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なぜ格ゲー界は「あったけぇ」のか―「獅白杯」を振り返ると見えてくる、ホロライブ「獅白ぼたん」のひたむきさ

2024年3月31日に実施された『ストリートファイター6』のカジュアルマッチ「獅白杯」。配信時間約6時間、最大視聴者数が約8万人(主催者枠のみ・ミラー配信等含まず)という、個人開催ながら多くの注目が集まった本大会を主催者本人が振り返りました。

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(C)CAPCOM(C) 2016 COVER Corp.
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ホロライブ所属のVTuber「獅白ぼたん」さんが、2024年3月31日に『ストリートファイター6』のカジュアルマッチ「獅白杯」を開催。約6時間にもおよぶ長時間配信にも関わらず大きな注目を集め、大会を成功に導きました。

出場した選手たちはもちろんのこと、それを見守る視聴者、解説の「どぐら」さん、実況の平岩康佑さん、個人大会にしては豪華すぎる協賛各社、選手をサポートしたコーチ、一般公募枠にエントリーしたプレイヤー、運営スタッフ等々……。様々な人間が注目し、手に汗握り、そのプレイに拍手した一夜限りの「お祭り」に格闘ゲーム界は大いに沸きました。

招待選手としてオファーされたのがきっかけで『スト6』をはじめたぼたんさんが、まさか主催大会を開催するまでに至るとは……。

もちろん事務所の先輩であり、同じ招待選手としてぼたんさんを支えてくれた戌神ころねさん、暖かく迎えてくれた「どぐら」さんをはじめとする格ゲー界のスター選手たちの助けや優しさがあったからこそ、ぼたんさんもここまで『スト6』を好きになれたはず。今大会がひとつの恩返しになったのではないでしょうか。

しかしその運営の裏では、公募枠の選定基準やトーナメントのありかたなど、頭を悩ませる問題もあり一筋縄ではいかなかったとか。

本稿では、大会翌日の振り返り配信で語った獅白ぼたんさんの感想を中心に、大会を開催しようと思ったきっかけ、公募枠の意図、思わぬシンデレラストーリーに恵まれた人々を紹介したいと思います。

▲【#獅白杯】獅白杯 STREET FIGHTER 6 powered by GALLERIA【獅白ぼたん/ホロライブ】

◆大成功に終わった「獅白杯」

「いざ終わってみると、あっという間だったな」

4月1日に実施した振り返り配信でそう語って目を細めたぼたんさん。

大会では解説に「どぐら」さん、実況に平岩康佑さんを招き、「初級~中級者トーナメント」と「上級者トーナメント」の2部制で実施。それぞれ「ルーザーズサイド」と呼ばれる敗者復活戦を経て優勝者を決定しました。

「獅白杯」の開催についてぼたんさんは、以前、ありがたいことに何度か大会に招待してもらえるようになり、今度は主催する側から大会を見てみたいと思って今回の大会を企画したと発言。出る側と主催する側の両方の視点を経験することで、『スト6』に限らず、学びを得られるのではないかと考えたのがきっかけでした。

大会を実施するにあたっては、ホロライブ運営スタッフのサポートのもと、eスポーツの大会を手がけている配信スタジオに依頼して不備のないよう細心の注意を払いました。もちろん配信自体はホロライブのスタジオでもできますが、大会となると進行や技術的なところで繊細な部分があるため「餅は餅屋」に頼むのが一番。キービジュアルも発注するなど企画段階から本格的です。

スポンサーもGALLERIA、GIGO、nosh、VICTRIX by PDP、Red Bull Japan、esports Challenger's Park、株式会社極楽湯、東京デザインテクノロジーセンター、VAXEE、TSUKUMOの計10社が名乗りを上げ、ゲーミングPCやアーケードコントローラーなど豪華賞品も提供してくれました。

まさに個人主催とは思えない規模と豪華さで視聴者のド肝を抜くレベルです。パブリックビューイングも好評だったそうで、格闘ゲーマーのみならず、ひとつのエンタメとして楽しいお祭りとなりました。

