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『シニガミ姫と異書館ノ怪物』で実感した「絵本シリーズ」の進化! 痛みを伴う優しい物語を“新たな立場”と“関係性”で描く【プレイレポ】

日本一ソフトウェアの“絵本シリーズ”最新作『シニガミ姫と異書館ノ怪物』は、シリーズならではの切なさと優しい世界観を継承しつつ、これまでとは異なる主人公像や物語構造を描いた意欲作でした。過去作と比較しながら、本作ならではの魅力を掘り下げます。

ゲーム プレイレポート
『シニガミ姫と異書館ノ怪物』で実感した「絵本シリーズ」の進化! 痛みを伴う優しい物語を“新たな立場”と“関係性”で描く【プレイレポ】
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■モノとメェルが生み出す、緊張感のある関係性

『シニガミ姫と異書館ノ怪物』が従来のシリーズと異なる点は様々ありますが、特に象徴的なのが、同行者であるメェルとの関係性です。

『嘘つき姫と盲目王子』では、主人公の化け物と王子がともに行動します。化け物がついている「嘘」を除けば、両者の関係は信頼によって結ばれていました。また、『わるい王様とりっぱな勇者』でも、ゆうの冒険は決して孤独ではなく、同行してくれる仲間たちに恵まれました。

しかし、本作のモノとメェルは少々事情が異なります。メェルはモノに対して──そして人間そのものに対して──好意的ではありません。彼が同行している理由は、自身の力を取り戻すため。一方のモノも、メェルの持つ力を恐れています。それでも危険な異書館を進むためには、彼の力が必要だと理解しています。

つまり本作の2人は、信頼や絆ではなく、利害の一致から行動を共にしています。主人公とそばにいる人物がこうした関係を持つのは、これまでの“絵本シリーズ”にはなかったものです。

過去作も、先が気になる展開で進む物語運びが魅力でしたが、同行者との関係は概ね良好で、一時的な仲たがいはあっても、目指す目標は同じものを見ていました。しかし本作では、姉を助けたいモノと、力を取り戻したいメェルという、明らかに目的が異なっています。

こうした齟齬が横たわっているため、「この関係はどこかで決定的に破綻するのではないか」という不安をプレイヤーに抱かせ、物語が進むごとに、過去作にはなかったハラハラ感が味わえます。シリーズファンにとって、これも新たな刺激といえるでしょう。

ただし、本作の物語が終始殺伐としているわけではありません。人情家のモノに対して、シニカルなメェルが冷や水を浴びせたり、逆にメェルの心ない発言をモノがたしなめるといった場面もあります。

モノは一見すると気弱な少女ですが、姉を救うため単身で異書館へ乗り込むほどの強い意志を持っています。怪物であるメェルにも率直な気持ちをぶつけるため、ふたりのやり取りは不穏さを抱えながらも、それを眺めるプレイヤーにとってのストレスにはなりません。

また、メェルも「自分以外はどうでもいい」という態度を見せる一方で、冷めた言動は生来のものではなく、過去になにかあったのだろうと窺わせます。そのため、メェルの発言にもさほど苛立ちは覚えず、“良好ではない関係性”が描かれつつも、気が重くならずに済みます。

こうしたモノとメェルの関係は、シリーズに新たなスパイスを加えると同時に、“絵本シリーズ”に新鮮な味わいを与えてくれました。


今回は、『シニガミ姫と異書館ノ怪物』をプレイして感じた手触りを、“絵本シリーズ”の過去作と比較しながら紹介しました。

総じて言えば、本作はシリーズのテイストを色濃く受け継ぎながらも、新たな切り口や構成によってファンを飽きさせない作品に仕上がっています。シリーズファンにはもちろんおすすめできますし、まだ“絵本シリーズ”に触れたことがない人にとっても、その独特な世界観を味わう入り口として十分魅力的です。

ただし、気になる点が皆無とは言えません。過去作でも問題となった「ボリューム面の課題」は、『シニガミ姫と異書館ノ怪物』にも降りかかっています。

“絵本シリーズ”は物語体験を重視しているため、ゲーム全体の規模は比較的コンパクトな傾向があります。特に『嘘つき姫と盲目王子』が顕著で、4~5時間ほどでクリアするプレイヤーも珍しくありません。

『わるい王様とりっぱな勇者』はRPGなので相応のプレイ時間を要するものの、移動速度の遅さやエンカウント率の高さで時間がかかる面も少なくありません。

その点、『シニガミ姫と異書館ノ怪物』は、探索や謎解きに費やす時間にもよりますが、およそ10時間前後でクリア可能です。『嘘つき姫と盲目王子』より長く遊べるうえ、『わるい王様とりっぱな勇者』よりテンポも向上しており、シリーズ作品としては遊びやすくなっています。

ただし、希望小売価格9,020円(Nintendo Switch版は7,920円)に対して十分なボリュームと感じるかどうかは、人によって意見が分かれるところでしょう。コストパフォーマンスや総プレイ時間を重視する人は、この点を踏まえたうえでご検討ください。

もっとも、本作は長大な物語を描くタイプの作品ではないため、作品の規模と物語の密度を考えれば必要十分。筆者の個人的な意見になりますが、内容にマッチした適切なプレイ時間だと感じました。

プレイ時間だけを基準にするなら手放しでおすすめしづらい面もあります。しかし、ゲーム体験そのものを重視し、本作の世界観や物語に惹かれるのであれば、『シニガミ姫と異書館ノ怪物』は十分にプレイする価値があります。“絵本シリーズ”のさらなる進化を感じさせる一作としても、シリーズ入門作としても、おすすめできる作品でした。


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《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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