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「中国は応援しがいのある市場」スクエニ橋本真司氏に聞く、中国市場の戦い方

12月11日、中国・上海にてソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が中国市場へのプレイステーションプラットフォームの参入を発表しました。PS4/PS Vitaを2015年1月11日より販売開始します。

ソニー PS4
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12月11日、中国・上海にてソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が中国市場へのプレイステーションプラットフォームの参入を発表しました。PS4/PS Vitaを2015年1月11日より販売開始します。

カンファレンス内では、日本国内の著名なパブリッシャーの参画も発表され、その中の目玉のひとつとして『ファイナルファンタジーX/X-2 HDリマスター』の販売がスクウェア・エニックス・ホールディングス専務執行役員の橋本真司氏より発表されました。

カンファレンス直後、橋本氏へのインビューを行いましたのでその様子をお届けします。

―――中国でのプレイステーションプラットフォームの展開が正式に発表されましたが、感想をお聞かせください

中国での展開は少し遅れてしまったのですが、台湾、台北、韓国と順番に展開をし、やっとこの日を迎えることができ本当に幸せですし、中国全土のみなさまにきちんとタイトルをお届けしないといけないな、という責任を感じています。

―――中国市場自体はどのように捉えていますか

カンファレンスの中でユービーアイソフトの方も仰っていましたが、未来の予測自体はすべて当たるわけではないですが、あるアナリストが「2016年はアメリカを超えて、世界で一番大きなゲーム市場になる」と語るようにかなりの市場が期待されていますし、人口の大きさからいっても我々も応援し甲斐のある市場だと考えています。

今日、そのためにも中国に足を運んでタイトルを発表しておりますので、今後、世界のみなさんと手を取って中国のみなさんとうまく仲良くやっていきたいと思っています。

―――中国市場において、スクウェア・エニックスのタイトルのどのようなところを一番アピールしていきたいでしょうか

やはり同じアジア圏ということで、我々のデザイナーのキャラクターと中国のみなさんとは親和性が高いのではないかと思っています。私自身、台北ゲームショウであったり香港ゲームショウなどアジアのゲームショウに参加した際に、各国のみなさまとお話をしていると「もっと早く発表してほしかった!」とよく言われていました。ローカライズ、言葉の壁がどうしてもあるのですがアジアのみなさまにもっと早くお届けできるようにしたいなと考えています。

―――カンファレンスで『ファイナルファンタジーX/X-2 HDリマスター』の発表がされた際、会場が大いに盛り上がりました。中国の方々にもスクウェア・エニックスのタイトルが受け入れられているという手応えは感じていますでしょうか?



そうですね。以前からアジアの他の国、日本も含めてですが、お買い上げ頂いて実際に遊ばれている方も多々いらっしゃいました。ただ、ご存知のように今日発表させて頂いたような簡体字を含めたフルローカライズというのは、ようやく実施できたというところです。そういう意味では、みなさんにストレスなく、遊んで頂ける環境がやっと整ったな、と。

―――満を持してPS4版が発表されましたが、今回のタイミングに合わせて準備を進めていた、という感じでしょうか

SCEさんの中国でのビジネスプランをお伺いした際に、PS4とVitaで展開すると。PS3版はもちろん用意していたのですが、中国国内にPS3がないということで、せっかくのファイナルファンタジーシリーズのコンテンツを中国のみなさまにお届けできるのが、いきなり『ファイナルファンタジー XV』となってしまいます。今『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』もローカライズを行っていますが、過去の作品に全く触れずに、いきなり『FF14』や『FF15』を発売してもFFシリーズの歴史もご説明できませんので、SCEさんのPS4での戦略が決まった段階で「これはもう、みなさんにすみやかに大切なタイトルを遊んで頂きたいな」、ということで急遽動いて参りました。

―――ということは中国市場有りきでPS4版の発売に踏み切った、という見方でしょうか

欧米の話になってしまうのですが、PS3の売れ行きも好調なのですが、つい先日もアメリカで売り場をいろいろ回ったのですが急速にPS4にシフトし始めている印象を受けました。おかげさまで『FF10/10-2』も非常に好調なのですが、ハード自体がなくなってしまうとせっかく作ったコンテンツが遊ばれない、という状況になってしまいます。

