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サブスクリプション版に無料版『UT』の提供、業界を震撼させるアンリアルエンジンの根底にあるものとは?・・・GTMF 2014直前インタビュー

本年3月に月額19ドルという「Unreal Engine 4」(UE4)の新しいビジネスモデルを発表。5月にはFPS『アンリアルトーナメント』(UT)の新規プロジェクトを発表し、完全無料で提供することを打ち出すなど、矢継ぎ早の施策で業界を震撼させているEpic Games。

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本年3月に月額19ドルという「Unreal Engine 4」(UE4)の新しいビジネスモデルを発表。5月にはFPS『アンリアルトーナメント』(UT)の新規プロジェクトを発表し、完全無料で提供することを打ち出すなど、矢継ぎ早の施策で業界を震撼させているEpic Games。プラチナスポンサーとして参加する、ツール&ミドルウェアの展示会「Game Tools & Middleware Forum 2014」にどのような意気込みで臨むのか、Epic Games Japan代表の河崎高之氏に話を伺いました。

Epic Games Japan代表の河崎高之氏


―――「アンリアル・トーナメント」の完全無料化のニュースには驚かされました。新しいゲーム開発のスタイルを提案しているようにも思えます。

弊社の中で言っているのは「原点回帰」です。もともとUnreal Engine自体が『アンリアル』というゲームのMODツールとしてはじまり、MODファンの中で広く使われるようになりました。その結果、いろいろなゲームが登場してきたのを受けて、UE自体のライセンスが始まった経緯があります。UE4のタイミングで、もう一度原点に復帰したいと考えたのです。UTを無料でユーザーコミュニティに提供し、自由にゲームを作ってもらって、その勢いをUE4に取り込んでいきたいと考えています。

―――完全無料でソースコードも公開されるんですよね。

もともとUE4もソースコードを公開して、アクセス可能にしていますからね。ユーザーが自由にカスタマイズできたり、プラグインを作れたりするのも、それゆえです。弊社にはプログラマが200人ほどいますが、いくら優秀でも所詮200人です。ソースコードを公開することで、何千~何万人というコミュニティができます。その中で磨かれていって、良い物ができるわけです。

新『アンリアルトーナメント』ロゴ


―――UE4にあわせて、さまざまな「チェンジ」が進んでいますね。

UE3までは「増築」の連続でしたから、UE4で基礎から作り直しました。今年のGDCでは弊社として、はじめてエキスポエリアに一般向けのブース展示も行いました。それまではクロースドなブースで、限られた方だけにお見せしていたのです。大変でしたが、さまざまな刺激をもらいました。

―――UE 4.1もリリースされましたね。プレビュー版ながら、SteamOSとLinux向けのサポートも行われました。普通は「完成してから公開」だと思うのですが、開発過程から公開して、一緒に作り上げている印象を受けます。

MOD文化が会社のカルチャーに大きな影響を与えています。もともと弊社自体も創業者のティム・スウィーニーの自宅ガレージから始まったようなものですから。ティムもアマチュアやインディゲーム開発者に何か力を与えられるようなものを作っていきたいという思いがあります。サブスクリプション(月額課金)版の背景も、プロがプロ向けに作ったツールを世界中で使ってもらいたいというもので、UTもその流れにあります。

―――ゲーム業界のビジネスの変化を感じますか?

そうですね。UE3世代では弊社のビジネスもPS3とXbox 360のAAAゲーム開発向けライセンスが中心でした。しかし、今はゲームのあり方が変わってきていて、人々のゲームに接する時間や、接し方が変わってきています。そのため、これまでのようにAAAを中心に据えたビジネスではなく、広く浅く使ってもらえる方に未来があると信じての決断でした。

―――セミナーも非常に盛り上がったようですね。

ユーザーコミュニティの中でも尖った、有志の方に主催していただいて、東京で300人程度、大阪で150人程度のセミナーが開催されました。関心度の高さをひしひしと感じています。実際、これまではデモなどを拝見いただいても、すぐに触っていただけたり、ゲームを開発できる環境がなかったんですよね。それが今では「興味を持ったら、すぐにゲームを作ってみてください」と言えるようになったのが一番嬉しいですね。

―――いま日本のユーザーはどれくらいいるのですか?

