
いまは渋谷や新宿、秋葉原といった現実の街を舞台としたゲームが一世を風靡していますよね?実在する街がゲームでその匂いも感じられるくらいに描かれることで、ゲームプレイもどこか馴染み深いリアルを感じさせてきました。
そんな実在する街を描くゲームとして、ゲーマーが注目すべきあるRPGシリーズがある、と筆者は前から思っていました。それが「デジモンストーリー」シリーズです。
デジモンは長く続いているコンテンツであり、さらに広く多様な展開を続けているコンテンツでもあります。それゆえ、一見すると巨大なキャラクターコンテンツとして見過ごしがちかもしれません。
ところが「デジモンストーリー」シリーズに関しては、2015年の『デジモンストーリー サイバースルゥース』(以下、サイバースルゥース)以降は、新宿をはじめ、東京の主要都市を舞台のうちの1つとしてきました。
それだけではなく、「デジモンストーリー」シリーズは昔から現実世界とデジタルの世界を行き来する世界観を特徴としてきたのも相まって、ある意味でリアルなものになったところはあるのではないでしょうか?
現実世界でのメタバースの隆盛から、社会インフラにIOTなどを導入するなど、リアルとデジタル領域の融合が進むなかで、意外に「デジモンストーリー」シリーズはアクチュアルな可能性を持つゲームなのではないか、と。
そんなシリーズ最新作『デジモンストーリー タイムストレンジャー』(以下、タイムストレンジャー)は、プラットフォームをPS5やXbox Series X|S、そしてPC(Steam)に構えることによって、過去になくハイエンドな舞台でシリーズが積み上げてきたものを見せつけるかのようです。
今回、『タイムストレンジャー』を先行プレイできる機会をいただいたため、そのリアルとデジタルの境界を越えるRPGの最新版に何があったかをお送りしましょう。
街の封鎖・そして爆発・タイムスリップ。その謎を解くために

『タイムストレンジャー』の物語の始まりは新宿。超常現象の調査と解決を専門としたある組織「ADAMAS」の一員である主人公(結城ダン/結城カナン)は、政府によって新宿が封鎖されてしまう事態に直面します。
封鎖された街を調べていたところ、見たことのない生物に遭遇。それがデジモンでした。デジモンたちは一体なぜ現れたのかを調べる中で、主人公は謎の爆発に巻き込まれます。どうやら一命はとりとめたようですが、周りを見渡してみると8年前の世界へと飛ばされてしまったことに気づきます。
そんな異様な状況の謎を解くために行動する中で、主人公はデジモンたちが住処とするデジタルワールド・イリアスへと足を踏み入れていきます。果たして政府の新宿封鎖の意図とは?そして謎の爆発と、タイムスリップの裏にあるのは何なのか?
デジモンが息づくデジタルワールドに広がる巨大な街へ

今回のメディア向け試遊では、まさに主人公たちがはじめてデジタルワールド・イリアスを訪れたところからプレイする形になりました。最初に降り立った場所は、イリアスの中心となるセントラルタウン。ここに溢れかえるほどのデジモンが、種族を問わず暮らしているのです。

まず一目見て印象深いのは、デジタルワールド・イリアスの生々しく活気に満ちた風景でしょう。デジタルワールドであるはずのこの場所はデジタル要素を全く感じさせず、色とりどりの建物が入り組んで立ち並ぶ風景は、まるで南米の街に来たかのような雰囲気なのです。
そこへ雑多な種類のデジモンたちが暮らしているというのは、さながら中南米の街で様々な人々が集うような雰囲気さえ思い起こさせるものがあります。メインストーリーが比較的、日本の新宿を舞台とした緊張感のある導入なのに対して、鮮やかな街の活気に触れる流れに意外さを覚えました。


デジモンたちを駆使するバトル

しかしセントラルタウンの奥へ向かうと、街の広場で見られたような楽しげなデジモンばかりではありません。こちらに襲い掛かってくる相手が潜んでいます。
バトルはターンベースを基本に、敵味方の行動順が画面右に表示される形式。本作のレポートの前に『サイバースルゥース』をプレイし直していたのですが、今作もおおよそのスタイルは変わらないかたちです。


