人生にゲームをプラスするメディア

神に“死”を与える『たねつみの歌』が描く、「16歳同士の3世代」を通して見る人と世界の関係性─柔らかな筆致で本質に迫る体験版をレビュー

体験版を通して味わった『たねつみの歌』の魅力を、ネタバレ抜きでお届けします。

ゲーム 特集
神に“死”を与える『たねつみの歌』が描く、「16歳同士の3世代」を通して見る人と世界の関係性─柔らかな筆致で本質に迫る体験版をレビュー
  • 神に“死”を与える『たねつみの歌』が描く、「16歳同士の3世代」を通して見る人と世界の関係性─柔らかな筆致で本質に迫る体験版をレビュー
  • 神に“死”を与える『たねつみの歌』が描く、「16歳同士の3世代」を通して見る人と世界の関係性─柔らかな筆致で本質に迫る体験版をレビュー
  • 神に“死”を与える『たねつみの歌』が描く、「16歳同士の3世代」を通して見る人と世界の関係性─柔らかな筆致で本質に迫る体験版をレビュー
  • 神に“死”を与える『たねつみの歌』が描く、「16歳同士の3世代」を通して見る人と世界の関係性─柔らかな筆致で本質に迫る体験版をレビュー
  • 神に“死”を与える『たねつみの歌』が描く、「16歳同士の3世代」を通して見る人と世界の関係性─柔らかな筆致で本質に迫る体験版をレビュー
  • 神に“死”を与える『たねつみの歌』が描く、「16歳同士の3世代」を通して見る人と世界の関係性─柔らかな筆致で本質に迫る体験版をレビュー
  • 神に“死”を与える『たねつみの歌』が描く、「16歳同士の3世代」を通して見る人と世界の関係性─柔らかな筆致で本質に迫る体験版をレビュー
  • 神に“死”を与える『たねつみの歌』が描く、「16歳同士の3世代」を通して見る人と世界の関係性─柔らかな筆致で本質に迫る体験版をレビュー

■神々にもたらされる「死」が、世界に影響を与える

本作の中心人物は、間違いなく前述の3人(と、彼女たちの旅に同行するヒルコ)ですが、「たねつみの巫女」となって巡る神々の国──「常世の国」での出来事も、作中において重要な意味を持ちます。

「常世の国」の神は不死の存在ですが、大地に穢れをもたらす“本当の冬”が到来する前に“古い神の長”たちが命を大地に還さなければなりません。これは新たな時代へと世代交代させる役割を担っており、この継承──「たねつみの儀式」を行うのが、「みすず」たちの役目となります。

「みすず」たちは普通の人間なので、言うまでもなくいずれ死ぬ定めにあります。先代が子を成し育み、次代の礎を整えた後、死を迎えます。次代は先代の後を引き継ぎ、同じように次々世代を生み育てていく。この生と死の繰り返しで、人間という種が積み重なっていきました。

この世界の神々は「不死」ですが、決して「非死」ではないとのこと。そのままでは死なないものの、死をもって世代を受け継いできた“人”である「たねつみの巫女」の血を取り込むことで「死」を受け入れ、その命を大地に還すことができるのです。

「死」の影響は、単に個人の命が失われるだけではありません。喪失感は見送った側にこそ強く残り、後の人生に影響を与えます。また、誰かの「死」を通して、別の誰かとの関係性が変わることもあるでしょう。

そうした変化を、まさに身をもって味わってきた人間ですら、「死」から受ける影響は小さなものではありません。これまで死ぬことのなかった神とその周囲にとっては、その衝撃と喪失も初めてのもの。

神であっても、いや、神だからこそ、「死」に怯えたとしても不思議ではありません。国の長たる神は、「死」をどのように受け入れるのか。そして、周囲や国にどのような影響を与えていくのか。こうした「死」がコミュニティに与える影響を如実に描いているのも、『たねつみの歌』が取り組む重要なテーマのひとつです。

■避けられぬ「結末」に向かう『たねつみの歌』という物語

また本作は、ノベルゲームですが選択肢は一切なく、ゲーム性は皆無です。始まりから終わり、「みすず」たちの行動からその結末まで、プレイヤーが介入できる余地はほとんどありません。

彼女たちの道のりは決まっており、その結末も不変。解釈こそプレイヤーの自由ですが、作中で起きた事実に変化の余地はなく、製品版が登場した時点で全てが定められています。

