありましたね。

−−−公式サイトとして、MMORPGというサービスを提供するに当たって、重要視した部分はどこでしょうか?

福島:それは、ユーザーさんたちが直接関わりのあるコミュニティ部分の安全性です。沖縄に事務所を置いて、24時間365日体制でユーザーさんの発言を確認しています。もともと東京でやっていたのですが、コストがかかりすぎるので沖縄に移しました。もちろん自動のフィルタリングで「バカ」だの何だのは言えないようになってます。3年もやっていると禁止リストも相当蓄積されますね。その上で、表現の揺らぎや微妙なものを人の目でチェックするという体制ですね。ちなみに「http://〜〜にアクセスしてみよう!」みたいな外部のサイトに誘導するような発言もNGなんですよ。

−−−基準はキャリアごとに違うと思うのですが、そのあたりは個別対応でしょうか?それとも御社の基準で?

福島:キャリアの基準を元に、更に厳しくうちの基準でやっています。ユーザー層が広いということで、未成年やインターネットに対する知識が少ない人もいるわけで、厳しめにしないと、ライトな感覚で誹謗中傷したりといったことも起きますから。

−−−インターネットに対する知識ですか。

福島:客層が全然違うんです。オンラインゲームとか家庭用ゲーム機の「常識」が通じない。レアアイテムをゲーム内で人に気軽に貸したら逃げられちゃった、とか、レアアイテムが高価だからもっと安くして、だとか、いろいろな苦情がうちにきます。レアアイテムは珍しい大事な物なんだから、人に渡すときには注意するだとか、珍しいから高価なんだといったことは特に注意書きする必要もないと思っていたのですが……

でも、前にアンケートを採ったことがあるのですが、プレイヤーさんの6割〜7割は、オンラインゲーム歴がネバーだけなんですね。パソコンのMMOをやっていた人がネバーワールドオンラインにくるというのは少なくて、そのへんは想定している客層とのギャップでした。

−−−1作目のネバーワールドオンラインの経験が、その後の『ネバーワールドあみぱにDX』や『ネバーワールドストラテジー』『ワールドアイスランジスタ』の機能や特徴に活かされているポイントはありますか?

福島:具体的な機能とか特徴と言うよりもノウハウのところですね。コミュニケーションはすごいと痛感しているので、人とのつながりという要素はどのゲームにも入れるようにしています。ユーザーさんの発想を大事にしたいので、もりあがるための場所やイベントを提供しています。ユーザーさんからの要望については、そのまま入れるということはありませんが、検討して取り入れていっていますよ。

−−−最近は携帯電話向けのゲームサービスもいろいろありますが、ライバルはどこになりますか?

福島:他社さんとは市場がかぶってないと思ってます。むしろ、すそ野を広げてもらってるという感じですね。

−−−携帯電話のMMOというと規模感が全くわからないのですが、人員はどのくらいなのでしょうか?

福島:タイトルによってばらばらですね。ネバーワールドオンラインの時は最初5人ですね。プログラムが私ともうひとり、プランナー2名、グラフィック1人です。オープンしてからはサポートも必要ということで20人規模になりました。サポートだけでなく、プランナーとかグラフィック、プログラマ、デバッグ専属スタッフ、通信のチェックを専門にやる人間も増やしました。他のタイトルでは、あみぱにDXとかネバーワールドストラテジーは5人、ワールドアイスランジスタは15人です。

普通のアプリなら小規模で作れるのですが、どうしても大がかりになってしまいます。

−−−福島さんはもとはエンジニアということでしたが、どういったシステムを手がけていたのですか?

福島:いわゆる「オープン系」の会社で、掲示板やコミュニティサイトなどの作成を手がけていました。

−−−ということはネットワーク系の経験をお持ちだったわけですね。

福島:ネバーワールドオンラインはシステム的にきつかった。MMOはスゴい規模になるんですね。最初、1000人を計画していたところに200人くらいしか入れない。普通のオンラインサービスは散発的にトラフィックが出るのに、MMOだとずっと出っぱなしになってしまうんです。

それで、アイテムのデータみたいにアップデートしたら以後書き換わらないものは全部メモリに置くようにしたり、キャラクタデータも毎回データベースに書き込むのではなく、いったん別のプログラムが受け取って、まとめて書き込むようにしたりしています。ちょっと常識外なアパッチ設定をしたり、スクリプト言語に加え、一部のバックエンド処理をCで書いたり、いろいろ工夫しています。そこまでやってようやく重いと感じさせない環境になりました。

−−−それでどの程度の人数まで対応できるのでしょう?

福島:1サーバ1200〜1300人ぐらいで重く感じ始めるので、実際には1000人ぐらいですね。そこからはワールド単位で増やすようにしていて、今ちょうど10ワールドで運営しています。

−−−重くなる時間帯は?

福島:21時から23時ぐらいにかけて上がっていって、午前3時くらいに下がる。寝る前にプレイするという感じですね。お昼休み、12時くらいにも山があります。まさに生活サイクルって感じですね。

−−−今後も携帯一筋ですか?

福島:そんなことはないですよ。でもモバイルは軸としていきます。海外へのライセンス事業、メディアミックス、マルチプラットフォーム、の3つの展開を考えてます。

海外ライセンスでは韓国向けの準備を進めていて、先々は日韓合同サーバーもできればと考えています。技術的にはチャットの翻訳機能のあたりを整備しないといけないですが。マルチプラットフォームについては、ネバーワールドオンラインを別のゲーム機でも連動して遊べるようにしたりとか、モバイル以外の枠にも飛び出して行きたいですね。

−−−携帯電話はキャリアによってばらばらだし、端末の種類も多くて移植のチェックは大変じゃないですか?

福島:気合いです(笑) キャリアが変わると作りが根本的に変わりますね。同じ素材が別キャリアだと流用できないので作り直しや、出来ていた事が出来なくなっていたりで修正などそういった面で苦労はします。音については端末依存が大きいですね。性能差はけっこうあるのですが、どんな端末でも動作速度を上げるということにこだわっています。多少コーディングが汚くても速度をとれ、と。

−−−ユーザーもそういった性能差は感じるものですか?

福島:そうですね、ゲームの中でも、このメーカーのこの端末は速いよ、とか話題になります。新端末が出るたびに試してくれているユーザーさんもいますよ。

−−−今後の予定は?

福島:『ワールドアイスランジスタ』は今年12月にリリースします。iモードからスタートしてau、ソフトバンクと展開していきます。

−−−最後に、インサイドの読者に向けてメッセージをいただけますか?

福島:まずはやってみてください(笑)
時間や場所を選びませんし、PCオンラインをやっていた人にとっても、また違う面白みがあるんじゃないかなと思います。

モバイルって、基本は「通信機」じゃないですか。だからオンラインにこだわってる。もともと通信機能がついてるところを最大いかしてますから。お昼休みに10分ぐらいでも楽しめますし、手軽なコミュニティを楽しんでいただきたいですね。

−−−ありがとうございました。

TGS2007のアンビションブース
《伊藤雅俊》
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