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リメイク開発の難しさ…そして地方でゲーム開発を行うということ『R-TYPE TACTICS I・II COSMOS』九条一馬氏語る【インタビュー】

リメイクを作る難しさ。そして、地方でゲーム開発を行うことについても聞いてみた。

ゲーム ビジネス
リメイク開発の難しさ…そして地方でゲーム開発を行うということ『R-TYPE TACTICS I・II COSMOS』九条一馬氏語る【インタビュー】
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プロデューサー兼ゲームデザイナーの九条一馬氏

2007年と2009年リリースの『R-TYPE TACTICS』と『R-TYPE TACTICS II』をリメイクする、グランゼーラ開発の戦術級シミュレーションゲーム『R-TYPE TACTICS I・II COSMOS』。

今回は東京ゲームショウ2025における『R-TYPE TACTICS I・II COSMOS』のプレイアブル出展にちなみ、本作のプロデューサー兼ゲームデザイナーを務める九条一馬氏へインタビューを行いました。なお本インタビューは、本作のTGS2025版のゲームプレイを元に実施しているので、こちらのプレイレポも是非お読み下さい。



発売日が決まるも、まだまだ気が抜けない『R-TYPE TACTICS I・II COSMOS』

――発売日決定おめでとうございます!『R-TYPE TACTICS I・II COSMOS』発表の2022年10月の発表から3年ほど経ちましたが、今の気持ちを教えてください

九条一馬(以下、九条氏): まだ完成はしていませんが、発売日を発表できるところまで進めてこれたことについては少しほっとしています。ただ、現在も不具合の修正や不親切だと感じられるところ、ビジュアル面やUIの品質を上げる余地がある箇所の対応を進めており、むしろより緊張感が高まっていると言った状況です。

――古来よりゲーム開発は大変なものですが、延期を重ねた理由は何だったのでしょうか?

九条氏: 見積もりが甘かったところが大きかったと思います。リメイクということで、当初は省けると思っていた工程が実際は省けなかったり、旧作でPSPでの表現に最適化して作っていたところなどは、最新のゲームとして表現するためのかえって手間がかかるようなところもありました。

オリジナルのゲームにどこまで似せるかという点について、私からのスタッフへの指示が曖昧だったこともプロジェクトを長引かせてしまった要因です。そして、何よりも私自身の制作者としての衰え、集中力の衰えも原因の一つだと思います。その点は、開発の後半かなりの部分を他のスタッフに任せることができるようになったので乗り切ることができました。

『R-TYPE FINAL 2』の場合は『FINAL』の続編としての新作でしたが、『R-TYPE TACTICS』はリメイクの難しさを感じながら開発を進めていました。

――『R-TYPE TACTICS』オリジナルは2003年の『R-TYPE FINAL』における一旦の終息宣言後の2007年に登場したタイトルでした。オリジナル版がストラテジーゲームとして新生したのは、当時どんな理由があったのでしょうか?

九条氏: 当時『R-TYPE TACTICS』は、『R-TYPE』を復活させたつもりはなく、あくまで『R-TYPE TACTICS』という別のゲームを作ったという認識です。SF(ウォー)シミュレーションゲームを作ろうと思い、『R-TYPE FINAL』でたくさん作った機体の設定を使わせてもらい、シミュレーションのプレイの目的にバイド討伐という設定を使わせてもらいました。

『R-TYPE』のシリーズだとおもっていなかったので、タイトルロゴもR-TYPEシリーズ伝統の丸みを帯びたフォントから直線的なロゴに変えました。『R-TYPE TACTICS』発売当時に「『R-TYPE』シリーズの終息宣言をしたのに…」という批判があっても全く気にしていませでした(笑) どちらかと言えば『R-TYPE FINAL 2』の時の方が終息宣言していたこともあり気にしていました。そこは潔く(終焉宣言をしたのに再開することを)認める意味で『R-TYPE FINAL 2』というタイトルにしました。

――今回のリメイクにあたり、オリジナルより変更したところ、そのまま継承したところはどこですか?

九条氏: ルールは基本的に同じです。『I』と『II』に入っていたミッションはほぼそのまま収録しています。当時のものを参考にしつつも、グラフィックは、シューティングゲームである『R-TYPE FINAL 2』に入っていたものはそれを使い、それ以外のユニットや3D背景などはモデリングを含めて全て作り直しました。

後は追加シナリオ「COSMOS編」を入れています。ルールについては、『I』の方も『II』のルールに合わせました。UIを使いやすくしたり、プレイしやすいように可能な限り改良を加えようとは思っています。

――そうなると、今回のTGS版は最終バージョンではないということですか?

