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「今再び、"ミルラのしずく"を採りに行こう」―『FFCCリマスター』インプレ&荒木氏・岩崎氏・板鼻氏インタビュー

GC版ではロングヘア―のクラ子とてっかめんリルティで遊んでいました。1万字ほどありますので、本日から怒涛の勢いで公開されるTGS関連記事の合間にでものんびりご覧ください!

任天堂 Nintendo Switch
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◆荒木氏&岩崎氏インタビュー―『FFCC』は思い出の1本




――『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』のリマスターを手がけることになった経緯をお聞かせください。

荒木自分の所属部署の方針の一つに「過去のIPを生かしたプロジェクトをやろう」というものがありまして、どのタイトルを扱うか、好きに選ばせてもらえることになったんです。それならばこれしかない、と選んだのがきっかけです。

本作のGC版が発売されたのは2003年で、当時の僕は同業他社で3DCGデザインを手がけていたのですが、本作(GC版)の技術力の高さやデザインの表現の幅に大きな衝撃を受けて弊社の門を叩いた思い出の一本なんです。ですので、もしリマスターを手がける機会があるならこの作品しかないとずっと考えていました。

――本作は、最初にスイッチとPS4でのリリースが発表され、後日、スマートフォン版もリリースすると発表されました。スマートフォンへの移植は急遽決まったのでしょうか?

荒木いえ、スマートフォン版でのリリースも企画当初から決まっていました。時期を少しずらしての発表になったのは、実は、当初スマートフォン版はかなり時期を遅らせてのリリースにするつもりだったんです。ですが、全プラットフォームでのクロスプレイが実現できそうだという話になりまして、それならばリリースも同時にすべきだろう、と。

4プラットフォームでのクロスプレイに対応! プラットフォーム間のセーブデータ移行にも対応しています
※複数プラットフォームで遊ぶ場合は、プラットフォームごとにソフトの購入が必要となります

――スマートフォン版とひと言に言っても、Android版とiOS版でそれぞれ異なる手間がかかるでしょうし、開発は4プラットフォーム同時進行となったわけですよね。

荒木はい。「遊んでくれる方のことを考えれば、この方が絶対にいい」という一心で始めましたが、なかなか大変で……。社内でも「よくやろうと思ったなぁ」と言われることがあります(笑)。

――同時にリリースされてくれれば、どのプラットフォームのプレイヤーもいっしょに遊んで強くなれますね。コンソール版とスマートフォン版で価格が異なりますが、どのような差異があるのでしょうか。

荒木まず、ゲームの要素は全プラットフォームでまったく同じです。ただ、スマートフォン版は最新モデルではない少し前の機種もフォローしている兼ね合いで、グラフィックスはコンソールの方に分があります。価格差も、その辺に出ているとお考えいただけますと幸いです。

『FFCCリマスター』のプロデューサー・荒木竜馬氏

◆追加ダンジョンはマルチプレイでもやりごたえのある内容に!


――追加要素のボリューム感はどのようなものでしょうか?

荒木ストーリーはGC版を大切に、当時のまま遊んでほしいという思いから、こうした追加要素はすべてストーリークリア後の"+αの楽しみ"として遊ぶものになります。ただし、追加されるいくつかのダンジョンは、その分マルチプレイでちょうどいいくらいの攻略しがいのある難易度になっています。武器や防具なども、追加ダンジョンに応じて新しいものが手に入るようになります。

――リマスターを手がけるにあたり、GC版のプロデューサーだった河津秋敏氏やディレクターの青木和彦氏らとはどのような話をされましたか?

荒木はい。河津からは「当時のユーザーに向けてしっかり作ってほしい」、青木からは「今発売するゲームとして、今の世代が遊びやすいものにしてほしい」と言われました。ただ漫然とリマスターしてはいけない、とあらためて気を引き締めることができました。

――"今の世代が遊びやすい"ものにするために行った改善例はどのようなものがありますか?