実数は公表していませんが、サブスクリプション版の発表以来、急増しました。予想外に良い滑り出しだと思います。特にブログやFacebookのグループページなど、草の根で盛り上がるようになってきたのが嬉しいですね。これからも、うまくサポートしていければと思います。
https://www.facebook.com/groups/unrealuserj/

―――今後の施策について教えてください

これまでは大手パブリッシャーとの個別営業が中心だったので、一般向けにプロモーションができる、コミュニティマネージャのようなスタッフが不足しているんですよ。そこが直近の課題で、力を入れているところです。

―――UE4のアップデートの予定はどうですか?

サブスクリプション版は諸刃の剣で、19ドルを払ってゲームエンジンをダウンロードすれば、ずっと使えてしまいます。ソースコードにもアクセスできるので、すぐに課金をやめても、そこから自由に作り込めるのです。そのため我々としても、継続して課金してもらえるように、魅力的なアップデートを続けなければなりません。原則として毎月、何かしらのアップデートを行っていきますよ。次のバージョンで何ができるかは、直近にならなければわからないのですが、ぜひ期待してください。

―――なるほど、それはおもしろいですね。

逆に何か新しい採用事例が出てきて、人気が高まるようなら、それを後押ししていくような機能のプライオリティが上がっていきます。これまでゲームだけだったところに、バーチャルアイドルのような事例が出てくると、それ向けのアップデートが行われる、などですね。弊社はあまりかっちりしたロードマップを立てずに、柔軟に対処していく社風ですので、そこは状況を見ながら進めていきます。

新『アンリアルトーナUnreal Engine 4のロードマップはウェブで公開されている
https://trello.com/b/gHooNW9I/ue4-roadmap


―――何かおもしろい事例はありますか?

格闘ゲームの『GUILTY GEAR Xrd -SIGN-』でUE3を採用いただいたのですが、本社のエンジニアチームが衝撃を受けていました。リアルタイム3Dにもかかわらず、2Dアニメにしか見えない演出が行われていたからです。あるアーティストは「これまでのUE3採用ゲームはある意味で、『ギアーズ・オブ・ウォー』の延長線上にあった。『GUILTY GEAR Xrd -SIGN-』はUE3の機能を完全に取り込んで、オリジナリティのある作品を創った初めてのタイトルになった」と話していました。

『GUILTY GEAR Xrd -SIGN-』(C)ARC SYSTEM WORKS


―――たしかに、まさに日本的なUE3の使用事例でした。

となると、次は2Dゲームに向いた機能を増やそうということになっていきます。こんな風にエンジンの開発チームが予想も付かなかったような使用法がでてきて、それがフィードバックされて、さらに良いエンジンになっていく、といったループを作りたいですね。

―――その一方で、インディゲームにも力を入れられていますね。

『Tappy Chicken』というサンプルゲームを作って配信しました。弊社のアーティストが1人で、4時間くらいで作ったと聞いています。今までUEはシューター向けというイメージがありましたからね。これからもバラエティ豊かなサンプルを提供していきます。

―――マーケットプレイスのサービスも始まりました。

今は弊社で作った無料サンプルがアップロードされているだけですが、近く売買したり、無料で配信できるようにする予定です。アセットだけでなく、ゲームそのものも販売できるようになる予定です。まずはPCゲームから始める予定です。そんな風にしてエコシステムを作り上げていきたいですね。

マーケットプレイスではアンリアルエンジン4のサンプル等が配信されている


―――ゲーム自体も配信できるというのは、新しいですね。ちなみに、リージョンの切り分けは行われるのですか?

当初は全世界で同じマーケットプレイスからはじめますが、リージョンごとに切り分ける予定もあります。日本向けに萌えキャラが充実しているなど、ローカルの特色が出るようなものも予定しています。

―――日本法人ができて5年目になりますね。

当時は営業の際に「ゲームエンジンとは何か」という点から説明する必要がありました。ほとんどがフルスクラッチの時代だったからです。今はゲームエンジンではなく、UE自体のメリットから話せるようになりました。この違いは大きいですね。ふりかえれば、日本のゲーム作りの仕組み自体が大きく変わった5年間だったと思います。

―――サブスクリプション版の登場は企業にどのように捉えられていますか?