先日の『FF7』もそうなのですが、遊んで頂く環境が変わった以上は、PS4をお買い上げ頂いた方がプレイをしたくても「FFタイトルが無い」という状況は避けたいと思っています。SCEさんが行われているクラウドサービスでも、サポート的には実施はされていると思うのですが、やはりダイレクトにハードに合うように調整したものをご用意するのが、我々コンテンツを扱うものの立場だと思っています。ですので、そこはきちんとしたバージョンを作っていきたいと思います。

本来であれば初代『FF1』から揃えるのが筋だと思うのですが、開発環境等を鑑みて、いきなり全てを作ることは難しいので、早めにお届けできるものから、順次ラインナップを揃えていきたいです。いままでのPS、PS2、PS3は下位互換があったのですが、今回のPS4ではその部分が実装されず、PS Nowを含めたクラウドビジネスにシフトされることは分かっているのですが、時間的な問題もございますし、最適化を考えると、我々の企業努力で進めていったほうがいいのかな、と思い順番に準びをしていっている状況です。

―――カンファレンスでは、Vitaがかなりフューチャーされていたと思うのですが、橋本さんは中国市場でPS4とVita、どちらが期待できるとお考えでしょうか

数字、価格、開発環境を含めてですが、実はアジア圏でのVitaの売れ行きはすごく伸びている状況です。恐らく欧米よりも市場シェアとしても非常に高い。我々も非常に難しいところだと考えています。もちろんひとつのハードがたくさん売れることが一番良いのですが、欧米の市場と日本含めたアジアの市場にマッチした展開をしていくのが、一番効率が良いと。そういったところでいくと、Vitaのラインナップというのはきちんと揃えていかないといけないと思っています。

―――中国のユーザーはどういうゲームを求めているイメージをお持ちでしょうか

カンファレンスの映像を見ていても剣で戦うようなアクションゲームが割と多いなという印象を受けました。

―――確かに、銃はでてきませんでしたね

そうですね。ただ、我々も昔剣で戦うアクションゲームを作っていましたし、制作することはできないことはないのですが、やはり「他社さんではできないこと」を我々はやっていきたいと考えています。スクウェア・エニックスなりの味をきちんと出していければ、と。ただ、中国国内の流れは、映像を見ていて理解は出来ました。

―――タイトル発表だけではなく、ゲームエンジンやクラウドファンディングなど、トータルで中国ビジネスを考えているという印象がありましたが、橋本さんはどのような印象を受けましたか

SCEさんが準備されてきた、プレイステーションにおけるいろいろなビジネススキームですよね。我々含めた海外のいろんな企業において、中国にはいろいろなチャンスがありますよ、というご提案かなと思っています。元々、コンシューマーは中国では遅れてのスタートになりますので、オンライン・ネットワークビジネスが先行しているなかで、あえてコンシューマーが参入するためにいろいろなビジネスモデルとご準備しているのだな、と。それを我々がどううまく使えば有効なのかな、というのは実感しました。

―――スクウェア・エニックスさんは中国でもスマートフォンやPCなど、中国国内の企業さんと連携してユーザーからも受け入れられている印象ですが、コンシューマーにおいてはどういったことをお考えでしょうか

『FF14: 新生エオルゼア』も、Shanda Gamesさんと組んでMMORPGカテゴリーではうまくやらせて頂いています。日本の企業の中でいうと、割りとうまくいっているほうだと思います。ロールプレイングは中国のお客様にも受け入れられているな、という印象です。

―――では、コンシューマーにおいても中国国内企業との連携を進めていると?

いえ、それはタイトル毎の判断になってきますね。オンラインビジネスにおける提携のビジネスモデルもあれば、今回のようにSCEさんと組んで実施させてもらうモデルなど、タイトルバイタイトルで進めていきます。

―――Vita版のパブリッシングはSCEさんになりますか?また発売時期は。

詳細はいまのところは決まっていません。ただ、今日発表させて頂けたということは中国政府から承認を頂けたということですので、そこは、幸せです。世界のたくさんのタイトルの中で早めにご承認頂いたのは、非常にありがたいです。

―――スクウェア・エニックスさんの中国での存在感の現れでしょうか

いえ。我々が手がけているのはRPGとなっていますので、レギュレーション上、わりと問題が少ないのです。

―――中国のデベロッパーさんのタイトルがいくつかありましたが、クオリティの面はいかがでしたか

すごい野心的なものから、我々日本のクリエイターが想像できないようなアプローチもあって、学ぶ点も多々有りますし、恐らく、アイデアがいろいろなバリエーションをお持ちなのだろうな、という実感しました。