荒木たとえば、オンラインマルチプレイ時のマジックパイルです。対面で遊ぶよりはどうしても息を合わせづらくなってしまいますので、それを補佐するために定型文チャットに加え、新たに「パイルメーター」を導入しました。オンラインマルチプレイ時はこのメーターを見ながら遊んでもらえれば、タイミングを合わせやすくなると思います。

――4人そろうのを待たずとも、マルチプレイを始められるのもいいですね。

荒木まずはすぐゲームを始められるのが重要だろうと思い、このような仕様にしました。物語の上でも、本作の世界にはいくつものキャラバン隊がミルラのしずくを求めて冒険していますので、行く先で他のキャラバン隊に偶然出会って力を合わせた……というように想像して楽しんでもらえればと思います。

――1人で出発して、道中の弱いモンスターと戦いながらマッチングを待つということもできそうです。

荒木もちろんできますが、マルチプレイ時はモーグリの「モグ」がいませんので……。

――あ、そうか。ケージを持って移動し、ケージを地面に置いて敵と戦い……としなければならないんですね。最低でも2人になってから出発するのがよさそうですね。マルチプレイ時は、こちらの人数に応じて敵の強さが変化したりはしますか?

荒木これはGC版からの仕様になりますが、ソロ、2人、3人、4人でそれぞれ強さが変わります。ですので、ソロだけで遊びたい方も、それで無理なく遊べるバランスになっています。ただ、リマスター版で新規に追加したダンジョンはマルチプレイを楽しんでほしいとの思いから、4人プレイを前提にした調整にさせていただきました。

マルチプレイはフレンドを誘うこともでき、フレンドはプラットフォームの垣根を越えて作れます。また、フレンドではない見知らぬ人とマルチプレイをする際も、マッチング条件としてプラットフォームをしぼったりもできますので、お好みのスタイルや設定で、お気軽に遊んでいただければ嬉しいです。『FFCC』の核は、"手軽で楽しいマルチプレイ"にあると思っていますので!

――他の改善/変更点としては、プレイヤーキャラにもボイスがついていますね。

荒木各種族、性別ごとに4種類ずつ用意しています。とはいえ、基本的には主人公はしゃべりませんので、戦闘時のかけ声や魔法名がほとんどです。あとは、レイズやフェニックスの尾で生き返ったときにもしゃべったりします。キャラクターのボイスはサウンドチームのこだわりがありまして、同じボイスパターンでもひとつのセリフにバリエーションがあって、それがランダム再生されるんですよ。たとえば、ファイアを使うだけでも「ファイア」と言うときと「ファイアー!」と言うときがあります。

――それは新鮮味があって楽しそうですね!

岩崎すべての魔法名でそれを収録しましたので、プレイしていて一辺倒になりづらいのではないかと思います。

――グラフィック周りはどれくらい手を入れておられますか?

荒木ポストエフェクトを追加したり、シェーダーを描いたりともちろん細かい部分にも手を入れていますが、基本的には今のモニターやディスプレイでの鑑賞に耐えられるよう、テクスチャーの解像度を上げたくらいですね、一部大型のボスモンスターは、見栄えがするようポリゴン数を増やしています。元々のテクスチャーが繊細に描き込まれていたので、それを活かす形にしています。

大型モンスターの中には、『FF』でおなじみのモルボルの姿も

◆開発時は「マナのしずく」だった! 岩崎氏が語るGC版制作秘話



――大変お待たせしました。岩崎氏にもお話をうかがえればと思います。GC版から関わられておられたとのことですが。

岩崎はい。GC版では、谷岡久美さんが作曲された曲のマニピュレート(≒楽曲のプログラミング作業)やリズムアレンジを担当していました。また、「ティダの村」の曲は僕が書いています。

――リマスター版ではミュージックディレクターに就かれておられますが、具体的にはどのようなことを担当されておられるのでしょうか。

岩崎谷岡さんが書かれた新曲を受け取って演奏家さんをコーディネートし、スタジオでディレクションしつつ収録してそれをまとめる……という感じですね。部分的にアレンジもさせていただいています。新曲の中には、既存の楽曲のリアレンジも含まれています。

――リアレンジはどのようなコンセプトでされたのでしょうか。

岩崎「GCの内臓音源では表現しきれなかった楽曲を、今再現したらこうなるよね」というところでしょうか。GC版の楽曲も基本的に実際に演奏して録音したものですが、さまざまな制約から、そのすべてをそのまま内臓音源に落とし込むことができませんでした。当時の録音音源も聞きつつ、その雰囲気を大切に手がけていますので、耳にして違和感はないのではと思います。