九条氏: そうですね、今日プレイしていただいているのを見ながら、スタッフと「ここをもっとこうしよう」という案が出てきているので、それを導入していこうと思っています。当時の制作に関わっていたスタッフから(システムが)わかりにくいところや「難しい」という意見も貰っているので、そういう調整は今からでも入れようと思っています。

――まだまだ調整は続く感じなのですね。先の試遊の感想にもなりますが、CPUの思考時間が速いと思いました。

九条氏: 当時より良くなったところですね。(オリジナル版発売)当時のCPUの思考では、索敵範囲の計算や最短ルートの計算に時間がかかっていました。プラットフォームの進化の恩恵が大きく得られているところです。

――ズバリ、リメイク版のこだわりポイントはどこですか?

九条氏: 今作については、以前世に出した『R-TYPE TACTICS』を今のゲーム機でプレイできるようにするのが一番の目的でした。なのであまり大きな野心はありません。

あくまで『R-TYPE TACTICS』を最新の表現で、最新のプラットフォームで遊べるようにしながら、よりプレイしやすく改善したいと思って制作を進めています。

『R-TYPE FINAL 2』の時は「今だから作れるサイドビューSTGを作ろう!」と大きな野心がありましたが、『COSMOS』は今プレイしてもおもしろいゲームのはずだから、今プレイするのに適したものにしようと。自分で言うのもなんですが、私はこのゲームをプレイするのが好きなので今でもプレイしたいです。ネットワークを含めて対戦がしやすくなっていたり、CPUの思考が早くなったりなど、今の環境でプレイできるようにすることに価値があると思っています。

もともと、当時からプレイした方から「本当にクリア出来るの?」なんて言われているような非常に難しいミッションもあったりしますが、あの歯ごたえをそのまま再現しようと作っています。難しいところは、難しいままです。救済措置も一応用意していますが、緊張感は保ちたいと思っています。

――なるほど、オリジナルを現代で遊べるようにするのが目標なのですね。また、後日談となる新規ミッション「COSMOS編」にテーマはありますか?

九条氏: あります。ありますけど今は言えません…!あえて言えば、テーマは「コスモス」です。ゲームとしては基本ルールは同じであるものの、『I』と『II』でやれないことが出来るようになっています。それとポエム色も強くなっています(笑) もう少し詳しい情報が出せるタイミングになったらお伝えしますので、もう少し待ってください。

ポエムに関しては『R-TYPE FINAL』では評判が悪いと思い、『FINAL 2』で「無くしても良いか」と思って無くしたら、「入れて欲しい」という反応もあって驚きました。そういう意味では『COSMOS編』はポエム色が強くなっているので、ポエムを望んでおられる方にも満足いただけると思います。

『R-TYPE FINAL』より

――COSMOS編の内容は続報に期待したいですね!ちなみに『R-TYPE FINAL 2』のように『COSMOS』向けの主題歌はあるのでしょうか?

九条氏: 主題歌は『R-TYPE TACTICS II』のものを使っています。元々『II』のテーマ曲が「COSMOS」というタイトルの曲であり、この曲がとても気に入っており、本作のテーマでもあるので、そのまま使いました。歌と言ってもインストゥルメンタル的というか、スキャット的なものなので歌詞はありません。トレイラーなどで使っている曲ですが、宇宙の広がりや澄んだ感じがしてとても気に入っており制作中は常に聴いていました。

――話題を本作に戻しますが、オリジナルは制限ターン数のシビアさなどが言及されていました。リメイクとなる本作でバランス調整はしていますか?

九条氏: 各ミッションの制限ターン数や各ユニットの性能などの値は変更していません。ただ、『I』を『II』のルールに準拠させたり、以前DLCで配信予定だったユニットも本編に追加することで、歯ごたえを残しながらもいい感じでバランスを取れていると思います。

『TACTICS II』については、『TACTICS』に対してより歯ごたえがあるものを作ろうとして作ったものなので、ここの歯ごたえは残しつつも、救済措置を入れている感じになります。

破壊力が高いユニットを並べれば簡単に勝てるというパワープレイを成り立たないようにしたい、本格的なウォーシミュレーションゲームとして補給や索敵の要素の重要性を維持した造り、補給や索敵を怠らないことで勝率が上がるようなゲームを目指して作成しています。

――ちなみにバランスやクロスプレイの有無を含めて、オンライン対戦の仕上がりはどうでしょうか?