なおSNSで話題になった豪華な弁当は、すべてぼたんさんの自腹の差し入れだったとのこと。

解説の「どぐら」さんや実況の平岩康佑さんのお世話になるということでお礼の意味が込められており、ぼたんさんが食べたいと思うオススメのものを中心に選んだそう。そのあたりは引っ越しの手伝いを例にあげながら「当たり前のこと」と本人は笑っていましたが、なかなかできることではありません。筆者もスタッフが用意したものだと思っていただけに驚きました。

頭を悩ませたのは対戦形式で、当初はルーザーズサイドもない状態だったとか。しかしぼたんさんとしては1試合で敗退は寂しい。そこで敗者復活戦としてルーザーズサイドのトーナメントも加え、タイムスケジュールと睨めっこしたうえでこのような形式にしました。

振り返り配信では視聴者側から「ああすればもっと良くなったのでは?」といった質問も出ましたが、それをすべて考慮した上でベターな選択をしたのが今回の大会です。たとえばずっと勝ち続けた人が決勝でルーザーズの勝者と対戦した場合、ルーザーズと違い1発で敗退してしまいます。そこに疑問を持つのは無理からぬこと。まさに「あちらを立てればこちらが立たず」のジレンマです。

またトーナメントの仕組み上、1勝もできない人が出てしまうのはぼたんさんとしても残念なことではあったものの仕方のないこと。出場が決まってからランクが上がった人についても、それは本人のがんばりであるため歓迎。勝負事の仕切りやバランス取りがいかに難しいか覗かせていました。

◆広がる「格ゲー界あったけえ」

大会を実施するにあたり、ぼたんさんは当初から公募枠を入れたいと考えていたそうです。結果、600名ものエントリーがあり、そこから選出された選手を含むオファー枠8名、公募枠8名の合計16名が2つのトーナメントで争うことになりました。

ただ公募枠については主催者視点的に「難しい面」が多く、すんなりと決まった感じではなかったようです。その理由のひとつに挙げられるのが各選手の知名度、すなわちどれだけお客さんを呼べるかでした。

大きな大会といえば、やはり参加の基準は有名な配信者だったりチャンネル登録者数だったりで、例えば個人勢のVTuberなどはなかなか出場の機会が与えられません。

しかしぼたんさんは「格ゲーをするなら、やはり大会で腕試しはしたいでしょ、それはあたしもそうだった」と自身の経験も交えて説明。ランクマッチで腕試しをする方法はあるものの、やはりそれだけでは「しんどい」。そんな時に大会に出ると、それだけでモチベーションが上がる。その感動を、もっと多くの人にも味わってほしい……そんな想いがあったため、あえて今回は公募枠を設けることにしました。

そんなぼたんさんにホロライブ側のスタッフは、公募枠を許可するとともにある提案をしたといいます。それは登録者数1万人未満と、1万人以上の両方の条件から選出すること。つまりぼたんさんが望むように、数字だけにこだわらず、広く、公平に出場の機会を設けることでした。

このことについてぼたんさんは「応募してくれた全員に大感謝。許可してくれたホロライブの運営にも感謝しています」と頭を下げます。

また公募枠の当落発表についても、当初は結果だけの報告を考えていたぼたんさんに対し、ホロライブのスタッフから「配信者としては、名前を出してくれただけでも嬉しいから配信で発表したらどうですか?」と提案があったとのこと。ぼたんさんとしては落選者を晒し上げるような状況に懸念する部分もありましたが、スタッフの提案に納得する部分もあり、一か八かで配信に踏み切ったそうです。

もちろん600人すべてを配信で紹介して、その場で参加者を決定するのは物理的に難しく、実際の配信では最終選考という形である程度絞った状態での発表となりました。それでも名前が挙がった配信者には喜んでもらえたようでした。

