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【E3 2015】「『シェンムー3』はどーんと深くしたい」Kickstarterを達成した鈴木裕氏に心境をインタビュー

誰もが驚きを持って迎えた『シェンムー3』プロジェクトの始動。早くもKickstarterプロジェクトを成功させた本作の生みの親、鈴木裕氏に直撃しました。

ソニー PS4
鈴木裕氏
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  • SCEのプレスカンファレンスの様子
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6月15日(現地時間)に実施されたSCEプレスカンファレンスの壇上でキャンペーンがスタートし、わずか8時間という早さで最低目標額を達成した『シェンムー3』のKickstarter。現在はストレッチゴールの達成をめざし、7月17日の締切に向けて出資額が増加中です。E3会場で最新の心境や『3』にかける意気込みなどについて、『シェンムー』の生みの親であり、YS NETの鈴木裕氏に聞きました。



―――Kickstarter達成おめでとうございます。

ありがとうございます。なにぶん初めてのことなので、勝手が良くわからないんですよ。Kickstarterの『シェンムー3』の説明ページがアクセス過多で何度もクラッシュしたと聞いて、成功を確認しました。不謹慎ですが、良かったなと。あとは100万ドルや200万ドルといった金額を達成するまでの時間が、ゲーム部門では1位だったとか、全体でも2位だったとか伺いました。そういうところでしか実感できないんですよね、実際初めてのことなので。

―――良かったのか、ほっとされたのか、当然なのか、今のお気持ちは?

まだ始まったばかりなんですよね。いつも新しいことにチャレンジしたいので、より多くのことにチャレンジできるように、たくさんバジェットが集まったほうがいいんですよ。ストレッチゴールもありますし、いけるところまでいきたいですね。



―――開発費用はすべてKickstarterで調達するという認識で良いですか?

いえ、YS NETによる自己資金調達とKickstarterをあわせた金額で開発します。予算規模はKickstarterのキャンペーンが終わってみないとわからないので、今はお答えできません。

―――SCEのプレスカンファレンスに登壇されたのは、どういった経緯でしたか?

「『シェンムー3』のプロジェクトに興味がありますか?」という、こちらからの打診で始まりました。実は先方としても復活して欲しいソフトのかなり上位に『シェンムー』があったようです。そうした中でSCEさんとお話しする機会があり、自分から言うのも手前味噌ですが、「ゲームの歴史上で重要なタイトルだし、みんなが望んでいるので、もし『3』を開発するのなら、異例ではありますが協力します」と言っていただけました。Kickstarterでやりたいということは事前に伝えてあったので、ああいった形になりました。



―――Xbox Oneでリリースされる予定はありませんか?

いま決定しているのはPS4とPCのみで、Xbox Oneでリリースする予定はありません。

―――『3』の開発がスタートしたのは、ファンの声におされてですか?

そうですね。10年以上前からそういう声がとどいていて、実現させる方法を探していました。パートナー探しなども行っていましたが、条件が合わなかったりして、スタートできなかったんです。それが自己資金調達とキックスターターを組み合わせれば実現できる見込みが立ちました。

―――なるほど。

あとはキックスターターの「皆さんと一緒に作り上げていく」という性質もありました。プロモーションフィルムでも言っているように、「Within your hands」の精神です。『シェンムー』シリーズはオープンフィールドというゲームジャンルの元祖だと言っていただけることがあります。実際のところ現在の200万ドルという予算で、みんなが期待する『シェンムー』を作るのは、オープンフィールドでなくても、なかなか難しいと思います。でも、ファンからの要望で一番多いのは「残りのストーリーはどうなるの」ということなんですね。

―――たしかに、気になります。

また『シェンムー』は東洋的・日本的な文化を色濃く出しているところがあり、同じオープンワールドといっても一般的なゲームとはかなりイメージが違います。そのため「ストーリー」と「オープンワールド」を同時に達成しようとするとバジェットがかさんでしまって、いつまでたっても開発に着手できない。いろいろ考えた上で、まずはストーリーオリエンテッドになってもいいので、最低限の資金でできることをやろうと。その上で開発資金が集まったら、さまざまな要素を載せていこうと。そんなふうにスケーラブルな形で開発することにしました。




