
ここ数年、VTuberの人気は急速に拡大しています。ホロライブやにじさんじは毎年大きいイベントをしていますし、企業とのコラボも多数。飲食店やスーパー、ドラッグストアで彼女たちのポップを見ない日は無いのではないでしょうか。先日は60周年を迎える「笑点」すら、VTuberとのコラボを実施したほど。もはや若者だけのカルチャーではなく、どの世代にも慕われる国民的なジャンルになりました。
そんなVTuberの先駆けとなったのは、2016年活動開始のキズナアイであるのは有名な話です。その後、2017年に「ときのそら」中心の小規模プロジェクトとして立ち上がったホロライブ、2018年に当初はスマホ向けLive2D配信が主力だったにじさんじが生まれました。このあたりからVTuberにも箱推しの概念が生まれた印象です。
その後の2019年はコロナ禍の巣ごもり需要もあり、VTuberという単語も一般化。さらに「ガリベンガーV」や「バーチャルさんはみている」といったテレビ出演でタレント化していきます。同時に技術革新も進んでいき、大規模リアルライブが次々と開催されるようになります。もともとサブカル寄りの趣味だったVTuberですが、広く慕われるようになります。
◆「世界一のVRアイドルになる」という夢を追い続けているグループ・えのぐ
V界隈の最大手といえば、多くの方がホロライブとにじさんじを思い浮かべるはず。しかし、その立ち上げとほぼ同時期の2017年からVRアイドルとして活動を続けてる「えのぐ」をみなさんは知っていますでしょうか?
人気のVTuberが華やかなライブや大規模なコラボを開催する裏で、地道な活動を繰り返し、「世界一のVRアイドルになる」という夢を追い続けているグループです。

もともと、えのぐは2017年のコミックマーケット92にて、Cluster.を利用してメンバーとVR空間で会える体験会を実施したのが初披露。“コミケ3日間で公式Twitterアカウントのフォロワーが1万人を越えればデビュー”という目標を掲げていました。

しかし、事前告知は一切なく、「プロジェクト名未定」という名称から足を止めてくれる人が少なかったこと、さらに1日で40人程度しか体験出来ない回転率の悪さもあり、増えたフォロワーは400人程度でデビュープロジェクトは大失敗に終わりました。
その後に目標を“9月末までに1万人のフォロワーを獲得できたらデビュー”に変更。全国巡業をスタートし、VR体験会などをおこない、徐々にフォロワーを増やしていき、目標であるフォロワー1万人を突破。晴れてCDデビューすることが決定しました。
このように、えのぐは2017年から活動を開始したグループですが、「VTuber」ではなく「VRアイドル」を名乗っているのが特徴。“中の人”の発言をはじめとしたメタ的な発言は絶対せずに、VRアイドルとしての自分の存在、そして応援してくれているファンの気持ちを大事にしています。
一方でVTuberと名乗らずにVRアイドルを名乗り続けたことで、VTuberのカテゴリーから外れてしまい、検索エンジンに引っかかることもないため、後続で活動をはじめた人たちにYouTubeチャンネル登録者数やSNSフォロワー数で抜かれていってしまいました。えのぐのメンバーである鈴木あんずさんはご自身のnoteで、このときにVTuberと名乗らなかったことを失敗であったと正直に打ち明けつつ、このときの「意地」が「誇り」に変わったと振り返っています。
そして、そんな彼女たちの「誇り」に関しては筆者を含む「えのぐみ」(=えのぐファンの名称)の誇りでもあります。えのぐはお台場で開催される世界最大のアイドルフェス「TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)」にも出演し、バーチャルとリアルの垣根を壊し、バーチャルアイドルを名乗って活動するスターがたくさん生まれるための礎を築き、道を切り開こうとしています。
最初に出演した“TIF2019”はまだVTuberが色眼鏡で見られてしまうような時代で、えのぐは完全にアウェイだったものの、それでも未来を信じて道なき道を切り拓こうとしました。
なお、そんなえのぐの魅力として筆者が推したいのは生ライブによるパフォーマンスです。映像作品としてのクオリティを追及した録画による映像も素晴らしいと思いますが、えのぐは生のパフォーマンスにこだわっており、録画映像を使わずにつねに生のライブをしてくれます。
彼女たちの歌声やダンス、そしてその瞬間に生まれる偽りのない言葉はファンの心に突き刺さります。えのぐはヴァーチャルを拠点として活動していますが、一方で現実に存在する「アイドル」としての輝きを持つ、唯一の存在として輝き続けています。
◆「AceeeZ」に移籍するえのぐによる最高到達点
そして、5月15日にはえのぐのワンマンライブ「enogu 8th Anniversary Live 決戦前夜」が開催されました。

近年のえのぐは彼女たちの活動も永遠ではなくいつか終わりが来ることを意識しており、その活動が終わったとしても語り継がれるものでありたいという意思を感じるものになっています。
一方で直近の彼女たちは「配信スタジオ喪失」というピンチに直面し、VEXZがプロデュースするプロダクション「AceeeZ」への移籍を決意。これまでメンバーの卒業や事務所の廃業、そして配信スタジオ喪失という危機を乗り越えてきた自分たちとファンの力を信じて、「AceeeZ」を世界一のVR事務所にしようという野望に燃えています。