―――スクウェア・エニックスさんは海外でもいろいろなタイトルを展開していますが、中国でも展開の予定はありますか

ボーダーレスの時代ですので、我々としては、ご承認を頂けるのであれば、ぜひチャレンジしたいと。どうしてもローカライズの作業をきちんとしていかなければいけないので、中国市場にマッチしているタイトルをきちんと考えながら、しっかりとローカライズしていきたいです。

―――中国向けにきっちりローカライズを行うことが、中国市場で成功する秘訣、ということですか?

そうですね。あとは、我々に対するイメージもある程度持って頂けてるのだな、と。期待されるタイトルのイメージ、はあるなぁと感じました。

―――今年5月に家庭用ゲーム機の販売が解禁されましたが、中国市場に向けての動きはいつ頃からおこなっていたのでしょうか

実は結構前から動いていて、5年位前から動いていました。香港ゲームショウなどにも出展していて、香港をどう捉えるかですが、中国の一部と考えて、いずれ本土にいけるといいなぁ、という思いはありました。おかげさまで『FF XIII』は数字が伸びていますので、本土も入るとさらに飛躍ができるのかな、と。

―――中国での家庭用ゲーム機の展開は早い、とお考えでしょうか?それとも時間がかかったな、という印象でしょうか?

その部分に対しては、我々が申し上げる部分ではないのですが、9月にマイクロソフトさんが参入して、来年1月にSCEさんが参入しますが、ここまでいろいろな苦労があったのだな、と感じます。

―――中国市場に力を入れて、今後は世界同時発売という展開の中に中国も含めて、というプランも考えていますか

我々も可能な限りそこは目指さないといけないと思います。ただ、他社さんのスポーツゲームやシューターに比べると、RPGはテキスト量が長いんですよ。同じ翻訳と言っても、作業時間がかかってしまいます。よく「スクウェア・エニックスのタイトルは、日本語版が出てからアメリカ、ヨーロッパ、アジアへとリリースされるのに時間がかかる」を言われますが、ご存じのように、RPGは50時間から100時間は遊べるよう制作をする必要があり、それに合わせて言語も全部翻訳するとなるともの凄い膨大な作業量になります。加えて、ボイスも録音しなければいけないので、どうしても時間がかかってしまいます。

―――それはRPGの宿命ですね

はい。ただ、1回プレイしたユーザーさんの心に刻まれると、10年たっても20年たっても「あのソフト遊びたい」と言って頂けるのが、ロールプレイングの良さだと思います。

―――中国国内向けに、過去の名作をローカライズするといった展開もありえるかもしれない?

ゼロとは言いませんが、我々の人的なリソースも含めて、限りがありますので、まずは着手できるものから準備制作をしていく形になります。クリエイターも限りがございますので…。

―――ちなみに今回の『FF10/10-2』はボイスも中国語でしょうか

いえ、日本語ボイスと英語ボイスの2種類になります。

―――今後発売される新作タイトルも中国発売と同時並行を考えていますか

そうですね…。リソース等の問題もございますので…。ただ、気持ちは前向き考えています。

―――チャンスがあれば、同時に出したい、と。

はい。ただ、矛盾になってしまうのですが、世界のみなさまへの提供を同時に目指せば目指すほど、全体的に遅れが生じてしまいます。難しいところですね。

―――最後に中国展開についての意気込みを。

大変お待たせいたしましたが、中国のみなさまにも簡体字版をお届けできることを、大変幸せに思っています。これからも中国本土のみなさま含めてですが、アジアのみなさまにスクウェア・エニックスのタイトルをお届けしていきたいと思います。



―――ありがとうございました。

ありがとうございました。


スマートフォン、PCでは中国市場でも成功を収めているスクウェア・エニックス。プレイステーションプラットフォームでの躍進に、期待をしたいところです。
《森 元行》

森 元行

海外のゲームショウにてeスポーツの大会に出会い衝撃を受け、自身の連載「eスポーツの裏側」を企画・担当。プロプレイヤーはもちろん、制作会社や大会運営責任者、施設運営担当者など「eスポーツ」に携わるキーマンに多くのインタビューを実施。 2022年3月 立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科 博士課程前期課程(修士/MBA)修了。

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