サブスクリプション版とカスタムライセンス(通常ライセンス)版ではコンセプトが違います。サブスクリプション版は敷居が低いかわりに、弊社からの個別のサポートはご提供していません。一方で多くの企業はUEを使用するとはいえ、凝った使い方をされようとするので、弊社からのサポートが重要な要素となります。実際、サブスクリプション版の発表でカスタムライセンス版にも良い影響が出ました。カスタムライセンス版からサブスクリプション版への乗り換えも、ほとんどありません。逆にサブスクリプション版での使用事例が増えることで、人材の裾野が広がるという、良い循環が生まれてきています。

―――欧米と日本とで、UEとの向き合い方について、違いはありますか?

欧米企業の方がゲームエンジンやミドルウェアを使った開発の歴史が長いので、使いこなし方の幅が広いですね。体感でも5-8年くらいの差があると思います。そのため、エンジンを自分たちでカスタマイズしたり、ワークフローやコンテンツパイプラインの中にうまく取り込んでいる例が多いようです。日本はまだゲームエンジンを使用するようになって日が浅いので、その辺の転換に時間がかかっているようです。これからは日本でも、本格的に使いこなしていくステージに入っていくのではないでしょうか。業界全体としての経験値も高まってきていますしね、

―――ゲーム会社だけでなく、ツールやミドルウェアのゲームエンジン対応なども進んでいます。ゲームエンジンが、ある種のプラットフォームになっている印象を受けます。

ハードメーカーがそれぞれ違うゲーム機を出す一方で、ゲームメーカーはマルチプラットフォーム展開を進めています。その間にゲームエンジンがあるわけで、そういった意味では正しいかもしれません。ただ、ビジネスの方向性としては、プラットフォームというよりは、OSやインフラに近いという認識です。他社様との競合があるのは事実ですが、UEだけで開発者を囲い込んで、勝った負けたという認識はしていません。いわゆる「ゲーム機戦争」というような感覚とは、ちょっと違うかなと思っています。

―――なによりプロとアマが同じゲームエンジンを使うようになりました。

そうですね。ただ、そこには良い面もあれば、悪い面もあると思っています。悪貨が良貨を駆逐するようなことも、起こりえるわけですからね。一方で『マインクラフト』のような、とんでもなくすごいゲームが出てくる側面もあります。私たちはこの良い面を育てられるお手伝いをしたいのです。UEのブループリント機能を使えば、コードが書けない人でもゲームが作れます。そうしたことを通して、業界を活性化させていきたいですね。

―――GTMF2014をどのように見ますか?

今年は新たにデベロッパーのプレゼンテーション大会ともいうべきミートアップの試み(GTMF Meet-Ups)、東京会場で初めて実施されると伺っています。ゲーム業界は狭いようでいて、細分化されていて、横の繋がりがあまりないのも事実です。決まった人同士のつきあいになっているところもあります。意義のある取り組みだと思いますし、来年は大阪でも行われると良いですよね。

―――今年の意気込みについて、最後にひとことお願いします。

順調にいけばUE4の解説書が年内に出版される予定です。サブスクリプション版も現在ではクレジットカードが必須になっていますが、日本独自の施策として、他の決算手段も検討しています。日本語翻訳もドキュメント量が多くて大変なのですが、専任の翻訳スタッフを入れて進行中です。エディターの日本語化もGTMFまでには完了していると思います。こんなふうに、より多くの方に使ってもらえるような環境整備を進めていきます。ぜひ会場まで足を運んでもらって、実際にUEを体験しに来てください。

―――ありがとうございました。

ゲーム開発者向けのツール&ミドルウェアの展示会「Game Tools & Middleware Forum 2014」は、6月25日(水)に大阪のグランフロント大阪内のコングレコンベンションセンターにて、7月18日(金)には東京の秋葉原UDXにて開催予定。参加は無料(事前登録が必要)ですので、ぜひ足を運んでみてください。ウェブサイト: http://gtmf.jp/
《小野憲史》
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