例えば個人勢VTuberの「木漏日わんこ」さんは「個人勢のVTuberにとって救いのある大会を開いてくれてありがとうございます!」と自身の配信内で言及。大会への出場は叶いませんでしたが、それでも「大手事務所にも関わらずちゃんと自分たちを見てくれていた」「みんなも同じだと思うけど、練習してきたことがこれで報われた」「公募枠に選ばれたみんなを応援したい」と手放しで喜んでいました。

また、やはり個人勢VTuberの「星乃カニ」さんも、これまでも大会に応募しては落選してきた過去を踏まえたうえで「活動を続けてきてよかった」と声を弾ませながら自身のファンに報告。「最終選考に残った個人勢VTuberはみんな嬉しいよ!」「ぼたんさんが個人VTuberにも光を当ててくれるなんて思わなかった!」「夢(のよう)だよ!」と、増え続ける視聴者の数にも感動して号泣していました。

星乃カニさんも最初はうまい人しかやってはいけないゲームだと思い、2年ほど格ゲーのギャラリーに徹していた時期があったそうです。しかしいざ始めてみると格ゲーの世界は優しく、たちまちのめり込むようになったと語っていました。

今回のことで、自身もぼたんさんのように誰かを照らす存在になりたいと語っていましたし、「格ゲーあったけえ」の輪がさらに強く、そして広がっていくと、ぼたんさんとしても開催した甲斐があったのではないでしょうか。

そのほかホロライブプロダクションの男性VTuberグループ「ホロスターズ」に所属するアルランディスさんも公募枠に残れなかった身。当日は公認ミラー枠を配信して、プレイの解説をしたり出場者とコミュニケーションを図ったりして大会を盛り上げてくれました。

アルランディスさんの独自解説もおもしろく、また分かりやすかったため、もし試合本編をアーカイブ視聴するならミラー配信もおもしろいかと思います。

筆者が枠を覗いた時は、ちょうど他の配信者に「二股」を指摘されるという誤解必至な展開でしたので、その真相を実際に確かめてみてはいかがでしょうか。

▲【 #獅白杯 】公認ミラーさせていただけることになりました!そしてdtto.ちゃんの見守りコーチ枠にもなりました(!?)【アルランディス/ホロスターズ】

以前、ぼたんさんが『スト6』をプレイするきっかけとなった「CRカップ」に出場した際、「どぐら」さんが格ゲー界について、このような心境を吐露していました。

90年代、格ゲーはゲームセンターの主役になるほど大流行していました。その後もプロゲーマーが誕生し、格闘ゲームこそ至高!という驕りがあったそうです。

しかし黄金期を築いたからこそ足元が見えなくなり、気づけば狭いコミュニティの中にいて“村化”している。その時になってようやく「このままでは格ゲーに将来はない」と気づき、新規プレイヤーには優しくしよう、できるだけサポートしようという機運が高まったそうです。

ぼたんさんがはじめて『スト6』をプレイした時、格ゲー界の皆さんが温かくて驚いたという話を以前してくれました。だからこそゲームにも夢中になれたし「獅白杯」も開催したいと思えたはず。

そして大会で感じた感動をもっと多くの人に感じてもらいたいという想いは様々な人の元に届き、トーナメント参加者のみならず、公募枠から外れてしまった人にも感動を与えました。

どぐらさんからぼたんさんへ、そしてぼたんさんから多くの視聴者・プレイヤーへ。

早くも第2回を開催したいと想いを新たにしていたぼたんさん。「次」があれば試したいアイデアがあり、もしかしたら公募枠はなくなるかもしれないと断りを入れつつ、公募枠自体は活かしたいという気持ちもあると語っていました。そこは今後どうなっていくか楽しみなところです。

ひとまず大役を成し遂げたぼたんさん、お疲れさまでした。

▲【#獅白杯】獅白杯お疲れさまでした!大会配信を振り返りながらいろんな話【獅白ぼたん/ホロライブ】

※4月8日14時50分:本文中の誤字を修正しました。

(C)CAPCOM

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