HoYoverseは、7月11日より『崩壊:スターレイル』×「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]」コラボを開催中です。筆者は『崩壊:スターレイル』を熱心にプレイしながら、十数年来の『Fate』シリーズファンでもあります。そのため2024年7月にコラボの初報が発表されてから、実装を今か今かと待ち望んでいました。
今回ついに待望のシナリオやコンテンツが追加されたため、本記事では双方のファンという視点で、『崩壊:スターレイル』×『Fate』コラボのプレイレビューを執筆していきます。コラボの詳細なネタバレは含みませんが、概要やコンテンツ内容には触れているためご注意ください。
◆間違いなく『Fate』コラボでありながら、ピノコニー編後日談のシナリオ
『Fate/stay night』は元をたどれば、TYPE-MOONが2004年に発売したPC向けビジュアルノベルです。大別してセイバールート「Fate」、遠坂凛ルート「Unlimited Blade Works」、間桐桜ルート「Heaven's Feel」という3つの物語で構成されており、それぞれ展開と結末が異なります。
今回のコラボ元「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]」は、そのうちの遠坂凛ルートをアニメ化した作品です。
『Fate』の舞台は架空の地方都市「冬木市」で、7人の魔術師はマスターとしてサーヴァントと契約し、持ち主のあらゆる願いを叶えるという願望機「聖杯」を巡るバトルロイヤル「聖杯戦争」を戦い抜きます。シリーズの特徴や魅力は伝説上の人物がサーヴァントと呼ばれる存在として登場し、伝説の存在同士を戦わせたらどうなるのかという歴史のifストーリーや、過酷なバトルロイヤルを通して描かれる善悪を超えた群像劇。突如、共闘関係を強制させられたマスターとサーヴァントが獲得する絆と相互救済などが挙げられます。
コラボシナリオの開拓クエスト・幕間「美しき夢と聖杯」でも『Fate』の大枠は守られており、ピノコニーの五大クランのうち経済を担う「ルーサン家」当主「オーディ」が、聖杯を手に入れたことをきっかけに「聖杯戦争」が開幕。サーヴァントは『Fate』側から「セイバー」「アーチャー」「ランサー」の3騎、『崩壊:スターレイル』側から4騎登場します。


また同一シリーズならまだしも全く異なる作品同士のコラボだと、「どちらかが浮いてしまわないか」と不安に思う方もいるかもしれませんが、「伝説上の人物がサーヴァントと呼ばれる存在として登場」という設定が活かされています。ピノコニーで昔活躍したキャラクターを登場させることで、Ver.2.xシリーズを通して描かれた「ピノコニー編」の後日談というべき内容が展開。
詳細なシナリオ内容は、ぜひ読者の皆さん自身の目で体験してほしいところですが、今回は『Fate』コラボでありながらあくまで主体は『崩壊:スターレイル』でした。


『Fate』本編で描かれたセイバーの「王の選定をやり直したい」という願いと、『崩壊:スターレイル』プロローグでプレイヤーが選んだ「主人公が星穹列車に乗るか否か」というイフ同士を繋げた構成とキャラクター配置が白眉。
そしてセイバーと主人公「開拓者」それぞれが歩んできた道のりと選択を肯定し、現在進行中の開拓クエスト「オンパロス編」にも通ずる「英雄とはなにか」という命題に答える様子に、「これぞコラボならではのストーリー!」とグッと来ました。


今回コラボで『Fate』ファンとして嬉しかった点は、キャラクターの背景が本編から地続きだということ。サーヴァントはあくまで「英霊の座」から召喚されるという形で、基本的に聖杯戦争の記憶を次に持ち越すことはできません。
ただ今回は「Unlimited Blade Works」を通して第五次聖杯戦争を見届けたセイバーや、“答えを得た”アーチャーがそのまま参戦。奈須きのこ氏監修のため解釈違いということもなく、あまり言及されてこなかった「UBWで憑き物が落ちて吹っ切れた後」の人物像で描かれていたのが、意外と新鮮でファンサービスとして巧みでした。


