4GamerとGame*Sparkは2025年8月21日、ゲーム業界への新卒就職を目指している就活生を対象としたイベント「キャリアクエスト」の第3回を、東京都立産業貿易センター浜松町館で開催した。
このイベントは、ゲーム業界への高い熱意を持つ学生と、新卒採用に意欲を持つゲーム関連企業のマッチングを図ろうというものだ。その開催に合わせて、実際に現場で働いている若手社員に、自身の就職活動について話を聞いてみた。
今回お届けするのは、『Fate/Grand Order』(iOS / Android、以下、FGO)をはじめ、多くのTYPE-MOON作品の運営・開発を手がけるラセングルで、アシスタントプロデューサーを務めるK.Y.さんのインタビューだ。ゲーム業界に飛び込んでからの経験や苦労、仕事のやりがいなどを聞いているので、ゲーム業界を目指す学生の皆さんは、ぜひ参考にしてほしい。
なお、本稿は4GamerとGame*Sparkの共同による合同企画となっている。前編にあたる「就活編」は4Gamerに掲載されているので、合わせてご一読いただきたい。

若い会社だからこそ、挑戦のチャンスがある
4Gamer:改めまして、自己紹介をお願いします。
K.Y.さん:ラセングルでアシスタントプロデューサーを務めています、K.Y.です。2020年にディライトワークス(現ラセングル)へ新卒で入社し、今年で5年目になります。
入社当時から現在にかけて『Fate/Grand Order Arcade』の外部パートナーとの連絡や調整業務を担当するとともに、今は2025年12月20日(予定)に終章が開幕するFGOを盛り上げるために、ANIPLEXさんと連携して「アニプレックス オンライン」での施策を考えたり、予算や売上のシミュレーションを行ったりしています。
4Gamer:インタビュー後編では、働き始めてから感じた会社の雰囲気や、苦労などを伺いたいと思います。まずゲーム業界に飛び込んでみて、どう感じたでしょうか。思い描いていたイメージどおりでしたか?
K.Y.さん:私が入社したのは、ちょうど新型コロナウイルスが流行した時期でしたので、それはもう想像とはかなり異なりました。急遽リモートワークへの切り替えが行われて、オフィスには誰もいない状態だったので……。最初の1年目は、自分が社会人になった感覚すら薄かったですね。
4Gamer:ああ、なるほど。しかも、当時の主な仕事は渉外ですものね。
K.Y.さん:ええ。本来は、TYPE-MOONさんやセガさんのオフィスに伺って、ご挨拶するところから仕事が始まるはずなんですが、そういった機会もありませんでした。ただ、リモートワークは会話のやりとりをスピーディに行えるメリットがあるので、コミュニケーションの面ではとくに問題ありませんでしたね。ずっとチャットのやり取りのみで、2年くらいお互い顔を知らなかった、なんてことはありましたけど(笑)。

4Gamer:リモートワークは今も続いているんですか?
K.Y.さん:私は現在もリモートワークですが、プロジェクトによって方針が違います。ゲーム開発はチームワークが重要な場面も多いため、開発フェーズに合わせて全員オフィス出社としているチームもあります。私もここ1年はオフィス出社する機会が増えたことで、改めてチームで働いている実感が湧いてきました。
4Gamer:入社からずっとリモートワークだと、確かに会社で働いている実感は持ちにくいでしょうね。
K.Y.さん:ええ。ただ私はFGOのチームではなかったので直接体験したわけではないですが、アップデートの直前はいつも山のようなチャットが飛び交っているのを見ていたので、「これがゲーム業界かあ」と思ったものです。元々、「ゲームを作っている人の手助けがしたい!」と思って飛び込んだ業界でしたので、それを見て、ますます自分に何ができるか考えるようになりました。
4Gamer:仕事にやりがいは感じていますか。
K.Y.さん:もちろんです。1年目の仕事が奈須さん(TYPE-MOONの奈須きのこ氏)や武内さん(同代表の武内 崇氏)への監修依頼だったので、世に出る前のTYPE-MOON作品にいち早く触れられるのは、緊張や責任を感じると共にやりがいも感じました。
4Gamer:監修は、やっぱり厳しいんでしょうか。
K.Y.さん:TYPE-MOONさんは開発事情やゲームの仕様を汲んでくださるので、厳しい、と一言で表現するには難しいところがあります。私が担当したのは、主に『Fate/Grand Order Arcade』や『MELTY BLOOD: TYPE LUMINA』ですが、こういった原作があるタイトルは、やはり版元であるTYPE-MOONさんの中に曲げてはいけない設定があるので、そこをしっかりお伺いしたうえで、各タイトルの開発を行うセガさんやフランスパンさんとより良い形として作り上げていくことを意識していました。
4Gamer:社内の雰囲気はどうですか。やっぱりFGOが好きな人が多いのでしょうか。
K.Y.さん:そうですね。FGOを大切にしている方が多いと感じます。カノウさん(第2部開発ディレクターのカノウヨシキ氏)がまさにそうですが、自分たちで作ったコンテンツを、いちプレイヤーとしても楽しんでいる印象です。あと、なんというか……とにかく仕事へのモチベーションが高い方が多いと思います。
4Gamer:というと?
K.Y.さん:皆さん、いつ連絡・相談してもレスポンスが爆速で、疲れている状況だと思うのですが、丁寧に受け答えをしてくれる方が多いです。
4Gamer:それでいうと、会社の福利厚生はいかがでしょう。満足していますか。
K.Y.さん:社員同士が公園のように気軽にコミュニケーションを取れることを目的としたコミュニケーションエリア「Park」というのが社内にあるのですが、これがすごくいいですね。本格的なカフェが併設されていまして、ランチや休憩時間だけでなく、プロジェクトの垣根を越えた活発な議論の場や、社内イベントの場所としても活用されています。リラックスした雰囲気の中で、社員同士の絆を深めることができます。