九条氏: クロスプレイの実現は目指していますが、現時点ではまだ確約できる状況にはありません。ただ、このゲームはプラットフォーム間で有利・不利が生じる内容ではないので、できることならぜひ実現したいと思っています。

余談ですが、2009年当時『R-TYPE TACTICS II』の開発中、開発室のスタッフを30~40人ほど集めてバランスの確認のためにトーナメント戦を行ったことがあります。私も参加していたのですがこともあろうに私は2回戦で敗退してしまいました…当時自分が全ユニットのパラメーター設定やミッションの設定・調整もしてたのにもかからず。

観戦していたスタッフからは「おいおいどうなっているんだ、あなたがバランス調整しているんじゃないの?2回戦で負けちゃうなんて!」と早々に負けてしまった私に対して「しっかりしろ」という雰囲気が...。

――クロスプレイが実現できたらより盛り上がりそうですね!また、オンライン対戦にランク的なのはあるのでしょうか?

九条氏: 積み重ねてきたものがわかるようにしたいと思っています。ゲーム的に実力がプレイ時間と必ずしも一致せず、初めてプレイした人でも上手い人は上手いので、どう反映するのかは今議論を重ねているところです。相手の実績をわかるようにしたいです。

――少し内容が逸れますが、過去チラ見せされた『絶体絶命都市』新作についても気になります。

九条氏: 『絶体絶命都市』の新作については、災害表現の研究やシナリオそのものの構想など基礎研究は今もやっています。能美防災さんと協力してVRコンテンツを制作しながら災害表現についての知見を溜めているところです。今は『R-TYPE TACTICS I・II COSMOS』の方に制作スタジオ全体が注力しているところなので、これが終わったらプロジェクトを再開します。

――ちょっと特殊な質問なのですが、2007年当時にアイレムがTGSで配布した特別冊子「ぶるるん」の開発スタッフコメントに、「石川県での開発はストレスが溜まりにくい」とありました。地方でゲーム開発することの特徴を教えてください。

九条氏: 基本的には良いですね!僕は30歳まで大阪でゲーム開発をしていて、それ以降は石川県で仕事をしていますけど良いと思います。石川県だから不利な所というのは特に無いですね。

東京ゲームショウを筆頭とした首都圏や関西へは、飛行機や新幹線で行かなければならないため大変ですが、日常的な部分では満員電車に乗らなくてすむことや、従業員は車や自転車などで来られますし、通勤時間も車で10分、遠くても30分ほどで通えます。

今はほとんど残業をしていませんが、終電を気にしなくて良いですし、帰りに温泉に立ち寄って帰れます。海や山も近くにありますし、四季の移ろいもハッキリしているし、美術館などの文化施設も充実しています。そういう意味では、ゲーム制作に向いていると思います。

(2011年に)アイレムソフトウェアエンジニアリングを退職した時に大阪へ帰るという手もありましたが、石川県の金沢で会社を作ったのはそういう理由からです。石川県で仕事している側としてはマイナスに感じたことはありませんでした。大阪や名古屋、東京などへ出張するのも気分転換にもなります。

アイレムソフトウェアエンジニアリングにいた頃は、石川県にいることを自虐的なネタにしていたのですが、今となっては、むしろゲーム開発に向いた場所だったと感じています。特に現在は、オンラインでマスターを提出できるようになり、コロナ禍以降はどこにいてもオンラインでミーティングが行える時代です。

47都道府県のどこにいてもゲーム制作は支障なく行えると思います。むしろ、生活のしやすさや環境で場所を選ぶ時代になったとも言えそうです。都会で作る良さもあれば、地方で作る良さもあり、どちらにもそれぞれの良さがあると思います。

――ありがとうございます。これまで、地方でゲーム開発することの特徴が多く語られていなかったと思うので聞いてみました。最後に楽しみにしているファンや、新規ユーザーに向けてメッセージをお願いします。

九条氏: お待ちいただいていた皆さんにはようやくのご報告となりますが、『R-TYPE TACTICS I・II COSMOS』を、皆さんにご覧いただけるところまで持ってくることができました。2026年3月に発売予定です。体験版もリリースしますので、ぜひプレイしてみてください!

『R-TYPE』シリーズをプレイしたことがない方にはとっつきにくいかもしれないし、シューティングゲームの『R-TYPE』は好きだけど、それをシミュレーションゲームをしたのは胡散臭いと思われるかもしれませんが、プレイして頂ければ硬派なゲーム本格的なターン制SF(ウォー)シミュレーションゲームだと感じていただけると思いますのでぜひ触って見てください。よろしくお願いします!

――ありがとうございました!


『R-TYPE TACTICS I・II COSMOS』は、PS5/PS4/ニンテンドースイッチ2/ニンテンドースイッチ/Xbox Series X|S/PC向けに2026年3月12日発売予定。価格は、通常版が6,380円(税込)、プレミアムボックス版が18,920円(税込)です。


©Granzella Inc. "R-TYPE" is a trademark and/or copyright of IREM SOFTWARE ENGINEERING INC.

《G.Suzuki》
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