今回のライブは、えのぐの大事な8年間を統括する内容でありつつ、過去に縛られることもなく前へと進んでいく力強いものとなっていました。
印象的だったのは3人体制になってから封印していたユニット曲を解禁したこと。夏目ハルさんと鈴木あんずさんのユニット曲である“午前0時のプリンセス”と、白藤環さんと日向奈央さんのユニット曲“無敵のヒーロー”を披露しました。夏目さんがアイドルを引退したあと、ワンマンライブで披露されることはありませんでしたが、えのぐのみなさんのなかで“変わらない覚悟”と“変わる覚悟”の両方を示すためにこれらのユニット曲を歌い上げました。


えのぐ合同会社の最終公演である今回のライブだからこそ、これまで背負ってきたものを誇りに思い、そのすべてを背負って新しい道へと進んでいく決意を感じることができ、ファンとしてはグッと来ました。また、もともとふたりで歌うユニット曲を3人のフォーメーションと歌唱にアレンジしているところも新鮮でした。
また、今回のライブは新曲が2曲も。「この夜よ、明けないで」はえのぐにしては珍しい自身が持つ不安や弱さをテーマにした楽曲。自分たちの弱い部分を受け入れて、さらけ出すような曲になっています。


ライブのタイトルにもなっている“決戦前夜”は、叶わなかった未来に縋ることなく、自分たちの手で未来を掴み取ることを誓い合った、決戦の幕開けを告げることをテーマにした曲とのこと。決戦前夜というものの、すでに決戦中であるかのような激しいナンバー。とてもライブ映えする曲だったので、今後のライブで披露されるのも楽しみです。

今回のライブを拝聴して、夢を追い続けるえのぐの姿は本当に観ている人を元気にさせてくれるなと思いました。“世界一のVRアイドルになる”と口にするだけならば簡単ですが、えのぐは8年間も諦めずにずっとその道を本気で模索しています。そんな彼女たちだからこそ応援したくなりますし、自分も頑張ろうと元気付けられます。

現代のVTuber文化を支えているのは、ホロライブやにじさんじの方々による活動もありますが、その裏でもがき人知れず戦い続けていたえのぐの活動もあり、今の形になったのではないかと考えています。えのぐは活動9年目のアイドルで最古参と言えるアイドルでありますが、いまだ道の途中であり「世界一のVRアイドルになる」という野望を叶えるために戦い続けています。ぜひ、そんな彼女たちを応援してみませんか?
最後に、インサイドではライブを終えたえのぐのみなさんに今回のイベントのご感想をお聞きしたのでぜひチェックしてみてください。
◆鈴木あんずさん

VRアイドルえのぐのセンター、鈴木あんずです!
『enogu 8th Anniversary Live 決戦前夜』たくさんの応援ありがとうございました!! 昨年は周年ライブができなかったのですが、今年は無事開催することができ、皆さんと一緒に楽しむことができてとても幸せです。
個人的な話になってしまいますが、まずお礼を伝えさせてください。振り返り配信でもお話ししましたが、ライブ当日、私は自分の体調管理不足で情けない気持ちでいっぱいでした。でもライブ中、皆さんのコメントや声援が本当に沁みて…皆さんのおかげで最後まで楽しんでやり切ることができました! あらためて、たくさんの応援をありがとうございました。
感想を見ている中でやっぱり嬉しかったのが「セットリストが良い!」という言葉です。歴史を感じたと言ってくださっている方もたくさんいて、時間をかけてセットリストを作って良かった…と報われた気持ちになりました。
今回のセットリストのコンセプトは“変化と不変”です! 周年ライブということで、これまでの周年で発表してきた楽曲をそれぞれ一曲は入れたいという話から我々のセトリ会議が始まり、そこからコンセプトや軸となる楽曲を決めていきました。
・変化の象徴としてワンマンで約3年半ぶりの「午前0時のプリンセス」「無敵のヒーロー」
・不変の象徴として「真っ白は色褪せない」「燈し火」「またね、って言うよ」
・両方を抱えて進む決意として今回発表した新曲「この夜よ、明けないで」「決戦前夜」
この7曲を軸に、周年ライブで発表した曲や外せない曲、やりたい曲…とにかく候補を出しまくり、足しては入れ替え、さらに足しては削り…一旦これで! というものができたら軽く通して、この曲からあの曲が繋がらない!そっちよりこっちかも!を繰り返してできたのがあのセットリストです。
こうしてたくさん考えて完成したセットリストを褒めてもらえたり、私たちのこだわりを発見してくれたり…それが本当に嬉しいです。こだわりのセットリスト、ぜひ自分のここ好きポイントを見つけたら教えてくださいね! ちなみに私は一番最初、「スタートライン」から始まるのが好きです。
私たちのこだわりは振り返り配信でもお話ししているので、ぜひそちらもご覧ください! ライブのアーカイブは7月15日(水)までなので、期間いっぱい楽しんでもらえたら幸いです。9年目も一緒にいろんな体験をして最高な思い出を作っていきましょう!
決戦前夜、本当に本当にありがとうございました!!
◆白藤環さん