4Gamer:拝見しました。各種ハードのプレイ環境やボードゲームなどが充実していますね。
K.Y.さん:はい。市場調査や技術研究のためにと会社が設置してくれて、コミュニケーションエリアで自由に遊べるようになっています。
4Gamer:ラセングルは、どんな人に向いている会社だと思いますか。
K.Y.さん:ゲーム制作の意欲が高い方は向いていると思います。FGOの会社というイメージが強いかもしれませんが、オリジナルのゲームを作りたい人にとってもいい環境が整っているんですよ。
4Gamer:それは、具体的にはどういうものなんでしょうか。
K.Y.さん:少人数のチームでゲームを作ってみる「GAME HUB」という取り組みがありまして、社内でも参加が推奨されているんです。そこで作られたゲームが、必ずしも陽の目を見るとは限りませんが、まずは挑戦できる環境があることが大事なんだと思います。
4Gamer:まずは手を動かして作ってみよう、ということですね。
K.Y.さん:はい。なので、入社してもFGO関連の仕事しかない、なんてことはありません。
4Gamer:では、反対にFGOが好きな人はいかがですか?
K.Y.さん:もちろん、FGOやTYPE-MOON作品の知識がある方も大歓迎です。開発スタッフがやろうとしていること、目指している方向を理解しやすくなるので、むしろ向いていると思います。
ただ……純粋なファンのままでいたいなら、あえて内側に入らないというのも一つの選択肢かもしれません。仕事として関わると、知りたくなかったことを知ってしまうこともあると思うので。
4Gamer:ご自身もそういう経験がありましたか。
K.Y.さん:私は「ゲームが好き」というより「ゲームを作る人が好き」で、それを手助けしたくて業界に入ったところがあるので、あまり感じたことはありません。ただ、ゲームが好きな人全員にオススメできるかというと……そうは言えないかもしれない。

4Gamer:お話を聞く限り、K.Y.さんはイラストが描けてプログラムも書ける、そして渉外までこなせてしまうゼネラリストとお見受けしましたが、一方で何か一つに特化したスペシャリスト志向の人はどうでしょう。ラセングルに合うと思いますか。
K.Y.さん:はい。デザインチームやプログラムチームには、それぞれのプロフェッショナルが揃っていますし、得意分野を生かした仕事ができる環境が整っています。そのうえで、評価制度はゼネラリストとスペシャリストで分けられているので、どちらのタイプでもキャリアを築いていけると思います。
4Gamer:K.Y.さんご自身は、今後どんな仕事に挑戦したいですか。
K.Y.さん:ちょっと観念的な話になってしまうんですが……ゲーム業界に新しい風を吹かせるような、誰も見たことのないジャンルを切り拓くような仕事がしたいと思っています。ゲームの枠を飛び越えた、新しい市場を生み出すような。
4Gamer:それは、新しいプラットフォームのようなものでしょうか。
K.Y.さん:プラットフォームでもいいんですが、もっと先駆的な何か。例えばVTuberなんかも、配信や2Dや3Dのアバターといった技術そのものは以前からありましたが、その組み合わせで新しい市場を作り上げたところがありますよね。そういった新機軸の何かを作り上げて、会社に還元できたらいいなと思っています。
4Gamer:なるほど。K.Y.さんのようにやりたいことが決まっている人には、ラセングルのような若い会社が向いているのかもしれないですね。
K.Y.さん:そうですね。比較的新しい会社であるうえに、FGOという柱となるコンテンツを持っているので、若いメンバーにも成長するチャンスがめぐってきやすいのは魅力だと思います。私が今担当しているゲームのプロデュースに関わる業務も、本来であればもっとベテランに任されるはずですから。それに詳しくは言えませんが、FGO以外のプロジェクトもいろいろ動いている時期なので、やる気のある方はぜひ扉を叩いてみてほしいです。
4Gamer:本日はありがとうございました。
