人生にゲームをプラスするメディア

「高知県からスタークリエイターを」―若き経営者の考える地域の未来

今年2月に高知県に拠点を設立したオルトプラス高知は、大手ゲームメーカー・出版社との共同開発タイトルを複数もつオルトプラスの100%子会社。ゲーム企業が高知県に拠点を構えるメリットって?新卒3年目で同社の代表取締役を任された石川哲大氏に話をお聞きしました。

ゲームビジネス 開発
「高知県からスタークリエイターを」―若き経営者の考える地域の未来
  • 「高知県からスタークリエイターを」―若き経営者の考える地域の未来
  • 「高知県からスタークリエイターを」―若き経営者の考える地域の未来
  • 「高知県からスタークリエイターを」―若き経営者の考える地域の未来
  • 「高知県からスタークリエイターを」―若き経営者の考える地域の未来
  • 「高知県からスタークリエイターを」―若き経営者の考える地域の未来
オルトプラス高知 代表取締役 石川哲大氏


高知県、と聞くと読者の皆さんはなにをイメージされますか?坂本龍馬、カツオ、酒豪が多そう……ゲームと結びつけて考える方はいらっしゃらないのではないでしょうか。高知県は全国に先行して10年高齢化が進行、1990年から出生数が死亡数を下回る人口の自然減の状態が続き、若者は仕事を求め東京や大阪などの県外に出ていってしまうという、日本の課題が詰まったような地域です。この現状に歯止めをかけるべく、近年、同県では雇用創出のため、IT・ゲーム企業の誘致に力を入れています。

そんな高知県に、今年2月に拠点を設立したオルトプラス高知は、大手ゲームメーカー・出版社との共同開発タイトルを複数もつオルトプラスの100%子会社。ゲーム企業が高知県に拠点を構えるメリットって?新卒3年目で同社の代表取締役を任された石川哲大氏に、同県で働く魅力、課題や今後の展望をお聞きしました。

【取材・構成:山﨑浩司】

───本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。

石川哲大氏:(以下石川氏):石川哲大といいます。オルトプラスには2016年にエンジニアとして新卒で入社しました。入社直後から社内の勤怠システムの要件定義、開発、運用を半年ほど行い、弊社のブラウザゲームの運営ディレクターを9ヶ月ほど担当。その後、新規のネイティブアプリの立ち上げと運営のディレクションを経験しました。

───入社3年目にしてオルトプラス高知の代表取締役に抜擢された経緯をお聞かせください。

石川氏:抜擢の理由は、基本的には「若いから」というのと、自分で物事を考えてガツガツ行く姿勢、この辺りを評価されたのだと思っています。

このお話をいただいたとき、突然それっぽい部屋に連れてかれて「石川くん、社長やってみない?」と。事前準備も何もなかったんですけど、「はい、やります!」って即答したんです。出身は埼玉県で、高知県には縁もゆかりもないのですが「なんか面白そうだな」って深く考えずに飛び込んだ形ですね。

オルトプラスは若い人にチャレンジをさせてみるという文化のある会社です。給与も「できたら金額を上げる」じゃなくて「やるから金額を上げる」というシステム。そこでチャレンジをしてみて失敗してもそれが糧になるという考えで、比較的若いうちから裁量を与えていくというのを積極的にやっていくようにしています。最年少では26歳で部長になった人間もいますし、若手の中で伸びていきそうな人材に責任あるポジションを任せて会社を大きくしていきたいという思いがあります。「やりたい!」とか「やります!」というのが好きな会社なんですよ(笑)。

───プレッシャーはないでしょうか?

石川氏:もちろんあります。ただ、自分自身が失敗も糧になるという考え方を持っているのと、本社からのサポートもありますし、本社からいっしょに高知にきてくれたメンバーもいます。プレッシャーを楽しみながら、チームで頑張っていきたいと考えています。

───エンジニアとして3年目だと、まだまだコードが書きたい!という時期だと思いますがその点はいかがですか?