VRアイドルえのぐのキャプテン、白藤環です!
「enogu 8th Anniversary Live 決戦前夜」ご来場ありがとうございました!!
グループ結成8周年記念ライブが無さに開催でき、本当に嬉しいです! みんなの熱い応援があったからこそ、この記念すべき日を迎えることができました。感謝の気持ちでいっぱいです!
今回のライブでは、贅沢にも2曲の新曲を初披露させていただきました! 実はこの2曲、物語が繋がっているんですよね。「決戦」を控える一人の人間が過ごした「一夜」を描くノンフィクションのモノローグである『この夜よ、明けないで』。
そして、叶わなかった未来に縋ることなく、途切れかけた一瞬を繋ぎ、自分たちの手で未来を掴み取ることを誓い合った、決戦の幕開けを告げる『決戦前夜』。魂を込めて制作したこの2曲は、私にとってこれまでにない大きな挑戦でした…! メンバーと話し合い、今回は私のハモリパートを増やして、2人を支える役割に挑戦しました。
でも、これが想像以上の難しさで本当に大変だったんですよ! メインメロを歌った直後に違うハモリへ瞬時に移行する、頭と声の切り替えが追いつかないほどの高難易度。
特に『この夜よ、明けないで』はえのぐ史上最高音の楽曲です。あんずと奈央ちゃん、2人の圧倒的な表現力に負けないよう、ただ優しく「支える」のではなく、お互いの歌声を全力でぶつかり合わせ、魅力を引き出し合うハモリが必要でした。「支えるけれど、支えない」という難しい表現にかなり苦戦しました…!
さらに『決戦前夜』のDメロでは、2人のメインメロディーとクロスする私のパートのキーの動きが複雑で、本当に難しかった…!それでも2人の声を聴いて寄り添い、ぶつかり合って、3人の最高のハーモニーを一音一音に限界まで詰め込みました!苦しかったぶん、えのぐの新しい可能性を感じてもらえる仕上がりになったと胸を張って言えます!音源リリースも楽しみにしていてくださいね!
えのぐはついに活動9年目に突入しました。ここまで一緒に走ってきてくれた、あなたへの感謝の気持ちを大切に!まだまだ私たちは走り続けます!
みんなの太陽として、もっともっと最高の景色に向かって突き進んでいくので! これからも私たちえのぐの進化から目を離さないでくださいね!
応援、どうぞよろしくお願いします!!
◆日向奈央さん

VRアイドルえのぐのリーダー、日向奈央です!
「enogu 8th Anniversary LIVE -決戦前夜-」ありがとうございました!! ライブが終わって少し日にちは経ちましたが、思い返しても今回のライブはすっごく楽しかったし、昨年はできなかった周年ライブが開催できてとても嬉しい気持ちでいっぱいです!!
ただ今回のワンマンライブは、いつものワンマンライブに比べて準備の期間が本当に少なかったです。理由は長年使わせていただいたスタジオ様の使用が困難になってしまったこと、それに伴う移籍の件があり、この時期がワンマンの準備期間とちょうど重なってしまったからです。
だけど少ない時間の中でグループ全体のライブパフォーマンスを、過去のライブと比較した時に変化と成長を感じてもらえるようにしたかったし、えのぐのパフォーマンスリーダーとして「時間が少なかった」を言い訳にしたくはなかったので、どうしようかなとずっと考えてました。
まず、ライブ前のダンスレッスンは新曲の振り入れと既存曲の踊りこみとして時間を使うことが多いので、先生に見てもらいながら第三者の目線で気になったところを指摘してもらってその場で振り合わせをするのが1つ。
もう1つは、過去にもよく実践しているリハ映像を見て気になるところを全曲分出すという事です。
ただ今回はリハの回数も、普段に比べたら半分以下だったので、過去のライブで書き出したダンスの修正点のメモをもう一度2人に共有しました。私もそうですが、自分のクセになってしまってる振りは時間が経つとまた元に戻ってしまうので、なるべく過去の修正点を意識した上でリハをして、新たな修正点を直していくというやり方でダンスを合わせていきました。
歌唱については、全体ボイトレの時にALLパートの伸ばす拍数や歌のニュアンス、新曲の歌いこみなどを中心に確認し、個人ボイトレの時に私は、主に新曲の音域(発声法)とカウントの確認をする内容のレッスンをしてたりと、少ない時間を内容の濃い時間にできるように、そして3人それぞれで過去のパフォーマンスを超えれるように意識できたんじゃないかなと思います。
終わってアーカイブを見ると修正点や反省点はたくさんありましたが、今まで確認してきたことや培ってきた表現、魅せ方がたくさん出せていたのかなって思います!!
この先も、まだまだ進化するえのぐを見守ってくれたら幸いです。
ここまで読んでくれてありがとうございました! 日向奈央でした!!!












