この究極ともいえる問いに対して、デンマークにあるコペンハーゲンIT大学のミゲル・シカルト氏は「Teaching beyond industry」という講演で自身の考え方を披露しました。シカルト氏は数年前から「ゲーム作りを教えるのではなく、遊び作りを教える(=ゲームデザイナーではなく、プレイデザイナー教育を行う)」という方針で授業を行っており、大きな成果を上げていると語りました。
はじめにシカルト氏は「学生はスキルを学習したがるが、自分はナレッジを教えたい」と切り出しました。スキルとはプログラミングやゲームエンジンの使い方などで、ナレッジとは「人はなぜ遊ぶのか」といった、ゲーム作りに必要な根源的な物の見方のこと。前者は「すぐに役に立つが陳腐化するのも早いもの」で、後者は「すぐに役に立たないが、何十年にもわたって陳腐化しないもの」だといえるでしょう。
その上でシカルト氏は次の5点について解説しました。
■観察
ゲーム以外のあらゆる場所で、人々がどのように遊んでいるかについて、体系的に観察させる。人々が長い行列の間、どのように時間を潰しているか、などの観察を行わさせるなどは一例。こうした観察はUXデザインのベースとなる。
■技術を使用する際の文脈
人々が何かテクノロジーを使用するとき、そこにどのような場所にひもづく文脈が存在するのか理解する。デジカメで写真を撮影している人がいるとして、その人はなぜそこで写真を撮影しようと思ったのか、どのような環境的要因が人々にシャッターを押させようとしたのか、その関係性について理解する。環境が人に及ぼす力について理解することは、ゲームセンターやテーマパークといった、プレイフィールドの設計において非常に重要な要素となる。
■デバイスの理解
ジョイスティックやゲームコントローラーといったデバイスの特性について理解する。ボタンを押す、振動する、デバイスを振るといったインタラクションが持つ意味や特性について理解することは、遊びをデザインする上で必須の要素となる。
■玩具作り
玩具をデザインすることは遊びを設計する上で最も効果的なワークショップとなる。なぜ人はその玩具で「遊びたい」と思うのか。「遊びたい」と思わせるデザインとは何か玩具作りで体感することは、ゲームデザインをゲーム以外の領域に応用していく上で役に立つ経験となる。
■遊ぶ
以上を踏まえて実際に遊んでみよう。百聞は一見にしかず。そして遊びながら「遊びをデザインする方法」について自分なりに考えてみよう。
大学でゲームデザインとプログラミングについて教えているというシカルト氏。しかし、次第に教育という仕事に対して熱意が失われていったといいます。その理由は前述のとおりで、特にゲームデザインについて教えることに疲れてきたとのこと。しかし、人と遊びの関係について根源的な視点から捉え直すことで、教育者としてのモチベーションを改めて高められたと言います。
ゲームデザインではなくプレイデザインについて教えることで、ゲーム業界外でも役に立つ人材を輩出できる……。こうした考え方は、日本のゲーム教育においても示唆に富むものだといえるでしょう。逆説的な言い方ですが、業界外で通用する人材を育成することが、ゲーム教育における早道だと言えるのかもしれません。
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