石川氏:それが書きたい!ってなっちゃうんですよね(笑)。週末、業務外ですが久しぶりにメンバーで集まってUnityでゲームを作ろうと思っています。最近はマネジメントや経営の話ばかりしていて、「どういった思いでやっていたんだろう?」と現場の方の気持ちを忘れかけてきているなと。ここが無くなってしまうと、コミュニケーションが上手くいかなくなると思っていて、肌感覚を取り戻すのと交流も含めて、定期的にコードを書くことはやりたいですね。

───「心はエンジニア、頭は経営者という感じですね!それでは本題ですが、高知県に会社を設立した理由をお聞かせください。

石川氏:結論から言いますとオルトプラスと高知県、互いのニーズがマッチしたから、ということになります。オルトプラスは人材確保がしたい、高知県は雇用を創出したい、というニーズです。

オルトプラスのゲーム事業部では、受託だけでなく協業も多く、弊社から他社様に話を持ちかけることもあります。ありがたいことに協業することで事業の幅も広がってきました。モバイル関係の新規開発運営のお声掛けがたくさんあって「仕事はある」という状況。とはいえ、東京にはゲーム関連会社がたくさんあって人材の行き来が激しく、一つの会社の中に人材を囲い込むのが難しいという悩みがありました。

一方で高知県は若い人材が県外へ流出していくという課題がありました。特にアニメ・ゲーム関連の就職口となると大阪や東京に出ていく方が多い状況。とはいえ、本人やご家族の本音としては、「高知で仕事があるなら地元で仕事がしたい」と。高知出身の方は地元が大好きなんですよね。そういう高知県の方々の雇用がないという状況と人材が確保したいというオルトプラスのニーズがマッチしたというのが設立の経緯になります。


───多くの地方行政もIT・ゲーム企業の誘致に力を入れていますが、高知県もITエンジニアの創出といったことに力を入れられているんでしょうか?

石川氏:高知県にはまんが王国土佐推進課、産業創造課という部署があったりして、積極的にIT企業やコンテンツ企業を誘致したい、という思いがあるようです。シフトプラス(*)の立ち上げの時の話も聞いていて、その頃からそういった動きがあるようですね。
(*)オルトプラス高知の関連会社でゲーム運営における品質保証、カスタマーサポートを提供。2015年4月に高知県に設立し現在は従業員数100名を越える。

───何年後までに何人を雇用する、という計画はありますか?

石川氏:3年後までに150名を目指しています。

───150人というのはかなり大きな数字だと思います。どうやって実現していくのでしょうか?

石川氏:実際にオルトプラス高知の採用を始めてみた段階で「すごく求められているな」と。エンターテイメントに関われる仕事が高知に来たということで、もともとは県外でゲーム関係の職についていたけれども事情があって高知県に戻ってきて、仕事がないから別の仕事をしていたという方がいらっしゃいまして。今回採用した中にもゲーム業界経験者の方もいました。

あと、高知県内の大学や専門学校を見ても同県内で就職される方というのは非常に少ないんです。ITやコンテンツ系などに関しては、「もう大阪や東京に行くしかない」と。教育機関側としてもこういう状況には課題を持たれていたんです。

ゲームに関わる仕事は非常に属人的なものではありますが、この部分を標準化・効率化をしていく中で間口を広く取れるんじゃないかなと思っています。そこで教育というキーワードに当たると思うんですが、ゲームに携わる方を増やしていくという仕組みを事業自体に組み込んでいくということを考えています。

───首都圏のUIターン人材をみすえた求人は行われていますか?

石川氏:まだそういうことはやっておらず、高知にUターンした方の集まりなどに顔を出させていただいている段階です。まずは認知を高めていくターンかなと思っています。現状ですと求人も大々的にお金を使ってやっていくと言うよりは、県や市の方と協力をしながら定期的に説明会を開催したり、ハローワークで求職者を探させていただいている段階です。この後、採用実績が出てくるともう少し大きくプロモーションができると思うので、そこでグッと人を増やせればと考えています。

仕組みを作るところが重要だと思っていて、高知県で採用となるとどうしても経験者の方が少ないんですね。入社してもらったは良いけれども「何したら良いんだっけ?」という状況は避けたいんです。特に我々はゲームの運営に力を入れていますので、まずは運営業務自体を標準化し未経験の方でもゲームの運営を出来る状態というのを構築して、その上で雇った人の中からクリエイターが生まれていく、というような構造を目指しています。

───高知で3月に会社説明会も行われていましたが、どれくらい応募があったのでしょうか?

