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野島一成×直良有祐×深井龍之介 出雲鼎談ー神話が息づく地で語る創作とAIの未来(前編)

野島一成、直良有祐、深井龍之介の鼎談が出雲で行われ、神話や歴史をテーマに創作やAIについて語り合った。各自の創作スタイルや歴史観が交差し、ゲーム制作の変遷も話題に。

ゲーム 特集
野島一成×直良有祐×深井龍之介 出雲鼎談ー神話が息づく地で語る創作とAIの未来(前編)
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『ファイナルファンタジー7』(以下FF)や『キングダム ハーツ』シリーズのシナリオを担当したステラヴィスタ代表の野島一成氏、同じく『FF7』のアートディレクターを務め、故郷の出雲でIZM designworksを設立後、東京と二拠点で活動をする直良有祐氏、そして「メタ認知のきっかけを提供する」をミッションに掲げ、世界史データベースの研究開発を行うCOTEN 代表取締役 CEOの深井龍之介氏。三者を結んだのは「出雲」という土地と「コテンラジオ」というコンテンツでした。

かつてスクウェア(現スクウェア・エニックス)で『FF』シリーズなどを共に手がけた野島氏と直良氏、そして直良氏の出雲高校の後輩である深井氏ーー。野島氏が深井氏のコテンラジオのファンだと知った直良氏の発案で実現した、島根県出雲市で行われた今回の鼎談。

野島氏の初めての出雲訪問に合わせ、三者は稲佐の浜で国引き神話に触れ、出雲大社で神々の物語を感じ、出雲歴史博物館で歴史の厚みを体感しました。そして、コテンラジオでも取り上げられたコミュニティナースの活動拠点「ユース出雲」で、創作と歴史、技術と人間の関係性について語り合いました。

ゲームの話はもちろん、日本特有の混淆文化がもたらす創造性、AIがもたらす未来までーー。異なるフィールドで活躍する三者が、神話が息づく出雲の地で紡いだ、創作の源泉を探る対話の記録です。ぜひご覧ください。

聞き手・文章・編集:山崎 浩司
(崎は“たつさき”)
撮影:曽根 健太
取材協力:IZM designworks

写真左から、深井氏、野島氏、直良氏

◆『FF』シリーズの同僚、高校の先輩後輩、そしてコテンラジオのファン 出雲が結んだ三者の縁

ーーこの鼎談が実現した経緯について、直良さんから説明をお願いできますか?

直良: 去年、野島さんとあるプロジェクトで久しぶりに一緒に仕事をして、「そういえばサシ飲みしたことないですよね」という話になって。飲みながら最近ハマっているものの話になった時、野島さんが「コテンラジオって知ってますか?パーソナリティの深井さんのファンなんです」というものだから「ほぅ、そうきましたか」と(笑)。「僕の知ってるコテンラジオで深井君なら、高校の後輩です」と答えたんです。

野島さんの人となりもそこまで知っているわけではないし、深井君とも人が集まっている場所でしか会ったことがない。でも二人に興味があったので、出雲に来てもらって話してもらえれば、いい時間になるんじゃないかと思ったんです。本当に緩い気持ちでお願いしました。

ーー直良さんが紡いだご縁でこの場が実現したんですね。野島さんは、その話を聞いたときどう思われましたか?

野島: 最初は「後輩といっても同じ高校で、歳が離れているとあまり先輩後輩の関係ってないだろうし、無理やり会わせるのかな」と思って。それはすごく申し訳ないなと。その時はかなり酔っていたので(笑)。

直良: かなり飲みましたよね、あの時(笑)。

野島: その話はそれで終わると思ったんですが、後日「今、深井君と会っている」と直良さんから連絡が来たときも、多分酔っているんだろうなと思って(笑)。お互い、若い頃しか知らないし不名誉なエピソードばかりなので、今日はちゃんといい話ができるのかな…と思ってこの場にいます。

ーーリラックスしてお話いただければと…!深井さんはこの話を聞いていかがでしたか?

