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【特集】『ライフ イズ ストレンジ』シリーズ作品からサントラを厳選、開発者インタビューと共にお届け

本稿では『ライフ イズ ストレンジ』のサウンドトラックについて深堀りし、物語を引き立てる音楽に迫っていきます。後半では開発者インタビューもお届けするので、お見逃しなく!

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『ライフ イズ ストレンジ』シリーズ作品からサントラを厳選、開発者インタビューと共にお届け
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3月26日に日本語版が発売された『ライフ イズ ストレンジ 2』、皆様はもうプレイして結末を目にされたでしょうか?『ライフ イズ ストレンジ』シリーズといえば、ジレンマのある選択肢を何回も選んでいくことを余儀なくされるストーリーと重厚なテーマ性。それらが相まった「エモーショナル」なゲームであることでおなじみです。そしてそんなエモーショナルさを演出するのに欠かせない、影の主役とでもいうべき重要な要素が「音楽」……つまりサウンドトラックです。

ということで本稿では『ライフ イズ ストレンジ』のサウンドトラックについて深堀りし、物語を引き立てる音楽に迫っていきます!記事後半では開発者インタビューもあわせてお届けするので、お見逃しなく!

ゲームプレイ中以外でもぜひ聞いてほしい『ライフ イズ ストレンジ』シリーズ収録曲!



『ライフ イズ ストレンジ』シリーズのサウンドトラックの大きな特徴として、「既存の楽曲を多く用いている」ことが挙げられます。もちろん書き下ろしのサウンドトラックも素晴らしいものですが、既存の楽曲を用いることで「ゲームがぐっと現実に近づいたものとして感じられる」という効果があると筆者は考えています。『ライフ イズ ストレンジ』シリーズは(「超能力」が登場するということを除いては)現実が舞台のゲームですから、リアリティが増すことは作品全体をより感情移入しやすいものにしているのではないでしょうか。


最初に紹介したい楽曲は一作目『ライフ イズ ストレンジ』のサウンドトラックから、アメリカのバンド「スパークルホース」による楽曲「Piano Fire」です。スパークルホースは(レディオヘッドのトム・ヨークをはじめとして)業界内外に多くのファンを持つカリスマ的なバンドでしたが、2010年に中心人物であるマーク・リンカスの自殺によって悲劇的な終焉を迎えます。作中ではクロエが愛聴するバンドとして登場。彼女の持つ二面性や闇を表現した起用なのではないでしょうか。


おなじく一作目からアメリカのバンド「ローカル・ネイティブス」「Mt. Washington」もご紹介。アコースティックギターが主軸の悲しげな楽曲ですが、エピソード2のエンドシーンで用いられるので、物語のトーンや先の展開を暗喩しているようかのように聴こえます。同楽曲が含まれるアルバム「Hummingbird」は筆者としても思い入れのあるアルバムで(全体としてトーンが暗めですが)本作の音楽が気に入った人にはぜひともオススメしたい一作です。



『ライフ イズ ストレンジ 2』の世界観を紹介するためのティーザー的側面もあった短編『キャプテン・スピリット』からは、フォークシンガー「スフィアン・スティーヴンス」の楽曲である「Death with Dignity」を紹介します。トレイラーでも使用された本作のメインテーマ的な楽曲ですが、そのタイトルは「尊厳死」を意味します。作中の背景に常に漂う「喪失の悲しみ」を見事に表現したセレクトと言えるでしょう。


『ライフ イズ ストレンジ 2』のサウンドトラックからは「Justice」「D.A.N.C.E」を取り上げます。彼らはシリーズの開発元である「Dontnod Entertainment」と同じくフランスのユニット。特に「D.A.N.C.E」はシリーズ全体の収録曲の中でもかなり(世界的に)ポピュラーな楽曲なので、特徴的なメロディーに聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか!

『LIS』収録曲はどのように選ばれるのか……共同ディレクターにインタビュー!