石川氏:応募自体は70名ほどですね。その中から全部で10数名ほど採用させていただきました。5月にまた5,6名ほど入社される予定です。

───70名!すごい数ですね。それはすべて県内からですか?

石川氏:Uターンの方も含まれています。直接雇用をしている方はもう20名を越えています。

2月にできたばかりのオフィス。60名程度が収容できる。

───オルトプラスの高知拠点、としてではなく、なぜ「オルトプラス高知」という法人として設立したのでしょうか?

石川氏:オルトプラス自体が、事業を作ってどんどん独立していって欲しいという社風なんです。代表も「社長を作りたい」という気持ちが強かったので拠点ではなく会社を作るということになったのではないか、というのが僕の個人的な考えです。

───オルトプラス高知の業務内容はオルトプラス本社とは違いゲーム運営がメインなのでしょうか?

石川氏:ゲーム運営とは言いましたが、実際は「売上の安定したタイトル」を回すということになります。長期運営に入ったタイトルは「ガチャがいつ開催」「月に1回はイベント」という風にルーチン化します。そこをマニュアル化して初心者のスタッフでも回せるようにするというのが、オルトプラス高知のイメージですね。

───それが先程の標準化・効率化の部分になるわけですね。

石川氏:そのとおりです。また、開発のラインを増やしたいというのもありまして、現在高知でも1本ゲームを作り始めているところです。ラインは東京とかわりなく数あるうちの1本と考えていますが、運営に関しては高知では「より長期的に」を意識しています。

最近はユーザーが残っているのに終わってしまうタイトルが多いのですが、なるべく長く続けていく仕組みややり方がないかなと模索している中で高知という場所に目をつけました。運営をしていく人員を確保するというのは本当に大変なことなので、高知でITやエンターテイメントという産業を大きくしていくことで雇用を拡大させていけるんじゃないかと考えています。

───2月に設立をしてすでに20名従業員がいるということですから、確実に雇用を生み出していますよね。素晴らしいです。それでは、高知県で働くことへのメリットやデメリットを教えてください。

石川氏:「ひろめ市場」があったり、やっぱり食事が美味しいですよね。お酒飲みの文化というのもあり、仕事終わりの飲みニケーションが活発で、チームの結束力が高まりますからこれはとても魅力的ですね。あと、公共交通機関、路面電車が市内に集約されていますので通勤がすごく楽です。東京では通勤に往復2時間をかけていましたが、高知市内で家を借りれば自転車で5分で通勤ができます。

デメリットとしては、やはり経験者が少ないというのはあります。IT企業がまだ少ないので東京に比べると勉強会やセミナーの数もあまりなく、土日に技術を磨くといったことができない点は技術を研鑽したいエンジニアには辛いかもしれません。

ただ、それに関しては他のIT企業や県や市と協力してセミナーを開催するなどして機会を作っていければと思います。

高知県の観光地であり、同県内にとどまらず全国から「呑兵衛」の集まるひろめ市場。オルトプラス高知オフィスから徒歩5分程。

───通勤面でのストレス減やコミュニケーションの部分がメリットということでしたが、運営効率は上がりましたか?

石川氏:そこに関しては積極的に上げていこうと思っています。高知の方々はワークライフバランスを非常に大切にされているというのを感じていて。共働きの方が多いので、働き方の多様性というのを許容していきたいと考えています。効率的な働き方ができるようになれば「この会社働きやすい!」となり、さらに人材を集めやすくなる。いろいろ仕組みを考えていきたいですね。

───関連会社とはいえ、シフトプラスとの人材の取り合いにはならないのでしょうか?

