東京ゲームショウ2025のCAPCOMブースにて『バイオハザード レクイエム』の試遊展示が行われました。
ド級の恐怖体験を味わえる試遊に多くのプレイヤーが肝を冷やしているなか、本作の開発陣にインタビューさせていただくことが叶いました。
答えていただいたのは、ディレクターの中西晃史氏と、プロデューサーの熊澤雅登氏です。

――三人称視点と一人称視点を切り替えられる意図について教えてください。
中西:『バイオハザード』シリーズでは『4』から『6』は三人称視点で『7』と『8』は一人称視点で展開しました。三人称が好きな方もいれば、一人称だと酔ってしまうという方もいます。両方を選べたほうがいいだろうと考えました。
それと、『7』では「とにかく怖いバイオであればいい」と思って作りましたが「怖すぎる」というフィードバックもいただきました。そこで三人称を入れることで、怖さを多少緩和できるだろうと考えたんです。
――一人称のほうがおすすめなのでしょうか。
中西:一人称のほうがより怖い体験になります、というメッセージを入れさせていただきました。怖さを楽しみたい方はぜひどうぞ……というニュアンスであって、推奨しているわけではないです。

――シリーズのなかでも今回は特に怖いと感じました。
中西:怖さに関しては『7』よりもマイルドに、恐怖演出だとすぐわかるように作っているつもりです。いきなり脅かすのではなく、段階を踏むようにしていまして。とはいえ、十分怖いと言われてしまいましたが(笑)。
――ドアを開けると死体が降ってくる演出では油断していました。
中西:三人称では怖さを抑える狙いもありますが、一人称では見られないアニメーションが入っています。キャラクターだけでなく、プレイヤーも一緒にパニックになるような演出ですね。
難易度に関しては、ホラーゲームのデモ版ということで、ひどい目に遭ってもらおうと思いました(笑)。
熊沢:過去作同様、本編には複数の難易度を用意しています。銃を撃つときにレティクルが敵に吸い付くなど、遊びやすさにも配慮しています。

――試遊のクリア率はどれくらいでしたか。
中西:だいぶ低くて、10%程度と聞いています。これに関しても怖がってもらうということを目的に作ったものなので。ただ時間制限に関しては、回転率の問題もあるのでご容赦ください。
――今回の開発にシリーズ経験者は関わっているのでしょうか。
中西:エグゼクティブ・プロデューサーの竹内潤さんは初代からずっと関わってくれています。
その他にも、カプコンのなかで長く『バイオハザード』に関わっている人たちは多くて、文化として染み付いている部分はあります。
――主人公のグレースは一般人という設定ですが、その理由はなんでしょうか。
中西:ひとつは「一般人だからこそ怖い」という点です。
さらに、ストーリー上、バイオハザード体験が初めての人間を物語に取り入れたかったんです。キャラクターもプレイヤーも逃げ惑うだけで終わらず、恐怖を乗り越えていくことで達成感が得られるのが『バイオハザード』の良さでしょう。彼女の成長を描きたかったんですね。
――戦う場面もあるのでしょうか。
中西:セカンドトレーラーで銃を持っているのを確認できると思います。「あの子がこんなイカつい武器を持つの?」という驚きもあるはずです。パンチやキックといった肉体的な攻撃はありませんが、今回も少ないアイテムをどう使うかを考えるゲームプレイになります。