ここからは、本作開発元であるDontnod Entertainmentの共同ディレクターであるラウル・バーベット氏へのインタビューをお届け。今回は音楽面に焦点を当てた上で、開発中のエピソードや日本語版トレイラーについてのお話を伺いました。なお今回はCOVID-19の影響を踏まえた上で、メールインタビューとして実施しています。



――今回はよろしくお願いします。まずは、自己紹介からお願いします。

ラウル・バーベット氏(以下、ラウル氏)こんにちは。『ライフ イズ ストレンジ』『オーサム・アドベンチャーズ・オブ・キャプテン・スピリット』『ライフ イズ ストレンジ 2』共同ディレクター/ミュージック・スーパーバイザーのラウル・バーベットです。『LIS』シリーズの楽曲に関するご質問ありがとうございます。ライセンス曲/オリジナル曲、共に気に入っていただけたようで何よりです。

――楽曲を選ぶ際の基準のようなものはありますか。『LIS1』における選曲コンセプトについて、詳しく教えてください。

ラウル氏『LIS1』の開発初期から、作品には、ライセンス楽曲と(フランス人アーティストのジョナサン・モラリ氏が作る)オリジナル楽曲の両方を入れたいと思っていました。すでにこの世界に存在するライセンス曲は、場面を叙情的に盛り上げてくれるだけでなく、物語と現実世界を強く結びつけてくれます。

選曲にはかなりの時間をかけていて、「この場面の目的は?」「なぜこの瞬間に音楽が必要なのか?」「なぜこのアーティストなのか?」など、チーム内で自問自答しながら選んでいきます。物語に合わせて流れることが最も重要で、ただ楽曲が流れるだけ、というジュークボックスのような使い方はしたくないのです。

なので、曲ごと/アーティストごとに入念なリサーチをし、なぜこの曲が流れるべきなのか、セバスチャン・ガイヤール率いるオーディオチームと話し合いながら進めていきます。技術的、予算的、企画的に許される範囲の中で、できるだけその曲が、そのシーンにおいて重要な意味を持つようにしています。

――『LIS2』はフランスのデベロッパーが描く「アメリカのメキシコ移民の物語」であり、ゲーム本編のみでなく開発の背景にも国境を越えたセンスや、多国籍的な雰囲気を感じます。本編のストーリーには人種問題も強く絡んでいますが、これらを踏まえたうえで『LIS2』収録曲の選曲コンセプトについて教えてください。


ラウル氏楽曲は登場人物の描写を補ったり、場面を印象付けたりするものでなければいけません。なので、単に前作と同じネオ・フォークでまとめるのではなく、新しいスタイルを取り入れていくのも重要でした。


ショーンは、冒頭では“The Streets”、回想では“Gorillaz”などのヒップホップを聴くこともあって、マックスやクロエとは音楽の趣味が違います。このように「ダイエジェティック音」(※TVやラジオ、ライブ会場、登場人物の鼻歌など、その場で実際に聴こえてくる音)として曲を流す場合には、ブロディやキャシディの場面でもそうですが、曲が登場人物とリンクしている必要があります。また、ノン・ダイエジェティックの場合でも、例えば“Justice”の曲では「流れ者たちの自由と気楽さ」を、冒頭の“Phoenix”では「10代青春映画の雰囲気」を、“Cascadeur”では「教会エピソード終わりの何とも複雑な心情」を表現するなど、できるだけテーマに合わせて使うようにしています。

――どのように新しいアーティストの情報を仕入れていますか? 音楽メディアやサブスクリプションサービス、YouTubeなどを参考にするのでしょうか。

ラウル氏すでに知っている曲とチームから提案があった曲、いずれにしてもできるだけ情報を集めて聴くようにしていますね。歌詞の意味、どんな時に聴く曲なのか、テンポ、曲そのものやアーティストのバックグラウンドといった具合です。分厚い資料ができるくらいですよ!

YouTube、Spotify、Deezerなどは、個人の嗜好から類似アーティストを見つけるには良いかもしれませんが、それよりもチーム内でのディスカッションや各々のリサーチを大事にしています。

――以前、ジャン=リュック・カノ氏のインタビューで「開発チーム内で気に入った音楽を教えあっている」「ディレクターから教わった曲のイメージでエンディングの脚本を書いた」というお話を伺いました。『LIS2』の開発エピソードで、特に音楽面にまつわるものがあれば教えてください。


ラウル氏ジャン=リュックにその話を聞きましたか(笑)。どういう場面なのか肌で「感じて」もらうことも、脚本を書くうえでは重要です。その曲は最初から使うと決めていたので、脚本を書く前から彼に聴かせることができました。ジャン=リュックから提案してくることもあって、ゲーム内に入れ込みたい曲だったり、あるいは「この曲のような気持ちで書いている」といった場合ですね。あとは、クリスマスマーケットでキャシディが歌う曲や、ショーンが自室で口ずさむ曲は、役者さんに歌ってもらうことになるため、特に慎重に選びました。役者さん自身の歌を聴けるのは良いですよね!