深井: 本当に嬉しかったですね。僕は『FF』がど真ん中の世代なんです。リアルタイムで発売されたのを買って、『FF4』から『FF10』までをプレイしていました。『FF6』から『FF7』にかけて3Dになったじゃないですか。あれがすごい衝撃で、ストーリーも特に『FF7』が好きなんです。人生で一番初めにプレイしたゲームも『FF4 イージータイプ』です。自分の思春期に衝撃を受けた作品に携わられた方々、そしてシナリオを書かれていた野島さんが自分のコンテンツを聞いてくれているというのは不思議な気持ちですね。

野島:その感覚は僕にもありましたよ。『FF7』が世界中で遊ばれるようになって、いろんな著名人がそれについて語っているのをネットで見て、「ここまで届いているんだ」と感じました。『FF7』が発売された後ぐらいにインターネットが普及してきたので、その反応で喜んだり傷ついたり。

直良: 一喜一憂してましたよね。

深井: 世界的なゲームの制作者とお会いできるなんて、感慨深いものがあります。『FF7 REBIRTH』のリメイクも買ってプレイしていたので、ちょうど思い出していた頃でした。

直良: 野島さんはいつ頃からコテンラジオを聞き始めたんですか?

野島: コテンラジオがポッドキャストの賞を取ったという話を聞いてからですね。去年の暮れにようやくリアルタイム配信に追いつきました。去年までうちにモルモットがいて、毎晩ケージの掃除をしていたんですが、それに30分から1時間ほどかかるんですよ。その時はいつもコテンラジオをかけていました。ケージの掃除中は妻がモルモットを抱っこして一緒に聞いていて、かなりハマっていました。

ーー野島さんはCOTEN CREW(コテンラジオのサポート会員)にもなられているんですよね?

野島: はい、一番小さい額ですが。直良さんと深井さんの関係を聞いた時に、「金額を増やした方がいいのかな」と思ったんですが、知ってしまってから増やすのはカッコ悪いなと(笑)。

深井: 支援してくださるだけでも、本当にありがたいです!

ーー野島さんの印象に残っているコテンラジオのエピソードはありますか?

野島:色々あるんですが…番外編が結構好きで。その中でもウクライナの回ですね。あの時の対談は強く印象に残っています。「なぜそういう行動をとるのか」「その行動力の源は何なのか」という点が非常に興味深かったです。

深井:SAMI Japanの牧野さんとボリスさんが出演された回ですね、僕も感慨深かったです。彼らは今も出雲にいますよ。

野島: それから、ハチドリ電力の回も印象的でした。

深井: 田口さんの回ですね。彼もめっちゃすごい人です。一般的なビジネスパーソンとはまた違うタイプの…歴史の人物で言うと、斎藤道山のような人ですね。いわゆるエリートコースを歩んできたわけではないけれど、卓越した能力を持っている、みたいな。

野島: あとは、人の長所や能力を握手するだけで見出す方が出演する回も興味深かったです。何者なんだこの人は…という。

深井: たかちんのことですね。佐野貴さん。 彼の能力も特殊な才能と言っていいでしょうね。

野島: 田川系の話も面白いです。単なるヤンキー漫画のような表層的な話ではなく、もっと深いなにかがありました。

ーー田川の「ヤンキー」と「トガリ」、「あぁ?」と「ぺぇっ!」が印象的な回ですよね。ホモ・サピエンスを感じる回でした。

深井: そうですね(笑)。独特の野蛮的な魅力がある回です。本当に様々な人物が織りなす群像劇でしたね。あれは素晴らしい内容だったと思っています。

◆音楽で繋がる三者の創作世界ー『FF』の楽曲から人生を変えた曲まで


直良: コテンラジオって、そもそも学生の時からビジョンみたいなものがあったの?

深井: いや、全然なかったんです。僕は歴史が好きで、話すのは得意なんですよ。僕たちの扱う「人文知」が人生をどう豊かにするかを体感で知ってもらえないから、何かで発信しないと、というのが先だったんです。そこで人材採用やビジネスを作ろうとしても困難しかないのは分かっていたので、まず広める活動をしなければと思って。

「じゃあラジオで撮ってみましょうよ」ってMCの樋口さんが提案してくれて、半信半疑で始めたんです。ちょうどその頃、ポッドキャストが日本でもう一度流行り始めるタイミングで、本当にたまたまの産物です。

直良: 全部たまたまで、戦略はなかったんですね。聞いていると、時代に愛されている感じがしますね。

深井: そうですね、ラッキーでした。

直良:『FF7』でPlayStationというハードに移行した時の売れ方も、そうそうないじゃないですか。臭い言い方かもしれませんが、時代に愛されるとはこういうことなんだなという感触で。その時は何をやってもうまくいくという、なかなかない経験をさせてもらえたなと。

深井: そんな感覚だったんですね。海外でも売れて、戦略的に作っている感じがしました。

野島:それまでは海外でRPGが売れないと言われていたんですよね。でも、『FF7』で世界でも戦えるとわかって、そこから『FF8』の開発が始まり、僕なんかガチガチに緊張していました。