荒木でも、意図的に比較して聴くとやっぱり深みが全然違いますよね。

岩崎当時は、演奏してもらった音源を"フレーズごとにちぎって並べてメモリの容量に収まるように並べていく"ような作り方をするしかありませんでしたので、長尺の曲になるほど音質を下げるしかなかったんです。リマスター版はもっと贅沢に作らせていただけていますので、音が立体的になっていますね。

GC版の制作に携わり、『リマスター』でもミュージックディレクターを務める岩崎英則氏

――GC当時に発売されたサウンドトラックを買いましたが、あの音源はGC用に落とし込んだデータですよね? 楽曲の本当の姿に触れるのが楽しみです。そういえば、GC版のサントラCDはミルラのしずくをイメージしたジェルが入ったカバーがついていましたね。何年もたつと、蒸発でもしてしまったのかカラになってしまったのですが……(笑)。

荒木(笑)。つまり、10数年の時を経て再びミルラのしずくを取りにいくときがやってきたというわけですね!

岩崎うまいですね(笑)。そういえば、ミルラのしずくの話で思い出しましたが、実はGC版開発当時は「マナのしずく」と呼ばれていたんですよ。ミルラの木も「マナの木」で。

荒木僕もそんな話をうっすらと聞いたことがあります!

岩崎弊社の作品でマナといえば『聖剣伝説』ですよね。ですから当時、石井さん(現 株式会社グレッゾ代表の石井浩一氏)に「マナという名称を使わせてください」と許可を取りにいったらなんと「ダメです」と言われてしまいまして(笑)。それで、急遽「ミルラ」という名称になったんですよ。

荒木そんなことがあったんですか(笑)。「ミルラ」になにか語源はあるんですか?

岩崎確かあったはずです。普通に使われている言葉から拝借したような……ちょっとうろ覚えですけれど。

(編注:本インタビュー後、担当ライターがネットの海で調べてみました。聖書で「場を清めるお香の材料になる」と記述されているらしい「没薬(もつやく)」がミルラとも呼ばれるそうですので、それにちなんでいるのかもしれません)

荒木でも、そこでマナという名称を使わなかったからこそ『FFCC』が1つのIPとして成り立ったのではないかと思いますよ。

岩崎そうですね……『FF』の名を冠するとはいえ、新規IPでもありましたので(社内の)有力IPにあやかりたいという気持ちもあったかもしれません。今にして思えば、石井さんはそこまで見抜いていて許可を出してくれなかったのかもしれませんね。

――興味深いお話でした。せっかくですので、GC版開発当時のお話をもう少しうかがえればと思います。谷岡氏の楽曲への印象はどのようなものでしたか?

岩崎谷岡さんの書かれる曲は、どれも素朴で温かみがあって、本当にすばらしくて。この曲たちの魅力がより映えるようにするにはどうしたらよいかと、当時はそればかり考えていました。そんなときに演奏者として思い浮かんだのが、その少し前にインターネットで偶然知った古楽器の合奏団・ロバハウスさんだったんです。

谷岡さんにお声がけして一緒に演奏を聴きに行ったら谷岡さんも気に入ってくださって「谷岡さんの曲をロバハウスさんに演奏してもらえれば、本作の優しい世界観を十全に表現できるのではないか」と確信に近い思いを抱きました。ところが、オファーをしたら断られてしまいまして。

荒木あらら……。


《蚩尤》

汎用性あるザク系ライター(が目標) 蚩尤

1979年生まれのファミコン直撃世代。スマホゲームもインディーズも大型タイトルも遊びますが、自分と組ませてしまって申し訳ないという気持ちやエイミングのドヘタさなどからチーム制のPvPやFPS、バトロワが不得手です。寄る年波…! ゲームの紹介記事に企画記事・ビジネス寄りの記事のほか、アニメなど他業種の記事もやれそうだと判断した案件はなんでも請けています。任天堂『ガールズモード』シリーズの新作待機勢。

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