見どころは、ハイエンドなグラフィックを出力できるプラットフォームゆえに可能となった、キャラモデルの精微さとスキル演出の鮮やかさです。数々の属性やスキルを駆使した戦いが、今回はシリーズでも屈指のクオリティで描かれる点が魅力となります。
またバトルは演出だけではなく、プレイアビリティを高める仕様として倍速モードも存在しています。これもサクサク進めたいときには重宝する機能であり、長時間プレイすることの多いRPGに実装されていると、なかなかありがたいものだったりします。

しかし先に進むほどに、簡単には勝てないやっかいなデジモンが立ちふさがってしまうもの。そこで活路を見出すために、敵の弱点を突く新たなスキルを身に着ける必要もあるでしょう。ですが、経験値を溜めてレベルを上げて……という作業が大変という中でも、今作では遊びやすい仕掛けが施されています。
街に戻ってみると、立ち並ぶお店の中になんとスキルを販売している店が。そこでは様々な属性の攻撃スキルから、味方を助ける回復スキルまで販売しているではありませんか。これらのスキルはデジモンに自由にセットでき、より良い戦略を練れるというわけです。特にデジモンを訓練することなく、スキルをインストールするみたいに身につけさせられるというのはちょっとデジタルな感じがしますね。
ともあれスキルを揃えて行くとさらに街の奥へと進んでいけます。そしてその奥には、こちらを消し去ろうとするボス・パロットモンが待ち構えているのでした。

巨鳥型デジモンのパロットモンは相当な体力と攻撃力を誇るデジモンとして、パーティを圧倒してきます。ここでは弱点属性で攻撃していくのですが、それでも相手のHPはなかなか削れないほどに手強い。先ほど購入した攻撃スキルや回復スキルを装備した状態であっても、なお戦いは苛烈です。このあたりのゲームバランスは、「イリアスは決して楽な場所ではない」と示しているかのようでした。
“デジタル”と名付けられながらデジタル的ではない世界を歩いて

総じて街のアートスタイルからキャラのモデル、バトルにおける演出や戦略、デジモンの育成やカスタマイズなどなど、オーソドックスなRPGでありながらも過去のシリーズより順当に洗練させることで、現行のプラットフォームに見合ったクオリティになっているのは確かでしょう。
しかしなにより、現実世界とデジタル領域の境界を越える世界観でありながら、ゲームで描かれる世界自体は生っぽく、あまりデジタル的と感じさせない部分が特殊な雰囲気を感じさせます。
「デジモンストーリー」シリーズのみならず、他のデジモン関連のゲームでも、もともとそこまでデジタルワールドをデジタル過ぎずに描くものは少なくありません。ファンタジーとしてデジタルワールドを描く、ということがシリーズの方向であるのはわかるのですが、いまビデオゲーム全体でサイバーパンクなどの世界観が盛り上がっている中では、少し異質な方向ではないでしょうか。
そういった意味でも今回の試遊では、意外に広いゲーマーやRPGファンが触ってみる価値のあるタイトルではないかと感じていました。
『デジモンストーリー タイムストレンジャー』は、2025年10月2日にPS5/Xbox Series X|S向けに発売を予定。Steam版は10月3日のリリースを予定しています。
パッケージ版の早期購入者にはデジタル特典として「アグモン(黒)/ガブモン(黒)」やコスチューム等が付属。また、『デジモンカードゲーム』プレイアブルカード(1種)「アイギオモン」も数量限定で付属します。ダウンロード版の販売形態には、シーズンパスやコスチューム等が含まれた「デラックスエディション」、そこへさらに複数のコスチュームや特別なデジモン等が追加された「アルティメットエディション」が用意されています。
加えてパッケージ版の販売形態には、アートブックやゲーム内楽曲USBのほか、マルチスチールケース、アクリルジオラマ、そして「デジモンカードゲーム」で使用可能なカード3種が付属した「限定版」、そこにフィギュアが足された「フィギュア付き限定版」、更にれらのすべてのアイテムやデジタルコンテンツに加えてシリアルNo.付きオリジナルパブミラーが含まれた「超特装版」が用意。今年のRPGのなかで、見逃すべきではない一作が着々と登場する準備を進めています。