韓国のゲーム開発会社「SHIFT UP」は、2016年に正式サービスを開始した『デスティニーチャイルド』でその名を馳せ、2022年には『勝利の女神:NIKKE』(以下、NIKKE)を、そして同社初となるコンシューマー向けタイトルの『Stellar Blade』を2024年に送り出しました。
昨今は運営型ライブゲームがひしめいており、早いものではサービス開始から数か月で運営を終了させる作品も少なくありません。そんな群雄割拠の時代に登場した『NIKKE』は、シナリオ・キャラクター・ゲーム性を高いレベルで構築し、多くのユーザーを獲得。2年半を超えて運営が続いており、今もなお高い人気を誇っています。
また『Stellar Blade』は高難易度の3DアクションRPGで、同社におけるコンシューマーでの初タイトルとして挑むにはハードルが高いジャンルでは、といった声もありました。しかし、丁寧に作り上げられたアクションは手触りもよく、難しさと爽快感を両立する心地よいプレイ体験を実現させます。
ひと足先にリリースされたPS5版『Stellar Blade』はプレイ満足度の高い作品として高評価を博し、2025年6月12日にはPC版の発売も予定されています。PC版が登場すれば、新たなユーザーを獲得し、その評判がさらに広まることでしょう。
今や同社を代表するほどの作品となった『NIKKE』と『Stellar Blade』が、この6月にクロスコラボレーションを行います。どちらもコラボ自体の経験はあるものの、双方向は今回が初。しかも、SHIFT UPの自社内コラボという側面もあります。
『NIKKE』が『Stellar Blade』に、『Stellar Blade』が『NIKKE』に、どのような形で登場するのか。その本質の一端に迫る対談動画が、6月10日に公開されました。
この対談動画では、『Stellar Blade』と関わった経験も持つ元ソニー・インタラクティブエンタテインメント-インディーズ イニシアチブ代表の吉田修平氏が、『Stellar Blade』ディレクターのキム・ヒョンテ氏と『NIKKE』ディレクターのユ・ヒョンソク氏に今回行われるコラボの魅力を伺い、興味深い話の数々を引き出しています。
また、『NIKKE』と『Stellar Blade』の両作品とそれぞれコラボした実績を持つ『NieR:Automata』を含む『NieR』シリーズのプロデューサー・齊藤陽介氏ならびにディレクター・ヨコオタロウ氏も招かれており、クリエイター同士による濃密なやりとりも展開しました。

そんな密度の高い対談の収録後、キム氏、ユ氏、吉田氏が今回のコラボについて語る合同インタビューの場が設けられました。その一部始終をお届けします。
■『勝利の女神:NIKKE』×『Stellar Blade』のコラボが実現しなかった可能性も!?
──以前のインタビューで、ユ・ヒョンソクさんが次のコラボでやりたい作品として『Stellar Blade』を挙げておりましたが、実際にそれを実現するまでの過程やエピソードを教えてください。

ユ・ヒョンソク氏(以下、ユ氏):『Stellar Blade』のリリース前からキムに「『Stellar Blade』とコラボしたい」と何度もお願いしていた記憶があります。まるで洗脳のように(笑)。私たちは、お互いのプロジェクトやチームをリスペクトし合っており、とても自然な流れで実現したと思います。
何か決定的なきっかけがあってコラボが実現したというよりは、「これは運命のようにやらなければならないコラボレーションだ」といった状況でしたね。
キム・ヒョンテ(以下、キム氏):皆さんだけにこっそりお話しする秘密ですが、実は『NIKKE』と『Stellar Blade』はコラボできなかった可能性もありました。リリースされた『Stellar Blade』の評価が低かったり、売れ行きが悪かったら、『NIKKE』とのコラボは不可能だったかもしれないのです。
『NIKKE』のコラボは1四半期のコアコンテンツを決めるものなので、そのコラボがうまくいかなかったら、1四半期の期間にわたってユーザーをがっかりさせてしまうことになるんですよね。そういった、1四半期の責任を負う重大なプロジェクトなので、(『Stellar Blade』が)それにふさわしいものになるかという心配がありました。
実は、その心配は今もまだあります。本当にうまくいくことを願っており、『NIKKE』サイドには感謝しかありません。『Stellar Blade』と組んでくださるというのは本当に嬉しくて、ありがとうございます。
──『NIKKE』のコラボとしては、初予告から実施まで長い期間がありました。これは、『Stellar Blade』コラボが特別だったから開発に時間がかかったのですか? それとも開発期間は他のコラボと同程度で、今回の告知が早かっただけでしょうか?

キム氏:『NIKKE』では初めてのクロスコラボレーションとなり、できること、作れるものがたくさんあり過ぎました。特に自社コラボでもあるので、みんなが本当に頑張って色々なものを盛り込み、だからこそ開発に時間を要するところはありました。
もうひとつの理由は、自社コラボなので「ここまで発表しないでください」という制限がないんですよね。そのため、早めに言ってしまったという形で、私の記憶だと『Stellar Blade』の発売日にもう言ってしまったような記憶があります。
ユ氏:私は記事を見て知りました。「えっ、あるんだ」と(笑)。
──『NIKKE』と『Stellar Blade』は、プラットフォームもゲームジャンルも全く違います。そうした作品同士がコラボレーションを行うとなった時、『Stellar Blade』チームメンバーはどのような反応でしたか?
キム氏:『Stellar Blade』チームの立場では、PC版の発売とほぼ同時にコラボレーションも展開するため、実質ふたつのプロジェクトを同時に進めるような開発でしたね。開発の時間もタイトな状況でした。
なので、あえて私の方から「こうして欲しい」などは言いませんでした。ただ、メンバー同士が自由に開発していく中で競争に火が点き、お互いに温度感が上がってしまったんですよ。なので、私の方から「そこまでしなくても」と言いたくなるくらい、熱量がすごくて。そういった意味では、スタッフのみんなに感動していますし、感謝しております。
ユ氏:キムさんからコラボの準備について話していた時に、「PC版の準備と同時進行でやらないといけないので、今回のコラボコンテンツは本当にベストなものは作れないかもしれませんよ」と聞いていたんですよ。
その後、開発中のビルドを見たら、とてつもなくクオリティの高いものが作られていたので、急いで『NIKKE』チームのところに戻って「大変だよ、あちらはすごいものを作っているよ」と言わなきゃいけないなと思うくらいでした。それに刺激され、『NIKKE』チームもより良いものを作ろうと張り切っていました
吉田修平氏(以下、吉田氏):さきほどこっそり見せていただいたんですが、どちらもすごいです(笑)。
──コラボレーションを進めるにあたって、『NIKKE』側から何か要望事項として伝えたことは何かありますか?

キム氏:そういった事情がないのが、社内コラボレーションによる特徴ですね。お互いがやりたいことを自由にやること、それが、他のチームですが自社コンテンツ同士のコラボのメリットだと思います。
最初はすごく簡単だと思っていましたが、みんなが情熱的に打ち込み、深い質問をし合い、お互いをより深く理解しながら作りました。なので、何か要求を出して「ここまでにしてください」といった制限など設けずに、本当に自由なコラボになりました。