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『ウマ娘 プリティーダービー』映像制作の裏側…品質向上&フロー改善のために開発された制作ツールとは?【CEDEC2025】

『ウマ娘 プリティーダービー』の映像制作は、以前よりも高品質化されているそう。「CEDEC 2025」にて制作ツールの進化について語られました

ゲーム 特集
『ウマ娘 プリティーダービー』映像制作の裏側…品質向上&フロー改善のために開発された制作ツールとは?【CEDEC2025】
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2025年7月22日から24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにてゲーム技術者やコンピュータエンターテインメントのエンジニアらを対象とした、国内最大級のカンファレンス『CEDEC 2025』が開催されました。

12会場に分かれて数多くの講演者がさまざまな講演を行なうなかで、22日に株式会社Cygamesのクライアントサイド エンジニアとして活躍する嘉寺尚也さんも登壇し、「『ウマ娘 プリティーダービー』における映像制作のさらなる高品質化へ! ~豊富な素材出力と制作フローの改善を実現するツールについて~」と題したセッションを行いました。

『ウマ娘 プリティーダービー』にまつわる映像制作について、実制作において発生したトラブルをどのように対処にアップデートしていったかを例にあげ、現状の映像制作のワークフローについて語られました。

講演者である嘉寺さんは、2019年から株式会社Cygamesへと入社し、『プリコネグランドマスターズ』や新規タイトルの開発を経て、『ウマ娘プリティダービー』の開発・運用を現在担当しています。

まず、映像制作の一般的なワークフローについて、触れられました。通常のワークフローでは映像用のシーンを制作し、それらを画像化、複数の画像をコンポジットで構成と加工して1フレームをくみあげ、映像として出力していくのが一般的です。

一方で『ウマ娘 プリティーダービー』のワークフローでは、シーンの制作から素材の撮影までをUnityで処理し、After Effectsでコンポジットして映像出力をしていくといいます。Unity内でシーンが制作され、ウマ娘本人・カメラモーション・立ち位置などの構図などで構成されており、それらをそれぞれ分解した画像へと出力し、After Effectsでコンポジットすることで映像として形を成していきます。

ですが、嘉寺さんはこれに大きな課題が2つあったと続けます。それは撮影できるコンポジット用の素材・種類が少なく、クオリティ面に問題があったこと。また撮影作業そのもののコストが大きく、作業者の負担となっていたことです。

シーンの制作をUnityで行うことで、ゲーム上でできるポストプロセスやライティング表現しかできないことネックとなっており、撮影に関してもUnity上でUnity Recorderを使用しようとしても撮影を始める前準備が必要で、しかも手作業で行なう必要がありました。

また、そうして準備して撮影した映像も、髪の毛や衣服などの揺れものやエフェクトをリアルタイム計算して動かしていることが影響し、撮影結果が安定しないという問題が発生。解決すべき課題として考えられてきました。

「コンポジット素材を増やしたい」「セットアップを楽にしたい」「結果を安定させたい」といった要望を叶えるため、新しいツールの制作が着手されました。

まずコンポジット用の素材に関しては、専用の素材を撮影できるようにし、さまざまなタイプの素材を出力できるようになったとのこと。この講演では、左からデプス、ノーマル、アウトライン、マスク、シェード、シャドウと例が上げられました。

撮影に関しても、これまでウィンドウをいくつか立ち上げる必要があったところを1つのウィンドウのみで済むように設計。必要な設定から素材撮影まですべて行えるようにツール制作されました。さらに、変更した設定を気軽に保存できたので、作業効率も格段にアップしたといいます。

肝心要ともいえる撮影結果の安定ですが、撮影前にシミュレーションをすることで状況を揃え、ゼロフレーム目から撮影開始直前のフレームまでをシミュレーションできるようにして結果を安定化させることに成功。エフェクトのランダム要素もシード値を固定することで、映像出力の安定化を測ることに成功しました。

つづけて嘉寺さんは、新たな制作ツールの機能紹介へと移っていきました。使い方はとても簡単で、制作ツールを起動したあとに撮影したいシーンを開き、開発ツールから事前設定をおこない、撮影開始、あとは出力まで待つというシンプルな流れになっています。

設定には、主にオブジェクトに関する設定、コンポジット素材に関する設定、出力に関する設定とそれぞれあるといいます。

まずはオブジェクトに関する設定は、ツールと立ち上げた際にシーンを解析し、描画対象となるオブジェクトをすべてカテゴリーごとにわけ、カテゴリーごとやオブジェクトごとに表示切替が出来るように設計。描画結果だけでなく、完全に表示しないようにしたり、オブジェクトの一部分だけを表示できるようにしたりと、さまざまな表現ができるように設計されました。この講演では、2種類の素材から解説されていました。

二次元らしい画像から三次元らしい奥行きを表現することが可能となるだけでなく、値を変えることで被写体深度も表現できています。さらにオブジェクトごとに特定の色を塗りつぶし、コンポジット用のマスク画像として使用できるようにもなりました。

コンポジット素材の設定は、チェックボックスから出力できるかが選べるようになっており、どのような見た目になるかをチェックできるようにプレビュー機能も実装。動き方の区別をつけるため色付けできるようになっており、オブジェクトごとに色を設定できます。

出力設定もパスで指定、拡張子もOpenEXRとBingを選べるようにツールが設計されています。また、シーンのどこからどこまでを撮影するかを設定できるUIになっており、開始・終了がスライダーや数値をみてパッとわかりやすいようになっています。撮影後の結果は、素材をフォルダごとに管理しており、ひと目でわかりやすくなっています。

ここまできめてきた設定は1つのアセットとして保存され、1つのシーンに対していくつもの保存されたアセットをきり替えて使うことが可能。今回紹介シーンとしてあがっている昨年放映されたCM映像では、制作中に15個ほどの設定が作られたそうです。

ここで、実際の制作と同じようにコンポジット素材を出力することに。いくつかの指定をいれてデータを出力すると、十秒ほどで出力終了。フォルダ管理されたデータを1つずつチェックし、確認していきます。

このあと嘉寺さんは、実際に制作された映像とコンポジット素材を使い、本カリキュラムを聞いている講習受講者に紹介していきました。

複数の光源が絡んでいるようにみえる映像でも、じつは「光を実際に当てる」という処理ではなく、いくつかの色味をつけて処理をしていたり、いわゆる「落ち影」という処理をほどこすことで、より立体感や実在感を増して表現がなされています。

今回のセッションでは、実制作での問題に関して新ツールを開発・実装したことで解決できたことが発表されました。今後、ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』の映像制作で課題が浮かび上がった際には、さまざまな方法で課題解決に向けて尽力されていきそうです。


《草野虹》

福島・いわき・ロック&インターネット育ち 草野虹

福島、いわき、ロックとインターネットの育ち。 RealSound、KAI-YOU.net、Rolling Stone Japan、TOKION、SPICE、indiegrabなどでライター/インタビュアーとして参加。 音楽・アニメ・VTuberやバーチャルタレントと様々なシーンを股に掛けて活動を続けている。 音楽プレイリストメディアPlutoではプレイリストセレクター(プレイリスト制作)・ポッドキャストの語り手として番組を担当している。

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