この「選択肢もマルチエンドもないノベルゲーム」を、味気ないと感じる人がいてもおかしくありません。そこは個々人の趣味嗜好なので、肯定・否定のどちらも同じく価値のある話です。しかし、「選択肢もマルチエンドもないなら、遊ぶ意味はない」といった考えまで突き詰めてしまうのは、個人的に少々もったいなく感じます。

選択肢もマルチエンドもない本作の在り方は、人間の結末に必ず「死」が待ち構え、回避する余地がないという現実をどこか連想させます。人間は誰もが死にますが、「いつか死ぬなら、生きることに価値はない」と考える人は少ないでしょう。むしろ「死」が待つからこそ「生」に意味を見出したり、いかに生きるべきかと向き合う人もいます。

結末が変わる要素がなくとも、「みすず」たちが何を考え、どのように行動するのか。神々がいかにして、「死」を受け入れるのか。そして、世界にどんな影響を与えていくのか。その旅路を見守ることは、誰かの人生を見守ることにも似ています。

『たねつみの歌』は、決して派手なゲームではありません。火花が飛び散るバトルもなければ、身を焦がす激情の恋などが語られることはなく、女子高生3人とヒルコによる儀式の旅が穏やかに柔らかく描かれるのみです。(少なくとも、体験版の範囲では)

しかしそこには、「人同士の関係性」と「いずれ迎える死とその影響」という、誰もが身近に感じ、避けて通れない命題が明確に刻み込まれています。その本質をどのように受け取るのかが、本作における唯一無二の“選択肢”なのかもしれません。

『たねつみの歌』が描く物語には血肉が通っており、地に足の着いた厚みも感じさせてくれます。想像の翼を広げるほど雄弁さを増す物語が、製品版でどのような“変わることなき結末”を見せてくれるのか、期待が高まる体験版プレイとなりました。興味が沸いた人は、まずは体験版でその魅力に触れてみましょう。

(C)Aniplex Inc. All rights reserved.


《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

+ 続きを読む
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

ゲーム アクセスランキング

  1. ポケモンセンター各店舗が「3月14日来店予定の方」向けアナウンス―30周年記念グッズなどが発売、混雑予想のため

    ポケモンセンター各店舗が「3月14日来店予定の方」向けアナウンス―30周年記念グッズなどが発売、混雑予想のため

  2. 『遊戯王OCG』新規フルイラストの「閃刀起動-リンケージ」がカッコイイ!閃刀姫カード42枚収録の「デラックスデュエルセット 閃刀姫」予約受付中

    『遊戯王OCG』新規フルイラストの「閃刀起動-リンケージ」がカッコイイ!閃刀姫カード42枚収録の「デラックスデュエルセット 閃刀姫」予約受付中

  3. 『ぽこ あ ポケモン』公式が“進行不能バグ”などを報告―特定のタイミングや手順で「おねがいごと」を進めるのが困難に

    『ぽこ あ ポケモン』公式が“進行不能バグ”などを報告―特定のタイミングや手順で「おねがいごと」を進めるのが困難に

  4. イヴォンヌが男女問わず大人気!『アークナイツ:エンドフィールド』FIVE TOWERS × ENDFIELDイベント 神戸ポートタワーレポート

  5. スクエニのHD-2D初アクション『冒険家エリオットの千年物語』では“ネコ”とふれあえる―保護した子にエサやり、なつくと玩具で遊べる

  6. 『パワフルプロ野球2026-2027』主題歌は“一歩が踏み出せない人”に届ける応援歌!楽曲にかけた思い、アメリカでのドキドキ路上ライブなど、主題歌を歌う杏子(あんこ)さんにインタビューで色々訊いた

  7. スイッチ2専用『ポケモン ウインド・ウェーブ』に向けて、「本体未所持ユーザー」はどう動くべきか? 今後予想される展開と求められる覚悟

  8. ある意味本人?『月姫』アルクェイドのモデルが「コスプレ」風写真披露

  9. 『バイオハザード レクイエム』の「歌姫ゾンビ」が国内外で大人気―怖いしグロい、だけどすごい美人

  10. 『遊戯王OCG』三幻魔の新規カード11枚が一挙公開!新たな姿の「ウリア」「ハモン」「ラビエル」、さらにエースモンスター「混沌の三幻魔」も

アクセスランキングをもっと見る