石川氏:まずは関連会社の中で人材を雇っていきたいというのはあります。先日、シフトプラスのマネージャーとも、「人材の交流があると良いよねと話していて。僕たちはエンターテイメント系の業界なので、個人の意思を尊重する取り組みをきちんとしていきたいと考えています。例えば、「僕はカスタマーサポートの達人になりたい!」という人がいれば、「弊社よりはシフトプラスさんがあるよ」と。その逆もありますよね、「カスタマーサポートを通じて運営にも携わりたくなった!」となればオルトプラス高知がある。

───グループ内で人材の行き来ができれば流出防止にもなりますね。石川さんは高知県で暮らしてみていかがですか?

石川氏:高知県に来て4ヶ月ほど経ちましたがすごく住みやすいですね。僕はエンゲル係数が高いので食事に困らないというのがいいです。あとは通勤のところが大きくて、ストレスはすごく軽減されました。何より、高知の方々は温かいですよね。お店のレジひとつとってみても、高知の方は困ってるのを察するとひと声かけてくれるんですよ。なかなか東京にいるとそういう会話はないですよね。ひろめ市場は夜に行くと凄いですよ。隣に座っている見知らぬお兄さんが「お兄ちゃん、高知の一番いい店知ってるからこれから一緒に行こうよ」って(笑)。そういうコミュニケーションがあって、人と人の結束力や温かみが生まれているんだなと。

ひろめ市場内。お昼から客足が絶えず「飲みニケーション」から結束が生まれる。

───「セミナーなどの機会を作っていきたい」ということでしたが、何か具体的な動きはありますか?

石川氏:本社のCOOである鵜川が取締役や相談役として関わっている企業が高知県に4社あり、合同でイベントをやりましょうという話が出てきています。過去には、ビジネスコンテンスト(*)やアイディアソン、アプリビジネスの講座をもたせてもらったりと、県とオルトプラスが連携することが多かったのですが、オルトプラス高知が出来たことで更にこの流れが加速していけばいいなと。
(*)参考:http://www.altplus.co.jp/topics/20151113.html


───最後に、今後の展望などをお聞かせください。

石川氏:高知県自体が一次産業主体の街で、ITの求人が少なく人材が県外へ流出してしまうという事情がありましたが、今後高知県内のIT企業と協力して「高知でもデジタルコンテンツ産業ができるんだよ」と発信して盛り上げていきたいですね。

また、高知でITやエンターテイメントという働き方がもっと出来るようになっていくと我々にとっても雇用の面ですごくメリットがある。その中で「ヒットするゲームを高知から生み出す」というのが、我々が高知を盛り上げていける方法のひとつなんじゃないかなと。高知を題材にしたゲームを作って、「このゲームが好きだからオルトプラス高知に入社する」という人が出てきたら最高ですよね。高知から世界に羽ばたくスターゲームクリエイターが出てきて、高知にもっと関連会社が増えて、「高知はゲームの県だよね!」となってくれると嬉しく思います。

───ありがとうございました!
《山﨑浩司》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

ゲームビジネス アクセスランキング

  1. PlayStation Vita版ならではの機能も盛り沢山!『ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3』

    PlayStation Vita版ならではの機能も盛り沢山!『ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3』

  2. 4つの会社の叡智が結集した『ガンダムキングダム』 Autodesk Mayaの「MEL」を用いてDCCツールを開発効率向上にフル活用

    4つの会社の叡智が結集した『ガンダムキングダム』 Autodesk Mayaの「MEL」を用いてDCCツールを開発効率向上にフル活用

  3. セガサミー、インデックス買収を正式発表・・・「アトラス」ほか事業の大半を取得

    セガサミー、インデックス買収を正式発表・・・「アトラス」ほか事業の大半を取得

  4. 京都・河原町の洒落た喫茶店は新たなVRゲームを生み出す秘密基地!? 「THE VR ROOM KYOTO」訪問レポート

  5. FPS界の重鎮“スタヌ”って何者?山田涼介も憧れる人気ストリーマー・StylishNoobの魅力

アクセスランキングをもっと見る