◆『崩壊:スターレイル』キャラが聖杯戦争に参戦したら……というオタクの夢が叶う
『Fate』コラボはストーリーだけでなく、イベント「Fate/stay night 勝者の自己研鑽」も開催中です。こちらは駒・絆・令呪などを駆使してバトルを繰り返す聖杯戦争シミュレーターといった具合で、プレイヤーを含めたNPCキャラクター8人と共に聖杯戦争へ参加して、最終的な勝者を決めていきます。お馴染みの宝具がアイテムとして登場するなど、やりごたえ抜群ですが本コンテンツで筆者が注目したいのは別のポイントです。

イベントのホーム画面には「儀式ファイル」という資料集があり、こちらは『Fate』本編でも存在していたキャラクター設定を閲覧できる要素です。今回は『崩壊:スターレイル』キャラクターたちが聖杯戦争に参加したという形のイベントなので、各自のステータスや聖杯にかける願いを見られます。


たとえば星核ハンターの「カフカ」「ホタル」の固有スキルは強力な能力であると同時に「この効果は開拓者には適用されない」という内容で、なにかと主人公を気にかけている二人の関係性をうかがわせるもの。
さらに銀狼がチートでステータスをマックスにしているなど、「もし〇〇が聖杯戦争に参加したらクラスやステータスがどうなるか」という、『Fate』を通過した人特有の妄想が公式で実装されていたことが面白かったです。


◆新プレイアブル「セイバー」「アーチャー」を触ってみた感想
最後に、新しくプレイアブルキャラクターとして実装された「セイバー」と「アーチャー」を触った感想をお伝えします。まずセイバーは壊滅の運命を歩む風属性で、必殺技「約束された勝利の剣 (エクスカリバー)」の高火力を中心に戦います。
敵全体に大ダメージを与えた後、ランダムな敵にバウンド攻撃を繰り出す強力な必殺技の膨大な消費EPを、「炉心共鳴」という独自スタックで補うのが特徴の戦闘スタイルです。

バウンド効果ということで単体が相手の場合すべての攻撃が一体に集中し、必殺技発動後には敵が少ないとダメージ倍率が上昇する全体範囲の強化通常攻撃が使用可能。そのため全体・単体火力の両方に優れた隙のないアタッカーです。
パーティー編成としては必殺技の回転をサポートするサンデーなどの「調和」キャラクターと組むのが良いでしょう。風属性なのはエクスカリバーを隠す風の鞘「風王結界(インビジブル・エア)」を連想させますし、必殺技に特化した性能なのも文字通り「必殺」の宝具再現としてアツかったです。

次にアーチャーは巡狩の運命を歩む量子属性で、特徴は戦闘スキルをSPが続くかぎりターンを消費せずに最大5回まで使えることです。さらに連続するごとに火力が上昇するため「どれだけSPを増やせるか」が肝で、花火や寒鴉のようなSP上限を上げたり供給しやすかったりするキャラとシナジーがあります。

アーチャー自身も必殺技などの効果で、味方の攻撃時に追加攻撃が発動するチャージを獲得して、手数とSPを増やすことが可能。単体攻撃が得意な巡狩ということでボス戦には滅法強く、もし敵が複数体でも高火力な戦闘スキルを何度も叩き込むことで問題なく殲滅できます。
そして『Fate』ファンとしては必殺技待機時に固有結界「無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)」の詠唱をフルで聞けるのも嬉しいポイントでした。
イベントの感想としては、ただただ「ありがとう」という言葉しか見つかりません。まさか「Unlimited Blade Works」後日談ストーリーやキャラの関係性が味わえるとは思っていませんでしたし、それでいてあくまでメインは『崩壊:スターレイル』という軸はぶれない理想的なコラボでした。『Fate』シリーズの多大なる影響を改めて感じつつ、本作の面白さ・可能性を再確認できました。
バトルイベント「Fate/stay night 勝者の自己研鑽」限定ミッション期間は8月11日5時まで、終了後は「常時略伝」としてゲームに常設収録されます。開拓クエスト・幕間「美しき夢と聖杯」および、「セイバー」「アーチャー」ピックアップガチャは長期間開催中で、「アーチャー」はVer3.6終了まで無料配布されます。