――『LIS』シリーズで楽曲を使用したことで、アーティストやそのファンからリアクションを受けたことはありますか?

ラウル氏反応をいただくこともありますが、なかなか珍しいケースですね。いくつかのアーティストには直接お会いする機会がありましたが、ゲームに満足してくれていたようでした。ゲームがきっかけでアーティストを知った人も少なくないようで、その点はとても良かったと思っています。私たちはフランスのスタジオなので、“Rone”、“Cascadeur”、“Justice”、“Phoenix”、そしてもちろん“Syd Matters”のような、フランス出身のアーティスト/バンドを起用したことも、個人的にはこだわったポイントです。

――Spotifyの公式プレイリスト以外にも音楽コンテンツがあったら良いな、と個人的に思っています。例えば『LIS』サントラ収録曲の制作アーティストのみをブッキングしたオンライン/オフラインライブなど。このご時世では難しいところですが……。


ラウル氏それは関係者全員の夢ですよ(笑)。もしチャンスがあったら企画してみたいです。シリーズで起用したアーティストはすでに20を越えますので、ものすごく豪華なフェスになるでしょう……!

――日本向けトレイラー映像ではBray me「背中合わせ」が採用されていました。過去作の展開と比べると異色の試みと思われますが、本映像の制作の経緯について教えてください。なぜこのアーティスト/楽曲を選んだのでしょうか。


日本地域宣伝担当『LIS』シリーズでは、一般的なゲームに比べて、楽曲の歌詞に重みがあると思っています。英語話者の方々は、ゲームの場面と曲(の歌詞)がシンクロすることも多いでしょう。日本語話者のユーザーさんにも同じ体験をしてもらいたかったので、日本版トレイラーには日本語の曲を使いたいと思っていました。

この曲では「このまま進んで良いのか、それとも立ち止まるべきか」といった心情が、移り変わる情景と一緒に歌われていて、まさにショーンの気持ちと同じです。

曲調はやや明るめなのですが、コンセプトとして、各エンディングの後にショーンがダニエルに話しかけるイメージで制作したので(後半に「何があってもお前は俺の弟」というセリフを引っ張ってきていますし)、ショーンなら、弟にはネガティブな気持ちで旅路を思い返してほしくないだろうと考えたことが理由です。

また、ボーカルの方の声質が、ちょうど日英/ショーン・ダニエルの4人を足して割った感じだったのもラッキーでしたね。

ラウル氏開発チームは、日本版トレイラーをいつも楽しみにしています!登場人物が日本語を話しているのはまるで夢のような感覚ですね。日本語は吹き替え音声が当てられている唯一の言語ですし、我々は日本アニメのファンですから、スクウェア・エニックスが才能ある役者さんを集めてくれてとても嬉しく思っています。

このメールインタビューに答えるためにトレイラーを観直しました。歌詞の細かい意味は今回初めて知ったのですが、驚きましたね。宣伝チームが、ゲーム内で我々がやっていることの意図を汲んでくれていて、感謝しています。確かにこの曲は、登場人物の気持ちの一端を、何よりもよく伝えてくれていると思います。

――最後に日本のファンに向けて、メッセージをお願いします。

ラウル氏日本の皆さんに、『LIS2』および「キャプテン・スピリット」を楽しんでいただけてとても嬉しく思います。フランスのスタジオとして、日本文化の影響は大いに受けていますし、日本の映画、音楽、漫画、アニメ、ゲームは大好きです。日本っぽい要素は『キャプテン・スピリット』にも見られますし、『LIS2』の開発中には「AKIRA」を読み返していたくらいです。皆さんが兄弟狼の物語を楽しんでいただけたのなら幸いです。

――今回はありがとうございました!
《文章書く彦/Game*Spark編集部》
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