主人公キャラクター


―――Kickstarterならではの考え方ですね。

それにゲームってお金がかかりやすい部分と、お金がかからなくてもできる、アイディアや仕組みだけでおもしろくできる両方の部分があります。僕も『シェンムー』はストーリーとオープンワールドだけがゲームの要素ではなくて、やっぱり遊んでおもしろい部分があり、そこをどのように確保するかが重要だと思っています。まず最低限の予算でも、おもしろさの部分とストーリーの部分を確保できるようにしました。

―――ますます調達額がどこまで進むか気になってきました。

そうですね。オープンワールドをやらないわけではありませんが、ふんだんにやると予算が上がってしまいます。一方で僕もクリエイターなので、新しい仕掛けをやりたいと思っています。そのへんのバランスを考えてストレッチゴールの設計をしました。



―――15年前と比べてゲームで実現可能なことがすごく広がりましたが、今回『3』を作る上で意識されているゲームはありますか?

『シェンムー1』『2』ですね。

―――どういった部分を大事にされていて、どういった部分を継承させたいですか?

まずはストーリーの続きをみせてあげることが大事です。その上でキーワードとして「懐かしさ」があると思います。『1』『2』を作っていたころの15年前の懐かしい感じとか。でもその時でも『1』『2』の舞台になっているのは1986年の世界なんですよね。大前提として、時代をさかのぼるほどに地域文化の色が出てくると思います。平成よりも昭和の方がそうだし、世界に目を移しても、時代が下るほどに街中の風景が均質化していきます。文化交流のない時代の方がその当時の特色が出るということがあるんです。

―――たしかに、そうですね。

『シェンムー』の良さは、そうした東洋的・日本的な文化であったり、スピリチュアルなところにあると思っています。そのため海外で人気があるといっても、けっして海外に向けた表現はしません。いわゆる東洋の精神的なところや、文化・習慣をしっかり作ることで、異文化に対して興味がわいてもらえるようにしたいですね。『1』『2』から『3』に持っていける部分はたくさんありますが、先ほど言ったようにスケーラブルな設計が求められるところもあり、あらためてそういったところを大切にしています。

―――ハードスペックが上昇したことで、これをやってみたいという要素はありますか?

ちょっと話が違うかもしれませんが、実は『1』『2』を作った時、同時に『3』の計画もありました。そこをそのままやってみたいですね。

―――どういったことでしょうか?

『1』では当時「フリー」といっていた、いわゆるオープンワールドな世界と、そこでリアルタイムに流れるゲーム内時間というものを実装しました。『2』ではその世界をぐっと広げました。『3』ではネタバレになるかもしれませんが、こうした要素はそのままに、どーんと深く掘り下げる予定だったんです。また『1』『2』では「アルバイトをして、ギャンブルで増やして、お店で買い物をして・・・」というふうに、お金を軸にした各要素のつながりはありましたが、戦ったり、強くなったりといった部分では、あまり繋がりがありませんでした。そこで『III』を作る時は、そのへんの要素も強くしたいという思いがあり、それをやってみたいと思います。

―――具体的にはどんな感じなのでしょうか?

「技書」というシステムを考えています。ゲーム内のアクションを通して、新しい技書を入手すると、特別な技が出せるようになるとか・・・。実際に操作できるようにするのか、QTEで実現するのか、具体的な検証はこれから行う予定です。

―――スケジュール感を教えてください。

17年末までにはリリースする計画です。

―――読者にひとことメッセージをお願いします。

長年にわたって『シェンムー』の続編を待ってくれていた方の声が途切れず僕に届いていていて、そのおかげでスタートできました。すべてサポートしてくれる人たちがあってこそです。今後ともがんばっていきますので、応援やサポートをよろしくお願いします。

―――ありがとうございました。

《小野憲史》
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