――FBIの分析官としての知能を生かした場面はありますか。
中西:ストーリー上の設定として洞察力のある子ですが、一般的な死体の分析はゾンビには通用しないでしょうね。それ以前に、ゲーム内で頭を使うのはあくまでプレイヤー自身だと思っているので、そういう謎解きはあります。
――前作でイーサンの物語は完結したと思われますが、今作は完全なる新章という位置づけでしょうか。
中西:はい。『バイオハザード9』から完全に新しい展開です。
――事前に遊んでおいたほうがいい作品はありますか。
中西:特にありません。『レクイエム』が初めてでも100%楽しめます。そのうえで、アリッサやラクーンシティを知っていると、より深く楽しめるでしょう。
熊沢:『RE:2』や『RE:3』を遊んでおくと理解が深まるかもしれません。
中西:ただ『レクイエム』をプレイしてからでも遊んでも問題ありませんよ。
――「ラクーンシティ」を舞台にするという構想自体はどの段階から始まっていたのでしょうか。やはり企画の立ち上げの時点からですか。
中西:企画のスタート段階から考えていました。正確に言うと「ラクーンシティを舞台にしよう」と最初に決めたというよりも、長年シリーズを遊んできた自分が「今のラクーンシティはどうなっているのか?」っていう疑問を持っていたんです。
それで、現在のラクーンシティは政府に管理されて、一般人が入れない隔離区域になっているんじゃないか……という妄想があったんですね。過去の作品で描かれなかった部分を掘り下げる余地があるのではないか? という話になり、その流れの中で「じゃあ今回はそこを舞台にしよう」という形にまとまっていきました。

――つまりストーリーからではなく、まず「どんなゲーム体験を提供するか」という観点から始まった、と。
中西:そうですね。『バイオハザード』の新作をお届けする際に、まず重視するのは「新しい体験をどうプレイヤーに提供できるか」という点です。過去にはマルチプレイやオンライン要素の可能性について話したこともありましたが、やはり根本には「シングルプレイでどう新しい恐怖や緊張感を作れるか」というテーマがあります。今回もその方向で企画を進めています。
ちなみにTGSで展示しているデモはラクーンシティ内ではないのでご注意を。実際、試遊した人にも「建物が壊れていない」と言われてしまいました(笑)。
――クリア時間はどのくらいでしょうか。やり込み要素はありますか。
熊沢:どちらも過去作と同じくらいのボリュームを想定しています。クリア後の要素ももちろん用意しています。
中西:視点の切り替えで大きく遊び方が変わるので、トロフィーを集めながら楽しんでほしいです。

――アクション寄りでしょうか、それともホラー寄りでしょうか。
中西:『RE:2』の系統ですね。ただ『7』よりはゲームに寄っています。とはいえ『RE:4』や『ヴィレッジ』のようなガンシューティングのバイオよりは怖いです。
――どのようなクリーチャーが登場しますか。
中西:過去作ではカビとかプラーガ(寄生虫)とか色々やりましたが、今回のメインはウイルス感染によるゾンビ系です。そのなかでも「こいつ、どうした?」と思うような個性的な存在も出てきます。
――今回は「ゾンビ」という解釈でよいのでしょうか。
中西:ゲーム内でキャラクターはそう呼びませんが、ゾンビと考えてもらって大丈夫です。その意味でも初代や『2』に近いですね。

――試遊の反響はいかがでしたか。
中西:ブースで見ていましたが、思わず声を出す人、後ろに下がってぶつかる人もいて「やってよかった」と思いました。楽しんでもらえて嬉しい限りです。
――ニンテンドースイッチ2への対応についてはいかがですか。
中西:「スイッチ2向けに内容を落としているのでは」という話も聴きましたが、その点については安心してください。
カプコンはここ最近PCを含めたスケーラブルな開発体制を取っています。それぞれのプラットフォームや皆さんのPC環境に合わせて最適化し、どれも同じゲーム体験を提供できるようにしています。解像度やテクスチャの質は異なりますが、中身はすべて同じです。実機に触れてもらえれば驚いていただけると思います。

――最後にファンへのメッセージをお願いします。
中西:TGSで怖がっていただけて嬉しいです。これまでバイオをたくさん作ってきましたが、今回は特に盛り上がりを感じています。その熱をチームに伝えて、残りの期間でなるべく良いものに仕上げたいと思います。
熊沢:現在、裏で開発チームが鋭意調整中です。自信のあるコンテンツに仕上がってきていますので、ぜひ楽しみにしてください。
中西:「裏」と言っても大阪ですけどね(笑)。

『バイオハザード レクイエム』は2026年2月26日、PC/PS5/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ2にて発売予定です。