直良: あれから世界を意識するようになりましたよね。

深井: 『FF8』はやっぱり毛色が違いますよね。魔女という概念や寮生活している設定もヨーロッパっぽい。

野島: いろいろ意識して取り組んだんですが大変で。その反動は全部『FF10』で発揮しました。「直良さん!自分たちの好きなこと、やりたいことをやろう!」と。ただ、スケジュールだけはちゃんとしましょうという(笑)。

深井: なるほど(笑)。『FF8』はグラフィックがさらに向上したこともありましたが、一番びっくりしたのはフェイ・ウォンの主題歌「Eyes On Me」です。あの曲、本当にいいですよね。マジで好きなんですよ。彼女の曲の中でも代表作ですが、サブスクにないんですよね…。

野島:僕がもともとフェイ・ウォンのファンだったので彼女に主題歌をお願いしたいと思ったんです。香港まで見に行ったりしていたくらいで。ツテが全然ない中で、担当の人が頑張ってくれました。

深井: へぇ~そんなエピソードが。あの曲はどなたが作曲したんですか?

野島: 植松伸夫さんですね。

深井: やっぱり植松さんはすごいですね。本当にいい曲ですもんね。

野島: 植松さんはプログレッシブロックがお好きですよ。YesとかKing Crimsonとかは当然で、もっとマニアックな名前をたくさん出してきます。

直良: 話し出すと止まらないですよね。『FF8』の打ち上げの時に、植松さんの家にみんなで流れ込んだら見たことのない楽器があったり。「これ、実は映画のこの曲のインスパイアなんだよ」と聞かせてもらって、「ああ、なんか分かる気がする」とか。

深井: 僕は洋ゲーもプレイするんですが、日本のゲーム音楽は頭一つ抜きん出てレベルが高いなと思っていて。『FF7』のBGMもすごく良かったですし、あんなに耳に残る曲を作れるって、天才なんでしょうね。任天堂のマリオの曲も全部覚えているじゃないですか。音楽で記憶に残るというのはすごいなと思って。

直良:世界中にその音は今でも残っていますよね。例えば、アメリカでバスケットボールの試合を見に行った時に、フリースローで一点入ったらマリオのコインの「チャリーン」という音が鳴ったりしています。あの音だけで「ボーナスポイントが1つ追加された」という意味が通じるんですよね。ゲーム音楽の影響力ってすごいです。

古代出雲歴史博物館の銅剣を前に歴史に思いを馳せる。2026年10月まで休館予定。

ーー皆さんは過去にバンド活動もやられていたから、音楽という共通点もありますよね。

直良:そうですね。それで二人に聞いてみたいと思っていたんですけど、「これは人生を変えたな」って曲はありますか?

深井:自分はMarilyn Mansonの「The Love song」、Radioheadの「Present Tense」、A Perfect Circleの「Orestes」ですね。特にMarilyn Mansonは高校生だった多感な時期に出会って、やり場のない怒りや孤独を抱えていた時に「僕と同じ気持ちの人がいるんだ!」と感じさせてくれた。国境と時空を越えて響いてきて、本当に心から救われました。

野島:なんと難しい質問でしょう(笑)。まずはKISSの「Detroit Rock City」。13歳だった僕の目を覚ましてくれた。次は、我が愛するハードロックはこのままパンクに駆逐されるのかというところで出てきたIron Maidenの「Plowrer」。ヘビーメタルの夜明けです。そして、うーん、Kornの「Right Now」。どういう音楽を聴いてこんな音楽ができたんだろうという興味からメンバーのインタビューを読んで、彼らの好きな音楽を知って、聴いて、なるほど、と。そこを入口に、自分が聴いてこなかったロックの歴史を再確認しましたね。大袈裟ですけど。で……この手の話は止まらないので、このへんで。

直良:自分はスクウェア入社前、音楽をやろうと最初の会社を飛び出したりしてました(笑)。最初はDavid Bowieや「The Velvet Underground」のコピーとかから始めてたんですけど、ガツンとやられちゃいました。Bowieだと「Space Oddity」、Velvetsだと「Sister Ray」ですね。「Sister Ray」は『FF7』の中で名前を拝借してます。それから後は深井くんと同じRadioheadの「The Bends」ですね。

ーー日本の曲が一つも出てこない(笑)。ゲームメディアの編集者やライターにも洋楽好きが多いんです。両者ともある意味クリエイターですから、ゲーム、クエリター、洋楽…なにか通ずるところがあるのかもしれませんね。

出雲大社の参道を歩く三人。
  • 次ページ ◆ストリートからアカデミックへ ーゲーム制作における専門性の歴史


《山﨑浩司》
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